合流
12 合流
青年は十九歳になる。三年前に比べると大人の顔になった。眼は鷹の眼、鼻筋高く、一文字の口を持つ。日蓮宗系の異端の寺で修行をしている僧侶である。それ以前は修験道を修めていた。たった今、下山して僧衣を脱いだばかり。蓬髪を束ね、Tシャツに袖を通しフライトジャケットをはおる。
身支度が出来ると自分の部屋を出て階下へ降りた。
「九州へ行ってくる」父に告げた。
「そうか……」酒の用意をしていた父は顔を曇らせそう言っただけ。何故お前が行かなければならん。言いたいことは山ほどあるが、「生きて戻ってこいよ」とだけ言った。
「勿論だ」彼の母親は既に他界している。別れを言うべき人間は父一人だけ。
玄関を出た。
自分の車、七〇系の白いランドクルーザーに乗り込む。ハンドルを握り向かった先はネット喫茶。
『エレボス』をキーワードに検索する。一万件以上のヒットがあった。ひとつずつ丁寧に見ていく。内容は大体共通している。
エレボスと呼ばれる少年が九州にいる。彼は悪魔を斬り殺すことが出来る。その刀を振るうと爆音轟き竜巻がおきる。コンクリートが、その太刀筋に沿い、割れ舞い上がる。
その少年についての様々な噂や憶測で、掲示板は溢れている。ネットはエレボスの不確かな情報で澎湃としている。
魔術用語的に、エレボスは『混沌の子』であり『闇の人格化』したものである。ギリシャ神話では、宇宙原初の混沌を神格化したものであり、地下の暗黒の神でもある。
面白い記事もあった。噂の域を過ぎないが、山口と広島の県境で九州脱出者が保護されたらしい。海峡封鎖後たった一人の脱出者だ。エレボスと行動をともにしていたともっぱらの噂だ。
ひとつの掲示板のスレに目がとまった。スレタイトルは『エレボスを助けて』。その内容は、こんな書き込みだった。
わたしのいとこがエレボスです。本人から電話でそう呼ばれていることを聞きました。それから悪魔に狙われているということも。どうか、お願いです。わたしと九州へ行って彼を助けてください。
その青年、野原祐二は携帯を取り出し、簡単に作成できる携帯用ホームページを作り、再びパソコンに向かった。
『俺はBIS。一緒に行ってやる。連絡方法は下記のURLを開き、そこにあるホムペから管理人宛にメールを送れ。俺のホムペだ。その後折り返し連絡する』
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