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エト・エウトクタ
作:隆伊



十号線


7 十号線
 重い飲料を持ち歩く必要はないことに気づいた。この国は、異常に自動販売機が多い。自動販売機を見つければ、川野という少年が片っ端から開けてくれた。勿論、開けられない自販機もあるが、飲料で困ることはなかった。
「凄いな。公衆電話もできる?」ホンダが話しかけると、金髪の少年は得意気に応えた。
「ああ? 黄色だったら大丈夫だ。まぁ、開けてもたいした儲けにならないし、滅多にお目にかかれないけどね」
「もし、この先、黄色い公衆電話があったら頼む」
「まかせろ」川野は嬉しそうに笑った。
「アレは、コツがあるんだ。電話機の下の隙間にバールを突っ込んでさぐると手ごたえがあるから……」少し話すと同じ歳だとわかった。
「煙草、吸うか?」
「ああ……」何の抵抗もなく、吸ってみようと思った。投げて寄こした箱の中から一本抜き取り、火をつけた。
「なんだ、そりゃ。金魚じゃねえか」煙を口に含んだだけの彼を見て、少年が笑った。
「こうやるんじゃないのか?」
「ちゃんと吸い込むんだよ」言われて不用意に吸い込んだ。途端にむせた。ふたたび、少年が笑った。苦しかったが、自分でも笑いがでた。
 翌朝、目覚めると、数人の老人が消えていた。豊田とホンダ、そして川野と数人が周囲を捜した。無駄だと思ったが……。戻ると、旅館の息子が苛立っていた。
「捜したって無駄なんだ。もし、見つかっても呆けた奴を連れて行くつもりか。ただでさえ、遅い奴がいるというのに。グズグズしている時間がないことくらいわかってるだろう」
 川野が唾を吐いた。
 豊田は表情を変えず言った。
「あんたの家族が消えても同じセリフを言えるか」
 相手は豊田をにらみつけた。その顔を見れば、言えそうだ。
「お前は俺たちから離れるな」ホンダにむかって言った。
「もし、化け物が襲ってきたら誰が俺たちを護るんだ」
 何のつもりだ。いや、何様のつもりでいる。俺を何だと思っている。くそ野郎はクソッタレなセリフしか吐かない。亮太や麻奈の方がよっぽど大人だ。辛いだろうに、我慢して歩いている。
「今後は……できるだけそうしてくれ」豊田の言葉に驚いて、憤然とした。思わず反発の眼をむけた。
「奴の言葉に従うわけじゃない。護るべきものの大多数はここにいる。子供や、女性。妊娠している女性も。襲撃を受ければ立ちむかえない」わかるだろ。目で言った。
「さあ、出発だ」全員を促した。
 川野がすれ違いざま、旅館経営者をにらみつけた。相手は、不良が、と吐き捨てた。
 その夜、一行は宇佐に到着した。山岳地帯を抜けた。これから先は街が続く。だが、真っ暗だ。月だけが煌々と夜空にあった。月面がどうなったのかは知らない。既に赤みは消え、白く淡い光。その夜、またふたりいなくなった。













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