派手に飾りつけられた皐月の門を前に、学園校舎を眺める男が一人。軽く百八十はあろうかと言う長身に、黒い髪を少し撫でつけ、その人物は小さく溜息をつく……大きな身体には似合わない小さな溜息を。
―…懐かしいな。
スッと眼を細めると、彼は懐から一枚のチケットを取り出す。チケットには“皐月学園祭”の文字が書かれ何とも賑やかしいデザインの元、隅の方に「招待券」と遠慮がちに記載せれていた。それを手に、彼は漸く皐月の門をくぐって行った―。
一方、舞台裏。
圭「あ~ちゃん、機嫌直せって」
梓「やっ!!!」
昴「梓さん、仕方無いでしょう? 今更」
かずいの口ぶりに“今更って…(汗)”と笑顔を引きつらせながら圭一はご機嫌斜めの彼女―梓―と対峙する。他の面々は少しずつではあるものの舞台準備、備品の調整を終え衣装替えの為に一度“会議室”に戻ろうとしていた。
立ち去ろうとする人並みの中で不意に足を止める人影がある―涼だ。
涼「昴、先輩も、もう行きますよ」
圭「あ~…後から行くよ」
昴「いえ、先輩には着付けをお願いしているので先に行って下さい」
圭「ったってよ~」
梓「……」
その場から一歩も動かないという意思を湛えた後姿が二人の溜息をより深いものへと変える。その様子を見かねてか小さく息をつくと苦笑い気味に彼は近づいた。
涼「あずさ」
梓「……」
涼の手がそっと彼女の肩に触れる。少し身を震わせた梓がその手にすり寄るように首を傾げれば、涼もその意図に気が付いて優しく頬を撫でた。
―先に行ってください…。
呆気に取られ立ち尽くす二人に涼は視線だけで合図を送ると、梓の隣に膝をつく。
完全に二人の世界が出来上がる前に、昴と圭一は音もなく部屋を後にしたのだった。
涼「どうして嫌なの?」
梓「……だって」
涼「ん?」
切り揃えられた明るい茶色の髪を指で弄びながら、俯いて表情の窺えない彼女に問いかける。小さく膝を抱え顔を埋める彼女の言葉を涼は辛抱強く待つ。彼の持つ優しい雰囲気が梓はとても好きだった。
梓「…お兄ちゃんがくると、色々口出すから」
涼「梓のことを心配してるんだよ」
梓「私はもう、子供じゃない」
涼「……そうだね」
こんな風に膝を抱える様はどう見ても“子供”なのだが…彼女の言葉に少しだけ笑うと、その頭を優しく撫でた。
梓「…子供扱いしてる…」
涼「違うよ。可愛いと思っただけ」
梓「っ!?」
彼からの意外な言葉に伏せていた顔を上げる。そこには涼の優しい微笑みが待っていた。思わず眼が合って視線を逸らす…。
梓「…ずるい…」
そんな表情をされては、怒るに怒れないじゃないか。
そう心の中で呟いて、熱を持ち始めた頬に手を当てる。見つめられていることが恥ずかしくて、でも彼の優しさは嬉しくて、先程まで波風を立てていた心がいつの間にか凪いでいく…そんな気持ちだった。
涼「行こう」
梓「……うん」
立ち上がりスッと手を差し出されれば、その手を拒むことなど出来る訳もなく小さく頷いてその手を取った。頭一つ分以上も背の高い彼が少し手を引いてくれる。
涼「大丈夫。梓は梓のしたいようにすればいいよ。折角なんだから楽しまなくちゃ」
梓「…」
耳打ちされた彼の言葉に驚く暇もなく「ねっ?」と微笑まれる。考えるよりも先に今度は満面の笑顔で大きく頷いていた。
う~ん。
大分間が空いてしまったのに、この文字数。
しかも秀一が出てきたのは冒頭だけ(笑)
すみません(^_^;)
バカップルがなんかいちゃついてまして…。
次回こそは真面目に書きますので><;
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