挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ハルジオン~口だけ野郎一代記~ 作者:曖昧

嘘を重ね続けた末路を知る第二部

203/204

終幕

「……さん! ……て……お兄さん!」

 朝の陽光が目蓋の裏を照らす。不愉快な声が聞こえる。
 紫苑は心底嫌々、それでも表面上はあくまで寝惚けが抜けていない風を装ってゆっくりと瞳を開く。

「起きて紫苑お兄さん! 朝よ!」

 自分の腹の上に跨っている金髪の邪悪ロリを見るだけでもう朝からテンションは急降下。
 毎朝毎朝急降下してんだろメーン? などと突っ込んではいけない――時間の無駄だから。

「……アリス、か。おはよう」
「おはよう、紫苑お兄さん。もう、今日は卒業式よ? 早めにクラスで集まるって言ったじゃない」
「あー……そう言えばそうだったか。すまんすまん」

 苦笑気味に頬を掻く紫苑を見てプクーっと愛らしく頬を膨らませるアリス。
 普段ならば寝坊の一つ二つどうでも良いのだが、今回は別だ。

「もう! 卒業の前祝にってハゲ達とお酒飲んでるからそうなったのよ? 朝帰りなんて駄目なんだから!」
「……反省してる。だからそろそろ着替えさせてくれ」
「はぁい。じゃあリビングで待ってるから」

 パタパタと走り去って行くロリを見送り、紫苑は大きく溜息を吐く。
 着替えを取る前にカレンダーを見れば今日は三月十五日――卒業式の日だ。

『大きくなったわねえ……』
「(るせえテメェはお袋か死ね殺すぞマジで)」
『何でそこまで辛辣なの!?』

 人類と幻想の最終決戦から一年半近くの時間が流れていた。
 冬の夜空にシオンを見送った一行――と言うよりもシオンはすぐに演説をする羽目になった。
 お得意の薄ら寒いほどに綺麗な言葉で未来が拓けたことへの感謝と喪った命への哀悼を捧げ人々を踊らせる。
 すぐに具体的な数字は出なかったものの、人類が被った被害は甚大だった。

 幻想回帰から幻想淘汰までの間に世界人口が半数近く割り込んでいたのだ。
 それだけでもかなり気が滅入る情報だが、煩いごとは次から次へと沸いて来る。
 破壊されたインフラ、医薬品の不足、住居の不足、足りぬことばかりでてんてこまいだ。
 とは言え、そう言うものを何とかするのはあくまで政府なので紫苑はそこまで働いていない。

 精々が足りぬものを補うために幻想淘汰から三日ほどで新生した通常ダンジョンに冒険者達を送り込んだくらいだ。
 そう、やはり通常のダンジョンは消えなかった――いや、正確には生まれ変わった。
 旧幻想の表層であった通常のダンジョンと通常のモンスターは確かに一度は消え去った。
 が、新たな幻想となった人間の表皮として以前と似たモンスター達が出現したのだ。

 ゆえに冒険者は廃業にならず――就職難が起こる心配はなかった。
 その他、英雄や上位幻想の領域については殆どが閉ざされてしまう。
 安土に開いていた孔なども完全に消え去っていた。が、幾つか残った場所はある。
 それは人間と同化していた幻想の領域とエデンだ。

 エデンについては幻想淘汰以前は主が居なかったのだが、紫苑が生命の果実を食したことで主となったらしい。
 相変わらず産廃強化魔法しか使えないわけだが、そこに更に転移が加わった。
 と言ってもエデンに飛ぶぐらいしか出来ないのでこれも産廃っちゃ産廃なのだが。
 まあ紫苑の産廃問題についてはどうでも良いのだ。復興は大変ではあったが、人々は決して塞ぎ込んでいたわけではない。

 苦しい戦いが終わって、未来には何の憂いも無い。
 後は這い上がるだけと言う状況なのだ。人々は希望を胸にあくせく働いた。
 復興に際して一番役に立ったのはアリス・ミラーだろう。
 彼女の能力を使えば入れ物自体はすぐに作れるのであっちこっちで破壊された建物を修復しまくった。

 本人としては何処の誰の建造物がぶっ壊されていようとも知ったことではないのだが好感度稼ぎのためだ。
 良い子な自分を紫苑にアピールして可愛がってもらおうと言う下心溢れる動機である。
 それに触発された金持ち姉妹はマネーパワーで復興に尽力して名を上げて更なる利益を生み出したのだがそれは余談だ。
 ある程度状況が落ち着き学校に通えるようになったのは春になり新学年になってからだ。

 一年の後半から二年生は丸々出席していなかったが勿論留年はしていない。
 世界を救った功労者が単位不足で留年なんて笑えないしやれば大バッシングだ。
 復帰して新学年を迎えると、当然のことながら紫苑達はAクラスだった。
 顔触れも一年生の時から変わらず。それなりに学生の死者も多かったがAクラスは大奮闘したらしい。

 それはハゲのおかげだったと話を聞いた紫苑は心の中で盛大な舌打ちをかましたが平常運行である。
 修羅場を潜り抜けた旧Aクラスは他の生徒らとは一線を画していた。将来は名うての冒険者になるとはモジョの言だ。
 学校生活で言えばAクラスに転校生がやって来たりもした。カニとベアトリクスである。
 前者も後者も好いた男の傍に居たいと言うイジマシイ理由だ――まあ前者はちょっと笑えない前科持ちだが。

 ちなみに正体を現した紗織もAクラスに編入された。
 黒姫百合としての公文書偽造やら何やらアレな問題もあったのだが総て裏で解決したようだ――女って怖い。
 まあ実際のところそんなことをせずとも功績からすれば問題なく入れたのだろうが。
 仮に正規の手続きで司法の裁きを受けたとしても紗織には情状酌量の余地が与えられるはずだ。

 幼少期の歪んだ環境、友との喪失、と言うかそもそも証拠自体が存在しないので無意味な仮定だ。
 そう言う点で言えばカニも同じである。こっちは紛れも無い重罪人だ。
 今だって紫苑の題目が一部の人間以外には真実として通ってはいるが、反発が無いわけではない。
 表立って反論する声は無いものの、それは単純にアンタッチャブルだから。

 エデンに赴いた者達はどう足掻いても他の人類には傷一つすらつけられない。
 止められるのは互いだけで、そして彼らにその気は無い。
 紫苑が何も言わないのだからと彼の決定を尊重している。
 そんなアンタッチャブルな存在を危惧する声も一部で上がっては居るがそれでも表面化していないのは紫苑のおかげだ。

 紫苑とシオン、二人の春風紫苑が切り拓いた今と先に繋がる未来。
 その名声は極まっている。狂信の域にまで彼らを好いている者達も決して少なくはない。
 不老不死だし、一歩間違えればその仲間達でさえ及ばない力を秘めている。
 が、それ以上にその善性を人々は疑うことは出来ない。

 紫苑もシオンも総ての人間にとっての大恩人なのだ。
 その高潔な精神性と聖者が如き献身を知るからこそ彼の管理下にある限りは大丈夫だと信じていられる。
 真実を知るカッス辺りからすれば大爆笑ものなのだが知る者は彼以外には居ないので何の問題もない。
 随分話が逸れてしまったが、そのように不可侵存在である少年少女達は楽しい学生生活を送っていた。

 まあ、今更一般的な勉強以外で学校に通う意味あるの? 状態なので殆ど遊びに行ってるようなものだが。
 紫苑もギルドの長としての職務をこなしながら学校に行きチヤホヤされる生活を楽しんでいた。
 周りに鬱陶しい奴ら、主にメンヘラーズが居るものの紫苑にとっては一番楽しい学生生活だった。
 が、楽しい時間と言うのは早く終わってしまうもの。今日、彼らは学校を卒業する。

「(そういやさぁ……)」
『あん?』
「(他所からさぁ、各国の支部長やら政治家の祝辞が送られて来たらしいんよ)」
『ほうほう』
「(そんな小物共より俺じゃね? 俺が一筆書くべきじゃね?)」

 お前当事者だろ。

『いやぁ……紫苑さん今日卒業する側じゃないっすか。つーか、卒業生代表で一席ぶつんだろ?』

 それで良いじゃんとカッスが宥めるものの、

「(馬鹿! 俺は目立ちたいんだよ!)」

 万年欠乏症の紫苑には通じない。

『えー……』

 紫苑とシオンのダブルオ●ニーで盛大にぶっぱなしたのだからもう良いだろう。
 これ以上人様をクッソくだらない自慰行為に付き合わせないで頂きたい。

「(送辞も答辞も全部やりたい)」
『無茶言うなよ……』

 中身の無い会話をしながら着替えを終えた紫苑は洗面所に行き顔を洗い歯を磨く。
 懐かしきこじんまりとしたアパート。拠点に比べれば正直、グレードは段違いに下だ。
 それでもここに居る限りはアリス以外と絡む必要が無いので紫苑的には悪くはないと思っている。
 庶民派アピールは出来るしメンヘラーズとも最低限しか絡まなくて済む、ある意味でエデンとも言えよう。

「あ、紫苑お兄さん。朝ご飯はもう出来てるわ」

 拠点に移る前はルークが食事を作っていたのだが今はアリスが作っている。
 ルークとしては家事が出来ないので少々寂しいが面倒臭い主と絡まなくてホッとしてたりするが知っているのは紫苑だけだ。

「すまない」
「いえいえ、飲み物はどうする? コーヒー? 牛乳? ココア?」
「まだちょっと眠いからコーヒーで頼む」
「はーい!」

 今日も今日とて元気なロリを見ているだけで紫苑は悲しくて悲しくてしょうがない。

「(しかし、寝る必要が無いとは言え寝て起きれば眠気は消えないんだな……)」

 モシャモシャとトーストを齧りながら少々の不便さに辟易する。
 やろうと思えば寝ずに食べずにそのまま何の不調もきたさずに活動は出来るのだ。
 それでも習慣化した食事や睡眠と言うものは中々抜けてくれない。

『ピストルか何かで頭ぶち抜けば即座に完全覚醒すると思うぞ』
「(いや死ぬだろ俺、いや死なないけど俺)」

 ピストルの弾丸が脳内に残留しても自分の手で物理的に摘出出来てしまう。
 改めて便利な身体になったと、何万回目かの優越を味わう。
 決戦が終わってから紫苑は幾度も幾度も飽きも懲りもせずに不老不死である己を誇って来た。
 新しい玩具を手に入れた子供でもまだ落ち着いてるだろう。

『差し迫った状態なら身体も即時に万全に戻るんだが、平時だからな。ゆったりでもしゃーない』
「(ふぅん……しかしベーコンやらソーセージやら朝から脂っこいものを……)」

 トースト三枚、コーンスープ、目玉焼きが二つにソーセージとベーコーンが幾らかにサラダ。
 それが本日の朝食のメニューで以前までの紫苑なら割りと忌避していたラインナップだ。

「(ま! 今の俺はどれだけ喰ってもスタイル崩れねえし珠のお肌だから良いんだがな!
ヒョー! 俺の美しさで今日も飯が美味い! これでクソガキが居なければ完璧だったんだが……)」
「お待たせ紫苑お兄さん」
「ん、ありがとう」

 アリスから手渡された熱いブラックコーヒーを少しだけ口に含む。
 拡がる苦味が眠気を駆逐していき、半開きだった瞳が完全に開かれた。

「ふぅ……スッキリした。アリスはもう御飯食べたのか?」
「ええ。紫苑お兄さんが起きる前に済ませておいたわ」

 テーブルに肘を着き、手に顎を乗せてニコニコと微笑むアリス。
 紫苑が自分の、自分だけで作った朝食を食べているのが嬉しいのだ。
 拠点に居た時は女性陣が複数で作っていたのだが今は違う。
 自分が作った食事だけを食べてくれている――アリスは毎朝毎朝楽しくてしょうがなかった。

「(っぜえ……)そうか。時間、まだ大丈夫だよな?」
「うん。朝ご飯を食べてからでも十分間に合うわ」
「それは良かった」

 作り笑顔でアリスに対応しつつテレビの電源を入れるとギルド本部が映り込んだ。
 リポーターはガッツリ着込んでいるがそれでも寒そうで、紫苑の機嫌が若干上向きになる。
 他人が辛そうにしているのを見るのが面白くてしょうがないのだ。

「え、ギルド本部が一般公開されるの?」

 同じくテレビを見ていたアリスがキョトンとする。
 テロップには近日から南極にあるギルド本部――の一画が一般公開されるらしい。

「ああ。そう言う声が大きくてな、機密に触れるような場所以外はってことで許可した。
(あっこの職員が南極でクソ寒い思いをしている頃、俺は日本でぬくぬくと朝食を摂る。
俺はこう言う何でもないことに幸せを感じるんだな! あーあ、本部の暖房壊れねえかな?)」
「それって……」

 公開を望む声が大きかった、アリスには思い当たる節があった。
 あの日、魂の淡雪が降る屋上に残されたシオンの聖槍ロンギヌス。
 当初は紫苑が保管していたのだが彼自身も聖槍を所持している。
 バチカン辺りに寄贈するかと言う話も出たのだが、とうのバチカン側が流石に畏れ多くてと辞退した。

 じゃあうちに! と春風紫苑の名に集る国は他にも多かったがそう言う利用のされ方は良くない。
 と言うか気に入らないと判断した紫苑の手により南極のギルド本部に飾られることとなった。
 ありとあらゆる枠を超えて人類のために尽くした男。
 ならば何処の国家にも属さない土地に眠らせた方が良いと判断したのだ。

 勿論、それだけでは自己を顕示出来ないので後々レンタルと言う形で各国を回らせるつもりだった。
 が、それよりも先にシオンが使った聖槍ロンギヌスを見たいと言う声が大きかったのだ。
 まだ何処から貸し出すかも決まっていない状態だったのだが、紫苑の鶴の一声で南極で公開と相成った。
 俺様の威光を拝みたいなら南極まで来いや――つまりはそう言うことである。

「そう言うことだ。ロンギヌス以外には何も展示してないんだが……」

 それでも予約殺到だと言うのだから大爆笑だ。テレビでもそこらについて触れられている。

「成るほどねー……まあ、その気持ちは分からないでもないわ」

 気の遠くなる時間をシオンと共に過ごした聖槍ロンギヌスは罪と愛の象徴だ。
 人類の未来を閉ざさせないために犯した消えない罪。それを背負い人と人の未来を信じ続けた揺るがぬ愛。
 それを近くで一目見たいと言うのもしょうがない。

「でも防犯とか大丈夫なの?」
「ああ。あれは俺か、あの男にしか使えんから問題は無い」

 南極に安置されている聖槍は未だ――否、永劫シオンを主と定めている。
 唯一の例外は同一存在であり、自身の主を持ち上げることで自分も連鎖的に持ち上げるであろう紫苑だけだ。
 彼ならば自身を上手に利用してくれると分かっているからセカンドマスターとして認識している。
 担い手の性格をこれでもかと言うほどに分かっていると言わざるを得ない。

『主以外が聖槍に邪心を以って触れようとすれば……まあ、大そう不幸な目に遭うだろうな。
もう一人のシオンの死後も黄金は消えず、未だにその力を秘めたまま眠っている』

 盗難でもすればどうなるか、下手人の死だけで済めば良い方だろう。
 展示室にもその注意書きはしっかりと記されている。

『下手に盗みでもしたら、持ち込んだ国で大災害とか起きたりしてな』
「それ、笑えないわ」

 アリスの顔は苦い。真実を知りシオンへの敵意は消えたし、愛を貫いたその姿勢は尊敬している。
 とは言え月を落とされたりイカレタブラックホールに叩き込まれたトラウマは消えていない。
 それほどとは言わずとも彼が使っていた聖槍ならば大地震ぐらいは起こしても不思議ではない。

「はは……ご馳走様。それじゃあ、行くかアリス」
「うん!」

 二人は揃って家を出て、クラスメイト達が集まっている墓所を目指す。
 Aクラスは一年前の戦いで大奮闘したとは言え死者が完全に居なかったわけではない。
 卒業式を迎える前に逝ってしまった仲間達に報告をしようと言うことになったのだ。
 普通ならば墓地はバラバラなのだろうが、彼らの遺族が最後まで死力を尽くして戦った仲間達と共にと言うことで同じ墓地に葬られている。
 そのおかげであちこち回らずに済むのでラッキー! などと紫苑は考えているが不謹慎極まりない。

「そう言えばルークはどうしたんだ?」

 早い時間だが人が居ないわけではない。
 紫苑は道々で声をかけられたり握手を求められたりするが、友人の墓参りなのでと丁重に断りを入れつつ優越感に浸っていた。

「先に行ったわ。クラスの女子と一緒にお供えもの作るんだって」
「作るのか!?」
「うん、何かお饅頭とか作るみたい」
「……そ、そうか」

 ルークは最終決戦でハブられてしまったわけだが、それでも現世での奮闘は目覚しかった。
 そのおかげで女生徒らかも人気が出ているとかいないとか。

「あら、ねえあれハゲじゃない?」

 墓所近くまで来たところで見知った顔を見つける。よたよたと力ない足取りで歩いているハゲだ。

「花形、大丈夫か?」

 紫苑が駆け寄るとハゲは幽鬼のようにのっそりと振り返った。

「おー……紫苑か、おはよう」
「おはよう。何かすんごい顔してるが大丈夫か?」
「酒がまだ抜けてなくてさぁ……何かもうすんげえダルイの……」
「(それで頭の輝きが曇ってたのか)そうか。でも、皆の前ではしゃんとしろよ」
「……おう、そだな。んじゃ一緒に行こ――――悪い、ちょっと先に行ってるわ!」

 一緒に行こうと誘おうとしたがアリスにガンを飛ばされて顔面蒼白なったハゲはそのまま走り去って行った。
 もうちょっとで着くんだし別に良いじゃないかと思わなくもないがロリ判定ではアウトだったらしい。

「うふふ、ハゲってば少しは空気を読めるようになって何よりだわ」
「(お前も空気を読め、つうか俺以外全員空気読めてねえよ)」

 げんなりしながら長い長い石段を上がって寺社の中へ。
 住職には前日のうちに話を通しているので早朝からの訪問も何ら問題はない。

「あ、おはよう春風くん!」

 紫苑とアリスが顔を出すと口々に挨拶が飛んで来る。
 墓前には既に紫苑とアリス以外の全員が集まっていた。

「俺達が最後か……すまない、待たせたな」
「朝から元気ね皆」

 この場に居る少年少女達は皆、明るい顔をしている。
 墓前でするには似合わぬかもしれないが、彼らは知っているのだ。
 ここに眠る友が望むんでいるのは決して嘆き唄ではないと。
 未来のために戦って、彼らは散って逝った。彼らが生きられなかった今日を生きているのだ。
 笑顔で居なくちゃ報われないと知っているから誰一人として悲しい顔はしない。

「紫苑さん、花形さん」
「ああ」
「おう」

 栞が用意していた花を受け取る紫苑とハゲ。
 この場における代表はこの二人なのだ。紫苑は言わずもがな、ハゲはあの決戦でAクラスを率いていたから。
 二人はそれぞれの墓前に花を供えてから一歩下がり、皆と共に手を合わせる。

「よう、クリスマスの一年忌以来だな」

 人懐こい笑みを浮かべてハゲが語り掛ける。

「俺らも今日で卒業よ。波乱に満ち過ぎだった学生生活も今日で終わりってわけ。
普通のガッコーなら進路も色々あるんだろうが、俺らは言わずもがな冒険者になる。
Aクラスで今組んでいるパーティのまま外に飛び出して行くのが殆どよ」

 良くも悪くも、一年前の決戦で絆は極まったと言っても良い。
 背中を預けて戦える相手はクラスメイト以外に見つけられないと思ってしまうのもしょうがないだろう。
 ハゲ自身も一年の時から結成しているパーティのままギルドに登録して冒険者稼業を始めるつもりだ。

「花形達はそうだが。俺は進学するよ、大学で考古学を専攻するつもりだ」

 表向きの理由としては消え去った幻想達の足跡を知るため、だ。
 人の歴史に埋もれて形の変わったそれを紐解き元の形に戻して記録する。
 幻想は確かに敵だったが、それでも――と言う御綺麗な建前の下、既に推薦も貰っていたりする。

「コイツの御仲間もな。ま、紫苑らが冒険者として参入して来られたら商売上がったりだからありがたいがね」
「(嫌なこと思い出させるなよ……)はは、なら負けないように頑張れよ。男なんだろ?」

 学科は違えども雲母を除くメンヘラーズやルーク、ルドルフ、ベアトリクスも同じ大学に通うことになっている。
 これは一緒に居たいと言う想いがあるから――だけではない。
 単純に紫苑の管理下に離れることで世間に要らぬ波紋を立てまいと言う配慮も入っている。

「(早く寿命来ないかなこいつら……何処まで続くんだこの腐れ縁)」

 永遠にじゃないでしょうか?

「いやぁ、もう何かアイツら性別とか超越してるだろ」
「……おい花形、後ろ後ろ」

 絶対零度の視線が眩い後頭部に突き刺さり、早朝の墓地に笑い声が響き渡る。
 その後も各々、今は亡き戦友に向けて話したいこと話していたら結構ギリギリな時間になっていた。
 急いで学校に向かうと教室には既にヤクザが苦笑を浮かべて待っていた。
 彼は生徒達が何処へ行っていたかを知っているので咎めるつもりはないらしい。

 生徒達は軽く恩師に謝罪をして、体育館へと向かう。
 在校生や父兄、来賓は既に体育館の中に居て、後は主役を待つばかりとなっている。
 入場はAクラスからで、体育館からの呼びかけと同時に足を踏み入れれば大きな拍手が鳴り響き始めた。
 一人、二人と体育館の中に踏み込んで行き奴の番が来ると、

「春風せんぱぁあああああああああああああい! 好きでーす!!」
「先輩の第二ボタン俺にくれぇええええええええええええええ!!」

 万雷の拍手と声援が叩き付けられた。
 在校生のみならず父兄や来賓の者達まで口々に紫苑の名を呼ぶ。
 全員が主役の卒業式なのにこれでは紫苑が主役のようだ。まあそれでも同級生達に異論は無い。

『今の気分は?』
「(平伏せ下民! 我を崇めよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!)」

 困ったような顔をしながらも中身は今日も変わらず紫苑だった。
 不老不死を得たことでますます増長したこの男を挫く絶望はもうすぐそこだ。

『今日も変わらず紫苑で何よりだわ』

 何でもないカッスの一言、それでも何時もとは何処か違う寂しげな響きがそこにはあった。
 まあ当然の如く紫苑はそんなものガンスルーしたわけだが。

「栞、好きとか言ってた後輩の顔は覚えた?」
「ええ、バッチリですよ姉様」

 席に着いたところで姉妹の不穏なやり取りが聞こえて来たがやっぱりこれもガンスルー。
 不老不死になったとは言えわざわざ藪を突付いて蛇を出す気はないのだ。

『こ、こええなぁ……』
「(校歌斉唱とか、かったりいなぁ……)」

 冒険者学校の卒業式とは言えやることは普通の学校と変わりはしない。
 クソなげえ校長の挨拶、クソかったるい校歌斉唱、クソつまらん祝辞、クソみたいな送辞。
 聳え立つクソのような様式美だけは決して変わることはない。
 そうしてクソみたいな儀礼を通過し、遂に最後のクソがやって来る。

「卒業生代表、春風紫苑!」

 モジョの呼び掛けに凛とした返事を返して紫苑は壇上に上がり、マイクの前に立つ。
 尚、原稿の類は一切持っていない。そんなものを用意せずともその場でテキトーにペラを回せるからだ。

「まず、今日この日に辿り着けたことに感謝を。
先生方、父兄の皆さん、卒業して行った先輩方可愛い後輩達、同輩……。
そして――――先に逝ってしまった皆にありがとうを言わせてください」

 静まり返った体育館の中に耳に心地の良い声が響き渡る。
 何時も通りどの口でほざいてんだと言う内容に最早安心感すら覚えてしまう。

「皆が居たからこそ、俺達は今日、この学び舎を巣立つことが出来ます。
まあ、俺自身は半分以上学校に行っていなかったので卒業して良いのか疑問ではありますが」

 冗談めかした物言いにクスクスと笑い声やだったら私達ともう一年! などと言う声が上がる。

「放たれた飛矢の如くに過ぎ去る青春の一部を俺達は戦いの中で過ごしました。
喪ったものが多過ぎて言葉にするのも辛いくらい、だけど少なくとも俺は後悔していません。
俺達の青春は喪うばかりじゃなかった、得られたものだって確かにあったのだから。
俺達が得たものの一つが、今日と言う日だ。ここから健やかに旅立てることはとても素晴らしいことだと思う」

 お得意の敬語崩しである。感情の波を表現するには一番手っ取り早い。

「何を得たのか、それは人それぞれかもしれないけど何一つ手にすることは出来なかったなんて俺は思いたくない。
在校生の皆、俺達は一足早くに次のステージへ向かう。そこは今までよりも自分に責任が求められるだろう。
卒業生の中にもいずれ旅立つ在校生の中にも、不安に思う者が居るかもしれない。
だけど、大丈夫。世の中そう捨てたもんじゃない。転んでしまった時に手を差し伸べてくれる誰かは確かに居るんだ」

 尚、紫苑は今まで自分ひとりの力で生きて来たと確信している模様。
 数多の助力はあくまで使ってやったと言う認識なのだ――最低だなコイツ。

「俺も、皆も、そんな手に助けられながら生きて来たんだ。不安はあれども、絶望する必要は無い。
転んでしまってもまた立ち上がって、靴紐が解けてしまったのならまた結び直して歩き出せば良い。
道は何時だって俺達の前に開かれている。一歩踏み出す勇気さえあれば俺達は何処へだって行ける。
ほら、そう思うと胸が弾まないか? 俺は今、ドキドキしてるよ。我慢出来ないくらいに」

 そのまま地獄へ向けて一直線に歩いていることをこの男は気付いていない。

「俺達卒業生は笑って旅立つ、だから皆も笑って送ってくれ――以上で答辞は終わりだ」

 御静聴ありがとうございます、そう締め括り壇上を降りる紫苑を体育館が割れんばかりの拍手が包み込む。

「以上を持ちまして本年度の卒業式を終わります。卒業生退場!」

 鳴り止まぬ拍手に見送られながら卒業生は体育館を後にする。
 これでもう解散。後は御自由にと言うことで在校生、卒業生問わず紫苑に殺到するのだが、

「う、うぅ……」

 近寄って来た者達はあるラインを超えて踏み込めず呻き声を上げる――メンヘラーズの殺気バリアーである。

「(邪魔をするなぁああああああああああああああああああああああああ!!!!)」

 紫苑、大激怒。卒業式後のあれやれこを楽しみにしていただけにその怒りは深い。
 が、それを表に出すことは出来ないのであくまで困り顔のままだ。

「紫苑さん、皆で伝えたいことがあるのですが……その、屋上で待っていてくれませんか?」

 栞や他の皆の表情は固く、緊張しているようだ。どうやら色っぽい話ではなさそうだと安心する紫苑。

「? あ、ああ……構わないが」
「じゃあ先に行って待って居てください」

 紫苑の血を摂取した者は彼と繋がりを得て眷属のような形となった。
 そのせいで彼が人を新たなステージへ導く強化魔法を使用した際に、常人のそれとは違う効果を齎すことになる。
 そう、主に引っ張られるように眷属達も不老不死を得てしまったのだ。
 血を飲んだ者達は自分の判断を後悔していないし、不老不死を背負う覚悟も出来ている。

 が、それを紫苑にカミングアウトすることが出来ずに今日まで来てしまった。
 そしてこのままでは駄目だと話し合った結果、今日、総てを打ち明けることにしたのだ。
 とは言えまだまだ緊張しているし、まずは皆で最後の話し合いをするつもりで居る。
 なので紫苑を先に屋上へと行かせたのだ――奴の絶望はもうすぐそこだ。

「(俺の貴重な時間を浪費させるとかアイツらマジ万死だわ)」

 強力な人払いの結界が施された屋上の柵に背を預け溜息を一つ。
 このまま放って置けば愚痴のフルコースが始まるのは目に見えている。
 もう自分には時間が無い、カス蛇は紫苑の思考を遮るべく口を開く。

『なあ紫苑、俺様からも話があるんだわ』
「(あぁん?)」
『そんなヤンキーみたいな……』
「(で、何だよ?)」
『――――お前を殺す方法についてな』

 その瞬間、紫苑の心臓はキッカリ一分は止まった。
 まあ、一分だろうが一時間だろうが心臓が動かなくても平気なのだが。

「(き、ききききき貴様ぁああああああああああああああ! 俺を騙したな!? お前こそ吐き気を催す屑だ!!)」

 鏡を見てみろ、そこに吐き気を催す屑が映っているから。

『落ち着けって、お前を殺せるのはお前以外にゃ居ないよ。他の誰にもお前を殺すことは出来ない』

 この悪態すらも、何時も以上に愛おしい。カス蛇の声は何処までも穏やかだった。

「(な、何だ……お、驚かせやがって……一応聞いておくがその方法は?)」

 大丈夫だと言われても一応聞いておかねば安心出来ないのが小物クオリティーである。

『お前が嘘を吐くことを止める、それがお前がお前を殺す唯一の方法だ』
「(……はぁ?)」
『見栄と保身、幻想と人間、完全に白と黒で分けられたままお前の魂は固定されてしまった』

 不死身であるがゆえに見栄のために身体を張ったところで割り合いが変わることはない。
 もしも変わるとすれば嘘を吐くことを止めて均衡を崩すぐらいしか方法は無い。

『ロジックエラーと言うか矛盾崩壊と言うか……。
まあ、上手い表現は見つからんが魂の均衡が崩れる時がお前の死だ。
そしてお前の嘘は誰にも見破れない。完璧な嘘を吐いてしまえるのがお前で例外は俺様と既に死んじまったシオンぐらいだろう。
嘘ってのは大概何処かでバレるもんだが、お前の場合はそれが無い。今もこれから先も誰一人としてお前の真実には触れられない』

 ある意味でそれは寂しいことなのだろうとカッスは思う。

『そして、お前は我が身が可愛くて可愛くてしょうがないから嘘を吐くことも止めんだろう』

 死ぬと知らなかったとしても紫苑が嘘を吐くことを止めはしないだろう。
 それが出来るぐらいならばとっくに幸せになれているし、世界だって救えやしなかった。

「(フッ! 不老不死は依然変わらずこの紫苑様ってわけだな!
しかし、お前の言い方かなり気に喰わんな。俺がまるでとんでもない嘘吐きみたいじゃないか!)」

 今更何を言っているんだお前は。

『いや、まるでも何も……ああはい、何でもないっす』
「(ふぅ……まったくハラハラさせやがって。っかし暑いなぁオイ)」

 まだ三月だが、今日は特別温かで、学生服を着ているのも億劫だった。
 紫苑は学生服の上を脱ぎ柵に引っ掛け腕まくりをするのだが……。

「(あれ?)」

 右腕の手の甲から肘にまで螺旋を描き絡み付いている蛇のタトゥー。
 それが肘の側から徐々に薄れ出しているではないか。

「(カッス、お前……)」
『まあ、そう言うこった。俺様だけじゃなく他の連中に憑いてる奴もそうだろうぜ』

 気を抜けば涙を流してしまいそうだった。
 それでもカッスは何時もと変わらぬ気楽な口調で自身の終わりを告げる。

『人間の魂に同化していたから遅れただけで、俺様達も旧い幻想だからなぁ……淘汰されるだろ、そりゃ。
それでもアイツらはその力を譲渡して逝くだろうから安心しろ。
万が一敵みたいなんが現れてもお前を護る守護者達はこれまでと変わらず強いままだ』
「(それはそれで気に喰わないんだが……だってお前、何も無いよね? 俺に何か無いの?)」
『愛?』
「(死ね)」
『はは、その悪態も今日が最後だな。何せ俺様死ぬんだし』
「(……)」
『寂しいか?』

 そう問い掛けながらも答えは分かっていた。

「(いや別に?)」
『クカカ、だろうな』

 寂しいと思う、素直にそう思うがそれこそが紫苑だとも思える。
 カス蛇ほど春風紫苑と言う男を真正面から肯定している存在は居ないだろう。

「(が、これから先……愚痴言える相手が居なくなるのはまあ、不便、かな?)」
『――――』

 思わず言葉を失ってしまう。僅か、ほんの僅かかもしれない。
 が、それでも特別だと思ってくれていたのか――最後の最後に嬉しいことを言ってくれる。
 勿論紫苑本人に自覚は無いのだろう。
 だとしても、少なくともカス蛇は自分が特別であると言ってくれたのだと解釈した。

「(つっても? ウザってえ奴らも万年ぐらい経てば流石に死ぬだろうし?
並行世界の俺は億年頑張ったんだから余裕余裕。
腐れ縁でストレスは溜まりまくるだろうが終わりが見えてるなら楽勝だぜ)」

 もうタトゥーが残っているのは手の甲までだった。
 そして、その手の甲に刻まれた蛇の頭もドンドン薄れてゆく。

『ハハハ……あ、言い忘れてたけどさ』
「(あん?)」
『そのウゼエ奴らも不老不死になってるから』
「(へえ――――ん?)」

 最後の最後でドデカイ爆弾を投下し、

『じゃあな紫苑、愛してるぜ――――アダムとイブよりも』

 カス蛇は完全に消滅した。

「(え)」

 いやいや、ちょっと待て。ちょっと待ってくれ。
 頭が理解するのを拒む。いや、カス蛇が死んだことではない。カス蛇が最後に言い残したことだ。

「(ま、ま、待てやぁああああああああああああああああああああああああああああ!!
いやいや、どう言うこと!? 何で!? 何でアイツら不老ふ……わああああああああああ!!
いやいやいやいやいや! 嘘だろ? 嘘だよね? 嘘に決まってるわ悪趣味極まりねえ!!)」

 自分を叱咤するように否定を重ねる紫苑。
 愚痴れる相手も居ないまま、永劫を奴らと共に過ごす?
 離れるためには嘘を吐くことを止めねばならず、それは自身の死を意味するので絶対に無理。
 そんなお先真っ暗な未来があってたまるか、俺は不老不死なんだぞ! 紫苑は只管に自身を奮い立たせる。
 大丈夫、希望はある。どうせ嘘に決まってる。何度も何度も自分に言い聞かせていると屋上の扉が開かれた。
 入って来たのは何時もの面子で、

「み、皆……い、今……アイツが、カス蛇が……」

 本来なら今直ぐにでも問い質したかった。それでも真実を知ることが恐ろしい。
 聞いてしまえばもうそこで総てが終わってしまう――現実逃避の始まりである。

「……私達もだよ。卿と同じく、消えてしまった」
「それでも皆、満足そうでしたよ」
「僕らに力まで残してってくれてさ。短い間だったけど、良い奴らだった」

 神魔と同化していた者達はほんの少し寂しそうだが、それでも相棒が満足して逝ったことを知っているので穏やかな顔をしている。

「……そうか。アイツも、満足そうだったが皆もそうか(はぁ……はぁ……お、落ち着け……落ち着け俺……)」

 内心の動揺は過去最高だが、表には微塵も出ていない。
 この辺りが完璧な嘘吐きと言われる所以で、自身を不幸にしてしまう業だ。
 ある意味では原罪なんてものよりも、よっぽど罪深い。

「あのね、紫苑ちゃん……私達、実はずっと黙ってたことがあるの」

 気まずそうな、それでも言わねばならぬ――紫苑以外の面子は皆、そんな顔をしている。

「(おい)」
「その、実はうちらな?」
「(やめろ)」
「その、さぁ……えーっと……決戦が終わった後にね?」
「春風さんの血を飲んだ影響ゆえとのことらしいんですが……」
「最後に発動したあの強化魔法の影響で――――」
「(やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!)」

 全員が口を揃えて、トドメを放つ。

「不老不死になった」

 これからも春風紫苑は嘘を重ねていくだろう、永劫の時間を嘘と共に過ごすのだ。
 三千大千世界一の道化が魅せた甘い幻想は決っして砕けることはない。
 永遠に誰もが酔っ払ったまま――ある意味で、第三の原罪とも言えるかもしれない。
 未来永劫、紫苑の真実に触れられる者が現れることはないし彼が自分を晒すこともあり得ない、これは確定事項だ。

 どれだけ忌むべき相手が常に傍らに居ようとも嘘を止めることは出来ない。
 それが出来ないからこそ彼は世界を救えて、人類を幸福に出来たのだから。
 紫苑に不幸な部分があるとすれば疵一つ無い完璧な嘘を吐けてしまうことだろう。
 嘘を隠すために次の嘘を吐いても普通ならばバレてしまい、そこで嘘は終わってしまうが彼に終わりは無い。

 嘘を覆い隠す嘘すらも完璧に取り繕えてしまう。それは自身の意思ですら止めることは出来ない。
 重ねて言おう、彼はこれからも嘘を吐き続けるだろう。そうして彼が嘘を吐く限り彼以外は幸せになれる。
 これはいわば嘘の無間地獄だ。だがしかし、結局はそれも仕方のないこと。
 最初に嘘を吐いたのは紫苑で、嘘を吐き続けることを選んだがゆえにここに至ったことも彼の自業自得なのだから。

 これから先は語る必要も無い、既に答えは出たのだから。
 永遠に嘘を吐き続ける、それ以上でも以下でも無い。
 これは自業自得の物語である――――そこには一切同情すべき点は無い。
 無限に膨れ続ける虚像、無限に加速するメンヘラ。さあ、道化芝居に幕を引こう!

「(嫌ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!)」

 道化芝居『ハルジオン~口だけ野郎一代記~』――――之にて終幕。
これで終わり……と言いたいのですが、もう一話だけあります。
タイトルは『IFエンド、或いはトゥルーエンド』
題名通りに、どちらがこの物語の終わりに相応しいかは皆さんにお任せします。
一応時系列的には後の話になるのでどちらがオチでも問題はありません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ