近藤さん。
土方さん。
私は一番隊組長らしく死ねるでしょうか?
私はそれが心配で仕方ないんです。
「総司、体調はどうだ?」
最近、頻繁に近藤さんが来る。近藤さんは優しいから、私を不安にさせまいとお見舞いに来てくれるんだろう。でも、私には死の宣告にしか思えない。
ごめんなさい、近藤さん。
「今日はな、美味い茶菓子を見付けたから、お前に持って来たんだ」
近藤さんが風呂敷に包まれた小さな箱を取り出した。白い生地の上の、紅い模様が可愛らしい。
いつもはただ憎らしいだけなのに。
近藤さんは新撰組の話をよくしてくれる。永倉さんと左之助さんがどうした、だとか。尊皇攘夷の動きだとか。やっぱり良く分からないけれど。近藤さんは私がいつ帰って来ても、元通り馴染めるようによく話してくれる。
あぁ、早く皆の元へ戻りたい。
近藤さんが帰った後、時々あの人は顔を出す。冷たい振りをして、本当は温かい土方さん。
「ほら、綺麗だろ?」
土方さんが私に渡したのは一枚の紅葉。土方さんは見た目では分からないけど、風流人で。この人なりの優しさが詰まっているんだなぁ。
いつもみたいに意地悪のままがいいのに。
「一番隊の奴らが弛んでやがる」
土方さんは私の所へ愚痴を言いに来る。主に私が関係している愚痴。私は笑うしかできないけど、それでいいだろうか?
ごめんなさい、土方さん。
土方さんが帰ると、私は独りだと改めて思い知る。
あの煩い道場に帰りたい。
菊一文字を思うままに操りたい。
皆と笑っていたい。
願うことは簡単なのに、
叶えることはとても難しい。
ねぇ、私は
一番隊組長として、立派に
死ねますか?
近藤さんや土方さんに先立たれるのは嫌だ、とあんなに思っていたのに。
私が先に逝くのも嫌だなんて。
私はなんて我儘なんだろう。
声を上げて泣けたらいいのに。
そうしたら、もっと楽になるかもしれない。
でも、
私にはそんな勇気はないんです。
近藤さん。
土方さん。
だってそれは、己の死を自覚してるって、ことでしょう?
私はまだ死ねない。
まだ死にたくない。
散々人を斬って来た沖田総司が、いい笑い者だ。
醜くても、それでも生きたい。
私の死に場所は此処じゃない。
私の死に場所は
戦場だから。
私の死に場所は
近藤さんや土方さんの隣だから。
こんなに強く願っているのに、
叶わないなんて。
やっぱり今までの行いが悪かったのかな、と
己を嘲笑う。
近藤さん。
土方さん。
私を一番隊組長として、死なせて下さい。
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