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第2話「放課後の図書室で(1)」
終礼が終わると、教室内は解放されたようにざわめき始めた。
せっせと教科書を鞄につめていると、恵理が話しかけてくる。

「今日みんなで例の駅前のカフェに行かないかって話なんだけど、葵衣は行ける?」
「ごめん……今日から図書委員で放課後残らなきゃいけなくて。だから三人で行ってきて?すごく残念だけど………」

前からみんなの中で話題だったカフェ。
雑誌でもとりあげられた店らしく、恵理の話を聞いてからちょっぴり気になっていたりした。
申し訳ない気持ちで謝ると、恵理は少し残念そうに笑った。

「そう……じゃあまた今度の機会に一緒に行こうね。まぁ、今回は由里香が葵衣に早坂君の事を教えるって張り切ってたし……来なくて逆に正解かも」

うっ…ホント行かなくて正解かも。
由里香に一度捕まったら永遠にそこから抜け出せない気が………

由里香が「早坂君」のことを熱弁する姿を思い浮かべて、私は思わず苦笑してしまった。
きっと放っておいたら、由里香は何の苦もなく軽く3時間は喋り続けているのではないだろうか。

「それに本の虫である葵衣にとって図書委員ほど絶好な機会はないものね」

どこか面白そうな表情を浮かべながら、恵理がくすくすと笑った。

ええっ!?ほ、本の虫……?
確かに本を読むのは好きだけど、虫って響きは…なんだかちょっと………

私ががっくりとうなだれていると、恵理は可笑しそうに肩を震わせながら、

「うそよ嘘。ちょっとした冗談なんだからそんなに真に受けないで。ホントに葵衣ってからかうと面白いわよね〜」

と私の肩をぽんと軽く叩いて「じゃ、また明日ね。図書委員がんばって」と言い教室のドアへと向かっていった。

からかわれたのか……

ショックなようなホッとしたような、そんな曖昧な気分で引きつった笑顔を浮かべながら彼女を見送った。


*** *** ***


私の学校の校舎はA棟とB棟に分かれている。
A棟には主に各学年の教室や教員室があり、B棟にはその他の教室つまり選択教室や資料室、図書室が配置している。
A棟とB棟は結構距離が離れているため、私は早足で図書室へと向かわなければならなかった。

あと3分しかない……
このままじゃ先生との約束の時間に遅れてちゃう…!

約束というのは……妊娠して産休に入っている史書のひとの代わりに図書室の管理を任されている美智子先生との約束のこと。
今日の朝偶然廊下ですれ違った時に、美智子先生に放課後に会議があるから早めに図書室に来て欲しいと言われたばかりだった。
大好きな図書室の委員をやれるということで喜びに舞い上がっていた私は「任せてください」なんて大口まで叩いちゃったし……
なのに遅刻してしまうなんてありえない話なわけで…

慌てて図書室に駆け込むと、案の定というべきなのか、美智子先生が笑顔で出迎えてくれた。
背後で揺らめいている凄まじく黒い影に、ひっと悲鳴が喉まで出かかりそうになる。

ひょえ、こっ、こわい……!!
せ、先生、いつもの美しい顔が台無しですよ……?

まさかそんな事を面と向かって言えるわけもない私は、へらっと笑ってごまかしてみるが敢えなく失敗した。

「しらさきあおいさぁ〜ん?私今日は4時から職員会議があるって言わなかったかしらぁ?早く来てほしいって今朝お願いしたわよね?」

は、はい……
確かにしっかり聞きました……

「今、何時だか知ってるかしらねぇ??」

4時5分です。ハイ……
先生、その仮面のようにはりついた笑顔が怖いです……

「てなわけで、罰として貸し出しの記録をまとめておいてね〜〜」

そう美智子先生は言い残すと、仕事を代わりにやってもらえるなんてラッキーと言わんばかりに、嬉しそうにスキップで駆けていった。
その素晴らしく浮かれている後ろ姿を見て、小さくため息をつく。

はぁ…、自業自得……だよね。

結局約束の時間に間に合わなかったのだから、罰を受けても当然のことなのだ。
なのに罰といっても貸し出しのまとめの記録ぐらいで済んだから、まだ良かったのだろう。

カウンターの席につくと、私は貸し出しの記録のノートを探し始めた。







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