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第19話「映研歓迎会(4)」
その後活動の細かな内容や合宿について10分ちょっとで板倉先輩が話終えると、今まで大人しくその隣に座っていた伊淵先輩がいきなり話を切り出した。

「じゃあ、説明も大体は終わったみてぇだし、ちょっと早いけどさっそく歓迎会をはじめよーぜ!!」

待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて勢いよく立ち上がる伊淵先輩を見て、誰もがぽかんと見つめた。
つかの間、部室内に「は?」という空気が流れる。

香帆先輩が思わず額に手を当ててため息を付いた。

「珍しく大人しくしてるからてっきり反省してるのかと思えば…あんたの脳にははじめっからそれしかなかったわけ?」
「悪ぃか?いいだろ、大人しくしてたんだからよ」

といじけたように伊淵先輩は言うと、拗ねた様にぷいとそっぽを向いてしまった。

「ははっ、篤朗らしいな」

そんな様子を見てところどころでくすくすと笑いが漏れる。

板倉先輩も笑いながら、

「篤朗が言うように皆も待ってたみたいだし歓迎会を始めようか」

と言った言葉を合図に、かくして歓迎会が始まったのだった。


***** ***** ***** ***** *****


「じゃあまず一番最初なにやるー?」
「俺らが歓迎会やって貰ったときに何やってもらったっけ?」
「アレよ、確か!!自己紹介!」
「おーそういえば一年の名前まだ聞いてないじゃん!それやろうぜ、それ!!じゃあさっそく一番右に座ってる女の子からっ!!」

ええぇぇえ!!?
自己紹介っ!?
どうしよう…人前で話すの苦手なのに……

一番右に座っていた渡邉さんも、いきなり話を振られて少し困っているようだ。
すると、

「おいおい、おめぇら!そんなアバウトじゃ後輩が困るだろ?」

と伊淵先輩が助け船を出してくれた。

伊淵先輩って最初は少し怖そうに見えたけど、実は面白いしさりげなく気が利く人だし……
さすが副部長というポストについているだけあるなぁ〜なんて感心していると、

「んん〜〜っ、じゃあ女子はスリーサイズと男子は好きなエロ本の種類を……っ」

〈バゴッボキッドカッ〉

い、伊淵先輩………

容赦なく香帆先輩に叩きのめされている姿に、苦笑が零れる。

「はい、ごめんねみんな〜こんな下衆ゲス野郎は無視しちゃっていいからねー。えーっとじゃあ、とりあえず名前と趣味をひとつずづ順番に簡単なの言ってってくれるかな?そんな堅苦しいのじゃなくていいから」

「はい、あなたからどうぞ」と香帆先輩に指され、渡邉さんは少し遠慮気味に立ち上がって皆順々に自己紹介を始めた。

えっと…このままいくと私、早坂君の次だから6番目に回ってくる事になるのかな?
どうしよお〜〜…なんだかすごく緊張してきた…

身体が自然と強張っていくのが分かる。

「渡邉聡子です・・・えーっと趣味は、やっぱり映画鑑賞かな?あ、あとテニスも好きです」
「た、高橋タカハシ亜衣アイです。趣味というか分からないけど、よく山を登ったりします。外に出掛けるのが割と好きみたい・・・です。」
田沼タヌマ修太シュウタです!趣味はカラオケっす!よろしくお願いしますっ」

うわああぁあ…!
ど、どうしようどうしよう!
なんか着々と番が回ってきてるし…!

ちらりと前の人を盗み見ると、余裕綽々な態度でどこか興味がなさそうに聞いている。

く、くそお、余裕そうなのが羨ましい。
っていうかむしろちょっと腹が立つぞぉ…

気付かれないように睨んでみる。

どうせ、私は小心者だしなあ…
その冷静さを少しでも良いから、私に分けてくれないかなぁ?
大体、早坂君って緊張とかしたりする事あるのかな?
なんでもそつなくこなすって聞くし(←由里香情報)今まで見てきてもそんな素振りは一度も見た事がないし…

「城乃内美優です♪えっとぉ、趣味は裁縫とか料理とかが得意でぇ〜、最近はお菓子作りにもハマってまぁ〜す」

そう言って城乃内さんは、ふふんと得意そうに由里香のほうに目線をやる。

ちっと隣から舌打ちが聞こえておそるおそる振り向いてみると、由里香が物凄く嫌そうな顔で城乃内さんをぎろっと睨んでいた。

「なんなのアレ?ってかあのキモい喋り方はなんなワケ!?趣味が裁縫とか料理とかってここはお見合いじゃないんだからっ!!むしろ絶対うそだろっ!!てか何でこっちに向けて得意そうな顔してるわけぇ〜〜!?言うだけなら誰でも出来んだよっ!!あんなんでアイツは早坂君をオトせるとでも思ってるわけっ!!!??勘違いもはなはだしいっ」

由里香の顔が凄まじい形相で歪みぼそぼそと荒い言葉遣いでそう呟きながら、鋭い視線はずっと城乃内さんに向けられている。

「ゆ、由里香…、ひとまず落ち着いて」と小声で一応声をかけてみるが、さらに拍車をかけただけらしく「あんな奴に負けてられるかっ!葵衣は黙ってて!!」と一掃されてしまった。

由里香の勢いに圧倒されていると目の前の早坂君がすっと立ち上がった。

わわっ、次は早坂君だっ…!
女の子達もどこか浮き足立っている様子だし、やっぱりどこに行っても早坂君って人気者なんだよね。

「名前は、早坂健人。趣味…というか今嵌っている事は、最近見つけた猫で遊ぶこと」

早坂君はあっさりそれだけ言ってすぐに腰を下ろしてしまった。
そして何故か私の方を見て意味有り気に唇が弧を描く。

はい?
ね、猫…?
というか何でこっちをみて悪魔の微笑をするんですかっ!!?

「うそっ、早坂君って猫飼ってたの〜!?」
「いいなぁ〜〜むしろ私がその猫になりたいぃぃ!!!」

早坂君の家に猫?
猫なんていたっけ?
家にお邪魔させてもらった時には猫の姿なんてみかけなかったような…

と、そこまで考えてはっと気付いた。

何言ってるんだ、私ってば…
昨日のことがもし全部妄想だったとしたら、早坂君の家に猫がいても全然おかしくないんだった。

妄想と現実の区別が出来なくなってくるなんてもう末期症状に近いのかもしれない。


「つぎ、めがねちゃんだよ?」

え?

我に返って見ると、全員の視線が自分に集中していた。

うわあっ、すっかり忘れてた!!

「わわっ、すみませんっ…!」

〈ガタンッ〉

慌てて椅子をひいて勢いよく立ち上がると、椅子がはずみで倒れる。

「あっ…えっ!?」

う、うそっ、何やってんの、わたし!!

部室内で笑いが巻き起こる。
隣で由里香が「まーた、この子はやってるよ」と呆れかえった様に呟くのが聞こえ、早坂君も「くっ…」と目の前で笑いをかみ殺しているのが分かった。

「くすくす。とりあえず落ち着いてめがねちゃん〜」
「そうだよ、時間はたっぷりあるからさあ〜ゆっくりでいいんだよ、めがねちゃん」

いつのまにか(何故か)定着してしまっているあだ名を先輩たちから呼ばれてフォローされる。
初っ端から失態はするし注目は浴びるはで恥ずかしくて、この場にいることにとんでもなく居た堪れない気持ちになった。

なんでこんな事になっちゃうの……!?
は、恥ずかしすぎるよぉ〜〜!!

「し、しっ白崎葵衣です………っ。趣味は、読書です。よろしくお願いします……」

消え入りそうな声でなんとかそれだけ言うと、倒れていた椅子をもとに戻して座った。
恥ずかしさのあまり、顔が紅潮していくのが分かる。

みんなまだ笑ってるし〜…!!
ホント穴があったら今すぐにでも入りたい…

次は芳沢君の番なのに笑いを堪えきれないのか、芳沢君は「白崎さんサイコー」と言いながらお腹を抱えて更には涙を目じりに溜めてまで大笑いしている。

そっ、そこまで笑わなくてもいいのに…

「…くくっ、…はあ。…すみまセン。えっと、芳沢直樹っす。趣味はスポーツ全般で、観戦するのも好きです!よろしくお願いしマス。」

席についても芳沢君はまた思い出したのか「ぶっ」と吹き出していた。

本当にもう忘れてください…

次に立ち上がったのは先程の可愛らしい男の子。
立ち上がってみると意外にも背が高くてびっくりした。

ハラシュウです♪趣味は人間ウォッチングです☆知らない人1人につき一時間は妄想が出来まーす!!」

と、原君は可愛らしく(なぜか)威張って言う。

に、にんげんうぉっちんぐ?
周りの人たちもぽかんとして、原君を見ている。

妄想って…もしかして私と同じタイプだったりするのかな?

なんて妙に原君に親近感がわいてしまった。
あはは…

由里香は「次はいよいよ私の番ね!絶対あんな奴には負けないんだからぁ〜!!ラストに相応しいエンディグを飾ってやるっ!!!」と間違った方向に意気込んで勢いよく立ち上がると、次にはとんでもない言葉が飛び出してきた。

「酒井由里香ですっっ!趣味は〈人助け〉です!モットーは、信号で渡れないおばあちゃんの手を引いて助ける事とか迷子になった子どもたちを迷子センターに連れて行くこととか落ちていた財布を落として困ってる人のために警察に届けることとか初めて都会に来た田舎の人のために―――」

と演説並みに続きそうな自己紹介に唖然とする。

ゆ、ゆりか…?

「私、最初に簡単でいいって言ったわよね」

と香帆先輩が呆れ顔で、未だにずらずらと得意顔で自己紹介(もはや自己紹介の域じゃない?)している由里香を見ている。

「今年の一年は面白い子達が揃ったね」

と苦笑いしている板倉先輩。

「いいんじゃねえ?俺は逆にこんな奴らと行けるなんてすっげぇ合宿が楽しみになったしな」

と伊淵先輩はニヤついた顔で面白そうに由里香を見ながらそう呟いた。




*余談*

ついでにその後、自分の世界に入ってしまった由里香の自己紹介が放っておくと翌日まで続きそうな勢いだったので、見兼ねた香帆先輩が途中で止めに入りました。







































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