グレイゴル縦書き表示RDF


グレイゴル
作:ラグ


俺は、今日も一人牢獄の中にいる

暗い、暗い牢獄。食べるものもなく、飲めるものもなく、ただただ死を待つだけの空間。もう何日がたっただろうか。周りは既にこの状況に耐え切れずに死んだもの達の亡骸なきがらがあるばかりだ

視覚や聴覚が衰え、かつては強靭きょうじんだったこの体も鎖でつながれ何も期待できないこの状況に麻痺してくる。だが、この劣悪な体の調子も死体から漂う異臭もこの死を待つだけの空間には適しているのだろう、そう感じることで死を受け入れよう。そう、感じた瞬間だった。牢獄の扉が開かれる音と共に一筋の光が俺の目に差し込んだんだ……


…………


モルフィン暦560年、世界は三つに分かれ調和を保っていた。東に位置する領土は小さいが武力が最も強い国アルバート、独自の自然界の理論で『魔法』というものを編み出した北西から北の国マリウス、その二つの国の争いを避けるために作られた平和の国エレアノール。この三つの国はそれぞれの王が毎年顔を合わせ交流を深め合うことで、多少の紛争はあったものの平和を無事保つことが出来ていた

しかし、神は非情にもアルバートに恩恵を与えてくれなかった。元々国の領土が少ないため、自国で細々とした農作業をして食料を確保していたアルバートだったが、モルフィン暦562年、アルバートに雨が一度も降らないという怪奇現象が起こってしまったのだ。これによりアルバートの王様は他の国に食料の輸出を要請、しかし他の国も雨が思うように降っていたわけではなく、厳しい状況に陥っていたのでやむなくこの要請を拒否。それによりアルバートの王カルナ三世は一大決心を決意した

「こうなったら全面戦争ジャー!!」

この戦争はネアンデルタール戦争と呼ばれるようになり、そして一年が過ぎた頃。元々武力が強いアルバートは赤鎧の兵を引き入れ平和の国であるエレアノールの領土を既に約三割手に入れ、徐々に勢力を拡大していった。対してエレアノールは智の国マリウスと協定を結び、守備を固め防衛体制に入ったが、マリウス側としては自国の安全が第一なので兵力は予想外にまわらず、エレアノールはいずれにしても苦戦を強いられるようになる

そして、このままだとアルバートに占領されるのも時間の問題となってしまったエレアノールは最後の手段に出ようとするのだった


…………


「ほう、主がアルバート第一王宮王側近クリフォード・レノンか」

俺は今、王宮の中でも入ることが許されることがない王の間でひざまづかされている。あの後、兵士に牢獄から出された後風呂に入れさせられ、一級の兵士が着るような鎧(エレアノールは青鎧が主)を着せられ無理やりここに連れ出された。鎖で手を繋がれているのに俺が反抗しないようになのか周りには十数人の兵士が俺の周りを囲んでいる。果たしてこんな俺に王はいったい何の用事なのだろうか

「もうよい。顔を上げい」

「…………」

俺は無言のまま王と対面した。さすが一国の王ということもあってそこいらの一般人には出せない品格、風格が漂っていた。一瞬にして場は沈黙し、この後を聞かされていないのか周りの兵士達もこの次に何が起こるのか俺と王様に注目し始めた

「ふむ、いい目じゃ。実はな、主に頼みがあるのじゃ」

「……なんだ」

アーチボルト・エアハート、これがエレアノールの今の王様だ。温厚で民に優しく、武力での解決を好まないその性格は民に好かれ、抜群の信頼を得ていた。しかし、こと戦争ということになってしまえばこの性格はマイナス方面にしか向かわないだろうと俺は思っている

「主に、我が軍最強の一小隊を引き連れてアルバート軍と戦って欲しい」

あまりもの予想外な発言に周りの兵士達がざわめき始めた。俺も少しの驚きをはらんで王を見つめる

「陛下! さすがにそれはいかがなものかと思われますぞ! 重犯罪者を我が軍最強の部隊の指揮官に任命するなんて……」

「うるさいぞベイガン、わしはクリフォードと話をしておるのじゃ。どうじゃ? 元々死刑の体だ。やってみる気はないか?」

ざわめいている兵士達を尻目に堂々と俺に指揮官任命をしてくるアーチボルト王

「どうじゃ、やってくれるな?」

「……報酬は?」

今ここで何故俺なんかに指揮官任命するのか? なんていうことはもはや愚問だろう。王は自らの意思で俺を指揮官にすることを選んだのだからもうそれについて言及することは時間の無駄というものだ

「報酬? 報酬か……」

王は立派な顎鬚あごひげをなでながら考える素振りを見せる。そして一通り悩んだ後こんな質問をしてきた

「なぁクリフォード、主にはフィアンセというものがいるか?」

「? ……いや」

質問がおかしいこともあるが、何より王の顔がより一層厳しさを増していることも気になる。いったい王は何を考えているのだろうか?

「よし! ならば報酬として我が愛娘アイリーン・エアハートを主に授けよう」

「!!」

俺も大層驚いたが、一番驚いているのは俺の周りの兵士達だ。兵士達はこの不可思議な王の会話に終始取り乱している

「陛下! どうされたんですか! あれだけ可愛がっていた一人娘をこんなどこの誰ともわからぬ重犯罪者に渡すなんて!」

ベイガンと呼ばれる兵士は王へ激しい抗議をするが、王本人は何も気にする様子もなく言葉を述べる

「よいのじゃ、なにせ我が娘はこの国最高峰さいこうほうの『ホーリーマスター』。アルバート最高峰の『リングマスター』のお主にはお似合いだろう?」

「……ほう」

なるほど、そういうことか。俺はにやりと口元を歪めると

「わかった。引き受けよう……」

と一つ言い放つのだった


…………


この世界の戦いで用いられるものは、おもに二つに分けられる。それは、自分の体内にある潜在能力を具現化するためのリングを持ち戦う『リンガー』と、神を信仰することにより、自然の力を扱うことが出来る『ホーラー』である。そのなかでも特に優れたものを『リングマスター』、『ホーリーマスター』という。俺はアルバートのリングマスターだったが、エレアノールの軍に捕まってしまい監禁されてしまっていた。だが、何を思ったのか王の計らいによりエレアノール軍の指揮官を務め共に戦う代わりにリングを返却してもらい、更には王の一人娘、アイリーン・エアハート王女を貰い受けることを許されたのである

「初めまして、クリフォードさん。私がアイリーンです」

ぺこりとお辞儀をするアイリーン。今は夜中、場所は王女室。もう俺の周りに兵士達はいなくなり、この部屋の中には俺とこのアイリーンしかいない。こんな状況を作った王様にも驚きだが、俺が思っていたよりもアイリーンがずっと美しかったのも驚きである

完璧なまでに着こなしている純白のドレスはアイリーンのとりこにでもなってしまったかのように軽やかに佇み、腰まで下ろしている金色こんじきの髪はとてもうるわしい。瞳の色は鮮やかなフローラルグリーンを持ち、その風貌ふうぼうを見ているだけでこちらの意志を和らげてしまいそうだ。

「だが、納得がいかないな……」

「え?」

俺はアイリーンに詰め寄り、顔を近づける。しかしアイリーンはというと、この俺の動作に微動だにせずこちらを真っ直ぐに見つめているだけだ

「お前、怖くはないのか?」

いきなり父親である王が見知らぬ重犯罪者と一緒の部屋に泊まらせるのは何か裏があるとしか思えなかった俺はアイリーンに問い詰めようとした

「はい? 怖い、ですか? ……あの、なにに、でしょうか?」

どういうことだろうか。王にしろこの娘にしろ『何かがおかしい』。これではまるで人形のような……

「しいて言えばあなたのような人に犯されるほど私も落ちぶれてはいないので、今の状況で怖がることは何一つありませんよ」

「……ふん」

俺は一回アイリーンと距離をとる。どうやらおかしいのは王だけだったようだ

「で、あなたはどう思いますか?」

「?」

どうといわれてもなんなのか俺にはわからない。いったい何の話をしているのだろう

「私の父、アーチボルト王のことです」

「なるほど。 ……俺を雇ったのは正解だが、決して有能な頭を持っているようには見えなかったな」

そう、いかにも平和主義者のようなあの王がなぜ俺なんかを選んだのかが不思議だ。だがこれは俺にとってどうでもいいことだったので、王に対して質問はしなかったが……

「実は、あなたをここに連れてきたのは私の意志なのです」

「なに?」

「私はこの国の王女、ここの民をみすみすアルバートの人に殺させることなんて出来ないんです。それを回避するには私一人の力じゃ到底叶わない。つまり、リングマスターであるあなたの力を借りないと勝てないのですよ」

依然俺の目を真っ直ぐに見つめながら話すアイリーン。こいつは最初からこうなることを知ってて俺を誘い出したのか

「あなたは、からっぽなんでしょう?」

いきなり話を変え始めるアイリーン。俺が、からっぽだと?

「あなたは心も体もからっぽです。私はホーリーマスターなのでよくわかります。自然と心を触れ合わせるより遥かに人間の心の中を見る方が楽ですから」

「くくく……、面白い奴じゃないか。そうかもな。俺には守るものも失うものもない。あるのはただ空虚だけだ」

俺は今までそうやって生きてきたんだ。ただ何もなく、あるのは戦いの日々だけ。それが全てだった

「ガランドウは悲しいですよ。何も生まないし何も壊れないその世界に待っているのは自己の破滅だけです」

「いいんだ、これが俺の選んだ道なんだから。……ふん、話しすぎたな。次に会う時は戦場か? ホーリーマスターの力、どの程度か見せてもらうぞ」

そういって俺はこの部屋を出ようと身をひるがえすと、後ろからアイリーンが声をかけてきた

「待ってください」

「……なんだ?」

「あなたは悲しい人間です。だから、私がその重荷を背負ってあげようといっているんです」

「なんだと?」

重荷を背負うとはどういうことなのか、俺はアイリーンに振り向いて問いかける。二人しかいないことの絶対的な静寂。今この場で木の葉が舞い散ろうともその揺らめきの音色が聞こえるだろう

「あなたは私を授かることを容認しました、私はもうあなたの持ち物なのです。つまり、既にあなたは失ってはいけないものを手に入れてしまったことになります」

こいつはとんだお笑いぐさだ。一国の王女が自らを俺の持ち物とさせてまで俺のガランドウを満たそうとする。そうまでして俺の悲しみを取り去りたいのか、この王女はやはり王様とあまりかわらないほどの大バカやろうということだ。しかし俺も容易にこんな報酬を受け取ってしまったものだ、この責任は取らねばならないだろう

「……っち、だったらなんだ? 今日は一緒に寝ろとでもいうのか?」

「はい」

素直にはいなんていいやがった。頭が逝かれているとしか思えないその女を一瞥すると、アイリーンはおどけながら

「嘘です。そんなことしたらお父様に怒られちゃいますからね」

と軽く舌を出しながらとぼけるのだった


…………


モルフィン暦563年、戦況は大いにくつがえっていた。まず急激にエレアノールの士気がアイリーンを軸にクリフォードの驚異的ともいえる強さで上昇したのと、元アルバートの兵だったので弱点を知り尽くしていたのが大きな勝因だろう

今まで奪われた領地も取り戻し、後は話し合いで万事平和的に解決すればこの戦争も終わるはずだった。はずだったのだが……

「ダメじゃーー!! こうなったら全兵力をもってエレアノールに進軍じゃーーー!!」

カルナ三世は今残っている兵三万辺りを一気にこのエレアノールに進行させる、いわゆる最後の戦いを望んだのだ。これに対しアイリーンは王さえ倒せばアルバート軍にいる戦いたくない兵も降伏するだろうということで、クリフォード率いる小隊(数は30程度)でアルバート城に潜入し、王を狩る作戦に出た

「さて、ここは我らにお任せください」

ベイガンに城に残っている兵達を任せ、俺とアイリーンは二人で王の間へと急ぐ

「……なつかしいな、この城も」

「ほんの一年前はここで警護していたんですよね」

このアルバート城に潜入するのは比較的容易だった。俺は元々王側近だったため、秘密の地下通路の鍵も持っていたし、俺を見て油断した元同士達をあやめるのも苦労などしなかった

「ああ、おかげで城の内部は隅々まで理解しているつもりだ。……よし、後この部屋を抜ければ王の間だ」

部屋に入るため、あらかじめ元同士から奪っておいた鍵を回して隣にいるアイリーンの顔を一つ見ると、二人で一気に扉を開ける

「……こ、ここは……」

そこには王座が高くそびえ立っており、その頂にアルバートの王、カルナ三世がふんぞり返っていた

「よくも……、よくもここまでコケにしてくれたなぁ、クリフォード!! わしが育ててやった恩義も忘れおって、許さんぞぉ!」

「……アイリーン、さっさと片付ける。お前は見ていろ」

俺のリングで生成されるのは斧。俺はこいつをゲルバと呼んでいるが、この斧の特殊能力は実に単純で、俺の意志で斧の重量が変わるというものだ

対して王のリングは剣、この武器こそカルナ三世を王たらしめんとしているものであり、能力の方も雷が敵を確実にしとめるという強力なものだ

体内の潜在能力を使ってリングから斧を生成し、王に向かって走り出すクリフォード。対して王は剣を生成すると頭上に弧を描き雷をとどろかせた

「はぁ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「……甘い、甘すぎるぞ王」

王の雷はクリフォードに当たったかと思うと一瞬にして消し飛んだ。これは事前にホーリーマスターであるアイリーンに防御壁を頼んでおいたからである。これによって今のクリフォードは生半可の属性攻撃は消し去ってしまうのだった

「な、なにぃ! 誰か! 誰かいないのかぁ!」

「…………」

勝負は一瞬、剣で斧を防いだ王だったが、あまりにもの斧の重量に耐え切れず真っ二つに切れてしまい、そのまま王の片腕をゲルバが勢いよくもぎ取った

「……っく、ががが」

王は残った片腕で出血を抑えるのに精一杯で、剣を生成するのもままならないようだ。もはや決着はついただろう

「もう終わりか、案外たやすいものだな」

「はい、やっと……やっと終わったんですね……。あ、ベイガンさんに報告して早くこの戦争が終わったことを伝えないと」

そういうと同時にベイガンは勢いよくこの王の間に乗り込んできた

「アイリーン様! クリフォード殿! ご無事ですか!」

「……どうやらあっちからきたようだな」

ちなみに王はいつまでも腕を抑えて苦しそうにしている。多分こいつはあの牢獄に死ぬまで入れられることだろう。そう思った矢先のことだった、俺の中で何か悪寒らしきものが俺の背筋を通り抜けた

「ベイガンさん! やりました! 私達勝ったんです……って、え? ベイガンさん?」

「早く、早く逃げて、く、ださ、れ……」

「うぐぁぁぁ!」

突如倒れるベイガンと王、その後王の間の扉から次々とアルバートでもエレアノールでもない緑鎧を身にまとった兵が出てくる

「ベイガンさん! こ、これは……マリウス軍!?」

一気に30もの兵に囲まれた俺達。既にここに来るまでに体力を使ってしまったので、戦ったところで勝ち目は薄いだろう

「……っくそ、罠か……」

たくさんの中でも特に長官らしき人物がこちらに拍手を交えてやってきた

「素晴らしい、素晴らしい強さね。ぜひとも我が軍に引き入れたいくらい。……でもねぇ、強すぎるっていうのも少し問題なんだ。だってこのマリウス軍が世界を統一できないでしょう?」

少し女っぽい口調の長官はこちらが敵意をむき出しにしているのにもかかわらず、それをまったく意に介さないかのように話してくる。正直むかつく野郎だったが、今はどう考えてもこちらが不利なので、そのオカマ口調を聞いていることしか出来ない。そうしているといきなりアイリーンははっとして長官に詰問した

「まさか……、アルバートに雨が降らなかったのはあなた達の仕業じゃ……!」

「そうよぉ、私達の力を合わせれば雨くらい簡単に降らしたりやましたり出来るの。便利でしょ?」

「!! あなた達、あなた達のおかげでどれだけの人々が飢え死んだかわかってるの!」

アイリーンも先ほど俺に防御障壁をかけたので体力の限界はきていただろう。なのにアイリーンは最後の力を振り絞って手から水の魔法を唱える

「ふん、何この子、見た目は可愛いくせして気ぃつよいじゃない。そうねぇ……、水の魔法には火よ!」

長官は火の魔法をアイリーンが出した水の魔法にぶつけると、それは重なり合って一瞬のうちに蒸発した

「そ、そんな……」

魔法がきかない。これはいくら体力がないといっても今までのアイリーンにとって初めてのことだった。長官は一つあくびをすると逆に水の魔法をアイリーンにけしかけてくる

「きゃ! ……っぐ、あぁ!」

水は流れを増し更にアイリーンを痛めつける。このままではアイリーンは死んでしまうだろう。そう思った俺はにやりと頬を緩めると長官の前に出た

「はは、守りたいものを守る為に戦うってのはこういうことをいうんだなぁ。なぁ長官さん?」

珍しく今の俺は饒舌じょうぜつだ。気分が高揚して体の奥が熱くなる。こんなことは今まで一度もなかっただろう。『誰かを守るために戦う』というのはここまで俺を昇華させるのか

「なによ、今頃かっこつけてでてきても私は倒せないわよ?」

片手で水を出しつつもう片方の手で火を出してくる長官。しかし今の俺にはそんなものマッチにも劣る火力だ。火の魔法を振り払うと、周りの兵士が一斉に魔法を放ってきたが、そんなものは余裕で跳ね返し、斧を振るいながら猛然と長官に向かって走る

「い、いや、なに、きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「うぉらぁ! 死にやがれオカマやろう!」

ゲルバは今度は確実に長官の喉をかっきり、長官を即死に追いやった


…………


その後周りの兵をなぎ倒し、一段落した後、俺はアイリーンの元に駆け寄って容態を見る

「はぁ、はぁ……クリフォード、ようやくあなたにも人を守ることの大切さがわかったようですね」

アイリーンはずぶぬれだったが、比較的大丈夫そうだ。体を乾かし、少し寝かせれば安泰だろう

「……ふん、減らず口をたたけるようなら心配ないな」

内心喜んでいる自分がいたが、それは表に出したくないので自分でもわかる強がりを言う

「ほら、目をつぶって自分の胸に手をあてて確かめてみてください。あなたの心は、もうガランドウじゃありませんよ」

「ん? ……ああ」

目をつぶって視覚をなくし、その神経を自分の手に移す。心臓の音。鼓動。それは一定のリズムを保って活動し、自分が生きているということを誇示しているかのようでもあった

「これがどうし……ん!」

いきなりの背後からの冷たい感触に目を見開き後ろを振り返るとアイリーンが俺をそっと抱き寄せていた

「ほら、私の心臓もあなたの心臓もこれで鼓動が早くなったでしょ?」

とくん、とくんと確かに鼓動が早くなっているのが俺の手から、アイリーンの胸から伝わってくる。それと同時に何か熱いものが俺の胸へこみ上げてくるのがわかった

「そうか、これをお前は今まで言いたかったのか」

「はい。随分遠回りでしたが、ようやく伝えることが出来ました」

今までの感謝の気持ちとこの熱い思いをのせて俺はびしょびしょなアイリーンを抱き寄せた

「俺はお前を守るため、このエレアノールを守るために全力でこの斧を振るおう」


…………


その後、二人は急いでアルバート軍に戦争が終わったことを知らせ、両国合致でマリウス軍と戦うことになる。もちろん指揮するのはクリフォード・レノン。その無謀ともいえる指揮は軍の兵を混乱させることもあったが、民のことを一番に思う熱い意志と、アイリーンの優しさにより、兵はその指揮を疑うことなくやりこなし数々の勝利をエレアノールへ収めるのだった……


どうも、ラグです。
今回短編ということでかなり無理のある飛び方をいくつかしちゃいましたね…
この小説が人気高ければ、また戦記物で長編を書きたいななんて思ったりしている次第です。

はい、今回の小説は西洋を舞台にして、あまり戦うことをメインにせず、主人公の心の変わっていく様を書いてみました。賛否両論あるとは思いますが、この小説で何かを感じてくれたのなら幸いです。あ、他の春企画の小説も出来れば見てくださいね。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう