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作:椎名蓮



GAME01.He is genius basket ball player



どこの入学式でも変わらないものがひとつ。
校長、またはそれに順ずるもののありがたくもなんとも無い長い話。

「ふああ…」

 たださえ目立つ金髪で教師らから目をつけられているというのに、最前席で大あくびをする勇者あり。その名は越後はる。身長こそ人よりも小さいが態度は見ての通り。担任教師が睨みをきかせているのにも関わらず、ついには頭がこくりこくりと揺れて、そのまま夢の世界へダイブしてしまったようだ。


***


「まったくもう!たださえアンタは目立つんだからしゃきっとしなさいよ!」
「別にいいじゃん」

 入学式が終了するなり、玄関先で待ち構えていたはるの母琴音ははるの頬を思いっきりつねった。当の本人はるは反省する様子もなく、面倒臭いと顔に書いてある。口元を手で覆ってまた大あくび。

「でもさ、」
「なによ」
「俺より母さんの方が目立ってると思うけど」

 母、琴音の格好と言ったら濃いピンク色の着物姿。日頃の肌の手入れがいいのか、確かに他の母親と比べれば少しは若く見える。だがこれでははるではなく母親の成人式のようだ。琴音の派手好きは今に始まったものではないがため息つきたくなる息子の気持ちは察してほしいものだ。

「だって、折角お父さんが選んでくれたんだから着なきゃ悪いでしょ。もう、お父さんったら。私がピンク好きだからって…きゃ!」

 頬を染めて両手の胸元で祈るように手を組んで、くるりと回る姿はまるで恋する女子高生。母と父が仲がいいのは何も言わないが、限度は考えて欲しいところである。

「どうでもいいけど。母さんたち、この後PTAの集まりかなんかあるんじゃなかったの?」
「やだ!いけない!なんで教室出る前に言わないのよ!」
「忘れてる方が悪い」
「ああもう!あ、はる、鍵渡しておくから先帰ってご飯食べちゃってて!」

 嵐の如く教室に走っていく母。慣れない着物なんて着たら、1度は転ぶのではないかと頭の片隅で考えていたはるだが、大して心配もせず、制服のポケットに手を突っ込んだまま、校門の方ではなくグランドへと歩き出した。突っ込んだポケットに琴音から受け取った家を鍵も一緒に仕舞いこんで。


「校庭広…でも誰もいないや」

 校庭は桜が満開に咲き誇っていて、グランドには桃色の花びらが模様を作っていて、まるで絨毯のようだった。だが、そこに人の姿はまったくないようだ。今日は入学式、他の在校生もさっさと帰ってしまったのか。

 つまらないなあと思いながらも向かったのはバスケットのゴール。


「ふーん…鹿島よりも結構設備いいんだ」

 テニスコートのすぐ近くにバスケットのゴールが2つ対極に置かれている。おそらく外練習の際はここを使って練習するのだろう。朝練はあったのか、ゴールの真下に1つだけバスケットボールが転がっていた。
 はるはゴールの真下まで歩くと転がっていたボールを拾う。砂がついてやや汚れているものの、空気はちゃんと入ってるようだ。はるはそのボールをポーンと投げ、落ちてくるボールを右手の人差し指で受け止め、1本の指のうえでくるくると回した。指の上で回しながら、歩き、ある地点で指のうえで回していたボールを地面に落とし、跳ね返って来たボールを両手で掴んだ。
 彼が立ち止まったのはゴール真ん前のスリーポイントライン。

「……」

 ボールを構え、腰を落とし、左足をやや後ろに下げた。その姿勢のまま、しばらく静止した。

そして、手を伸ばし――跳んだ。


 手から離れたボールは緩い弧を描いて宙を飛んでいき、そしてボールは音を立てずに、すっとゴールのネットの中に入っていった。入っていったというよりも、吸い込まれた、もしくは元に戻っていったように。そしてボールは地面に落ち、バウンドする。


「お、ナイスショットじゃん!」

 はる以外に人はいなかったはずだった。いきなり声がしたかと思うと、空から人が降ってきた――正しくは飛び降りてきたのだが。その人物が降りてきたのは2階。ちょうど彼がコートのうえに到着したとき、上の教室のベランダから担任だと思われる中年の男が顔を出してくるなり「相模!!」と大声で怒鳴った。

 降りてきたのは2年生の男子生徒。茶髪のやや長めの髪に、耳にはヘッドホン。学ランは教室に脱いできたようで、長袖のシャツのしたにはオレンジ色のTシャツが見えた。昼食の途中だったのか、手には近くのコンビニの袋のなかに大量のパンが詰めこめられている。
 はるはいきなりやってきたこの男に特に関心がないようで、そのままコートをあとにしようとしていた。

「スーパースリーポイントシューター、越後はるってお前だろ?」
 名前を呼ばれ、はるは振り返り、どうして知っているんだと言いたそうな目を向けた。
「壱岐部長から凄い奴が来るって聞いてたけど小さいなお前。道理で相手が油断するわけだ」
「何が言いたいんスか」
「来るんだろ、バスケ部?」

 まだ名乗ってもいないというのに彼、相模は来ることを確信しているようで「来たら1対1やろうぜ」と馴れ馴れしく話し出す。
 此処、羽ヶ丘学園はバスケの名門校。あれだけ名を残したシューターだ。そう言われても仕方がないことだろう。



だが、




返ってきたのは予想外の答え。









「バスケ部、入る気ないけど」







はるとお母さんとお父さんは新婚夫婦なみに仲がいいです。
おそらく喧嘩したことがないかと思われます。











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