GAME00.Who is he?
春。
羽ヶ丘市内にある桜は満開に咲き誇り始めていた3月の末。
3月最後の週末を人々はそれぞれ思い思いに過ごしていることだろう。
家族と買い物に行ったり、恋人とデートを楽しんだり、友達とつるんでどこかに出かけたり。
使い方は人それぞれだろうが、皆国民の休日を楽しんでいた。
こんな場所にも休日を謳歌する若者がいる。
最近建設が終了したばかりの都市のニュータウン内に作られた広場。
そこに地域に住む中高生の要望でバスケットボールのゴールが設置された。
休日になると近所の中学生らが集まって、ここで日が暮れるまでゲームをするのがこの公園の風景になっている。
今日も仲の良いグループが3人ずつに分かれて、ゲームを楽しんでいる。
特に得点板があるわけでもないが、皆思い思いに動いている。
今日は少しばかり人数が多かったのか、ベンチの方で2、3人の青年たちが飲みものを飲み、タオルで汗を拭きながらゲームを見物しているようだった。
「そういやさ、俺此間凄い話聞いたんだ」
話を切り出したのはベンチの真ん中に座っていた小柄な青年。
「なんだよ?凄い話って?」
「去年の秋の大会で100点ゲームをした小学生がいたらしいんだよ」
100点ゲームという言葉を聞いて、右隣りに座っていた青年が飲んでいたスポーツドリンクを噴出し、むせてしまった。げほげほと隣りで咳き込む。
「おいおい、マジかよ」
「でもよ、それって小学生の大会だろ?ありえるのかよ」
100点ゲーム。彼ら中学生でもなかなか起こらないことだ。どちらかのチームが一方的に負けるでもしない限りそう滅多に起こることのないことだ。
「本当だって。そのうえスリーポイントの連続らしくて、そのチームが優勝したらしい」
青年たちは「本当に小学生かよ」などと吐き捨てて、持っていたタオルでぱたぱたと仰いだ。
「ま、その凄いシューターはもう卒業したみたいだけどよ」
「ってことはそいつも今度中学生ってことかよ」
「うわ!俺当たりたくねえ…!」
ミニバスケットボールの世界で頂点に立ったシューターが今度は中学バスケ界に潜り込んでくる。本音を言えば当たりたくないところだ。
ゴールの方から交代の合図が掛かり、1番小柄な少年がスポーツドリンクの入ったボトルをベンチに置いて立ち上がった。
「でもよ、さっきの奴ひょっとしたらあそこに来るかもな」
羽ヶ丘市、そしてバスケと言ったらあの名を知らないものはいない。
「羽ヶ丘学園に」
バスケの名門校、羽ヶ丘学園。
たださえこの地域でも一目置かれてるあの学園に彼が入ったとしたらきっと、
「うわ!ヤベ!」
ゲームをしていた青年たちが使っていたボールが思ったよりも遠くに飛び、そのボールはベンチに座っている彼らの頭も超えていった。ボールが落ちた先は、公園の前を通りかかった小柄な少年の頭のうえ。
少年が被っていたフードがずれ、後頭部に大激突。そのまま少年はその場に倒れた。幸い酷い様子もなく、青年たちが駆け寄る前にはむくりと起き上がっていた。
「悪い!坊主!手が滑ってな」
「別に」
思った反応よりも薄い反応を返されたので、青年たちは拍子抜けした。てっきり大泣きぐらいはされるものだと思っていた。小学生の割には、落ち着いているというより愛想がなく、無表情に近いものがあった。少年は落ちていたボールを拾った。気のせいだったか、少年が一瞬にやりと笑ったような気がした。
「オニイサンたちバスケやってたんだ」
「ああ、まあな」
「ねえ、俺とやってくんない?」
その時は軽い気持ちで乗った彼らだったが、その数十分後無残にも敗退することになるとは思わなかっただろう。
彼が、あのスリーポイントシューターでなければ勝てたのだろうが。
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