Case1「呪われし探偵達」 #4
まだ夕食には少し早い時間帯のせいか、ファミレスの中はさほど混雑はしていなかった。
私達は、もう一人来ることを店員に告げ、禁煙席の最奥の席に案内してもらった。
長いすにパルと並んで腰掛ける。程なくして店員の女性が注文を取りにやってくる。
――流石に何か注文しないとまずいか。
そう思ったので、とりあえずコーヒーを注文する。
パルは『経費扱いで落とすから好きなの頼んでいいよ』と言ったが、そこまで私の神経は図太くない。
一方パルはというと、メニューをのぞき込みながら片っ端からオーダーしていく。ってか、いくら後からユアンが来るからって、少し多すぎないか!?
店員が去ってしばらくしたところでユアンがやってきた。ユアンは私達の向かい側の席につくと、店員にコーヒーを注文した。
「ねえ、何か分かったの?」
私は早速ユアンに訪ねてみた。が、ユアンは店員さんをキザなセリフで口説いている。
なんだかムカッときたので、ちょっとキツめに呼びつける。ユアンは頭をかきながらこちらに向き直った。
「悪い悪い。だが、多分そっちから報告した方が余計な時間をとらなくていいと思うぜ。そう言うわけだから、そっちから頼むわ」
――なんなんだそれは。
まあここで意地を張っても仕方がないので、仕方なく学校で得た桜塚絵里香の情報を話してやった。
ユアンはふむふむ、と時折相槌を打ちながらこちらの話を聴いていた。
「さあ、こっちの情報は全部話したわ。次はそっちの番よ」
と、私が言ったところで、先ほどパルが注文したおびただしい量の料理の数々が運ばれてきた――といっても一部だけだが。
パルは「いっただきま〜す」と言って、目の前のエビドリアに飛びついた。まるで小さな子供のような(いや、実際子供なんだけど)顔で――ただしものすごいスピードで熱々のドリアを口に運んでいく。
その勢いたるやすさまじく、私はあっけにとられてその様子を見ていた。
ユアンの声で我に返った。気づかないうちにぽかんと口を開けてたたずんでいたらしい。
「さて、それじゃあ俺の方の報告をさせてもらうかな。――あ、パルのことなら心配ないぜ。あれでもちゃんと話は聞いてるからさ」
そして、ユアンは校外で仕入れた情報を話し出した。
「俺は学校の校門そばから、桜塚絵里香の通学ルートにそってその足取りを調査した。その結果なんだが、まず彼女は同じクラスの生徒と校門を出るところを数名の通行人――近所の主婦とかだな――に目撃されている。で、学校の東側の歩道橋手前でクラスメートと別れている――これは、さっき雪月ちゃんの報告にもあった通りだな。そしてその後、十五分後くらいに信田駅の改札を通るところを駅員に目撃されているな。彼女の通学ルートは、ここから上りの山手線に乗って桂木駅で下車、駅から徒歩二十分の一戸建てだ。が、ホームで目撃した人間の話では、彼女は本来の通学ルートとは逆の下り線に乗るところを目撃されている。残念ながら駅数が多すぎてどこで降りたかまでは確認できなかったけどな」
その報告の間にも、パルは次々と料理の皿を空にしていく。一体この小さな身体のどこにこれだけの量の食べ物が入るのだろうか。
しかもパルは、さらにデザートとしてチョコケーキを――しかもホールで三つも注文していた。
ユアンの方は最初から知っていたらしく、平然とコーヒーをすすっている。
「す、すごい食欲ね。食べ盛り……ってやつ?」
んなわけない事は分かっているが、それしか言葉が出てこなかったのだ。
「まあ、色々と事情がな……。あまり気にしないでやってくれや」
無理! 絶対無理!
だって人間の限界を明らかに超えるような食いっぷり。テレビに出ている大食いの人がかわいく思えてくるような食いっぷりなんだから。
「あ、そうそう。俺の得た情報はさっきので全部だぜ」
ユアンが慌ててつけくわえた。
「OK。それじゃあ、沿線で彼女の立ち寄りそうな場所がないか、帰ってシャインに調べてもらおう。今日はこれで解散、また明日って事でどう?」
「あ……、う、うん」
いつの間にやら三ホールのチョコケーキも跡形もなく消えていた。結局全ての料理が綺麗にパルの胃袋に納まってしまった事になる。
私達はファミレスを後にする。会計はどうするのかと思ったら、ユアンが全額現金で支払った。ただし、領収書はきっちり貰っていたが。
ユアンが会計している間、パルは私に話しかけてきた。
「よかったねえ。これで多分、明日にはストーカー事件解決すると思うよ」
やれやれ、本当にそうならいいのだけど。 |