Psycho Detectives 〜サイコ探偵社〜(2/22)縦書き表示RDF


Psycho Detectives 〜サイコ探偵社〜
作:佐倉信輔



Case1「呪われし探偵達」 #2


 "PYSCHO探偵社"から連絡があったのは、それから三日経ってからの事だった。
 連絡を受けて私は再び"PYSCHO探偵社"に向かった。
 相変わらず薄気味の悪い雰囲気の建物だ。この前と同じように客間に通され、例のポリグラフ付のソファに座る。
 シャインは相変わらずパソコンのモニターとにらめっこしている。パルもいつもどおり中央のデスクに陣取っていた。ただ、ユアンだけはどこかへ出かけているのか、姿が見えなかった。
「それで? 何か分かったの?」
 パルはうなずいた。
「うん。でもちょっと待ってね。もう一人お客さんが来るから」
 しばらく待っていると、ガチャリと音がして扉が開いた。部屋に入ってきた人物を見て、私は仰天した。
「は、花田先生!?」
 入ってきたのは、うちの高校に臨時講師として赴任して来た花田先生だったのだ。
 っていうか、なんで花田先生がここに!?
「雪月、お前何でこんなところに入りびたっとるんだ?」
 花田先生は額のしわをいっそう深くして、私の顔を覗きこんだ。私は言葉を続ける事ができず、しどろもどろになってしまう。
「あ、あの……。えと……、ですからつまり、その……」
 その時、花田先生はなぜか急に笑いをこらえ出した。そしてついに噴き出して盛大に笑ってしまう。見ると、パルもシャインも笑っている。
「な、なな、何なのよ!?」
「くく……、ははは。まだ気づかない? 俺だよ俺」
 花田先生はいきなり自分の額に手をかけると、その皮をバリバリと剥いだ。
 私はまた仰天してしまった。なんと、花田先生の顔の下からユアンの顔が現れたのだ。
「ちょ、ちょっとどーゆーことよ、これ!?」
「あれ、言ってなかったっけ? 俺変装の天才なんよ」
 そんな話は初耳だっつーの!
 ユアンはあっという間にいつもの背丈、いつもの格好に戻った。
 ユアンと花田先生では背も二十センチくらい違う。関節まで自在に動かせるのだろうか。
「ユアンは尾行や潜入のプロでね。噂を集めるために雪月さんの学校に潜入してもらってたんだ。女子高生の噂話って、結構莫迦にできないからね」
 それならそうと教えておいてくれてもいいと思うのだが。とりあえずそれより報告の方だ。
 ユアンは学校内で集めた情報を話し始めた。
「あの学校の生徒の間である噂が流れている。女子生徒が一人行方不明になってる、って話なんだが……。雪月ちゃん、聞いたことはあるかい?」
「うーん……。私噂話ってあまり好きじゃないから、あまりちゃんと聞かないのよね」
 私の言葉に、ユアンは「そうか」と言って話を続けた。
「行方不明だと言われている女子生徒の名前は桜塚絵里香さくらづか えりか。一年の特進クラスの生徒だな。最も、表向きには病欠で長期休学、ってことになってるが」
「桜塚絵里香――四月十一日生まれ、十七歳、A型Rh+。東能高校二年特進Aクラス所属。書類上は四月五日――つまり新年度の始業式の日より病気療養のため長期休学手続きを取っています。ですが、三月十六日付で警察に両親から捜索願が出されていますね。報告書類がそれほど上がっていませんので、警察はおそらく家出と判断しているのではないでしょうか」
 先ほどからずっとモニターとにらめっこしていたシャインが言った。最初にあった時のようなたどたどしい口調とは全く違う、流暢で滑るような口調だった。
 っていうか、一体どこからそれだけの情報を仕入れたんだよ!?
 すると、まるで私の心を読んだかのようにパルが解説を入れた。
「シャインはね。コンピューターを使った情報収集にかけては右に出る者はいないんだよ。彼女に進入できないコンピューターは存在しないね」
 パルの言葉にシャインは少しほほを赤らめた――ように見えた。
 変装の天才にハッキングの天才、そして超天才のお子ちゃま探偵。考えれば考えるほど、知れば知るほどとんでもない面子だ。
「俺がここ数日潜入してつかんだ情報じゃ、最後に目撃されたのは三月十二日――ちょうど学年末試験最終日の放課後だな。学校から出るところを目撃した生徒や教師が数名いる。けどあまりはっきりしないな。さすがに生徒連中にあまり突っ込んで聞くわけにはいかないし、教師連中はあまり桜塚って女子生徒のことを話したがらないんだよな」
「うちの学校って、校長が元国会議員の天下りでことなかれ主義の塊みたいなやつなのよ。都合の悪い事はとにかく表に出したくないわけ。だからきっと、先生連中に箝口令かんこうれいでもしいてるのよ」
 それは今に始まった事じゃない。前に学校内で男子生徒が自殺し、その後でいじめ問題が持ち上がった時も、加害生徒(正確には遺書で名指しされていた生徒)をさっさと退学にして、あとは知らぬ存ぜぬを決め込んだのだ。
 現在その生徒の両親は学校を相手に裁判を起こしている。それだけに学校は、これ以上問題を抱えたくないのだろう。だから桜塚という女子生徒の事も、無理矢理休学という事にし、教師には口止めして、一切関係ないと押し通しているのだろう。
「他にそれらしい噂や情報はないんだね?」
「ないな、今の所」
「あ、ちょっと待ってよ」
 どうしても聞いて起きたい疑問があったので、私はそう言って話を止めた。
「さっきから学校内の事ばかり言ってるけどさ、学校以外の所――例えばバイト先とかで、ってことはないの?」
「ないね」
 パルはこともなげに言った。
「その辺についてはシャインが調査済み。今年いっぱいまでさかのぼってみたけど、警察のデータでは、雪月さんの行動範囲内で発生した未解決の事件にそれらしい物は無かったしね。未発覚の事件っていう可能性もあるけど、雪月さんの行動範囲と時間帯からみても、一月も発覚しない、なんて事はないだろうしね」
 なるほど、ちゃんと可能性は潰していたわけか。
「そーゆーわけで、今後はその桜塚っていう女子生徒の失踪事件の線からあたってみようと思うんだ。今日の報告は以上ね」
 うーむ、分かったような分からんような……。
 ともかく報告書を受け取り、私は事務所を後に使用とした――が、
「ちょっと待って」
 部屋から出ようとしたところで、急にパルに呼びとめられてしまった。
「これ、渡すの忘れてた」
 パルから受け取った紙には"PYSCHO探偵事務所 依頼料金表\"と書かれていた。
 その表をみて私は目をむいた。0が……0がいくつも並んでいる。二……、三……、四……。
「に、二百万――!?」
 成功時基本報酬二百万円(経費別)――表の一番上にはそう書かれている。もちろん基本料金なわけだから、さらに高くなる場合もある――というか、多分その方が多いだろう。
「ごめんね〜、ホントは最初の時に渡さなきゃいけないんだけど忘れちゃってた」
 パルは舌をペロっと出して言った。
「だけど、いまさらキャンセルはできないからね。もう、調査始めちゃってるし」
 なんですと!?
「あ、あ、あ、あのねえ! 私はいたいけな女子高生よ!? 二百万なんて大金払える訳ないでしょ!?」
「うん、そうだね」
 パルはしれっとした顔で言った。
「今回はこちらのミスでもあるしね。だから、今回限りの特別システム」
 そう言ってパルが提案した内容は、次のような物だった。
「あのね、これから雪月さんの依頼の調査を少し手伝ってほしいんだ。それで経費はチャラにしてあげる。それから成功報酬は、成功した場合は基本料金の二百万円分うちでお手伝いをする、っていうのはどうかな? ちなみに、もし失敗した場合は規定の三割なんだけど、それも無しでかまわないよ」
 おいおい、それって明らかにそっちに都合がよすぎないか?
 だけど、今の私に選択の余地は残念ながらなかった。というか、ストーカーのことで頭がいっぱいで、探偵に依頼したらお金がかかる、という至極当然なことを完全に忘れていた私にも落ち度はある。
「よかった。それじゃあ早速、これから聞きこみにいくから手伝ってね」
「聞き込みって、何を?」
「もちろん桜塚って女子生徒の失踪事件のこと。その生徒と同じ二年生を中心にね。この年頃の女の子は噂話とか大好きだから、きっと色々聞けると思うよ」
 パルは面白そうだね、とでも言いたげな口ぶりで言った。
 その横から「これが二年生女子のリストです」と、シャインが書類の束を手渡した。
 見ると、二年女子の名前から住所、所属クラブ、家族構成に至るまで(ってかこれは明らかに余計なデータだと思うが)びっしりと書き込まれていた。
「さ、それじゃー出発!」
 私は意気揚々と部屋を出たパルと共に、生涯初(普通当たり前だけど)の聞き込みに出発したのだった。







小説処 SWEET ROOM
作者の本サイト「小説処 SWEET ROOM」はこちらです。






ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう