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アルゴ! ホワイトクリスマス 作者:桐生 慎
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 スター・ドラゴンこと竜司は、バーチャルリアリティの世界アルゴのアキハバラ特区の王宮で、憧れの女性・夜美と会うことが敵う。
 様々なやり取りの後、竜司は毎日3時間、イブの夜までデートする約束を取り付けたのだった。
 渋々、命令に従う夜美を竜司は必ず心からの笑顔を浮かべる様にしてみせると竜司は誓うのだった。
「軍務中にすまんなぁ~ 実は今、アキバの未来に関わる大きな商談をしちょるねん。そこで、どうしても夜美ちゃんの協力が必要になってなぁ~。急ぎ、来てもうた次第やねん」

「そうなのですか? わたしにはただ、宴会をしている様に見えるのですが……」

「商談も詰めの段階になるとこうなるんや。それより、見てみ。この色男。本物のスター・ドラゴン先生やで! 今日、アルゴにデビューしはったんや!」

 夜美は朗らかに微笑んだ。

「それは、アルゴにようこそ。わたくし、先生の大フアンです」

「あ、ありがとうございます。こ、光栄です!」

 僕は席を立つと、礼をして上ずった声で応えた。この高校生のセーラー服姿をした姫カットの長髪美少女から目を離せない。

「あの? わたしの顔に何か?」

「いや、見惚れてしまって……」

「―――はい?」

 夜美は眉を寄せた。その一瞬、.不穏な空気が醸し出される。剣呑極まりない。

「まぁ、聞いてぇな。夜美ちゃん」

「―――はい」

 殺気を消して笑顔で振り返る夜美。この娘、本当に男嫌いの様だ。

「実はな、このスター・ドラゴンはんの初のイラスト原画集をこちらのジョン・マックスエルはんの仲介でうちらが独占販売権を得るちゅう話やねん」

 夜美は興奮でのりちゃんに前のめりになって言った。

「凄い話じゃないですか! スター・ドラゴン先生のイラストはシチズンの間でも高く評価されています。どれ程売れるか想像もつかない!」

「落ち着いて。夜美。それには条件があるのよ」

 五月が冷静な声を掛ける。流石にのりちゃんとの連携は阿吽の呼吸で取れている。

「どんな条件でも無理して飲むべきでしょう。シルフィア様からの借金も一気に返せれるかもしれないんですから!」

「おおっ! 夜美ちゃんもそう思うか?」

「―――二言はないわよね?」

 のりちゃんと五月に叩き込まれて夜美はたじろいだ。不穏なものを感じたのだろう。

「な、なによ? 二人して? 条件って何なの?」

 のりちゃんと五月さんが黙して視線を僕に送る。

「デ、デートして下さい!」

 僕は直立して上ずった声でそう言った。

「……はい?」

 夜美が不審げな声を上げる。
 ここで引いては駄目だ。僕は勢い込んで喋る。

「僕には長らく理想とする女性がいました。その女性の美しさに憧れてイラストレーターになったんです。アルゴの、このアキバ特区なら、その女性と出会えると信じて、今日、初めてダイブしたんです!」

「その女性って……まさか?」

「ゴースト・イーターの夜美です! そう。貴女こそ僕の理想の体現だ! お茶だけでも良い。デートして下さい!」

「―――え? ええっ! ちょっと待っ……」

「これ程のビッグな取引や。お礼がお茶だけとはいかんの分かるよな? 夜美?」

「せめてイブまでは毎日デートしてもらわないと、こちらの顔が潰れます」

 五月さんがすまし顔で叩き込む。

「毎日、デートして下さるのなら、肖像画を仕上げてイブの夜にプレゼントいたします!」

 僕は流れに乗って叫んだ。
 のりちゃんと五月さんが「おおおぉーーっ!」と歓声を上げる。

「凄いやん! 夜美ちゃん! スター・ドラゴン先生に直筆の肖像画なんて金塊積み上げても敵わへんで!」

「素晴らしいわ! 夜美! 妬ましいわ! 夜美! 代われるものなら、代わりたいわ」

「……代われるものなら、代わるわよ……。ねぇ、のりちゃん、五月ちゃん。なんで、イブまでなの? まさか、わたしが猛反対したイブの売春行為と関係があるのかしら?」

 夜美は作り笑顔で剣の鍔に指をかけている。のりちゃんと五月さんは平然とそれを受け止める。

「関係があったら、どうするん?」

「お断りします! わたしは身体を売ったり出来ません!」

「へぇ、夜美。あなた、私情でこの特区の未来を左右する取引を潰すと言うの? 聞ける無理は聞くべきだと言ったその口で……」

 五月さんがねっちりと夜美に絡む。

「わたしは貴女の貞操にこの取引以上の価値を見いだせないけどなぁ~」

「騙したわね! ただのデートじゃないじゃない!」

 夜美はキッと僕を睨んで言う。そして頬を赤らめ、

「ましてや、イブの一夜なんて……。この変態!」

 あっ。今の「変態」心に響いたわ。自分にMの気があることに初めて気付きながらも、僕は言った。

「あの誤解です。本当にデートだけで良いんです。イブまで一日三時間でいい、時間を下さい。イブはディナーに付き合って下さるだけで良いのです。貴女は本当に僕の憧れの女性だ。今は貴女の絵を描きたいのです」

「おい、スター・ドラゴン。本当にそれで良いのか?」

「ジョン。一日三時間、僕に時間をくれ。リアルの仕事もきちんとやるからさ。頼むよ」

「本気か? 俺達の立場はもっと強気に出れるんだぞ」

「夜美さんに無理矢理言う事聞かすなんて真似が出来るか! 一生童貞でも構わない!」

「スター・ドラゴンさん、そらアカン。童貞は生ものや。時期が来たら捨てな、腐るんやで?」

「一物が腐り落ちても構わない! 僕はイブの夜に夜美さんに肖像画を渡す為だけにこの数日を生きるんだ。その後の事なんか知るもんか!」

「……そん時は、うちらで精一杯、お慰めしようか? 五月ちゃん?」

「是非に。その時、わたし達を恨むんじゃないよ。夜美?」

「―――っ!」

 夜美は悔しげに唇を噛むと下を向いた。

「話は決まりや。スター・ドラゴンはん。あんさん、何時にアルゴにログインするんや?」

「このところ夜型の生活なので、ログインするのは午後三時半ですかね……」

「そりゃ、日本時間でやな? ほな、この特区にログインするんは午後四時半や。四時半にこの宮廷の喫茶室で待ち合わせ。午後七時半までデートタイム。それで、ええな? 夜美?」

「―――命令なのでしょう?」

「あんたがこだわるんなら、命令や」

「命令には従うわ」

「よっしゃ。ほな、これからは楽しいディナータイムや。夜美、あんたはスター・ドラゴン先生の隣に座り。これはウチが主催のディナーやから、サービスしてや」

 夜美は無表情で僕の横に座った。そして作り笑顔で言った。

「さ、先生。お飲みになって。お酌させて貰います」

 僕はこの笑顔を心の底からの笑顔に変えて見せると密かに誓った。
徐々に本題のラブコメ化してきました。(^◇^;
アルゴで童貞を捨てる筈だった竜司はその目的を忘れ、憧れの女性・夜美の心からの笑顔を望みます。
竜司ことスター・ドラゴンと夜美のイブはどうなるのか?
お楽しみに。
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