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アルゴ! ホワイトクリスマス 作者:桐生 慎
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 エスカレーターを上がったホールに近未来的デザインの露出度のやたら高い制服を着た金髪碧眼の肉感的な美女が立っていた。胸にタッチパネルの機器を抱えている。
「アリス。お疲れ様。こちらのお方が赤城竜司様です」
 新谷お姉さんにアリスと呼ばれた女性は、深々と僕に頭を下げる。ふくよかな胸の谷間に目が釘付けになる。
「赤城様の儀体を担当させて頂く、アリス・スチュアート2級技師官です。よろしくお願いいたします」
「ここからはアリス技師官が担当します。わたくしは持ち場に下がらせて頂きます。引継は完璧に出来ておりますので、ご安心を。それでは」
「赤城様、こちらへどうぞ。儀体のデザインを決めましょう」
 アリスお姉さんは極上の営業スマイルを浮かべた。
 アルゴセンターではセクシーで美人のお姉さんしか雇わないのだろうか?
 アリスお姉さんは僕を個室に招き入れた。広い個室の中央に全裸の男が直立不動しているので、肝を抜かれたが、それは本物と寸分違わぬホログラム映像だった。
「これが赤城様のベースとなる儀体のホログラムです。まずは顔から加工していきましょう」
「あ、顔なら決まってるんです」
 僕はバックからスケッチブックを取り出し、目的のページを広げて見せた。アリスお姉さんは驚きの声を上げた。
「これ、ゲームのスクラップ・キルの主人公じゃないですか? 版権とか取らないとこのままの顔には出来ませんよ」
「あ、僕。キャラデザ担当したんです。版権は僕にあります」
「まぁ! まぁ! まぁ!」
 アリスお姉さんはオーバーリアクションで驚く。
「ハンドルのスター・ドラゴン! イラストレーターのスター・ドラゴン先生本人でしたか! こんなにお若いとは! ちょっと、待って下さい!」
 アリスお姉さんは奥の部屋に引っ込むと夏の同人誌即売会でウチが出した同人誌を持って来た。
「是非、サインをお願いします!」
 サインをするとアリスお姉さんは「キャッ」と喜びの声を上げ、その豊満な胸に同人誌を抱き寄せる。代わって欲しいと思った。
「これなら設定は早く済みます。何か特殊能力は必要ですか?」
 仕事モードに戻ったアリスお姉さんが尋ねる。
「アルゴは初めてなので、特殊能力が必要かも分かりません」
「そうですね。職業が画家ですし、取り急ぎ必要なオプションは必要無いでしょう。後から付け足せますし……。では、儀体の設定は終わりました。では、全裸になって頂けますか?」
「―――ここでですか?」
 僕は驚愕と恥じらいの混じった叫びを上げる。アリスお姉さんはにっこり笑って頷いた。

「……う~ん。目立つ傷は盲腸の跡くらいですね」
 アリスお姉さんは全身をくまなく見て呟く。全裸の羞恥、扇情的なアリスお姉さんの制服、それらが相まって、アリスお姉さんが僕の盲腸の傷に触れたとき、性的興奮が高まった。それは僕の身体の一部を凶悪に変化させる。アリスお姉さんは天を向いてそそり勃つ一物を見て目を丸くして言った。
「―――若いのねぇー。角度が凄いわ」そう言って優しく握ると、「あんっ! 堅い! わたし、火が付きそう」とのたまった。
 僕はこの人は職務規程とか頭にあるのだろうか? と不安になった。
「オプションになりますけれど、ペニスのサイズとか形状どうされます? あと、盲腸の傷は儀体に写します?」
 いつの間にかペニスから手を離し、タブレットに入力している。
「盲腸の傷はお金かかるなら写さなくても良いです。……ペニスは……みなさん、どうなされているんですか?」
 僕は赤面して尋ねた。アリスお姉さんはまだ勃っている僕のペニスに視線を向けながら微笑んだ。
「おそそ、40%の方がペニスの勃起率を10から20%増やしていますね。16%の方がイボを付けたりカリを高くしたりされています。わたしの個人的な意見では、赤城様は何もされなくても十分魅力的ですよ♪」
 アリスお姉さんは頬を染めてハートマークの付いた笑顔を向ける。笑顔の効果に花が無数に咲くが、僕にはその花が食虫植物に見えた。
「それじゃ、オプションは要らないです。ノーマルのままで」
「じゃ、お顔だけですね? そのスケッチブックお借り出来ますか? 取り込みしたいので」
 僕はスケッチブックをわたす。アリスお姉さんはコピー機のようなもので、イラストを取り込むと、スケッチブックを僕に返す。
「少々、お待ちくださいね」
 にこやかに微笑むと、椅子にに腰を下ろして、メモ帳に何か書き出す。ふっと顔を上げて「赤城様も腰を下ろして楽にして下さい。儀体の完成に十分ほどかかります」と言う。僕は素直に腰を下ろした。アリスお姉さんはメモ帳を千切ると丁寧にたたみ、僕に手渡した。
「センターを出たら見て下さいね♪」
 妖しい笑顔で言う。僕はシャツのポケットにメモ帳を仕舞った。全裸のままである。この羞恥プレイは何時になったら終わるんだと思った。その時、ブザー音が鳴った。
 ホログラムの男性が一瞬消えたかと思うと、また、現れた。それは理想の僕の姿をしていた。ソフトマッチョの憂いのある美青年だ。
「確認して下さい。不都合な所があれば修正します」
 僕はまじまじとホログラムの青年をあらゆる角度から観察する。非の打ち所がない。完璧に僕の理想だ。
「完璧です。文句のつけようがありません」
「良かったですわ。ではこちらにサインをお願いします」
 アリスお姉さんはタブレット端末を僕に渡す。専用のペンでサインする。
「では、アルゴにダイブして頂きます。こちらのカプセルに入って下さい」
 銀色の2メートル程の長さのカプセルが半分開いている。
「アルゴへのダイブには『電気椅子』に拘束されるんじゃないんですか?」
「今週から導入された新しいシステムです。専用回線を引いているコアユーザーなら今も『電気椅子』ですけどね」
 アリスお姉さんはカプセルに横たわるよう指示したので、それに従った。頭部にバイオメットが取り付けられる。取り付けが終わるとカプセルが閉じて緑の液体が流入してくる。呼吸が出来ないと焦ったが、アリスお姉さんの優しい声が「怯えなくて良いです。グリーンスープが肺を満たせば普通に呼吸できます」LCLの様なものかと思う。実際、苦しむこと無くグリーンスープは肺を満たし、普通に呼吸が出来た。
「今からダイブを開始します。『アルゴ』の世界にようこそ」
 アリスお姉さんの声は遠く聞こえた。僕は白い煙突の内側を凄い勢いで上昇するのを感じた。堪らないと思った時に上昇は収まり、今度は落下が始まった。落下傘無しで飛行機から飛び降りた心地がした。落下が止まったと思った時、僕は新しい肉体で目覚めていた。
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