『それじゃあ明日、小説の感想聞かせてよ』
『ああ、それじゃあな』
『じゃあね、グスタフ君』
僕はチャットをしていたブラウザを閉じてから、パソコンの電源を切った。
こんな簡単に異文化交流ができるんだから、便利な世の中なものだ。
彼、グスタフ君との異文化交流の始まりは、二月ほど前のこと。
『俺は英語使ってるけどドイツ人なんだ』
ある交流チャットサイトで出会った、グスタフというハンドルネームの彼は、自らをドイツ人だと言った。
最初はちょっと戸惑ってたけど、会話を重ねるうちにグスタフ君も僕と同類だと分かった。
すなわち、グスタフ君もアホだと。
そうと分かってから、僕らはソウルパートナーとなったんだ。
そんなソウルパートナーが今日、僕の書いてる小説を読みたいと言ってきた。
もちろんドイツ人のグスタフ君は日本語が分からないし、僕もドイツ語は分からないから、いつもは英語で会話をする。
だから最初は日本語で書いた小説を英語に直そうと思ったけど、小説というのは母国語で読まないと、描写の良し悪しがあまり分からないものだった。
――ということで、インターネットの翻訳サイトで小説をドイツ語に翻訳したんだ。
まあ、上手に翻訳できてるか全然分からなかったけど、とりあえず送った小説の感想を明日もらえることになっている。
……ああ、なんだか緊張するけど、明日が楽しみだな……。
『これ、何なんだよ? 小説になってねえな』
次の日のグスタフ君の第一声がそれだった。
『小説になってないって!? 確かにまだまだ程度は低いけど、それはひどいんじゃない!?』
小説になってないというのは、ひどすぎる。
拙い文だけど、一生懸命書いたって言うのに……。
『いや……普通におかしい部分があるだろ。「月光もがきを反映する好色な黒人」とか』
はて? そんな意味不明な文を僕は書いただろうか?
思い当たる節はな…………あった、翻訳したときだ。
『ちょ、ちょっとまって』
僕はグスタフ君をそう呼び止めて、急いで昨日の翻訳サイトで再翻訳を試みた。
〜ケース一〜
(ゴキブリ帝国より)
BEFORE
そして月の光がサっと辺りを照らしたとき、俺は死を覚悟した。
月の光を反射した艶っぽい黒が蠢いていて、何千匹、いや何万匹いるかもわからないそれらが、徐々に迫ってくる。
そう、視界に映るのは、あたり一面のゴキブリ。
AFTER
そして、月光がSaの付近を照らしたとき、私は死を決心していました。
月光もがきを反映する好色な黒人。 それら、あるかどうか理解しないように、徐々にアプローチしてください。
それはしたがってそれの周りの1つが視点に反映するゴキブリです。
〜ケース二〜
(ゴキブリ帝国より)
BEFORE
「佐藤はじめ、です。」
頭を下げて一応名乗る。
AFTER
「佐藤始め時点」
それは一時までに自らに応しているお辞儀を導入します。
〜ケース三〜
(ゴキブリ帝国より)
BEFORE
俺は廊下を走っている。
廊下の角で美少女とぶつかるために。
打ち合わせ通り、角のところで軽い衝撃。
わざとらしくたじろいでみるものの、気分はさめたまま。
「だっ大丈夫ですか?」
AFTER
私は通路で走っています。
通路の角でニンフを打ちつけるために。
ミーティングに従った角の軽い衝撃。
それですが、しりごみは不自然に気持ちをもって目覚めました。
「Daiは強いですか?」
〜ケース四〜
(ゴキブリ帝国より)
BEFORE
「えーそれでは、新郎の入場です」
AFTER
「そして、それは食物の花婿の入り口です」
〜ケース五〜
(使い捨ての筆より)
BEFORE
『ああっ、僕、そ、そこはダメなんですっ……あっ、お、おしりは、おしりは、そんなの入らな(以下自粛』
AFTER
『印刷してください、おお。ずっと、いいぞ……かかる、ヒップヒップそのようなもの…… 飲み物……自粛』
〜ケース六〜
(末恐ろしい子供達より)
BEFORE
ここはひとつ、いままで培ってきた知識と技を見せつけてやりましょう。はい。
ただ、息子さんの体調面も考えて、少し手加減をしてあげると良いかもしれませんね。
AFTER
ここで、知識とこれまで奨励された1つのテクニックが目立とうとします。 はい。
しかしながら、息子の物理的な状態側面について考えながら、小遣いを少し取るのは十分であるかもしれません。
〜ケース七〜
(設定限界より)
BEFORE
顔中ふくれあがった学友が、唯一無事であった鼻を掻きながら切り出した。
「いくら小説に面白い設定が必要だからって、何でも詰め込めば良いってもんじゃないんだよ」
AFTER
表面内部は膨らみました、そして、上がった学友は彼の唯一の安全な鼻を引っ掻いている間、それを切り取りました。
「小説に必要などのくらいのおもしろい設定のために、何のパッキングでも持っているだけであるか」
〜ケース八〜
(設定限界より)
BEFORE
俺が渾身の力をこめて書いた小説を見せると、親友はなぜか絶叫した。
AFTER
私が小説であったときに、親友は射精しました。
「……なんだこれぇっ!?」
ストーリーが変わってるし、意味不明じゃないか!?
そう思って翻訳サイトをよく見れば、下のほうに小さく但し書きがある。
『情報の正確性や内容に問題がある、および不快感を与える表現があったとしても、当方は一切の責任を負いかねます』
……………………。
『ごめん、グスタフ君。今度は英語で送るよ』
『……ああ、楽しみにしてるよ』
――僕は、いくら便利でも翻訳は自分でやるべきものだと悟ったのだった。
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