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第28話「影,そして選択」
ついに5日目。
今日はゆりに俺の決断を伝えねばならない。
校長室に向かっていると,外が騒がしいのに気づいた。

「何だ,あれは?」
運動場を見て,その異様な光景に目を奪われてしまった。

数名の戦線メンバーが銃で対抗していた。
その目の前には黒い影のようなものがいた。

しばらく銃で撃たれると影はあとかたもなく消えていった。

その直後,連絡が入る。
「単独行動をせずに,最低でも2人1組で行動してください。影を天使とは別の敵性勢力として対処し,警戒態勢を常にお願いします。」

その声を聞いて思わずビクッとなった。
遊佐の声だったからだ。

影というのは先ほど倒されたやつだろうか。
冷静に考えると他にも影はいるようだな。しかも天使とは別の敵対勢力って。この世界も変になったのか?

とりあえず誰かと合流して・・・
「ワイと組まへんか?」
この声は・・・鶴野か。

こいつと一緒!?駄目だ確実にやられる。
そう思っていたその時,再び運動場で銃声が鳴り響いた。

「行くぞ!!」
「おうやで!!」
運動場へ走る。

走りながらショットガンの弾をこめ,影を撃っていく。
「助けに来た。」

「・・・助かる。」
椎名がそう呟いた。
鶴野も鉄製のハリセンで影を叩き潰していく。意外と破壊力あるんだな。

その時,
「えっ?」
視界に白い羽を生やした天使,立華奏が舞い降りてきた。
その後にゆり,音無,日向,直井もやってきた。

「加勢などいらん。」
野田がハルバードを構えて言う。
「まぁ,そう言うなって。」
銃を構えながら日向が言う。

椎名は見事な早業で影を倒していく。
TKは華麗な動きで攻撃をかわしつつ,銃で影を倒していった。
直井は両手に銃を持ち,堂々と歩きながら銃を撃っている。
天使はバッサバッサと近づいてくる影を切りまくっていた。

野田はハルバードを振り回している。
時々仲間にあたりそうになっていた。

そうこうしている間に影の数は減っていき,野田の一振りと俺の銃弾が影に当たり,あたりに影はいなくなっていた。

「みんな無事か?」
「あぁ・・・。」
みんな息を切らして疲れている。

「なんなんだよあいつら。化物かよ。」
「あんな不気味な存在この世界にはいなかったぞ。」
「あいつらはなにがしたいんだよ?」
「これは悪夢か?」
「誘い乱れるカーニバール。」

「この世界に長く居過ぎたのかしら。」
ゆりが呟く。
「どういうことだ?」
「ゲームでよくあるじゃない。永久阻止のために出てくる無敵モンスター。」

「にしても,まるで味方ね。」
ゆりが天使を見て言う。

「おーい,おーい!!」
「藤巻!!」
藤巻が慌ててこっちに走ってくる。

「高松が・・・高松がやられちまった!!」



学習棟・渡り廊下

「僕見たんだ。あの影に食われるところを。僕が出くわした時にはもう影に全身覆われていて,最後には地面に飲み込まれていった。」
大山が感情を必死に抑えながら言う。

「イレギュラーすぎる。」

「ちょっとアオバ君。」
それぞれ解散していると,ゆりに呼び止められる。
「この間のこと(遊佐のこと)だけどちょっと待って上げるわ。」
おそらく影のことがそれほど深刻な問題であるのだろう。

「だけど決めたらすぐに言って。私も少しは力になるから。」
そう言ってゆりは立ち去って行った。



翌日・・・
「高松がいたぞ。」
校長室にいた俺らに野田が伝えにきた。

教室では,高松が一般生徒の格好をして,席に座っていた。
話しかけるが,いつもと違う。眼鏡も掛けていないが,何より記憶が無いようだった。

その後階段にてゆりは座って話し始めた。
「何が起きたかわかったわ。彼,NPCになっちゃたのよ。彼の魂はおそらくあの影に喰われちゃったのよ。」

「それってどういうことだよ。あいつの魂は消えることも出来ずに永遠にああやってここで授業を受け続けるって事か!?」
「そういうことよ。」
日向の問いに,ゆりが淡々と答える。

「こんなことが起こりうるのか,この世界は。」
「これじゃぁ天使に消されちまったほうがマシじゃねぇか。」
「しかも影は増殖を始めているようだが。」
「ねぇ,どうすればいいの?ゆりっぺ!!」
そしてゆりは一つの決断を下した。



体育館

ゆりがステージの上で,集まった戦線メンバーに現在の状況を説明していた。
「この世界に異変がおき始めている。天使とは異なる敵の出現。まんまでなんだけど“影”と呼んでいる。天使と違って神出鬼没で無差別に攻撃を仕掛けてくる。影に喰われたものは魂を失い毎日授業を受けるNPCと化す。」

「現在,無制限で増殖中。原因は不明。打開策も今のところなし。先に,遊佐さんに告げてもらったように,集団行動で身を守るしかない。」

「さて,こうした危機に瀕する中,この死んだ世界戦線に別の思想を持つもの達が現れ,戦線を新たな道に導こうとしている。その道は現在の危機回避の一つの選択支にも成りえる。なので,そちらの代表として・・・音無君堂々とここでその思いを語ってもらおうかしら。」

周りがざわめき始める中,音無が前に出て,語りだす。

否定する者もいたが,
「ユイは見つけた。俺みたいな人間の屑のまま死んできたヤツでもさ,この世界でユイに与えてやることができた。」
「僕もです。僕は神ですが,それでも音無さんだけが僕に人の心を取り戻させてくれた。経った一言掛けてくれた・・・ねぎらいの言葉で。」
日向と直井が自分の考えを伝える。

「俺も・・・俺にだってこの世界で大切なものが出来た。そして大切なものを守りたいと思えた。いや,絶対に守ると,今ここで誓う。」
俺も自分の考えを伝えた。ゆり,これが俺の答えだ。

それを察したのかゆりは俺を見て軽く微笑み,戦線メンバーに視線を向け,
「どの道を選ぶかは,皆に任せるわ。」
と言った。

「ゆりっぺは?ゆりっぺはどうするんだ?」
誰かが言った。
「私?私はいつだって勝手だったし,あなた達を守りやしないし,あたしがしたいようにするだけよ。」
ゆりは足を組みながら言った。

「あまり時間は無いわ。各自よく考えておいて。以上解散。」



皆が立ち去り,残ったのは俺,ゆり,音無,日向,直井,鶴野の6人のみ。
「あなたの思いは受け取ったわ。途中まで護衛として,鶴野君をつけておくから。それと,遊佐なら多分屋上に行ったと思う。」

「ありがとう。」

「何言ってんのよ。そういうのは大事な人のためにとって置きなさい。じゃぁ,健闘を祈るわ。」
「おう。」
ゆりと俺は互いの拳を出し,コツンと当てた。





いかがでしたか?
あと3,4話で終わる予定です。
クライマックスまで読んでいただけたらありがたいです。
次回もお楽しみに。


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