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ラブカクテルス その17
作:風 雷人


いらっしゃいませ。
どうぞこちらへ。
本日はいかがなさいますか?
甘い香りのバイオレットフィズ?
それとも、危険な香りのテキーラサンライズ?
はたまた、大人の香りのマティーニ?

わかりました。本日のスペシャルですね。
少々お待ちください。
本日のカクテルの名前は最高の願いでございます。

ごゆっくりどうぞ。


私は散歩をしていた。すると道の真ん中に何かが置いてあるのに気付いた。
なんだろう?
もう少し近づいて見ると、それが石であることが分かった。
なんでこんなところに石が?
覗き込んだ瞬間、私は悲鳴を挙げて、その石を蹴り上げた。
ちょうど私の反対側の死角になっていたところに白い蛇がいたからだった。
私が石を蹴り飛ばすと白い蛇はため息をついて、私の前に出て来た。
私はまた悲鳴を挙げて、そこから逃げようとすると、待ちなさいっと、声がした。
えっ、私はその声に思わず立ち止まり、振り返るとそこには、な、な、なんとさっきの白い蛇が喋っていたのだった。
その白い蛇は私に頭をペコリと下げると、また喋り出した。
お嬢さん、助けいただいてありがとうございます。いやいや痛かったですよ。あんな大きな石が蛇の上に乗っていてごらんなさい。それはそれはひどい話だとは思いませんか?
蛇は意外とやかましかった。
私はナゼ蛇が喋っているのか聞くのを忘れるくらいに呆れた。
蛇は首を傾げた私に、得意気な顔してまたベラベラと話し始めた。
お嬢さん。蛇が喋っているから開いた口が塞がらないみたいですね。
でも、こう見えても私はこの辺じゃちょっと有名な神様なのですよ。
そういえば、この先を行った丘の上に古い神社があって、そこの神社の名前が白蛇神社とかいうことを、ふと、思い出した。
あそこの神社は昔々、大昔にこの辺が大干ばつになったことがあり、困ったお百姓さんたちが山にいるという伝説の白い蛇を探して神頼みをした。
白い蛇は神社を建てて白蛇を奉り、末代まで崇めるならと雨を降らしたそうだ。
そんな言い伝えを思い出したが、このおかしな白蛇がそうなのだろうか?
白い蛇は赤い舌をペロペロさせて私に言った。
丁度この辺の神の集まりがあったんですが、帰り道にいきなり落石にやられて困ってたんですよね。助かった助かった。
神でも不運はあるのかと、私は複雑な気持ちになった。
白い蛇は、助けてくれたお礼に何か一つ願いを叶えてやると言ってきた。
私は、えっ、本当に。と目を輝かすと、白い蛇は舌をまた、誇らし気にペロペロさせて、神は嘘付かないと言った。
私は考えた。
何を頼もうか。
白い蛇は言う。雨か?それともお金か?地位や名誉なんかも大丈夫だし、ほら、永遠の若さや、世界一の美貌とか、なんでもいいぞ。
横でうるさく急かしてくる。
私はしばらく悩んで閃いた。
その様子を見て白い蛇も身を乗り出す。
私は本当になんでもいいのかと再度確認すると、白い蛇はくどいと言った。
私はしたい事がいっぱいあって決められない。だから私の願いは、願い事を百回叶えてほしい。と言った。
白い蛇はペロペロさせていた舌を止めて、固まった。
そして、それは駄目と言いかけたところを、嘘付くの?と抑えつけると、白い蛇はトグロを巻いてうなだれた。
そして、お譲さん、あんたってずるい。
と言ってまた舌をペロペロさせたのであった。

それから私の傍にはいつも白い蛇がいるようになった。だって百回の願い事を叶えるのは、そんな直ぐにできる事じゃない。

とりあえず、私は試しに一つ願い事を思い付き、白い蛇に言った。
ねぇ、白い蛇の神様、お願い事をしたいのだけれど。
白い蛇はいやいや近寄ってきて何だい?と言った。
ふてぶてしいその態度にカチンときたが、一応神様だ。私は自分を抑えた。
私は、小さい頃からの夢があった。
白い蛇の神様、私、学校のプールの中をね、ゼリーでいっぱいに埋めてみたいんだけれど。
白い蛇はまた舌のペロペロを止めた。
そして私にゼリーって何だい?と聞いてきた。
私はため息を付いた。神のクセにそんな事もしらないのか。
私は白い蛇の神様に少し待つように言って、コンビニでお気に入りのコーヒーゼリーを買って、一口食わせてみた。すると、白い蛇の神様は飛び上がって喜んだ。うまい。
白い蛇の神様は、私に着いてくるように言うと、ニョロニョロと小学校に向かった。

小学校のプールに着くと、白い蛇の神様は、いきなり力み出した。
すると、なんと白い蛇の神様は、柄が白い蛇の杖になった。そして私にその杖を空に向かって三回振って、願い事を叫ぶように言った。
私は言う通りにやってみた。すると、空から雷が光り、目の前のプールに落ちてきた。
私は驚き、身を縮めた。
そして、目を恐る恐る開けてみると、なんとプールはコーヒーゼリーだった。
私はまた驚いた。凄い。
白い蛇の神様はいつの間にか杖から蛇に戻っていて、背筋をピンと張って誇ら気に言った。
どうだい、大したものでしょう。
私は感激し、礼を言うと同時にゼリーのプールに飛び込んだ。
その上ときたら、想像通りのプルンプルンで、なにしろよく滑った。
私は仰向けになって、泳ぐ様に体を滑らせたり、その上で跳ねたりと、まるで子供みたいにハシャいだ。
プールサイドでそれを見ている白い蛇の神様は、舌をペロペロさせていたので、一緒に来るように誘った。
白い蛇の神様はまんざらでもないらしく、楽し気にニョロニョロとゼリーの上を滑っている。
そして、いよいよ二人?はゼリーを食べることにしたのである。

二人とも飛び込み台に立って、ヨーイドンでゼリーに頭から飛び込み、ガブガブとプールいっぱいのコーヒーゼリーを食べた。
うまかった。最高だ。
私は体を大の字にして、白い蛇の神様は一文字にして、プールに寝転び、その幸せを実感した。
私は、白い蛇の神様にちょっとしたあだ名を考えた。
それがペロちゃんだった。
蛇などあまり好きではなかった。むしろ苦手だったが、白い蛇の神様のおかげで、舌をペロペロさせる仕草がとても可愛いらしく思えるようになった。
そこで、私は白い蛇の神様にペロと呼んでもいいかと聞くと、罰当たりだなー、全く。と言いながら笑っていたので、それ以来白い蛇の神様はペロちゃんになった。

それからも、私はペロちゃんと一緒にいろいろな事をした。
ある時は各地の遊園地にあるジェットコースターのレールを繋ぎ合わせて、グルグル回るコーヒーカップで滑ってみたり、またある時は雲に乗って世界の空を散歩したり、またまたある時は、水の上を走る車で太平洋をドライブしたり、他に、透明になって各地の秘密基地を覗いてみたり、タイムマシンに乗って時間の旅をしたり、小さくなって人の体の中を見て廻ったり、薄くなって凧になってみたり、丸くなって山の天辺から転がってみたり。
それから、欲しい物も色々手に入れた。
お菓子でできてる家や、色々なお話の王子様。世界一大きいダイヤなどの宝石色々。
どれもこれも楽しい事ばかりだった。

そしていよいよ百回の願い事の最後の一回になった。
私はいままでいろいろやってきた事を思い出した。
どれも楽しかった。
私はペロちゃんに最後のお願いを言った。
それは
ねぇ、ペロちゃん。私の記憶をペロちゃんに会う前に戻してくれない?
だって、私は欲しいものがなんでも手に入ってしまったし、したいと思ったことは全てやってしまって、これからの人生がつまらな過ぎるもの。
だから、また私は私で人生を楽しみたいの。
それを聞いたペロちゃんはキョトンとした顔を少し緩ませて笑った。
そして、私にとても楽しかったよと言って、私を元の私に戻した。

私は散歩をしていた。道の真ん中に石が落ちていた。
なんだろう?覗いて見ると、なんのことはないただの石だった。
しかし、ふとその石を見てその先にある白蛇神社にお参りに行きたくなった。
なぜだろう。
そう考えながらも足は神社に向かっていたのだった。

おしまい。


いかがでしたか?
今日のオススメのカクテルの味は。
またのご来店、心よりお待ち申し上げております。では。














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