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パンツ売りの男

作者: 夏川優希



 金が欲しい。

 小遣い程度で良い。ちょっとだけ良い飯が食えるような、その程度の金。しかし副業に割く時間はない。働かずしてなにか金を得る良い方法はないだろうか。


 そこで考えたのがネットでパンツを売るという方法だ。

 むろん俺の男臭いパンツなどに価値が付くはずもない。俺は居もしない偽りの妹を作り上げ、そのパンツを拝借しては売っているという設定をこしらえた。

 さっそく通販で下着を購入する。ピンク色でリボンのついた可愛いやつをチョイスした。

 しかし流石に新品では具合が悪い。こういうのをわざわざ購入するような奴は下着についたシミや匂いに美を見出すのだ。新品のパンツに大枚叩く男はいない。


 そこで、俺はパンツを履くことにした。


 より深い香りをつけるためにランニングやジムで汗を流し、より中古感を出すためにパンツを尻に擦りつけた。

 そうしてできた特製パンツは、百戦錬磨の凄みを感じさせる良い仕上がり。ずっと一緒にいたせいで情が湧いてしまい、手放すのが惜しくなったがそこは我慢だ。

 さっそくネットでパンツが欲しい紳士とパンツを売りたい淑女の集まるサイトを訪れ、引き取り手を探す。思ったより早くパンツを買いたいという人が現れてくれた。

 希望者が一人しかいなかったのであまり高値にはならなかったが、初めてにしては上出来だろう。

 俺は嫁に行く娘を見送る親のような気持ちでパンツを発送した。





 発送した次の日、レビューがついたとの連絡があった。

 このサイトには購入者が販売者にレビューを付けることができる制度があり、良い評価をされればみんなから信頼されてパンツの価格も上がるという寸法だ。

 新参者の俺にとってこのレビューは今後のパンツ価格を左右する重要なレビュー。緊張しつつ画面を開く。


『評価:とても良い』

『素晴らしいパンティーでした。よく使い込まれていてとても良いです、香りも素晴らしい』


 やった!

 思わずパソコンの前でガッツポーズをする。

 この評価ならば次のパンツもすぐに売れることだろう。俺はさらに続くレビューに再び目をやった。


『箱を開けた瞬間濃厚な雄の匂いが立ち上り、むせ返るようでした』


 ……まてよ、「雄」?

 確かに雄の匂いには違いないが、設定は女子高生のはず。


『ジムやランニングの時にも履いておられたお陰で汗の香りも楽しめます。いやぁ、目を付けておいてよかった』


 背筋に冷たいものを感じる。

 コイツ、俺のことを知っているのか? 知っていながら俺の履いたパンツを買った?


『あー、なんだか我慢できなくなってきました。今から伺います』


 その時、ふいにドアのノブが回る音がした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 奇抜なタイトルに引き込まれ、意外な結末にあっと驚かされました。 とても面白かったです。
[一言] 怖え。。。
2015/05/08 14:43 退会済み
管理
[一言] 起承転結がしっかり出来ていていい作品ですね(^○^) パンツを売るという発想が面白くて好きですw
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