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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-034 ちゃんと伝えた


 砂ぼこりが風で薄らいでいく。
 バリアントの群れの中をゆっくりと歩いてくる一団を見付けて、私は手を振ってしまった。
 向こうも気が付いたらしく私に向かって手を振ってくれる。
 良かった。やはりアキトさん達は不死身の存在らしい。でもどうやって脱出したんだろう。ストーパが崩れる時には、アキトさん達は開口部には現れていなかったんだけど……。
 理由はともかく、今はアキトさん達の無事な姿を見られただけで十分だ。
 後ろを振り返ったら、ヴォルテンさん達が私に笑顔で頷いてくれた。1人だけではしゃいだ様な気もするから、ちょっと恥ずかしかったけど、皆も嬉しかったに違いない。

「周囲3M(450m)に敵対生物はおりません。今日はここで野宿することになるでしょう」
「アキトさん達の今後の予定はその時に聞けば良いわね」

 バリアントの群れは、ストーパを中心に集まっていたのだが、少しずつ東と南に移動しているようにも見える。バリアントの集まる理由が無くなったということなんだろうか? それがアキトさん達のやって来たことなのかもしれない。
 私達の手に負えない魔物、魔物を集める仕掛けや魔物を生み出す仕掛けの破壊……。いったいこの世界にそんな施設がどれだけあるんだろう。
 アキトさん達がモスレム王国を去って数十年が過ぎたらしいけど、その間にどれだけの施設を破壊したんだろう。
 そのまま放っておくという選択をしなかったのがアキトさんらしいと言えばそうなんだろうけど、おばあちゃんたちはずっと帰りを待っていたはずだ。

 30分ほど過ぎたところで、私達がいる岩の上に1人の青年と、4人の娘さん、それに1人の少女が上がって来た。
 私の家のリビングよりも大きな岩だから、全員が座っても問題はない。キャシーさんがアキトさん達が取り出したカップにお茶を注いで一回りしている。

「それにしても、こんな場所までやってくるハンターがいたとはのう。しかも上が黒で下は赤とは信じられん話であった」
 少女のきつい目が私達に突き刺さる。
 ひょっとして、この少女がおばあちゃんが言っていたアルト姉さんということなんだろうか?
『気位が高いけど、それは元はお姫様だったからよ。でも心根は優しい人なの』と教えてくれた小さな女の子だ。
「まあまあ、小言を言うよりは、理由を聞かせてもらった方が良いんじゃないかな。4人でここまで来たというのは単なる物好きでなさそうだしね」
 そう言ってくれた青年になりかけに見える男性がアキトさんに違いない。
 アキトさんの隣に座った女性はのほほんとした表情で私達を見ているし、その隣の女性2人にはフラウさんが一緒に座っている。

「発端は、ここにいるネコ族の娘の願いだ。彼女に話してもらうのが筋だろうな」
 リードさんの言葉に、全員が私を見る。思わず顔を伏せて顔を赤くしてしまった。

「実は……。おばあちゃんから依頼を受けたんです。アキトさんを探してくれと、見付けたら、一言伝えてほしい『ミーアは幸せでした』と……」
 そこまでしか言えなかった。後はエグエグと泣き声になってしまった。
 そんな私の肩をキャシーさんが優しく抱いてくれる。

「そうか……。そうよね。あれからだいぶ時が流れてしまったもの」
「サーシャちゃんやリムちゃんもかな?」
「サーシャ様はミーア様から1年前にバジュラの中に入りました。リム様も、旅の途中でミーナが感じたようです」

 しばらく沈黙が続いた。
 私は、一番聞きたいことを口にする。

「アキトさん。帰ってください。すでにおばあちゃんはおりませんが、私達がいます」
「ミーナちゃんって言うんだ。ミーアちゃんとは?」
「孫になります。隣のキャシーさんはラミア女王のお孫さんですし、ヴォルテンさんはアルト様のお孫さんです」

 私の言葉に一番驚いてたのはアルトさんだった。思わず、立ち上がるとヴォルテンさんの周囲をぐるぐると巡っている。
「オーロラはきちんと仕込んだのじゃが、息子を甘やかしおったようじゃ。やはり根本的に鍛え直さねばなるまい」
「私達の旅の支度は、アリスさんにも助けていただきました。皆、アキトさん達が戻ってくるのを待ってます」

「アキトの3人の子供達がそれぞれの思いで4人を助けてくれたのね。まだまだ終わることはないんだけど、これ以上の破壊はあまり意味をなさないかもしれないわ」
「テーバイの東でなんとかなるだろう。あの防壁は強力だ。狩猟民の定着を図って戦力を蓄えれば何とかなると思うが?」

 フラウさんの隣の娘さんは、男言葉だ。端正な顔なんだけど、どこで間違ったんだろう?
「そうだな。もう少し早く止めておけばミーアちゃん達に別れも告げられただろうが、そんな事態で俺は別れを告げられたとは思えない。良い子だったんだけどね」
「ああ、いろんな意味で良い子だったぞ。ある意味、俺達に課せられた罰にも思える時がある。罰と思えばこの世界を恨みたくなるだろうが、この世界のためにこのような姿となったと思えば腹も立つまい。いつまでも嬢ちゃん達の子孫を見守って行けば良い」

「私も自信がないわ。モスレムに戻ってもアテーナイ様はいないでしょうし、クオークさんもいないでしょうね。ミケランさんは亡くなったかもしれないけど、ミクやミトは元気かも!」
「ミク達の子供がハンターになっておれば、我らが鍛えねばなるまい。セリウスやミケランには色々と世話になってしもうた」

「アキト、やはり帰ろう。俺達はここまでやったんだ。少なくとも将来の戦を少しは有利にできる」
「そうだな。事前の準備には終わりがない。妥協点としては良いところだろう。気になるようなら、また短期に調査すれば良い」

 その夜は残った食糧で少し贅沢な食事を作る。
 リードさんがバッグのそこから取り出したのは酒のようだ。皆でカップに半分ほど貰って乾杯をした。
 ようやくおばあちゃんの依頼を成し遂げた。
 私胸を張っておばあちゃんに報告することができる。
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 帰りの旅は快適そのものだった。
 ディーさん達の周辺監視能力は私を超えているし、獣や魔物が出てもアキトさん達の敵にはならない。
 暴君を倒したのは、おばあちゃんから譲られたグルカの柄でわかるんだけど、実際のアキトさんの狩を見ればその時の姿を脳裏に浮かべられそうだ。
 動きにまったく無駄がない。しかも、相手に襲わせてその動きを利用して反撃するのだ。
 ユングさん達は変わった武器を使う。小さな金属製の物体だが仕掛けがあるらしく、高速の金属の弾を放つらしい。
 そんな2人をアルトさん達が見て批評しているんだけど、結構辛口だ。
 もうちょっと踏み出して、一気に斬り込めとか、あれは待つのではなくこっちから攻めるべきじゃ、なんて言われている。
 何となくアキトさんの立ち位置が理解できるけど、おばあちゃんが一番信頼していたんだよね。

「ところで、あの中で一番強いのはアキトどのなのか?」
「いや、ミズキ殿らしい。練習試合でミズキ殿はアキト殿の胸を2度も手で貫いている。戦姫と言われた御婆様の話だから間違いないところだ」
 ヴォルテンさんの言葉に私もリードさんと一緒に後ろを歩くミズキさんを振り返ってしまった。
「なぁに?」という感じで私達に笑顔を返してくれたけど、リードさんの顔は少し青ざめている。
 リザル族の人達に表情があるとは思わなかったけど、旅を通してだいぶ理解できるようになっていた。結構、感情が豊かなんだよね。
 それにしても、顔を青ざめるとは……。

「確かに一番かもしれん。あの歩く姿でさえスキがどこにもない。それに殺気にはさっきで返してきたが、今でも背中がぞくぞくするぞ」
「変な気を起こすなよ。御婆様が言っていた。絶対にミズキを怒らせてはならん! とな」
「ミズキさんについてはおばあちゃんが教えてくれたわ。私達のお母さんが生まれる時にミズキさんが2人の赤ちゃんを運んできてくれたって!」

 2人が私をじろりと見たけど、それはおばあちゃんに付いていた副官さんが教えてくれたんだ。無線機でアキトさんのところから問い合わせがあったらしい。生まれた双子の名前は? ということなんだけど、その時の様子をアキトさんが見ていたらしい。同じ日に生んだサーシャおばあちゃんも同じことを教えてくれた。

「本当なら、神の眷属ということになるぞ」
「とりあえずそっとしておこう。触らぬ神に祟りなしって聞いたぞ」
 変な方向で納得しているけど、私は良いお姉さんに思える。だって、おばあちゃん達3人とも、ミズキさんを悪く言う人は1人もいない。サーシャおばあちゃんはミズキさんを超えようと努力したみたいだけど、その壁はとても厚いと私に教えてくれた。

 2カ月ほど掛かって、テーバイの東にある大きな堤防に着いた。
 壁ではなく堤防と呼ぶのはオーロラ様の予知夢からだそうだ。どんな洪水の夢を見たのだろう。アキトさん達も堤防と呼ぶことに戸惑いはない。となると、アキトさんはこの堤防が何を防ぐかを知っていることになる。
 だけど、今は何も言わないところを見ると、その大きな災厄はまだ先のことなんだろう。
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