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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-031 陸のウミウシ


 2人ずつ交代で睡眠をとる。
 階段付近には不思議と魔物が出てこない。でも、出ない方が不自然だということで交代で眠りについた。
 横になっても、振動がたまに床から伝わってくる。
 原因が分からないのが一番怖いというのは本当だと思うけど、疲れていたに違いない。いつしか私は眠りに入ったようだ。

 おいしそうなスープに匂いで目が覚めた。
 私が体を起こすと、3人がお茶を飲みながら微笑んでいる。

「済みません。寝過ごしたみたいです」
「良いの。気にしないで。それより食事にしましょう。次の階には、あの殻付きバリアントはいないと思うわ」

 スープとパンを受けとりながら、私は小さく頷いた。納得できるのが不思議なんだけど、階ごとに魔物が違っている。
 だんだんと見たことがある魔物や獣によく似た魔物になってきたようにも思える。それだけ地上への出口に近づいたのだろうか?

「お茶が済み次第出発だ。今度は面倒な奴じゃないことを祈るばかりだな」
「面倒でも先に進まねばなるまい。振動は今でも続いている。小さくはなったが、頻度が増えていることが心配だ」

 ジッとしていなければわからないほどの小さな振動だ。昨日と比べてかなり小さくはなったけど、相変わらずアキトさん達は戦っているのだろうか。
 光球を私とキャシーさんが1個ずつ作ると、キャシーさんの作った光球を先行させる。
 すぐ後を槍を持ったヴォルテンさんが続く。私とキャシーさんは最後尾だ。
私の作った光球が私達を追い掛けるように付いてくる。

「今度の階は、階段を2つ折れただけだな。やはり先ほどまでの階が特殊だったのかもしれない」
 先を行くヴォルテンさん達の会話が届く。
 何か、ちょっと安心できそうに思えるね。キャシーさんと顔を見合わせて小さく頷く。
「次は何かしら? バリアントも本当なら、子供達の遊び相手なんだけど」
「ですよねぇ……」
 湿気のある暗がりにいる魔物なんだけど、大きさはお茶を飲むカップサイズだから、子供達が棒で突いて遊ぶんだよね。私もお姉さん達と一緒にだいぶ遊んだものだ。
 でも、この付近にいるバリアントは少し異なる。リードさんの背丈ほどもあるし、触手を鞭のように使ってくる。
 たぶんバリアントが通常なら最弱の魔物なんだろうけど、そうなると次の回廊に潜む魔物は何になるんだろう? 

「ほう……。さっそく出てきたぞ。ヴォルテン、どうするんだ?」
 リードさんが私達に振り返って言ったけど、回廊の先で光球の明かりに浮かんでいたのは大きなナメクジのような魔物だった。
「ウミウシか? だがあれは海の中にいるんだぞ」
「カラメル族の獲物ってことか? 確か背中にあるコアを狙うらしいが」
「聞いた話ではそうなるが、陸生のウミウシとなると、コアの位置が同じかどうかも分からん。それに、背中を狙うのは無理じゃないか?」

 ナメクジにしては綺麗な色彩をしているから、別の生き物になるんだろう。でも、胴体の太さだけで8D(2.4m)はありそうだ。全長は30D(9m)以上にもなるかもしれない。

「小さな口があるな。牙は無いが、攻撃手段が分からんぞ」
「眼の下にある触手を見てみろ。数本が伸び縮みしているから、あれが伸びてくると考えた方が良さそうだ」
 あまり嬉しくない会話が聞こえてくる。リードさんの後ろから顔を出して、相手をよく見てみるんだけど、ジッと見ているだけで腕に鳥肌が立ってくる。

「口の大きさが1D(30cm)もないわ。とりあえず、口に【メル】を打ち込んで見る?」
「このままではらちもあかない。やってくれるか」

 リードさんの答えに、キャシーさんが前に出た。
 私も、【メル】なら使えるから攻撃が有効なら手助けできそうだ。

 キャシーさんが魔導士の杖を持ち、気合のこもった【メル】も声とともに、少し収束された火炎弾がウミウシの小さな口に向かって飛んで行った。
 火炎弾の炸裂で、千切れた肉片と肉の焦げる匂いが辺りに満ちる。

「口が無くなったが、あまり変化がないな」
「やはり、弱点はコアということなんだろうな。困った話だ」
 ヴォルテンさん達の会話は、どこか他人ごとに聞こえてしまう。
「カラメル族は水中で槍を使うらしいぞ」
「ならば、攻撃そのものは容易だが、あの体が問題なんだよな。固い甲羅も問題だが、ウミウシの体は柔らかなヨロイとも表現されているらしいぞ」

 やわらかいヨロイなんて役に立つんだろうか? 
「長剣で斬るのが難しいらしいの。斬ろうとすると、そこだけ凹んじゃうらしいわよ」
 きょとんとしてリードさん達の会話を聞いていた私の耳元で、キャシーさんが小声で教えてくれた。

「槍なら1点だが、長剣となるとこれだけの幅があるのも問題なんだろう。案外突き刺すなら上手く行くかもしれん」
「引き抜くのが大変だろうよ。槍や銛が使われるのはそれを防ぐ手でもあるらしい。カラメル達もパーティで銛を打ち込むらしい」

 火の点いていないパイプを咥えたリードさんが私達に振り返った。
 どうするか皆で相談ってことなんだろうか?

「殻付きバリアントみたいに、あの口に爆裂球を放ってみましょうか?」
「さっきの【メル】で口付近は吹き飛んだが、あの通りだ。効果があるとは思えんな」
「ミーナの【メル】なら少しは効果があるかもしれんぞ。収束で小さくなるから、さらに体内に入り込むんじゃないか?」

 ヴォルテスさんの援護に、リードさんが振り返ってウミウシを見つめている。
 リードさんの心配は爆裂球の浪費にあるんだろう。しばらくすると小さく頷いてくれた。
 私の魔法はキャシーさんみたいにたくさん使えないけど、アテーナイ様に教わった収束効果で威力を高めることができる。
 とは言ってもね……。私でさえ、1発で倒せるとは思ってもいない。

「行きますよ……、【メル】!」
 親指の先ほどに小さくなった白く光る火炎弾がウミウシの口に吸い込まれたかと思うと、ボン! という炸裂音とともに、頭が半分ほど爆散した。

「やはり痛手を受けた様子はないな。生物ならあれで生きてはいないんだが……。やはり魔物の生命力は俺達を凌駕する」
 感心したような口調でリードさんが呟いている。ヴォルテンさんは次の手を考えあぐねているようだ。

「だが、あれだけ攻撃しても、襲ってこないのも不思議だな」
「そうでもないぞ。ゆっくりとだが近づいてくる。とは言ってもあの通りだ。お茶でも飲んで考えようぜ」

 キャシーさんがコンロでお茶を沸かし始めたので、私はウミウシの様子を見守ることにした。
 ヴォルテンさんの言う通り、確かに近づいてくる。だけど、まるでカタツムリが歩いているような感じだ。少しは早いかもしれないけど、10D(3m)の距離を進むまでに十分お茶を飲める時間が掛かりそうだ。

「それにしても困ったな。少しずつ削ることになるんだろうか?」
「時間が掛かりすぎる。振動はいまだに治まらん」

 リードさんが手に持ったカップを見つめている。私もカップを覗いたら、直ぐその原因が分かった。振動でカップのお茶に波紋が浮かんでいる。

「【メルト】も使えるけど、この場所では無理があるわ」
 キャシーさんの言葉にヴォルテンさんも頷いている。強力な魔法を小さな空間で使えば私達も巻き込まれかねない。

「やはり削ることになるかな? キャシーとミーナで代わる代わる【メルト】を放ってくれ。後は俺達2人で削れるだろう」
「コアの位置が分かれば、槍で一突きだ。面倒だが、他に方法があるとも思えん」

 それなら早めに……、ということで私達は再びウミウシの前に並んだ。
 最初はキャシーさんだ。【メル】の火炎弾が半分ほどに収束されて崩れた頭にぶつかる。
 3発も当たったからね。一瞬、ウミウシにけいれんが走るのが見えた。
 次は私の番だ。一番深くえぐられた傷口に向けて目一杯収束させた火炎弾を放った。炸裂する前に肉を焼きながら奥に向かっていったから少しは効くんじゃないかな。

「おいおい、あれは反則だよな」
 頭部を2Dほど、2人で交互に放つ【メル】で吹き飛ばしたら、背中からカタツムリのような目が伸びてきた。目と一緒に数本の触手も伸びている。

「別な場所に頭部が作られたってこと?」
「そんな感じだ。あの触手がどこまで伸びるかわからんが、一端中止して後ろに下がるぞ」
 私達は再び振り出しに戻った感じだ。
 それにしても、バリアント並みのでたらめな魔物だ。本来は海中にいるらしいんだけど、陸に上がったウミウシは私には無敵に思える。
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