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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-003 やってきた2人

 2日後に湖畔の小さな石の家を訪れたのは、お兄ちゃん位の歳の青年と異形の戦士だった。

 「母さんから呼び出されて、『父さんの消息を探す旅を手伝ってあげなさい』と言われてやって来ました。俺のお祖父さんになるんですよね。こっちからお願いしたい位です」
 「リードだ。アキト殿の捜索なら我らにも縁がある。一族の了承も得ている。我も同行するぞ」

 「ヴォルテンだけでは心細かったけど、リザル族の山岳猟兵が同行してくれるなら心強いわ。……それで、早速準備して欲しいのだけど、かなり遠いのよ。普段使っている魔法の袋では食料だけでも詰め込めないわ。ミレーネ、例の品を……」

 ヴォルテンさんは遠くで見たことがある。王都の若い女性の憧れを一身に集めている。私を見て微笑んでくれたけど、王都の友人に話しても信用してくれないんじゃないかな。
 身長6D(1.8m)で細い体格だが、武術の使い手であることはミーアお婆ちゃんから聞いている。
 もう1人は、革の上下を着たトカゲに見えなくもない。でも、彼等も連合王国の国民なのだ。
初めて見るけど、連合王国の北の守りである山岳猟兵の逸話は、お婆ちゃんから沢山聞かせてもらった。

 『姿はちょっと怖そうだけど、戦を好まない優しい種族よ。でも、リザル族はグライザムすら簡単に狩る程のハンターなのよ』

 そんな話を聞かされた。容姿で差別はするなと教えてくれたのだろうけど……。実際にテーブル越しに顔を合わせると怖そうな感じがして、思わず身を縮めてしまった。
 それでもおずおずと見上げると、優しそうな目が私を見ていた。
 自分のしたことに思わず顔を赤らめて、再び体を小さくしてしまった。

 「リード、そんなにジロジロ見るから女の子が怯えているぞ」
 「そうか? 気を付けよう。どこかであった気がするのだが、思い出せんのだ」

 「彼女のお婆ちゃんに会ったことある筈よ。月姫は知ってるでしょう?」

 リムお婆ちゃんはそう言いながら、私達にお茶のカップを運んでくれた。

 「では、今回の旅の同行者とは?」

 2人が改めて私を見た。
 驚きを通り越して、呆れているようにも見える。

 「ミーアちゃんの最後の願いはミーナちゃんに託されたわ。アキト兄様を探すようにとね。貴方達なら安心出来るんだけど……」

 リムお婆ちゃんが少女のように問いかける。
 お婆ちゃんだけど、お婆ちゃんには見えないからね。そんな悪戯好きな表情も似合うんだよね。

 「ですが、幼すぎます。たぶん王国の版図を離れているような人間を探すには少し問題がありませんか?」
 「サーシャちゃんの推薦でも? 生前サーシャちゃんが言っていたわ。『探せるならミーナ位じゃろう』ってね。私達もその言葉に納得したものだわ」

 「サーシャ殿の考えは我らには理解できん。だが、その結果は正にそのとおりだった」

 軍略の天才って皆に言われてたからね。その言葉を理解して軍を展開できるのは限られた人達だったらしい。説明するのが大変だったとお婆ちゃんが話してくれたことがある。

 「ひょっとして、この子の供に母さんは俺を選んだって事?」

 リムお婆ちゃんが、悪戯が成功したようににこりと微笑んで頷いた。

 「ミーアちゃんは赤4つ。本当なら私が付いていってあげたいけど……。私も、そろそろ準備しないと……。貴方は黒の5つ。それにお母さんから武術を習ったでしょう? それは、アキト兄様がオーロラに直伝した武術。連合王国でそれを学んだものは何人もいないわ」

 それって、あの不思議な体術のこと? 『【アクセル】と【ブースト】が必携よ』とお婆ちゃんが言って教えてくれたけど……。

 「確かにあれを何とかできたのは兄弟で俺1人だったけど……。リム婆ちゃんの言い付けに従えって言われたが、何年掛かるか分からないぞ」

 「ヴォルテンだけなら10年探しても見つからないわ。ミーナちゃんがいれば3年は掛からない筈よ。ミーアちゃんがアキト兄様を思う気持ちは、しっかりとミーナちゃんが受け継いでるわ」

 私なら見付けられるってそう言うことなの? でも、相手を思う心って遺伝するんだろうか?

 「母さんの言い付けは絶対だからな。リム婆ちゃんにも頼まれたら、嫌とは言えないよ。それで、大まかな場所ぐらいは分かるんだろうね」

 お婆ちゃんが地図を広げて指差した場所見て、ヴォルテンさん達が目を見開いた。
 指差した場所を中心に大きく指で丸く地図をなぞる。

 「たぶんこの辺りだと私は思っているわ。念の為、バビロンに調査を頼んでみたけど回答は不明だったわ。ひょっとして既に亡くなっているかもという考えはしなくていいわ。レグナスさえ倒した兄様よりもミズキ姉様は強いし、ディー姉様の投げる投げ槍はグライザムを貫くわ。マキナの3人は十分に兄様の期待に応えられる実力よ」

 でも、そんな人達が何で知らない土地に出掛けたんだろう。きっとお婆ちゃん達も同行したかったに違いない。けれど、それをアキト様達は許さなかった。そこに旅立った訳があるんじゃないかな?

 「昔話に聞いたことがあるけど……。そんなに凄い人達だったの?」
 「皆の想像以上の人達よ。でも、とても優しい兄様だった……」

 そう言って、バッグから2枚の写真取出してテーブルに乗せた。
 掌ほどの木製の額に入って表面をガラスで覆っている。大切に持っていたんだろうな。

 「若いときに7人で写したのがこっちの写真。これはマキナの人達と一緒の写真よ。この女の子がヴォルテンのお婆ちゃんで、アルト姉様。皆からは剣姫様って呼ばれていたわ」

 ミーアお婆ちゃんは後ろの背の高い黒髪の青年に抱き着くように立ってはにかんでいる。サーシャお婆ちゃんは仰け反ってるから後ろの黒髪の女性が両手で支えているようだ。リムお婆ちゃんは、銀色の髪の女性に寄添っている。
 もう1つの写真は大きなグライザムを狩った後のようだ。お婆ちゃん達4人がガルパスに乗ってクロスボウを両手に持っている。その後ろにいる3人の女性がこちらを見て微笑んでいた。

 「もうすぐ私も、サーシャちゃんと同じく、あのガルパスの体内で眠ることになるわ。でもね、この写真の中の私達以外の人達は、一切歳を取らないの。この写真のままの姿を貴方達は見ることになるでしょうね」

 私達は互いに顔を見合わせる。そんな事ってあるんだろうか? 

 「母さんに聞いたことがあります。母様はいつも幼女のままだって。試合をするときには20歳程の女性に変わると……」

 「アルト姉様は呪いを受けてあの体になったわ。でも、兄様達やマキナの人達はそうではないの。永遠の寿命と若さを保っているわ」

 呪いではなく、神の賜物ということだろうか?
 その贈り物のために、いったい何を科せられたのだろう。何を犠牲にしたのだろう。

 「それを持って行きなさい。後は……、ちょっと待ってね」

 お婆ちゃんは自分の部屋に入ると、小さなバッグを持ってきた。バッグから2つの袋を取り出してテーブルに乗せる。

 「これを使いなさい。昔、使ったものだけど、この魔法の袋は、このテーブルが丸々入るぐらい荷物を詰め込めるわよ」

 「それって、亀兵隊の輸送部隊が使っているものですよね?」

 聞いた事がある。『私達が縦横無尽に戦が出来たのは、リムちゃん達が資材を運んでくれたからよ』といつも言っていた。この袋に入れてガルパスで運んでいたんだろう。

 でも、この大きさなら食料だけでも1年分は入るんじゃないかな。それに、武器の予備も持って行かないと……。

 「槍は2本に穂先の予備を忘れないで。片手剣は……、これを予備に持って行きなさい」

 バックから魔法の袋を取出して、グルカを2本取出した。更に、先端に小型の爆裂球が付いたボルトの束と通常のボルトの束を取出す。


 「幾らあってもボルトは足りないでしょうね。でも、これだけあれば十分でしょう」

 お婆ちゃんが渡してくれた袋にも50本近いボルトが入っていた。更に今、私の前にはその倍以上のボルトの山が置かれている。
 グルカはヴォルテンさんに、ボルトは私の前に置かれる。ボルトを革袋に詰め込んで、先程貰った大きな魔法の袋に詰め込んでいたら、ミレーネさんが「これも持って行くにゃ!」とクロスボウを渡された。小さな革袋が縛ってある。

 「予備は必要だわ。小袋は弦や金具が入っているから、修理しながら使いなさい。後は……、ミレーネ私の部屋から槍を持ってきて!」

 ミレーネさんが持ってきた槍を見て驚いた。穂先だけで片手剣程の長さがある。

 「リードなら使えるでしょう? ディー姉さんが使っていたものよ。ザナドウ狩りの槍と言えば判るかしら?」

 「ディー殿が使っていた槍であれば半ば伝説の槍だ。なるほど、かなりの重さがあるな」

 リードさんが両手に持って感触を確かめている。

 「テーバイを過ぎればお店は無いわ。食料だけでなく、衣服やブーツも予備を持つのよ。準備が整いしだい出発しなさい」

 リムお婆ちゃんの一言で、私達は雑貨屋に出掛ける。結構大きなお店だ。王都の庶民街のお店よりも大きいんじゃないかな?
 これから出掛けるのは、連合王国の南西部だから、エントラムズよりも暑いのだろうと、革の上下の予備は1つにして綿の上下を数着買い込む。ブーツは3足あれば十分だろう。
 食料は何と1年半分の携帯食料を買い込んだ。通常の食料は3ヶ月分だけど、途中で狩りをすれば新鮮な肉が手に入るだろう。
 その他にも細々とした品物を買い込む。お店がない状態で長期間の捜索を行うのだ。必要な品物はここで揃えないといけないだろう。今思いつかない物はテーバイ王国の王都までに考えておく必要がある。そこを過ぎればお店はないんだから……。

 出発前の夕食はラッピナのシチューが出た。私の大好物だ。魚も良いけどこのシチューは別格だと思う。

 「昔は4人で良く狩ったものよ。私達は精々昼間に10匹近くだけど、ユングさんは一晩で20匹以上も狩ったことがあるわ」

 リムお婆ちゃんが遠い目をして呟いた。私も友人達と数匹を狩った事があるけど、臆病な獣だから近付くと直ぐに逃げてしまう。20匹以上ってどうやって狩ったのかな?

 「明日は、ガルパスを置いて出立しなさい。ガルパスは寒くなると眠りにつくの。問題の場所は南だけど山麓部は雪も降るわ。ガルパスが動けなくなってしまう」

 私とヴォルテンさんの目が合う。数百km以上も距離が離れているのだ。歩くだけでも20日以上掛かってしまう。
 今まで一番長く掛かった狩りでも、王都から数日の距離だ。それでも足が痛い思いをした事を覚えている。

 「テーバイ王都まではミレーネが馬車で送るわ。でも、その後は自分達で行動するのよ」

 ちゃんと帰ってこれるかなぁ……。テーバイまで行ったら、手紙を出そう。お兄ちゃん達が心配するかもしれないしね。
 
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