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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-028 レリーフを削り取ったものは


 魔法陣のある動く部屋から出て、すでに4つも階層を登っているが、いまだに入口に到達することは出来なかった。
 階段が一か所にあればいいんだけれど、各階層ごとにあちこちに分散しているみたいにも思える。
 階段は一か所に作るのが良いと思うんだけどなぁ……。

「一応、マッピングはしているけど、後どれぐらい登るのかしら?」
「まったく分からん。だが、出てくる魔物の姿がだいぶ変わってきたぞ。今では精々、2首ガトルが良いところだ。ミーアのレベル上げに丁度良い」

 ベタな名前を付けたのはヴォルテンさんだ。もうひとひねり欲しかったけどね。
 それに左右の頭の意思疎通が今一つだから、行動が1テンポ遅れている。私のクロスボウで即退治できてしまう。

「だいぶ歩いたぞ。今日はこの辺で休まないか?」
ヴォルテンさんの言葉に、キャシーさんがこのフロアの地図を再確認している。
「もう少し、待ってほしいわ。この先の区画がこのフロアの最後なの。たぶんそこに階段があるはずだわ」

 キャシーさんの言葉に、少しがっかりしたように顔を下げたヴォルテンさんを見て、リードさんが苦笑いをしている。
 最初は無表情な人だと思っていたけど、結構喜怒哀楽を顔に出す人だったようだ。リザル族の人はトカゲ顔だからそんな思いがあったのかもしれないけど、長らく一緒に行動していると、決してそうではないことが分かって来た。

 1時間も経たぬ内に、上階に向かう階段が私達の前に現れる。
 最初に比べてだいぶ濃い気の流れが上から向かってくるのが分かった。最初の部屋に着くのもそれほど先ではないのかもしれない。

「結局、この階は2首ガトルだけだったんじゃないか? 次の階はバリアント辺りだと俺には思えるな」
「分からないわよ? 意表をついて、ダラシット辺りかも知れないし」
 カチートの障壁の中でそんな話をしながら食事を取る。
 たっぷりと燃料の炭があるから、今までの食事とそれほど大差はない。強いて言えば、お茶がカップに半分だけなのが気になる。
 まだ数日は水の心配はいらないとリードさんが言っていたけど、数日で外に出られるかな?

 かすかな振動が床から伝わってくる。
 毛布を跳ね除けて起き上がると辺りをキョロキョロと見渡したから、見張りをしていたキャシーさんがおもしろそうに私を見ている。

「どうしたの? 悪い夢でも見たのかしら」
「何といったら……、床が振動しているんです」
「何をバカな。俺には全く感じないぞ」

 ヴォルテンさんは、パイプにタバコを詰めながら頭を左右に振っている。夢だと思ってるんじゃないかな?

「待って、ミーナの言うことが正しいかも知れないわ」
 ジッと、床に置いた飲みかけのカップを見ながらキャシーさんが呟いた。
「波紋か……。だとしてもかなり小さいな。ずっと下の階で何かが起こったということか?」
「先を急ぎましょう。何が起きたかは分からないけど、この建物に異変があることは確かよ」

 急いで私にも荷物を纏めるように伝えると、ヴォルテンさんはリードさんを揺すり起こしている。
 キャシーさんは改めてポットに水を注いでお茶を沸かし始めた。これから長く歩かねばならない。食事は抜いても、お茶ぐらいは飲んで行きたいということなんだろう。

「確かに振動が続いいるな。ヴォルテンの言う通り、かなり深い場所で何かが起きたようだ」
「アキト様達の仕業でしょうか?」
「そう考えるのが自然だろう。役目を終えたか、それとも何者かと戦っているのか……。いずれにせよ、早めにこの場を去ることには賛成だ」

 お茶をカップ半分だけ飲んで、残ったポットのお茶をキャシーさんが自分の水筒に入れている。私の水筒より一回り大きいから、ちょうど良いみたい。
 荷物をまとめて杖を手に立ち上がると、目の前の階段を上ることになった。先行はリードさんで、殿がヴォルテンさんだ。私はリードさんのすぐ後ろに位置して気の流れを探る。
 今のところは穏やかな気の流れが、階段の上から降りてきている。前よりもはっきりと気の流れが分かるのは、出口に近づいているのだろうか。それとも私の感覚が鋭敏になっているのだろうか。

「今までは、1度曲がれば次の階に着いたのだが……」
「これで2度目ですよね。下の階の天井はそれほど高くはありませんでしたよ」

 リードさんのつぶやきに同意して答えた。
 どう考えても1階分スル―した気がする。もう1度曲がれば次の階に着くのかもしれない。でも、そうなると、1階分の中には何があるのだろうか? 単に石のブロックが積み込まれているとはとても思えない。

「だいぶ長いわね。2階分に相当するわよ」
「そうなんです。次は上階に着けば良いのですけど……」

 後ろから聞こえたキャシーさんの言葉に同意していると、「着いたぞ!」というリードさんの声が階段の上から聞こえてきた。
 このまま、ずっと階段が続いていたらどうしようと思っていた時だから、思わずキャシーさんと顔を見合わせて笑顔を交わす。
「やっとか! まったく、このまま天国まで続くんじゃないかと思ってたぞ」
 ヴォルテンさんも私達と似たことを考えていたのかもしれない。

 階段を上ったところからまっすぐに回廊が続いている。ヴォルテンさんが磁石を取り出して「まっすぐ南だ」と教えてくれた。光球が照らし出す回廊には交差する回廊も見えない。およそ100D(30m)先まで照らしているようだが、特に異常はないようだ。
 階段の下にも異常は感じられないし、あれほど気になった振動もいつの間にか感じなくなっている。
 ちょっと疲れた感じだから、ここで一休み。
 でも、お茶を飲むようなことはせず、短時間の休憩を取ることになった。

「そもそもこんな場所にこの建造物があること自体がおかしな話だ。壁から抜け出す魔物など聞いたこともない。その魔物でさえ、俺達の知らぬ形態だからな」
「あの振動も何か絡んでいるということか? だが、アテーナイ様はアキト殿達がこの中に入ってかなり長いように伝えてくれた。現況を確認して破壊したと俺には思えるのだが……」
「アテーナイ様の話では、ミズキ様が破壊した施設で魔族が溢れ出したとも言ってました。そんな経験をしたなら破壊することはないと思うのですが?」
 破壊以外でこの建造物にあのような振動があるとしたら……。キャシーさんの言葉に、私達は顔を見合わせてしまった。
「まさか……、暴君なんてことはないだろうな」
 ヴォルテンさんの視線は私の腰に向けられている。おばあちゃんのグルカの柄は暴君の牙で作られているからなんだろう。アキトさんとディーさんの活躍で2頭を倒したと嬉しそうな表情で話してくれたのはいつのころだったか、私がハンターになったのもそんなおばあちゃんの話が大好きだったからなんだけどね。

「暴君は魔族ではないと教えられた。だが、それぐらいの奴が下にいるのだろう。早めに出た方が良さそうだ」
 落ち着いた表情でリードさんが腰を上げる。性格がヴォルテンさんと真逆だけど、良い友人同士ではあるようだ。舌打ちしながらヴォルテンさんが腰を上げるとキャシーさんが立ち上がるのを手を出して助けてあげてる。

 この階の回廊には壁にレリーフが全くない。
 キャシーさんが作った光球に壁面が反射している。そっと壁に手を当てるとまるで磨かれたようにつるつるに仕上げられている。

「腕の良い職人なんだろうが、壁の仕上げは大したものだ」
「いいや、俺には違って見える。わずかだが陰影が浮かぶ時がある。元は今までと同じように壁にレリーフが彫られていたに違いない。何かが、この壁を磨いたんだ」

 前を歩くリードさんと殿のヴォルテンさんが大きな声で話をしている。
 私とキャシーさんはその話を聞いているだけなんだけど、そんなことがあるんだろうか?
「ミーア、この位置から壁を見て。こっち側の壁よ」
 キャシーさんが私の手を取って歩みを止めると、壁際に寄り添うようにして前方を見ている。
 何だろうと思いながらも、キャシーさんと同じ位置で前方に目を向けた。

「ヴォルテンの言う通りよ。何かが壁のレリーフを削ったんだわ」
 大きな魔族の姿が影になって壁に浮かんでいた。頷くことで同意を示したものの、元々は緻密な彫刻だったんだろう。そんな浮彫を壁と同一になるまで磨くように削るものと言えば、バリアントぐらいかもしれない。

「あれだ! バリアントだと思っていたが違っていたな」
 先頭を歩いていたリードさんの歩みが止まった。回廊の奥を睨むようにして立っている。その視線の先に見えたものは、壁から突き出た三角形の岩だった。

「なに、あれ!」
「小さなものを別荘で見たことがあるぞ。波打ち際の岩に張り付いてる奴によく似てるがあれは1L銅貨ぐらいだったな」
 懐かしそうに腕組みしながら頷いているのはヴォルテンさんだ。その腕にしがみ付きながら前を見ているキャシーさんと比べると対照的だ。後ろを振り返ったリードさんが苦笑いをしている。

「たぶんヴォルテンの言う動物が原型なんだろう。俺も海で見たことがある。だが、あれは小さいからどうにでもなったが、奥にいる奴は宿のテーブル並みの大きさだ」
「確か触手を頭から伸ばすと聞いたことがある。あれもそうかもしれない。あまり近づくんじゃないぞ」

 ここはどうやって倒すかを相談することになるんだろうな。
 リードさん達が回廊に座り込んだところで私も腰を下ろす。小さなコンロを取り出してお茶を温め始めたから、そのコンロでリードさん達がパイプに火を点けて前方の魔物をじっと見ている。
 あんな岩の塊みたいな魔物を倒せるのだろうか? 動きがそれほど早いとも思えないけど、そんな魔物に限って触手を鞭のように振り回すこともよくあるらしい。
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