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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-024 ストーパの中へ


 リードさんがストーパのようだと言った構造物は。いくつもの石を重ねて作り上げた段丘だ。その三分の一程の高さの所に小さな広場を前にした入口の門が開いている。
向きは西向きだけど、何か意味があるのだろうか?

「とりあえず入ってみるか。特に仕掛けはなさそうだ」
 そう言ってヴォルテンさんが門の中に入ろうとしたから、キャシーさんが慌てて【シャイン】を唱え光球を作った。

 中は大きな広間のようだ。おばあちゃんのお家の広間よりも数倍大きい。
 一面に文字のような絵が描かれているけど、線が縦に引かれているからこの文字は盾に読むのだろう。

「読めるか?」
「俺にはさっぱりだ。キャシーはどうだ?」
「私もチンプンカンプンよ。それにこれって本当に文字なのかそら?」

 誇張された人や獣が踊っているようにも見える。文字と言えば文字なんだろうけどね。
 そんな文字が広間の壁や天井に隙間なく描かれているのだ。ジッと見ているとぼうっとなってしまう。

「通信機が使えないから、ミーナが頼りだ。気の流れはどこに向かってるんだ?」

 ヴォルテンさんの言葉に、その場に座り込むと静かに目を閉じた。
 だんだんと気の流れが感じられ……、脳裏にその流れが見えてきた。
 と同時に思わず身を強張らせてしまったようだ。誰かが私の背中を抱いてくれる。
 そっと目を開けると、キャシーさんの優しそうな顔が目に入る。

「だいじょうぶです。あまりに気の流れが激しくて……」
「それほどなのか? 俺達には全くわからないが、そうだとすれば、やはりアキト殿達もここに必ず立ち寄ったはずだ」

 小さく頷くと再び目を閉じる。
 直ぐ後ろで私にぶつかる気の流れをキャシーさんが身をもって防いでくれているのが分かった。
 心を研ぎ澄ませて、その流れの先を追う。この広間のどこに気の流れは向かっているのだろう……。

 広間に濁流のように入ってくる気の流れが多いな渦を作っている。その渦に吸い込まれるように気が流れていくのが見える。
 その渦の中心は……、あそこだ!

 ゆっくりと目を開けて、渦の中心があった場所を見つめる。
 たくさんある絵文字のようなものの1つがそこにあった。周囲の絵文字と絵柄が似ているけど、私にはわかる。

 立ち上がろうとして思わず足元がふらついてしまったけど、目標となる絵文字を見失うことは無かった。
 そろりそろりと足を運び、右手を伸ばしてその絵文字に触ろうとしたのだが、石壁に私の手が触れることは無かった。

「何だと! この壁はまやかしなのか」
 リードさんが大声を上げる。
 すでに私の手は石壁の中にすっぽりと納まっている。

「どうやらそのようです。どんな仕掛けなのかは分かりませんが」
 ゆっくりと石壁から手を引き抜きながら呟いた。

「ちょっと待ってくれ。そんなはずはない。さっき、その壁は俺が散々触ったんだが、普通の石壁だったぞ」
「たぶん、最初に触る場所が決まってたという事かも知れないわ。ミーナがそのスイッチを探しあてたということなんでしょうね」

 ヴォルテンさんの声にキャシーさんが答えてるけど、それが真相に近いのかもしれないな。

「ここから……、この範囲だな。良く見れば絵文字が同じだ。案外キャシーの考えが的を射ているのかもしれない」
「そうなると、これがスイッチの絵柄ということか? まったくこの建造物を作った連中の頭はどうなってるんだろうな。だが、先に行く方法は見つかったことは確かだ。進むぞ!」

 ヴォルテンさんが壁に向かって歩いていくと、ゆっくりと壁に手を掛けようとした。その手は壁に飲み込まれるように消えていく。

「だいじょうぶだ。向こうには何もない」
 そのまま壁に中に歩いて行ってしまった。

 思わず私達は顔を見合わせてけど、ここで引き返すということは私達の選択には無かった。
 一人ずつゆっくりと壁に向かって歩いていく。
 私の番になったので、恐る恐る壁に向かって歩いていく。
 ぶつかる瞬間、思わず目を瞑ってしまったけれど、意に反して何の感触も無い。私は壁を越えて次の部屋に入ったようだ。

 天井の光球はヴォルテンさんが作ったのだろう。おかげでこの部屋の中が良く見える。さっきの部屋と異なりこの部屋には文字のような装飾はどこにもなかった。
 あるのは、奥に寝台のような長方形の石の台だけだ。

「揃ったな。出口が分からなくなったら問題だから目印を付けようと思ったけど、すでに目印が付けられてたぞ」
 ヴォルテンさんの指さす方向を見ると、赤い矢印が床に描かれていた。

「これは口紅よ……。指に色が移るから、そんなに時間が経ってないわ」
「何だと! となると、上手く行けばこの先に……」
「それで、口紅はどれぐらいで乾くんだ?」
「そうね。かなり上等な品みたいだから……、一か月というところかしら」

 リードさんの質問にキャシーさんが答えてるけど、私は持ってないし、お母さんは化粧品を大切にしてるから私がいたずらすることもできなかった。
 でもキャシーさんなら、美人だし私より年上だから口紅を持ってたんだろうな。

「ここで待つということも選択できるが、先に向かうべきだろうな。ここに地下に向かう階段があるぞ」

 室内を調べていたヴォルテンさんが教えてくれた。皆でその場に行ってみると、確かに階段がずっと下に向かって続いている。
 手前に石の台があったから気が付かなかったみたいだ。

「階段も気になるが、この台も気になるぞ。この汚れはどう見ても血の跡だ」
「神への捧物ということか? だがそれは俺達だってやっている」
「俺達は獲物を捧げることがあっても、狩りの獲物だ。すでに死んでいる。だが、この汚れが血だとすれば、この場で生きたものを捧げたということになる」

 まさか、人間なんてことはないよね?
 この階段を下りて行けば、そんな神が今でもいるんだろうか?

「問題は、血の跡だけが残っているということだわ。供物となった獣の骨すらないわよ」
 キャシーさんの言葉に、ヴォルテンさんとリードさんが顔を見合わせている。
 やはり食べられたということになるんだろうな。そんな供物を食べた者が階段の下にいるということになる。

「行く前に腹ごしらえだ。中でどんなことがあるか分からないからな。【カチート】を張って一眠りしてから出掛けた方が良さそうだ」

 まだ昼過ぎなんだけど、走ってきたからね。ぐっすると眠れるんじゃないかな?
 それにもう少しでアキトさんに会えるかもしれない。

 お腹いっぱいに食事を取って、横になると直ぐに目が閉じてしまった。
 バリアントの群れのおかげで神経を使ってしまったんだろう……。

 ふと目を開けると、先ほどの石室の中では無かった。崩れた岩肌の近くの焚き火の傍に私は寝ていたようだ。
 起き上がると、優しい表情で私を見つめる2人がいる。
 アテーナイ様にカラメル族の長老だ。

「起きたようじゃな。ようやくここまで来られたな」
「あの石段の奥にアキトさんはいるんでしょうか?」

「あの石段を下りて、すでに一か月以上の月日が過ぎておる。あの中には我等も入ることができぬようじゃ。何らかの結界があるのであろう」
「入ってみるが良かろう。だが、用心に越したことはないぞ。アキト達と違ってお前達は生身じゃからのう」
「ヴォルテンさん達でも苦労する相手ということでしょうか?」
「それは見てのお楽しみじゃな。ミーナの技量も上がっておる。存分に腕を振るうが良い。……そうじゃな。今日は、婿殿の得意な技を教えようかのう。婿殿は積極的な狩をせぬ。我には物足りないのじゃが、長老は評価しておるぞ」

 お話だけでは帰して貰えないようだ。
 立ち上がって、グルカを抜く。
 にこりとアテーナイ様が笑って、私を焚き火から離れるように手で場所を示す。
 直ぐにいつものような訓練が始まったのだが……。しばらくして少しいつもと異なることに気が付いた。
 アテーナイ様の攻撃をいかに防ぐかということではなくて、その攻撃の瞬間を先読みして体が動いてくれる。

「だいぶ訓練したようじゃな。かなりアキトの動きに似ておるぞ」
「長老が手助けしておるのか? 有効打を与えられぬではないか!」

 アテーナイ様の有効打を受けたら、私なんかでは致命傷になりかねない。
 ただいつも通りに、教えられたように、ほんの少し体を捻って斬撃を避けているのだが、今日は、その斬撃の動きに合わせてカウンターを放つ自分がいる。
 延々と続く訓練に思えたが、突然アテーナイ様が動きを止めた。

「覚えたようじゃな。それが婿殿の動きじゃ。相手の攻撃をも自分の攻撃に利用する。我も最初は戸惑って負ったが、力なき者には最適に思えるぞ。ミズキはそうではないが、あれは我には真似することもできぬ」

 どうにか終わったようだ。
 再び焚き火近くの石に腰を下ろすと、長老がお茶の入ったカップを渡してくれた。

「さもあろう。ワシにもミズキ相手に勝てるとは思えん。どうにかアキトと互角じゃからのう」
「あのう……。どう違うんでしょうか?」

「邪念が無いのじゃ。一旦行動をとるとなれば、いろいろと迷ってしまうのは人間の性じゃが、ミズキにはそれが無い」
「試合でさえそうじゃからのう。ミズキに敵対した者の末路は最初から決まっておる」

 邪念が無いとはどういうことなんだろう?
 一旦狩りを始めたなら、絶対に相手をし止めなさい。それ以外の事を考えないように……。ハンターになった時にミーアおばあちゃんが私に言った言葉だ。
 それが邪念が無いということなんだろうか?

「なかなか良い言葉を贈って貰ったようじゃな。我等はそうありたいと常に思う言葉ではあるが、その言葉を実践しようとすればすでに邪念を持つことになる」
「無の心境と言えば良いのかのう……。我等は相手の心の動きまで見ながら試合を行うが、ミズキの心を読むことができぬ」
「すでに無であるということじゃな。となれば我等の攻撃など全て見通せるというもの、さすがである」

 ミズキさんを賛美しているようにも思えるけど、攻撃時に心が無いというのは恐ろしいことにも思える。
 相手に情を掛けることが無いということなんだろうか?

「必ずしもそうではないと思うが、アキトの腹を手刀で突き通したこともあるからのう。その後にも心臓を握りつぶしておる。まったく情け容赦がない」
「とはいっても、アキト相手であればそれは軽傷ともいえるであろう。そこで終えたのじゃからな」

 とんでもない話を聞いてしまった。
 アキトさんて不死身じゃないのかな? 本当にミズキさんが怒ったらどうなるんだろう?

「ミズキが怒るところは我も見たことが無い。たぶん徹底的に破壊するじゃろう。だが、普段のミズキは情にもろい。まったくおもしろい人物ではある。だいぶ昔のことじゃが、ミズキが言った言葉があるぞ。『一旦、刀を抜いたなら、たとえ神でも悪魔でも私は斬ることができる』とな」
「刀を抜いた時には勝負が決まっておるということか? そこまでに武を高めることができようとは……」

 そんな2人の話が私の耳にだんだんと遠くなる。
 どうやら、目覚めの時が近づいたようだ。
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