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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-020 流れは波のように


 ごつごつした山の斜面を2日程進むと、南に広がっていた森が林に変化していた。
 いつの間にかかなり東に進んでいたらしい。
 昼食の休憩を利用して、ヴォルテンさんが地図を広げた。微かだが、科学衛星の通信が入っているらしいのだ。

「もし、アキトさん達がこの先にいるならば衛星通信を使うことができる筈だ。俺達の通信機で連合王国と通信が部分的にでも出来るなら、アキトさん達なら余裕で通信できるだろう」
「という事は、2つ考えられるわ。更に先に同じような通信障害を起こす場所があるか、私達が迂回してきた森の中にいるか……」

「いや、もう一つあるぞ。深い洞窟に入っているなら、やはり通信は使えない。ここに来るまでに2つも、あの洞窟があったのだ。アキト殿は過去の調査を行うために度々洞窟の奥深くに入ったと聞いたことがある」
「お婆ちゃんも言ってたよ。ディー姉さんは深い洞窟で眠ってたって。ユグドラシルやバビロンも深い地の底にあったと言ってたわ」
 そんな話をしていた3人が急に私に顔を向けた。
「ミーナはどう思ってるんだ?」

 ヴォルテンさんの言葉に、両手に持っていたカップを見つめる。
 昼食を終えてお茶を飲んでいるときに、3人が話を始めたのだ。私はジッと聞いていたのだが、急に私に振られても困ってしまう……。
 そうだ。アテーナイ様が『エーテルの薄い場所』と言ってたんだ。地上ではエーテルは乱れても薄いと言うことは無い。エーテルの薄くなるばしょというなら……。
ん? ちょっと待って、エーテルって量の概念があるんだろうか? 風に重さがあるなんておかしいよね。でも、濃度の変化は量の変化って事になる。

「何を悩んでるの?」
 キャシーさんが私を覗き込むようにしてたずねてきた。
「前に、アテーナイ様からヒントを貰ったのを思い出したの。エーテルの薄い場所……。そう教えてくれたんだけど、エーテルって私には風に思えるから……」

「なるほど、風に重さは無いな。だが、その話は俺達も一緒に考えるべきだろう。ここまで来たのだ。意外と近いのかも知れない」
「そうね。私も賛成だわ。近くに水場もあるし、今日はここで皆で考えてみましょう」

「俺も賛成だ。それでさっきのミーナの話だが、バビロンとユグドラシルにも考えて貰おうぜ。上手い具合に、通信が出来そうだ」
 ヴォルテンさんは直ぐに端末を取り出して通信を始めたようだ。簡単な文章を何度も送って、ノイズに埋もれる通信文を分かるようにするらしい。

 リードさんは近くの灌木に焚き木を集めに出掛けた。
 キャシーさんは、夕食の準備を始めようとしてるけど、今から始めるとなれば、じっくり煮込んだシチューになるのかな? しばらくぶりだからちょっと楽しくなる。

 まだまだ食料は十分すぎるほどに持っている。私の大型の魔法の袋に入った携帯食料は殆ど手が付けられていない。
 リードさんが担いでいたカゴの中に入っていた食料は空になってるけど、4人のバッグの中の食料は十分に残っているはずだ。
 キャシーさんがヴォルテンさんが汲んで来た水を使ってパンを焼き始めた。
 私も一緒になってパンを焼き始める。
 2日は休めるんだから、今のうちにたくさん焼いておくんだろう。数日は持つから、その間は固いビスケットのようなパンを食べずに済む。

「どうだ。バビロンからの返事は?」
「悩んでいるようだ。バビロンやユグドラシルの連中にエーテル理論など理解の外だからな。科学の体系がそもそも違うから、類推しているらしい」

「でも不思議な話ね。母様から聞いた時も理解できなかったし、御祖母様にもやはり分からなかったらしいわ。でも、御祖父様のアキト様はそれを見ることが出来たと御祖母様は離してくれたことがあるわ」
「風と言う認識でアキト殿も最初は掴んだらしい。ここまではミーナと一緒だな。だが、そこからさらに認識能力を上げると……、それは強弱を持つ波であり粒であるということなのだが、さすがにリザル族の族長と言えども、それがどのようなものかまでは理解の範疇を超えると言っていたぞ」

 風という事ではなくて、それが何によって起こされるのかを知るって事なんだろうか?
 風は空気の流れだと学校で教えて貰ったけど、空気って何で出来てるんだろう?
 それが、強弱を持つというのは、風にも強弱があるから何となく理解できるけど、波ってどういう事? それに粒だなんて……。

『……悩んでおるようじゃな。リザル族の族長なりに婿殿の話を覚えていたのじゃろう。リザル族もそれなりに気を感じることが出来るようじゃ。山間での厳しい狩りが彼等の精神を鋭敏にしたに違いない』
『アテーナイ様には理解できるのですか?』

 いつしか、アテーナイ様の精神世界に紛れ込んでいたようだ。
 遥か下に見えるリオン湖が、ネウサナトラム村近くのアクトラス山脈の中だとうかがい知ることが出来る。

『出来ぬ。それなりに修業は積んだつもりじゃが、風であり波であるまではどうにかたどり着けたが粒であるとは理解を超える。カラメル族の長老と何度も話おうたが、我にはそこまでの認識力でしかない。じゃが、それなりに気を使う事も可能じゃ。我はそれで良いと思うておる』
『風として感じる事は出来ます。その中で、風の流れを妨げる者の存在も分かるようになりました。ですが、波とは?』

『波が出来る訳を考えたことはあるかのう? 波と波がぶつかるとどうなるか考えたことは? 波を良く知れば気の流れと似たところに気が付くはずじゃ。それをどのように利用するかも考えると面白いぞ。我等武道家であればその境地で十分じゃ』

 私の顔をにこにこした笑顔を絶やさずに眺めながら、パイプを楽しんでいる。
 アキト様をして、俺より強いと言わしめたアテーナイ様だが、お祖母ちゃんの話では試合はいつも引き分けだったらしい。

『まあ、悩んでおっても仕方あるまい。ミーアは悩む時もあったが、行動する際にはそのような迷いをどこかに放り投げておった。悩んで良い時と悪い時を常に区別しておったぞ。さて、その迷い、どこまで捨てられるか、せっかくじゃから稽古を付けようかの』

 という事で、アテーナイ様の稽古が始まった。
 この間教えて貰った片手剣の使い方が少し変わったようだ。これではまるでダンスそのものだ。
 しばらくして、私の前にアテーナイ様が立つ。
『一呼吸ずらして我も同じ剣の動きをする。決して途中で止まる出ないぞ』
 そんな注意を貰ったんだけど、しばらく体を動かしてその理由が分かった。私の教えて貰った動きはダンスではなく、攻撃と防御が次々と入れ替わる動きだったのだ。アテーナイ様の繰り出した片手剣を片足の動きだけで避けながら、その動きを止めずにグルカを振りぬく、それをアテーナイ様が最小限の腰の動きでかわしていく……。

『止め! 中々に筋が良い。さすがはミーアの孫じゃな。今の稽古は基本を集めたものらしい。毎朝婿殿が練習しておった。 じゃがのう。アルトの話では婿殿とミズキはこのような約束ごとの稽古ではなく、目隠しをして、素手で稽古をしたこともあるそうじゃ。まるで周囲が見えているように戦ったそうじゃ。最後にはミズキの腕が婿殿の腹を突き破って背中に出たそうじゃが、婿殿はミズキの首の皮1枚を切って終わりにしたと聞いておる。それが気を操る者達の戦いじゃ。婿殿達には武器さえいらぬのかも知れんのう……』

 ドサリ! と体が横に倒れる。
 3人が私をジッと眺めていた。どうやら戻ってこれたようだ。焚き火を囲む3人がまだ私を見続けていた。

「アテーナイ様はヒントをくれたのか?」
「返って分からなくなりました。アテーナイ様は波まではどうにかと言っていました。波を考えろと……。色々とおもしろいことが分かると言ってました。最後に、気を操る者同士の訓練の話をしてくれましたが、素手でアキト様の腹を打ちぬいたと言っていました」

「アルト様から聞いたことがあるぞ。目隠しをしたアキト様とミズキ様が戦ってそのような結果になったらしい。まるで後ろにも目があるようじゃった。と話してくれたのを覚えてる」
「そのような丈夫ますらおでなければ、南門で敵兵5千を前に出来なかったでしょう。誰もがアキト殿ならばと信じて送り出したそうです」
「狩りに際しても、勘の鋭さはネコ族を凌ぐそうだ。だが、アキト殿以上にマキナの連中は周囲5M(750m)以上の狩場の状況を知ることが出来たらしい」

 そんな人達が、魔物にやられる訳はない。やはり何らかの原因で私達と連絡が取れなくなっているんじゃないかな。
 2日の休養を利用して、リードさん達は炭を作るらしい。
 炭があれば、洞窟の中でも食事が作れる。大型の魔法の袋に入れれば背負いカゴに倍する量が運べると言っていた。
 私は、たくさん持ってきた飴玉を舐めながら、アテーナイ様の言っていた波に付いて考えてみる。
 風にも強弱があるから確かに波のような物なのかもしれない。確かアテーナイ様は認識力がどうとか言っていた。
 池の波を考えれば良いのかもしれない。子供達が小石を投げて波を作っている光景を思い出す。
 ポチャンと落ちた石で波紋が丸く広がる。
 投げた石が1個なら丸く輪がいくつも重なって広がるのだが、2個が投げ入れられると2つの輪が重なって複雑な文様を描いていた。

「きれいでしょう。単純な波もいくつも重なると複雑な模様を描くのよ。お兄ちゃんが干渉という現象だと説明してくれたけど……、私には良く分からなかった。でもね、そんな複雑な模様を織りなす世界が私達の世界だと少し分かったわ」

 確か、そんな話だった。
 ひょっとして風の強弱が起きるのは、気の発生源が複数あるってことなんだろうか?
 たくさんの発生源が、大きな流れに干渉して強弱が出来るってことかもしれない。それが波のように伝搬するのだろう。
 だとすれば、アキト様がいるのは干渉している特異点ってことになるんだろうか?
 波が互いに干渉する1点は互いの気が相殺されるに違いない。それ以外であるなら、気の流れが澱んだ場所、地下深くって事になりそうだ。

ジッと精神を統一する。アクトラス山脈から流れる気が私達を包んでいるのが分かる。
その流れを注意深く観察すると、確かに強弱があるのが分かる確かに池の波のようだ。

「これね!」
 他の流れと重なり合う干渉地点が次々に私の脳裏に浮かんでは消える。場所的には安定していないようだ。次々に浮かんでは消えていく。
 こんな不安定な場所なら直ぐにもアキトさん達を見つけることが出来るだろう。南に広がる深い森や東に広がる荒れ地にはいないようだ。
 となると……、アキトさん達は深い地中にいることになる。

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