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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-017 迷宮


 神殿のような岩壁の中は複雑な迷路になっていた。その迷路にいたのは、たくさんの魔物達だ。レベル的には私でも十分な相手なのだが……。何せ至る所にいるのだ。
 迷路の突き当たり、四つ角の影……、ホントに多いんだよね。

 「バリアントだ。数匹いるな。ミーナのレベル上げにもならんぞ!」
 角に張付いて短剣で光球に照らされた左手の通りを見ている。バリアントはホントにバリアントゼリーが大きくなった感じに見えるけど、もちろん食べられないんだよね。この迷路で初めて出会ったときは、思わず駆け出しそうになってキャシーさんに止められてしまった。だって、見た目は大好きなブドウの搾り汁で作ったバリアントゼリーなんだもの。
 でも、リードさんの話では、毒を持った触手を持っているから、近付かないで倒すのが一番らしい。私のクロスボウで弱点の丸い核を撃てばそれで終わりになる。50D(15m)ほど離れて撃てば、間違いなく核を撃ち抜けるから、確かに私のレベル上げに必要な経験値は殆ど得られないんだろうな。

 それでも、右に魔物がいないことを確認したところで、私は数本のボルトをホルダーから抜き取って、バリアントを狙撃した。

 「終りました。魔石は無いようです」
 「そうか。もう少しで、この階の殆どを見る事になるな。魔物の棲みかだとは思わなかったぞ」
 そう言って、キャシーさんが作った光球で照らされた通路の奥に向かってリードさんが歩き出した。
 「残念だったわね」と言いながら、ボルトの回収をキャシーさんが手伝ってくれる.私達も置いていかれないように、急いで先を急ぐ2人の後を追い掛けた。

 2つ目の角を曲った時、少し広い場所に出た。私の家のリビングの2倍以上あるんじゃないかな?
 「あそこに、階段がある。どうやら、下に行けそうだぞ」
 「行くんですか?」
 「此処まで来たら、行けるところまでは行ってみたいじゃないか。ほら、此処に傷があるぞ。たぶん以前誰かがこの迷路に挑んだに違いない」

 不安げなキャシーさんにヴォルテンさんが説明している。覗き込んだ私の目にもそれが剣で傷ついた手摺である事が分かった。という事は、アキト様達が以前この迷路に挑んだという事なんだろうか?

 「ほら、下りるぞ。ミーナも後をちゃんと見張ってくれよ!」
 「分かってます。だいじょうぶですよ」
 そう言って、後を見ながら最後尾を私は歩く。僅かな光があればネコ族の特徴を色濃く持った私には十分に周囲を見ることが出来るからね。

 「1階はバリアントと2つ頭の魔犬だったわね。地下はどうかしら?」
 キャシーさんが思い出したように呟いた。
 しばらく進むとリードさんの足が止まった。
 私は後方を振り向いて、私達の後を追う者がいないことを確認する。

 「魔物だ。ヴォルテン見たことがあるか?」
 「いや。大森林地帯にだってあんな奴はいなかったぞ」

 後ろに異常がないことが分かったので、リードさん達が眺めている魔物を2人の間から顔を出して覗いてみた。
 小さい頃良く兄弟で捕まえたゲロッコという爬虫類に似ている。でも、ゲロッコは精々大きくても子供の拳ぐらいだけれど、あれはちょっと大きすぎる。ガルパスの2倍はありそうだ。大きな目でこちらを見ているけれど距離は100D(30m)も無いんじゃないかな。

 顔を引っ込めると、キャシーさんが、「何がいたの?」と聞いてきたので、大きなゲロッコと答えておいた。
 両手で口を塞いで吃驚した様子を私に見せてるけど、ゲロッコを苛めて遊んだ事が無いのかな?

 「どうする?」
 「動きが鈍そうだ。槍を使ってみる。だがその前に……ミーナ、ボルトで目を狙えないか? あれだけ大きな目だ。この薄暗い迷路で獲物を捕らえるのはあの目が頼りなんだろう」

 私はリードさんに頷くと、背中のクロスボウを下ろして弦を引いた。カチリとロックしたところでボルトケースから1本ボルトを取り出してセットすると、大きなゲロッコの目を狙ってトリガーを引いた。

 吸い込まれるように、ボルトが左目に突き立つとゲロッコが暴れだした。石畳の回廊に振動が伝わり天井からもチリが落ちてくる。
 直ぐに次ぎのボルトを右目に放つと、これも深く突き通った。
 急いでヴォルテンさんの後ろに移動するとクロスボウを抱えて、次の指示を待つ。キャシーさんが私の肩を叩いて労ってくれた。

 「リード、奴がボルトを舌で取ろうとしてるぞ!」
 「かなり自由に動かせるようだな。ゲロッコの舌の長さは体長と同じと聞いた事がある。あの大きさなら20D(6m)は伸びるぞ」

 「接近戦がダメなら、次ぎはキャシーだな。【メルト】を2発でかなり弱るだろう。最後は俺達が止めを刺す!」

 今度はキャシーさんが魔法をぶつける。ドン!っと音を立ててゲロッコのお腹が焼けて爛れている。
 その場所を目掛けて、リードさんとヴォルテンさんが槍を投げる。今度は激しくもがき出した。

 「しつこいな。槍2本では足りないか?」
 「だが、かなり弱っているのは確かだ。段々暴れ方が弱くなってるぞ」

 そんな事を2人で言ってるけど、どう見てもまだまだ致命傷にはほど遠いような気がする。
 「キャシーさん。あの【メル】が当たったところなら【シュトロー】で氷の矢が突き刺さるかも! その後に【メル】を私が放ってみる」
 「そうね。かなり皮膚が痛んでるから【シュトロー】が有効かも知れないわ」

 ジッと成り行きを見守っている2人の前にキャシーさんが足を運ぶと、【シュトロー】を詠唱して氷の矢を放った。
 【シュトロー】で作られる氷の矢は私の腕ほどもある杭のような矢だ。ブスリ!と音を立てて、お腹に食込むとゲロッコの巨大な体がブルっと震えたのが分かった。
 口から長い舌を伸ばして氷の矢を絡めながら引き出そうとしている。
 今度は、私の番だ。アテーナイ様に教えて貰った【メル】は親指の先ほどの大きさでしかない。これを放てば皮膚さえ破って内部で弾けると言っていた。
 左手の先に小さく【メル】の火炎弾を作り、投げようとした時に、ゲロッコの口が半分開いているのに気がついた。お腹よりも口の中の方が良いかも!
 上手く誘導して火炎弾を口の中に入れると、ボン!っと爆ぜて目玉が飛び出した。ゲロッコが前のめりに倒れると、体が解け始めた。

 「やったのか?」
 「そうらしい。あんな魔法の使い方があるんだな」

 数分も掛からずにあれほど大きかったゲロッコの体が床に溶け込んでいった。残ったのは、ボルトが2本と投槍、それに魔石が1個……。
 リードさんが渡してくれたボルトにはゲロッコの体液さえ付着していない。完全にその姿を迷路が吸収してしまったようだ。

 しばらく進むと行き止まり。どうやらかなり長い事迷路を進んでいたらしい。ここで一晩過ごすと言っていたけど、迷路には昼夜の違いはない。リードさんが担いでいたカゴを下ろして毛布等を広げると、ヴォルテンさんは肩からバッグを下ろして携帯用のコンロを取り出してお茶を沸かし始めた。
 光球の1つを通路の方に移動させて接近してくる魔物を見ることが出来るようにする。もう1つは行き止まりの壁から数m離れた通路の真中に置いたカゴの真上だ。
 毛布に坐ってお茶を飲みながら、今度はスープを作り始める。

 リードさんがパイプを咥えながら、通路の奥をジッと眺めていた。
 地下1階で大きなゲロッコに苦戦するぐらいだから、この先が大変だろうな。リードさんの隣で同じようにパイプを咥えたヴォルテンさんが何やら相談を始めているのは、これからの事なんだろう。

 夕食の平たいパンをスープに浸して食べていると、ヴォルテンさんが早々と食事を終えて、お茶を飲みながら話を始めた。

 「皆聞いてくれ。この迷宮はかなり深そうだ。だが、地下1階で苦労するようでは地下2階に行けそうにもない」
 「そうね。早くに結論を出した方が良いわ。私は賛成よ」
 キャシーさんの返答に私も頷いて賛意を示す。この迷宮に興味はあるけど、私達の旅はアキト様を探すことなんだから。

 「なら、明日は外に出よう。ここまでの地図はあるから、真っ直ぐに出られる筈だ」
 リードさんがそう言って腰を上げた。通路の奥を見張りにカゴの傍に改めて腰を下ろす。
 「4時間交代にしよう。先に2人で寝てくれ」
 ヴォルテンさんもお茶を飲み終えてリードさんのところに歩いていく。
 【カチート】もあるんだけど、洞窟内ではあまり使われないそうだ。逃げ道が限られているから、起きたら周囲を取り囲まれていたでは済まないかららしい。
 食事の片付けをして、食器類に【クリーネ】を掛ける。食器を鍋に入れて袋にしまい込むと、座布団代わりに敷いた毛布を広げて横になる。
 ずっと歩き続けていたから、直ぐに瞼が重くなってきた。

 足を揺すられて目が覚める。
 大きなアクビをして体を伸ばしていると、キャシーさんがお茶のカップを渡してくれた。一口飲んでみると、渋い苦さに顔をひずませる。
 「結構効くでしょう。でも、後味は残らないから」
 キャシーさんがそう言って笑いながら私を見ている。確かに、ウエェってならないし、すっきりした感じだ。
 クロスボウを手にして、ヴォルテンさんと交代する。すぐにキャシーさんがやってきてリードさんと交代した。
 今度は私達が見張る時間だ。
 何事もなく時間だけが過ぎていくから、眠くなってしまう。

 「そうだ! ミーナちゃん。あの大きなゲロッコに変わった【メル】を使ったわね。あれって私にも出来るかしら?」
 「あの小さな【メル】ですね。アテーナイ様に教えてもらったんです。『【メル】で作った火炎弾は大きさを変えられるから練習しておきなさい』って、それで色々やってみたんですが、元々私の魔法力が小さいから結構時間が掛かりました。キャシーさんなら、出来ると思いますよ。先ずは、手のひらの上に【メル】の火炎弾を作って……」

 キャシーさんが私の言うがままに【メル】の火炎弾を小さくしようと努力している。最初が難しかったけど、今ではそれ程苦労なく小さくできる。
 でも、キャシーさんは苦労しているみたいだ。何が違うのかな?

 「結構、大変ね。でも、魔法力を注ぎ込んでも小さくならないわ!」
 「魔法力を注ぐんじゃなくて、強く念じるんです。魔法力が必要なら私には出来なかったでしょう」

 言うのを忘れていた。不思議なことに念じることによって。火炎弾が小さく凝縮するんだった。キャシーさんにその話をすると、頷くことで答えてくれた。一生懸命念じているはずだから声を出すことも出来ないのだろう。
 手のひらの上に浮かんだ火炎弾が明滅を繰り返している。気のせいか、その明暗の動きに合わせて大きさが変わって見える。

 「ふう~、疲れた。少し分かってきたわ。数日あれば私も出来そうな気がする。教えてくれてありがとうね」
 私に向かって笑顔を見せると、バッグの中から金属製の缶を出すと、中から小さな飴玉を取り出して私に1個渡してくれた。自分でも1個を手に取り口に放り込む。

 「やはり、疲れた時は甘いものに限るわ」
 「そうですね!」

 口の中に、甘酸っぱい味が広がる。
 私も持っていたかな? 色々詰め込んであるから一度確かめなくちゃ。
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