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ミーナちゃんの冒険 作者:paiちゃん
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M-015 人口を100倍?


 「そう言ったのか?」
 「はい。入口のブロックを破壊して中に入り、数日後に洞窟を破壊したそうです」

 リードさん達はお茶を飲みながら考え込んでいる。
 私も考えてるんだけど良く分からないな。あの破壊された洞窟の瓦礫の壁が俺位の厚さかは分からないけど、その奥にいる魔物の気配は濃厚に伝わってきた。数体という事は無いだろう。何百と言う数に違いない。

 そんな場所にアキト様は入った事になる。あれほどの魔物をどうやって退けたんだろう? それとも、何かの拍子に魔物が溢れたんだろうか?

 「さあ、出発だ。道はこのまま東で良いようだ」
 変に考えるよりも前に進んだ方が良いよね。私達は焚き火の後始末をすると、段々と急峻な峰に変わりつつあるアクトラス山脈の裾を横切って進む。

 「磁石が無ければ南に逸れてしまいそうね」
 「そうですね。だいぶ傾斜が出てきました」

 キャシーさんの足取りはしっかりしてるから、たまによろけて杖で体を支える私を気づかったものなんだろう。
 普通なら、山裾に広がる荒地は下草が膝を覆うぐらいに生えているんだけど、この一帯は、ごつごつした岩肌が露出した山系と森になれない林の連なり、それに私の歩いている草が疎らに生えた荒地で出来ている。あまり歩くには適さない土地だ。

 遥か下である南には、森があるんだけどね。
 そんな思いがたまに頭を過ぎる。日陰があまり無いからお日様が私達を照らし続けているのだ。帽子を被っているんだけど、それも疲れの原因かもしれない。

 とぼとぼと歩いている私をキャシーさんが肩を掴んで止める。
 キャシーさんに顔を向けると、杖で私の10D(3m)ほど先を指した。

 背筋が寒くなる。あのまま歩いていたら落とし穴の跡に嵌まってしまうところだった。3D(90cm)ぐらいの穴だが、かつてはもっと深かったんだろう。その穴のそこから何本も焼いた木製の槍が上を向いている。かなり攻撃的な罠だ。こんな罠を放置しておくなんて……。

 「どうした?」
 「罠の名残りよ。危うくミーナが引っ掛かりそうだったわ」

 リードさんとヴォルテンさんが急いで駆け寄ってくる。2人が落とし穴の検分を始めたから、私とキャシーさんは近くの潅木から焚き木を集めてお茶を作る事にした。

 「結論から言うと数十年は経っているな」
 「アキト様が作ったのでは? と疑ったんだが、どうやら違うみたいだ。これを見てくれ。太い枝の先端を尖らせて焚き火で炙った槍だから長く使える。そんな事はハンターなら誰でもやる事なんだが、あまりにも雑だな。斧で削ってももう少し綺麗に出来る」

 「この槍は刃物を知らない連中が作ったものだ。俺達リザル族の石器で作ったようにも見える」

 パイプを咥えながら話すから少し声がくぐもっている。
 最初は夜だけ楽しんでいたのだが、テーバイでどうやらタバコの缶を何個か、誰かが背負い籠の中に入れてくれたらしい。それを見つけた2人の顔は本当に嬉しそうだった。

 渡された槍の穂先をキャシーさんもジッと見ている。

 「遊牧民はこんな槍を作らないわ。獲物を獲るよりも自分達の家畜が罠に掛かったら大変よ」
 そう言って私に槍を手渡してくれた。

 この焦げた木の棒で良くもそれだけの事が分かるものだと感心してしまう。
 私には、こんな細工を教えてくれた人もいないし、これが槍として機能することも初めて知った事柄だ。

 「アキト様達は気付かなかったようだな。ひょっとして気付いていても放置したのか?」
 「いや、気付かなかったはずだ。無闇に狩るのはアキト様は好まない。必要な数のみ狩るのだから、こんな罠があれば破壊するだろう」

 ん? と言うことは……。

 「それじゃあ、この辺りにアキト様は着ていない事になるわ!」
 「いや、もう1つ考えられる。ちょっと待ってろ」

 ヴォルテンさんが腰のバッグから端末を取り出してカタカタと何やら始めた。
 私達はその端末の上に浮かび上がった仮想スクリーンを眺める。

 「やはりそうか。少し南に下がってる。今朝発った場所から南に3M(450m)も下がってるぞ」
 「どれ位進んだんだ?」

 「100M(15km)は歩いている。目標が曖昧だから足が自然と斜面を降ってしまうんだな。磁石を持っているんだから、これからは注意するよ。アキト様にはマキナの3人が同行してるんだ。歩くだけで地図を作ったと言われるぐらいだから、アキト様達は真直ぐ東に移動したに違いない。とすれば、1時間ほど北北東に移動すれば良いわけだな。だいじょうぶだ。任せとけ!」

 端末を片付けて、胸のポケットから磁石を持ち出す。ちゃんと持ってたんだけど使わなかったようだ。キャシーさんと顔を見合わせて溜息を付く。

 「宝の持ち腐れだな。俺も持っている。キャシー達も念のために持っていた方が良いだろう。たまに方向を確認すればいい。ヴォルテンだけに責任を負わせるわけにもいくまい」

 そんな話で私達も磁石を取り出す。私はお婆ちゃんが使っていたコンパスという精度の高いものだ。キャシーさんは、丸い方位磁石で、ハンター御用達のものらしい。リードさんは私と似た物を持っていた。アクトラス山系での哨戒任務には必携らしい。
 ヴォルテンさんの磁石はキャシーさんとお揃いのようだ。革紐で首から下げているから、今度は移動方向がずれる事は無いだろう。

 その日の夕暮れにはまだ間がある時刻に、古い焚き火の跡を見つけた。
 やはり方向は合っているみたいだ。
 今夜はここに野宿する。

 【カチート】の中で簡素な夕食が終ると、焚き火の周りでおしゃべりが始まる。
 多くは今日の出来事と明日の予定なんだけど、明日の予定と言っても、このまま東に向かうだけだから、アキト様達の旅の話を皆が色々としてくれるのが私にとっては嬉しい限りだ。お婆ちゃんからも色々と教えて貰ったけど、リードさんやキャシーさん達もそれぞれに伝えられているらしい。

 「ふ~ん。それでアキト様達の野宿した跡がそれ程開いていないわけね」
 「たぶんそれが理由だと思う。アルト様の姿はミーナと同じかそれ以下というところだ。1日で2千M(300km)を駆けると亀兵隊の間では言われているが、あくまでガルパスに乗った状態だ。アキト様達が徒歩で向かったなら、その進む距離はアルト様が帰順になるだろう」

 「勧善懲悪」と「見敵必殺」が心情らしい永遠に小さな女の子。それが剣姫と呼ばれるアルト様だ。
 『でもね。アルト様には子供がいるのよ。それだけで1つの大きな冒険譚になるんだけどね』とお婆ちゃんは話してくれた。
 そのアルト様の孫がヴォルテンさんなんだけど、ヴォルテンさんとアルト様の言動はかなり違うようだ。

 「とは言え、何時まで東に進むのだ? 既に東に進路を取って10日以上過ぎているぞ」
 「まだ先だと思う。未だに連合王国との通信は可能だ。通信障害が発生した辺りで少し探索範囲を広げれば良い」

 まだまだ先ってことだろう。いったい、アキト様はどこに行ったのだろう。何処かの森で私達と同じように焚き火を囲んでいるのだろうか?

 『そうじゃのう。ミーアの思っておるとおりじゃな』
 焚き火越しにアテーナイ様が咥えていたパイプを片手に持って呟くように話をしてくれた。アテーナイ様の隣にはガルパスが手足を甲羅に入れている。眠ってるのかな?

 「やはり森の中ですか?」
 『それは教えない方が良いじゃろう。じゃが、ミーナ達のようにおとなしく夜は過ごしておらぬようじゃ。激論を飛ばしておる。論点は我にも理解出来るが、今の連合王国にそのような危惧を持つ者はおらぬ。やはり婿殿達は我等の行く末を気使っておるようじゃ』

 淡々と旅を続けているわけではないという事なんだろうか?
 そんな場所に私達が行って、『早く戻ってください!』と頼めるものだろうか?

 『心配せずともいずれは戻ってこよう。じゃが、ミーナが頼めば直ぐにも戻るじゃろう。婿殿にも判断付かずという事があるようじゃな。まあ、ある意味流される性格ではあるのじゃが……』

 アキト様をそう言いきるのもアテーナイ様だからだろう。でも、思慮深いとお婆ちゃんは言ってたから、アルト様やミズキ様の意見の対立をジッと聞いているのかも知れないな。

 『場所は教えてやれぬが、状況ぐらいは構わぬじゃろう。婿殿達は災厄をいかに防ぐかを考えておる。じゃが、それは防ぐ手立てがないやも知れぬのう。ある意味妥協が必要じゃと思うが、ミズキの性格もあるし、ユング達は協力という立場を変えておらぬ。悪友なら少しは背中を押してやれば良いのじゃが……。あやつ、状況を楽しんでおる雰囲気がある。婿殿の苦労は相変わらずじゃ』

 「判断できないという事でしょうか? そんな場面では、必ずミズキ様が知恵を授けてくれたとお婆ちゃんが話してくれましたが」
 『ミズキにしても難しかろう。結果が分かるから余計じゃろうな。解決策もあるのじゃが、それは婿殿の努力ではいかんともしがたいのう……』

 災厄の解決策ってこと? だったらそれを皆で行なえば良いんじゃない。

 「その解決策ってなんですか?」
 『連合王国の人口を100倍にすれば良い』

 そう言ってアテーナイ様は、笑顔を私に向けた。
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 「危ない!」
 そんな言葉と共に私は後ろに引かれた。

 「ぼうっとしてはダメよ。焚き火に頭を突っ込んだら顔が無くなっちゃうわよ!」

 そんな声で、私は現実に帰ってきた。
 そう、ここは私達の野宿場所。隣にはキャシーさんがいるし、焚き火の向こう側には、吃驚して私を見ているリードさんとヴォルテンさんがいた。

 「何か教えて貰ったのか?」
 「アテーナイ様は、アキト様達が焚き火で激論をしていると言ってました。災厄はかなり大きなものだという事でしょうか? でも、解決策もあると……」

 「解決策があるなら簡単じゃない? はい。これを飲んで」
 そう言って私に新しいお茶を入れてくれる。
 リードさん達も私をジッと見つめている。早く話せってことなんだろうな。

 「連合王国の人口が100倍ならと言ってました」
 「今の総人口は70万ぐらいか……。その100倍だと、7千万? それが災厄を逃れる手立てということなのか?」

 リードさんがパイプに新しいタバコを詰めながら問うてきた。
 キャシーさんは途方も無い答えに驚いてる。

 「そう言いきりました。そんなのが対策なんて、段々災厄が分からなくなってきました」
 「いや、かなり明確になってきたとも言えるぞ。それは数で対抗できるという事だ。打ち払うべき数なのか、生き残る為の数なのかは分からんが、数を持たねば災厄に我等が飲み込まれるということだろう」

 でも、人口を増やすなど簡単であるはずが無い。
 どうにか、3食に事欠かない暮らしが私達には出来ているけど、これは屯田兵の人達の耕作地の拡大が功を奏したのだ。
 それを100倍にしたら……。貧しい人達の中で餓死する者が出てもおかしくは無い。ゆっくりと国力に見合った人口増加は可能でも、簡単に100倍には出来そうにない。
 アキト様達が激論を戦わせているのは、安易な方法に走らずに同じ効果を得る方策を考えてるんだろうな。
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