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ネガティブに行くぜ!
作:洸淋寺 凪


八月××日、午後三時四十分に・・・・・オレは自殺する!

           *

オレの家は、貧乏でなく、金持ちでもないという中途半端な位に立つ家であった・・・・・・そんな家に仕立てたのは、父親だ!

オレの父親は、会社を持っている。ゴッドペーパー(神紙)なんて名前の、しゃれにしても面白くもなんともない広告代理店だ。父親は、毎日夜遅くまで働いているのだが、ちっとも会社は大きくならない。
そんな父親が、オレは嫌いだ・・・・・・
いや、仕事の事はどうでもいいのだ。嫌いな理由は、別の所に有る。
「おい、達男!」目をつむるだけで、ある事に対する父親の叱り声が頭に反響する・・・・・父親が、オレ叱る理由のある事とは
「部活」である。
話すと長くなるが、まぁ短く話そう。
オレの父親は小学校の頃入っていた少年野球チームの監督であった。その時の父親は、失敗ばかりするオレに物凄い恐かった・・・・・・・それからオレは野球がどんどん嫌いになっていった・・・・・
そして時は経ち、オレは中学生になった。しかし父親の手が届かない中学校へ入った今も、オレは、野球をやめる選択権を得られなかった。だか父親の手が届かない所へ入ったのは正解だった。オレは毎日部活をさぼった・・・・・・
そんなオレにも夢は有った・・・・もちろんプロ野球選手や大リーガーなどという物ではない。
そしてオレの学校は、夢有学園ムユウガクエンといい、いかにも夢有りそうな、名前である・・・・・そして、オレの夢は作家に成る事であった。だからオレは文芸部に入りたかった。しかしこの学校には文芸部は無い。最終手段で部活をつくろうと思ったのだが、最近部活をつくれるのは高校生だけだということが分かった・・・・
だからしかたがなく、嫌々野球部を続け、サボリ続けていたのだ。そう、オレが部活をサボルのは、全て学校が悪いのだ・・・・・
しかし最近ではばれるのは時間の問題であり、我慢の限界であった。
なのでオレは父親に野球部を辞めたいと告げた・・・・・しかし父親は、ちゃんと頭を下げたオレをどやし、しまいには野球部を辞めるなら、学校も家の子も辞めろと言い出した。
むかついたオレは、憂さ晴らしに友達に、メールした。
「今日ね、父親に部活辞めたいって言ったらさ〜野球部辞めたいなら学校も家の子も辞めろって言われちゃった〜(´Д`)もう本当どうしよう(T-T)」と打った・・・・・・しかしメールは、なかなか帰って来ない。もう諦めて寝ようとした時、オレの携帯は鳴った。帰って来たメールは、結構長文だった・・・・・
「結局はお前が決めるんだょ。どんな選択をとってもお前の頑張りょぅでどうにでもなる。それと一つ聞くけど、お前自身野球をやってて楽しいといえるのか?嫌嫌やってるならヤメチマエ。辛いからだとか、ツマンナイからだとかいう中途半端なら辞めたほうがマシダよ。んまぁ部活ごときで逃げてるょうじゃこれからも辛いことから逃げる人間になるんだね(´・ω・`)最後に、親父さんにやらされてるとかじゃなくて、自分自身の為に野球を続ける!!っていう考え方してる達男のが好きだな俺は( ̄ω ̄)んまぁお前が結論だして親御さんに言え。納得してもらうまで頭下げ続けるんだよ。それくらいの根性だせょな(゜_゜)(おとこ)だろ!!」・・・・・長かった。
アホか・・・・・オレに頭下げろって?冗談じゃない。
どうせオレは逃げ続けますよ〜だ!自分の人生だ、自分で決める・・・・別にプロ野球選手になりたいわけじゃないんだ!なのに何故オレが野球をしなくちゃいけない!ふざけるな・・・・・自分のために野球をするオレの方が好き?別におまえに好きになってもらいたかねーよ!ていうかおまえも男だろって・・・・・
「・・・・・・はぁ」思わずため息が出る。
もう本当にどうしようか・・・・少なくともオレは部活よりも勉強の方が楽しい・・・・普通は逆でなければならない物だ・・・・・しかしそんな事を父親に言った所で意味が無い。どうせあの人の事だ、
「俺だって学生の時は同じ気持ちだったよ」とか言って辞める事を許さない。なんと頑固な野郎だ。
話しは変わるが、人生がつまらなくなった人間や、人生から逃げたくなった人間は、大体同じ行動をとる・・・・・・・・・もう少しで夏休みだ!そこでオレはある、プロジェクトを立てた。その名も、
「自殺に見せかけ未遂に終わり、自殺理由を野球部の事にして(ま、実際にも野球部のせいなんだが・・・)同情をかい、見事ハッピーエンドを迎えようプロジェクト!!」という、名前だけで何をするのか分かる、長い長い名前だ!
まずはネットで親がいない時間を狙い、一番楽な、死に方を調べた。何故一番楽な死に方なのかは、未遂に終わらせ、意識が戻った時に、どうして一番楽な死に方をしなかったのか聞かれるのが嫌だったし、死ぬつもりも無いのに苦しむのは嫌だったからだ・・・・・
二・三時間で、一番楽な死に方は、首吊りか一酸化炭素中毒らしい・・・・一酸化炭素なら近くのホームセンターで練炭でも買えばいいから楽そうだ・・・・・でもなんだかそれだと本当に死んじゃいそうで恐かった・・・・オレは未遂に終わらさせるんだ・・・・・死ぬんじゃない!ならば首吊り・・・・・これの場合は、首を吊る紐をあらかじめ細く切っておけば実行の時にちょうど紐が切れていいだろう!
しかし本当に死んでしまったら結構大変だ・・・・ネットに書いてあった物には、首吊りをすると目や舌が飛び出るとあった・・・・オレはそうなってしまったオレを想像した。なんともグロいのだろう・・・・・
でも、いっその事全てを捨てるってのも有りかもしれない。

自殺未遂を考えてからもう二週間も経った。
そんな所に最悪な知らせが来た・・・・・・九州からオレのいとこが来る事になったのだそうだ。しかも期間は夏休みいっぱいまで。泊まる部屋はオレの部屋だそうだ・・・・(ますます自殺<ふり>をしにくなった・・・・)
ちなみに、オレのいとこは、オレと同い年の女が一人にまだ幼稚園に通っている男が一人。名前は、女の方が優、男の方が祐樹だ。そしてオレの部屋に泊まるのは優の方であった・・・・・たとえカーテンを引いたりしたとしてもオレと隣り合わせで寝る事になるのは間違いない。親は何を考えているんだ・・・・・いくら
「ちょっと死ぬのも悪くないかな?」とか思っている人間だろうと中学生というのは男女の危ない関係に興味が生まれ始める時期なんだ!年頃の男と女を一緒の部屋で二人っきりにしていいわけがない。確かにオレに限ってそんな事をするとは思えないが、オレも男だ。優に手を出さないとは限らない!(それに優は結構かわいい・・・・・)
そんな思いもつかのまに、優達はやって来た。最初はおばさん(優達の母)もいたのだが、優達を家におくと、
「帰りは福岡空港行きの飛行機に乗せておいてね!」とだけ言い、チケットを渡しておばさんは帰っていった・・・・・
「おばさんこんにちは〜!たっくんもひっさしぶり〜!!元気だった??」
出し抜けに優が聞いて来た。祐樹は恥ずかしそうに優の後ろに隠れている。
「ほら!祐樹!ちゃんとおばさんにご挨拶しなさい!」
優が祐樹をグィっと前に突き出した。
「こ・・・・こんにちは・・・・」
優とは反対に小さな声で挨拶をする・・・・・
「さ、優ちゃん!荷物の整理でもしてきな!達男!手伝ってあげなさい!!」
はいはい!と適当な返事をし、オレは自分の部屋へと向かった・・・・
部屋へ入るなり優はオレの机を漁り始めた。
「おい、何してんだよ?」
「え?いや・・・・この辺にエロ本でもないかな〜って思って・・・・」
は?女がエロ本を探す?なんて趣味だ?・・・・人間性を疑う。
「ちょ、ちょっと〜!そんな冷たい目で見ないでよ!私はただたっくんの趣味を知りたくて・・・・・それに私、たっくんの事好きなんだ!幼稚園の頃から・・・・・ねぇ知ってる?いとこ同士なら結婚出来るんだよ!だから今はその練・・・・」
オレは最後まで言葉を聞くのが嫌になり、部屋を勢いよく飛び出した。
死んでやる・・・・・オレは優とは結婚できない!オレは優と結ばれていいはずがない!オレは・・・・優を幸せになんかさせられない・・・・・
この日の夜は家で寝なかった・・・・友達の家に泊めてもらうことにしたのだ。
「そういえば達男、お前野球部の事どうなった・・・・?」
あれ?なんでこいつがその事を知っているんだ?
「なんで知ってるかって・・・・それ、達男が教えてくれたんじゃないか!」
そう言って彼はオレからのメールを見せる。
そうだった。オレは父親に怒鳴られた腹いせにこいつにメールを送ったんだった・・・・ま、今となっちゃそんな事どうでもいい事だったが・・・・
「でさ!達男!実はあのメールの内容な、掲示板からパクった文章なんだぜ!クククッ・・・・達男騙されてた?」
だからなんなんだ?別に掲示板からパクったとか関係ないだろ・・・・
「んだょ〜!なんか今日の達男ノリ悪いぞ!なんかあったのか?つーかなんでオレん家なんかに泊まろうと思ったわけ?」
優達の事を言おうと思ったのだがオレはやめた。
こいつに今、女の話しをするとやばいからだ(実は最近彼女にフラれたらしい・・・・)。
優のヌードを盗撮してきてくれとか頼まれたらたまったもんじゃない(まぁ見たくないと言ったら嘘になるが・・・・)。
確かに優はかわいい。
でもそれは表面だけの事なんだ・・・・きっと今頃優は心の中でオレの事を馬鹿にしているんだろう・・・・今日の昼頃の事だって、きっとオレを馬鹿にしてやっただけだろう。
人間、誰だってそうなんだ・・・・どんな人間にだって心は有る。
オレにだって、優にだって、祐樹にだって、俊樹(今、オレが泊まっている友人の名前)にだって・・・・・いくら表面でいい子ぶったって所詮心の中は皆自己チューなんだ。オレだってそうだ。自己チューなんだ・・・・・人間なんて滅びればいい。皆死んじゃえばいいんだ・・・・・オレも、優雅も、俊樹も、父親も、母親も、学校の先生だって・・・・・皆、死んじゃえばいいんだ。そうすれば、誰も苦しまない。
「たっくんはそれでもいいの?」
聞き覚えの有る声が聞こえた。・・・・・優の声だ。
「ゆ・・・・優?」
「達男〜?大丈夫か〜?顔色悪いぞ〜!てか、ユウって誰よ??」
俊樹がオレの顔を覗き込む・・・・
数分が経ち、オレは幻聴を聞いていた事が分かった。しかし何故優の声だったのだろう?別に俊樹や、父親の声でもいいはずだが・・・・・
数分考えた結果、優の声はたまたま聞こえただけの偶然だということにした。
そして又数分が経ち、オレ達は寝床に着いた。
「たっくんは本当にそれでいいの?」
又だ・・・・・しかも又、優の声で。
「つお〜!おい!達男?」
オレは俊樹の声で我に返った。
「お!もしかして達男もとうとうクラスの女に恋したか!」
オレの学校は男子校だ!クラスに女などいない。
「あれ?違った?てか、もしかしてクラスの女の意味分かってない系??」
「分かってない系」
「・・・・・・」
俊樹がオレに冷たい視線を送る。
「ったく、そんなんだから達男はオレしか友達がいないんだょ・・・・」
「オ・・・・オレにだって友達はいるぞ・・・・」
「誰?」
「え・・・・えーっと・・・・俊樹とか?」
「だからオレ以外にだよ!いないんだろ!」
確かにオレには俊樹以外の友達がいなかった。始めの方は結構オレの周りにはつねに人がいた。しかし部活をサボり始めた瞬間、皆はオレを避け始めた・・・・・
「お前、今ちょっとでも死にたいって思ってるだろ?」
「・・・・・」
読まれたのか?
「この様子だと図星のようだな・・・・・」
「し、死にたかったらなんなんだよ!お前も一緒に死んでくれんのかよ!」
「いいよ・・・・」
「へ?」
「だから達男と一緒に死んでやるって言ってるんだよ!」
「・・・・・正気か?」
「ああ・・・・」
まさか俊樹も死にたいのか?でもオレはどちらかというと自殺じゃなくて
「自殺してやるぞ〜!」っていう事を父親に見せ付けるだけでいいのだが・・・・しかしこの機会を利用しない手はない!
「俊樹!本当に一緒に自殺してくれるんだな?」
「おう!しかし一言、これは心中ではないからな!」
「神獣?もしかしてゲームの話してたの?」
またもや俊樹は冷たい視線を送る・・・・・
「達男、ふざけてるのか?」
「オ、オレは別にふざけてなんか・・・・・」
「ま、そう恐い顔すんなよ!で、決行はいつにする?」
やばい、もう俊樹は自殺ムードだよ・・・・
「な、なあ俊樹!もう一回考え直したらどうだ?オレ達が死んだらきっと悲しむ人がいるんだ・・・・」
「おい、今になって何言ってんだ!そんなんだから部活も人間関係も中途半端になるんだよ!」
「オレは元々・・・・死ぬ気なんて・・・・・」
「分かったよ・・・・・」
「へ?」
「オレだけで死ぬ」
やっぱり、俊樹自身がもうこんな世界に飽きていたんだな・・・・俊樹と一緒なら、死んでもいいかもしれない。いや、もう一緒に死んでやる。
「たっくんなら、止められるよ!今なら間に合う」
「もう何なんだよ!もうオレは死ぬって決めたんだ!」
「ほ、本当に?」
俊樹の顔がオレの目の前に迫る。
「あ、ああ・・・・」
オレがそう言うと、充電をしていたオレの携帯が鳴った・・・・・
「ったく、誰だよこんな時間に・・・・」
携帯のディスプレイをみると非通知の文字が現れた。
「ま、非通知なら出なくてもいいか・・・・」
そんな事をつぶやいていると、やがて携帯は鳴りやみ、代わりに留守電が入った・・・・・・
「あ、たっくん?こんばんは〜!優でーす!」
優って誰だよって目で俊樹がにらむ・・・・・
「たっくん!そしてたっくんのお友達!死んじゃダメだよ!生きてればいい事がきっと有るよ!あと、優に隠し事なんかしてもすぐ分かるんだからね!」
俊樹が目を真ん丸にしている。俊樹は驚いているんだ。もちろんオレも・・・・
「おい、なんで優って奴は俺達が自殺ムードしようとしてる事知ってるんだ?つーか優って何者なんだよ。達男の携帯にかかってきたって事はお前の彼女か何かか?」
「まさか!優はオレのいとこだよ!」
嗚呼、ついに禁断の事を言ってしまった・・・・・くそう!こうなったら写真でもムービーでもなんでも撮って来てやる!
「そうか・・・・・いとこか・・・・」
あら?予想していた言葉と全然違うぞ?・・・・いや、でも油断は禁物だ!いつ切り替えられるか分からない。
「なぁ達男!」
「き、きたぁ〜〜!」
「お前いつからオタクになったんだ?」
「へ?」
「・・・・・・」
又々、冷たい視線がオレを射る・・・・・
「い、いやだからオレは達男が『キター!!』って言ったからそう言っただけで・・・・」
「で、俊樹は本当は何が言いたかったんだよ!」
「いや・・・・やっぱし自殺なんてやめだ!なんかもう馬鹿らしくなってきた・・・・・」
「そ・・・・そうだな!じゃ、おやすみ・・・・・」
そしてオレは深い眠りに着いた・・・・・

朝、すごい形相をした俊樹の母親に揺すり(?)起こされた。
「達男君、うちの俊樹知らない?」
「俊樹が、どうかしましたか?」
「それがねぇ・・・・・」
俊樹の母親の話によると、朝俊樹の母親が起きると玄関にいつも履いていた俊樹の靴が無かったそうだ。初めは散歩にでも出かけたのかと思い、待っていたのだが、数時間経っても帰って来ないものだからオレが何か聞いていないかどうか聞きに来たらしい。
しかし残念ながらオレは何も聞いていない。最後に聞いたのは自殺が馬鹿らしくなったという事だけだ。もしそれが嘘でなければこれは自殺ではない。大丈夫だ・・・・・しかし、あの言葉が嘘だったら・・・・・急がなきゃまずい。もう手遅れの場合だってある。
その時オレは第六感ってやつを感じた。
「俊樹・・・・・」
オレがそう言うと、俊樹の母親は泣き崩れた。
「かあちゃん!腹減った〜」
すぐ後ろで声がする。
「飯まだ〜?」
すると俊樹の母親は立ち上がり、俊樹に向かって歩き出した。
ようやく状況がつかめた俊樹は、
「かぁ・・・・か・・・・かあちゃん!朝勝手に出かけたのは悪かったけどオレだってもう中一だぜ!別に心配する事なんてないから!」

あれから、オレは朝飯を御馳走になり、急ぎ足で家に帰った。優に会って昨日の電話の件を問い詰めるために・・・・・

家に着くとまだ優達は朝飯を食べている途中だった。
「あら!お帰りなさい!・・・・・達男、何か言う事無いの?」
「????」
「今日、美濃屋先生から電話が有りました・・・・・何か言う事は?」
美濃屋先生というのは、オレの入っている野球部の顧問のことだ。
美濃屋が最近オレが部活に出ない事を言ったのだろうか・・・・・・
「別に言う事なんてねぇよ!で、先生何て言ってたの?」
聞きたくもないのに聞いてしまった・・・・・
「達男、あなた部活サボってない?」
「・・・・・・」
「どうなの?」
「・・・・・・サボってるよ・・・・・・だから、何?」
「・・・・・・」
「何なんだよ・・・・」
「どうして・・・・嘘付いてたの?」
そんなの、部活辞めたらこの家を追い出されるからに決まってる・・・・
「部活行ってるって嘘付いてた時、どこ行ってたの?」
「図書館・・・・」
本当は公園なのだが、嘘を付いた。
オレは嘘つき者だ。きっと自殺をした後行く所は地獄だろうな。そこでエンマ様に舌を抜かれるんだ・・・・
「見つかったからって・・・・・死んじゃダメだよ!絶対・・・・」
「!?」
何者なんだ?こいつは・・・・・
「エラロイド」
「!?・・・・・あぁ祐樹か!エラロイドって何だよ」
「わかんない!ただぱっと頭に浮かんだだけ・・・」
「祐樹・・・・・」
何だか優は寂しそうに弟の名前をつぶやいたた。
プルルルルル!
「電話か・・・・・」
「はい?・・・・・はい、はい、はい・・・・・」
「かぁさん!どうかしたの?」
オレは暗い顔をしたかぁさんに聞いた。
「・・・・・・・」
かぁさんは暗い顔をしながら言った。
「俊樹君が・・・・・・死にました・・・・」
「!?・・・・俊樹が、死んだ!」
「やっぱり・・・・」
「優、お前・・・・・」
オレは俊樹が死んだというのにニコニコしている優にいらついた。
「でも、たっくんは死なないでね!・・・・・・」
優はオレが俊樹の後を追って死ぬとでも思っているのだろうか・・・・
「優は・・・・・」
一体何物何だ?そう聞こうとしたが声が出なかった。
「私は・・・・・祐樹と血が繋がっていません・・・・お父さんや、お母さんとも、繋がっていません」
聞いてないのに優は言った。
「優ちゃん、そんな事は無いんだよ!おばさんちゃんと優ちゃんが生まれる所見たんだからね!」
そうなのだ。オレと優は同じ日、同じ部屋で、ほぼ同じ時間に生まれたのだそうだ。
「本物の風見 優は・・・・・もう死んでいます」
「優が、優じゃない?」
「そう、私は風見 優の・・・・・」
「ちょっと待った!」
「?」
オレが待ったをかけたのは、別に何か言いたかったからかけた訳ではないのだが・・・・・・なぜかオレはこの続きを聞くのが怖くなった。
「何?たっくん?」
こいつが本当に優では無いのなら、オレはこいつにたっくんなんて言われる筋合いは無い。
「お前は優じゃない・・・・」
「そうだけど・・・・・」
「なら、」
「なら?」
「なら・・・・消えろ!」
「!?」
本当はそんな事を言うつもりは無かった・・・・しかし今までのオレと優の会話だったはずの会話が、オレと知りもしない奴としていたなんてと、思っていたらついあんな言葉を言ってしまった。
「分かった・・・・」
それだけ言うと、こいつはオレの方へつかつかと向かって来た・・・・・・そして玄関へ・・・・

そしてあいつは死んだ。医者が言うにはノイローゼか何かだそうだ・・・・
俊樹が死に、優まで死んだ・・・・・しかも自殺・・・・俊樹は一酸化炭素中毒で死亡。優はこのマンションから飛び降りて死亡・・・・・


そしてついにオレは追い込まれた。
部活のサボりが父親にまで伝わったのだ。
別にかぁさんが言った訳でも無く、祐樹が言った訳でも無い・・・・・
それから、あいつが死んだ後、祐樹の母親が向かえに来て、祐樹は九州に帰って行った・・・・・葬式の予定も無いらしい。
そう、問題は父親なのだ!あのプロジェクトを決行するか?本当に自殺するか?






十二月二十日
ここはオレの家が有るマンションの公園・・・・・公園のくせに手入れがなく、まるでジャングルの様だ・・・・・
少し冷えるこの公園で、オレは夜明けの空をながめている・・・・・
「さっ!行くか・・・・」
そんな言葉を呟き、オレは歩き出した。


<END>














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