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  転生の旅 作者:mattsu
第27話 ダンジョンでの別れ


 ショミル軍をほぼ殲滅してから2日後、後続の味方部隊が到着した。
その数凡そ4千。
ペステン軍の本陣とも言える部隊である、シバ部隊。
シバ将軍率いる部隊だ。

「諸君、良く耐えてくれた。
 我が隊もちょっかいを受けて進軍が遅れてしまってな。
 それにしても、良く耐えられたものだ」

 シバがアーライル達の報告を受けて感心したように言う。

「ええ、シーリア殿の推奨した野戦築城のお陰です。」

 とハゼン。

「おお、あれか。
 役に立ったのか?」

 シバがさも意外そうに訊いた。

「野戦築城は確かに有効な戦術です。
 我々全員がそれを目の当たりにしています。」

 アーライルは弁護士の如くフォローを入れる。

「そうか。
 野戦築城の戦術については、この戦が終わったらゆっくりと研究する事にしよう。」

 とシバ。


 シバ本陣の魔術戦士達は、草原の死体を片付けて魔法陣を描いた。
シーリアと健介には見覚えのある魔法陣だった。

 転移魔法の魔法陣。
シーリアと健介が共同で転生魔法を改造して作った魔法の魔法陣だ。
その魔法陣から1人の兵士がどこかに消え、その数分後、30分毎に補給物資や増援の部隊が送り込まれてきた。

「今、ショミル王国へと進軍している部隊は、囮のようなものだ。
 ここから陣容を固めて、ショミル王国へと進撃する。」

 シバが説明を始めた。

 他の部隊には知らされていなかったが、初めから転移魔法を使ってこの草原に部隊を集結するつもりだったようだ。
その橋頭堡ともいえる草原を確保する為の本陣がシバ部隊と言う事らしい。

 パラール、アーライル、ハゼンの部隊はその露払いをする部隊として派遣された。
結果的には任務を達成出来たが、かなり危うい状態だった。

「食えない奴が上にいるようだな」

 健介が苦笑しながら言う。
パラール、アーライル、ハゼン、そして、リア達も皆、苦笑するなり憤慨するなりしていた。
軍人であるから、この様な事は覚悟していたのだろうが、やはり当事者になると複雑な気持ちだろう。
まあ、勝機の見えない愚直な死の行進をさせられるよりはマシだが。


 魔法陣から転移して来た部隊と、後続の部隊を合わせて兵数は最終的に1万を超えた。
貴族所有の兵と義勇兵も動員され、傭兵団もいる。
こんな無茶な運用が出来るのは、転移魔法のお陰だ。
補給物資も各領地から転移魔法で王都へ転移し、王都からここへと転移しているらしい。

 グレグセンも転移魔法でやって来た。
だが、この拠点防衛の為に残留するらしい。
シーリアとは接触する縁の無い男であった。

 グレグセンとシーリアは軽く敬礼をするだけで、通り過ぎた。
シーリア部隊は被害が少なく、少人数で機動力があるため、早速出発となったのだ。

 戦列を整えて次々と部隊がショミルへと進軍していく。
長蛇の列を成して進軍を開始して、6日でショミル王国に進入した。
途中通過した村や町には兵は居らず、平民が怯えてペステン軍を見ていた。

 ペステン軍は怯える平民を相手している暇など無い。
無視してショミル王国にある魔術学校管理下のダンジョンへ向かう。

 第一の目標は魔術学校とダンジョンを制圧し、魔物を生成する魔法装置を破壊する事だ。
ダンジョン制圧には時間が掛かるから、その間に第二目標の王都を制圧する。


 魔術学校の周囲にはショミル軍の迎撃部隊は居なかった。
魔術学校には生徒はもう居ないようで、既に避難していた。
その代わり、魔物の大群がいた。
ペステン軍はその魔物の大群を退治しながら、ダンジョンへと道を開く。
大物の魔物の製造を諦めて数の勝負に出たのか、小物しかいない。

 楯と槍で武装したシーリア部隊がここでも活躍した。
長槍兵と魔術戦士の連携が板に付いて来た。
小物の魔物相手なら、円陣を組んだ槍兵の中心地は魔術戦士が常駐してじっくりと魔法攻撃を仕掛けることも可能だ。
内と外から魔法攻撃を受けて、魔物たちが四散した。

 周囲の味方の部隊は、シーリア部隊の長槍兵(一般兵)と魔術戦士の連携を興味深く見守っていた。


 ダンジョンへと入ったのは5部隊。
シーリア部隊もその中に入る。
ただし、魔術戦士だけで一般兵は入らない。
広いダンジョンも、1千近い兵士が入ると狭く感じる。

 他の部隊が魔物を殲滅し、シーリア部隊の20数名が4グループに分かれてダンジョンの地図を描いて行く。
雑用に近い作業は最も少人数のシーリア部隊の仕事だ。

「それにしても、ダンジョンの最深部って何処まで降りれば良いのかな?」

 クリンが地図を繋ぎ合わせながら言う。

「判りませんわね。
 とにかく降りるしか無いですわ。」

 とエンドーラ。
そう言えば、そう言う情報は誰も持っていなかった。
亡命してきた魔術師達に聞くべき情報だろうに。


 ダンジョンの攻略は基本的には単調な作業だ。
地図を作り、魔物を駆逐して降りていくだけ。
その作業を只管繰り返す。

 魔術戦士が1千人近くもいると、ダンジョン攻略は早い。
5日で地下124階へ降りていた。
途中、尋常では無い大量の魔物に阻まれていたが、魔術戦士も多かった為、駆逐できた。
しかし、被害は少なくは無い。
兵数は700程度に減っている。

 魔物の大多数は雑魚なので、前衛で塞き止めておきながら、魔法で薙ぎ払う。
被害の大部分はこの前衛の者達である。

 健介はダンジョン内では人型のままで居た。
狭いダンジョン内ではドラゴンの姿は動けない場所が多い。
立場上、大抵は先頭で戦っていた。
ドラゴンと言えど疲労はするので、時々後方へ下がる。

「全く、とんでもない所だな。」

 健介がワラワラと押し寄せる魔物を見て言う。
小物でもあれだけいればドラゴンが怖くないのか、健介を見ても逃げようとしない。
或は、何か調整されているのかもしれない。

「何処まで降りれば良いのかしら。」

 リアもさすがにウンザリしてきたようだ。
大人数で攻略していても、こうも戦闘が続くと気が滅入る。

「多分、もう少しだと思うよ。」

 健介が魔法の準備をする。
薙ぎ払う為の強力な魔法は、多少の準備が必要だ。

「もう少しって?
 どうして判るの?」

 リアも魔法の準備をする。
既に前衛の魔術戦士達が防壁を張って、魔物を押し留めている。

「ダンジョンの構造だよ。」

 健介は短く説明する。

「構造?」

 リアが首をかしげる。

 エンドーラの合図で、健介達が一斉に魔法を放つ。
ダンジョンの通路を埋め尽くす魔物達が、炎に包まれて行く。
魔法の炎は消える事無く、ダンジョンの通路を辿ってドンドン先に進んで、魔物を飲み込んた。

「そう、例えば家を建てる時に、石組みを作るだろう?
 その石の組みは、下層に行くほど密にして頑丈にする必要がある。
 地図を見てみれば上層部に比べて徐々に通路や広場が少なくなっているのが判るよ。」

 ダンジョンを構成している巨石は、何らかの魔法の影響を受けている事は間違いない。
健介は巨石を強化し重量を軽減しているのでは無いかと推測した。
そうでも考えないと、ちょっとこの深度のダンジョンを保てそうに無いと、健介でも判る。

「なるほど。
 じゃあ、そろそろダンジョンも最下層になるのね。」

 リアがホッとした様子だ。
周りで話を聞いていた兵士達も、心なしかホッとした雰囲気になった。


 6日目、地下142階へ降りたところで、ダンジョンは最下層になっていた。
そして、その最下層からの横への通路で、広い部屋へと入った。
そこは大きな貨物倉庫のような雰囲気の場所であった。
そして。

「退避!
 ダンジョンへ戻れ!」

 リアが叫ぶ。

 その広い部屋には、ドラゴンが3匹待ち構えていた。
雑魚ならともかく、ドラゴン3匹では並みの魔術戦士が数十人で向かっても犠牲が増えるだけだ。

 運良くと言うのか悪くというのか、他の部隊よりは早く見つけてしまった。
他の部隊の実力上位者の錬度は知らないが、シーリア部隊の方が安心して任せられるだろう。
味方のドラゴンが居るし。

「エンドーラ、クリンを呼んで来て。
 フィ、ランも含めた5人でやるわ。」

 リアが通路に隠れて指示を出す。

 リア、フィ、クリン、エンドーラ、ランの5人が集まって作戦を立てる。
リアとクリン、フィとエンドーラのペアがそれぞれドラゴンを1匹相手にして、引き付けて置く。
その間に、ランが1匹1匹始末するのが基本方針だ。
ドラゴン相手でも防戦に徹すれば、短時間なら2人で抑えられる。


「それじゃ、行くわよ!」

 リアが号令をかける。

 ドラゴンの居る巨大な倉庫の様な部屋へ突入すると、ブレスの集中攻撃を受けた。
5人は素早く散開して回避する。

「見え見えなのよ!」

 とエンドーラ。
それを訊いて他の4人は苦笑した。


 健介は他の4人と離れて、ドラゴンの姿へと戻る。
3匹のドラゴンは健介に気付き、一瞬動きを止めた。
戸惑っているような雰囲気だ。

 その隙に、全員が攻撃を開始する。

 健介は狙ったドラゴンへ突進して頭部を殴り倒し、倒れた所へ氷結魔法を叩き込む。
図らずも、不意打ちとなった。
凍結し始めたドラゴンは慌てて自身にブレスを掛けて凍結を阻もうとするが、それは健介の予想通りの行動だった。
以前にも同じ光景を見ていたから、行動が読る。
ブレスを吐くドラゴンの頭部へ、尻尾の1撃を加えてブレスを止め、更に氷結魔法を頭部へ叩き込む。
そのドラゴンは頭部を凍結され、動きが止まった。
それでも死んでいる訳ではない。
健介はそのドラゴンの頭部と首を持って、引き千切って止めを刺した。

 健介がドラゴン1匹を始末した後、他の2匹の方を見る。
他の2匹はリア達と戦っていた。
ドラゴン2匹は1匹が始末されたのに気が付いていたが、リア達の戦闘で身動きが取れないようだった。

「1匹片付いたぞ。
 リア、クリンはエンドーラ組みに加勢しろ。」

 健介が叫び、リア組みが戦っているドラゴンへと迫る。

 リアとクリンはちらりと健介を見て、クリンとエンドーラの戦っているドラゴンへと矛先を変える。
リアとクリンが戦っていたドラゴンは、それを見送って迫ってくる健介を見た。

「お前は何故人間と一緒に居る?」

 そのドラゴンが健介に問う。

「その質問に意味があるのか?」

 健介が10メートル手前で対峙する。

「・・・ないな。」

 そのドラゴンは健介に攻撃を開始した。

 健介は防壁を張って尻尾と魔法の攻撃を防ぎ、反撃に出た。
他のドラゴンと違って、健介は戦い慣れしている。
魔力の使い方も他のドラゴンよりも効率的で、身体強化の効率も良い。
瞬間的にだが移動速度はここに居たドラゴンの2倍に達するだろう。

 素早くドラゴンの横に移動して、豪腕の爪でドラゴンの腹部を引き裂く。
さらに、身体を回転させて、引き裂いた部分へ向けて尻尾を突き刺した。
尻尾が貫通して、尻尾の先端がドラゴンの背中から突き出る。
ドラゴンは血を吐いて痙攣して絶命した。

 ドラゴンも同じドラゴンに攻撃されれば、いとも簡単に殺される。
ベテラン兵士と新米兵士が戦っているようなものだ。

 もう1匹のドラゴンも、リア達に追い詰められていた。
対ドラゴン用に魔術付加した剣が、ドラゴンの鱗を易々と貫いている。
ドラゴンは足を切り刻まれて、高速移動できない状態だった。
ドラゴンは防戦一方になっており、次第に弱っていった。
止めの魔法をリアが打ち込み、最後の1匹も絶命した。

 健介は人型に戻って、リア達に合流する。

「向うに通路がある。」

 健介が教えた。
入ってきた通路とは反対側に、通路があった。

 5人でその通路を確認してから、部隊を引き連れて奥へと進む。
奥に行くと1つの部屋にたどり着いた。
その部屋には巨大な魔法装置が置いてあった。
そして、その部屋には2人の魔術師が居た。

「あなた達、降伏しなさい。
 私はペステン王国軍シーリア准将、降伏すれば命までは取らないわ。」

 リアが1歩前に出て、降伏勧告する。

 2人の魔術師は素直に従った。
こうなる事は予想していたような雰囲気だ。

「この魔法装置を止めなさい。」

 リアが命令する。

「それは出来ない。
 この魔法装置はこのダンジョンの維持装置でもある。
 もし止めれば、ダンジョンが崩壊する。
 それに、この魔法装置にはプロテクトが掛かっていて、止める事は不可能だ。」

 と魔術師。

「魔物の生成だけでも止める事は出来ないの?」

 とリア。

「無理だ。
 魔物の生成とダンジョン維持が、この魔法装置の機能だ。
 片方だけ止める事は出来ない。」

 魔術師が説明する。
この場所にいたペステンへと亡命した魔術師が、この魔法装置の中心的研究者であった。
魔物の転送位置などの調整は彼で無いとうまく出来ない。
つまり、ここに居る魔術師では元の状態に戻す事も出来ず、やるには月単位の時間が必要と言う事だ。

 リア達の目的は、この魔法装置の破壊だが、魔法装置が止まればダンジョンが崩壊するとなれば、止める事が出来ない。
生埋めになってしまう。

「おい、あの魔法陣は何だ?」

 健介が魔術師に問う。
健介が指差した先にある魔法陣は、健介とリアが作った転移の魔法の魔法陣に似ていた。

「それは古代の魔族が使用した転送魔法の魔法陣だ。
 何処に転送されるのか判らないから、使ったことは無い。」

 と魔術師。

 リア達が相談している間、健介はその魔法陣を検分していた。
リア達の意見は分かれている。
誰かがここに残って魔法装置を破壊するか、魔法装置の改変を魔術師にさせて魔物をダンジョン内に留めるか。
しかし、魔法装置の改変には多大な時間が掛かり、その間に大量の魔物が地上へ送られてしまう。
それでは犠牲者が増える。

「俺に考えがある。」

 健介がリア達に言う。

「何か良い方法があるの?」

 リアが期待した顔で言う。

「俺がここに残ってアレを破壊する。」

 と健介。

「駄目よ。」

 リアが即答する。

「まあ最後まで聞きなよ。
 俺も死ぬ気は無い。
 それに、この魔法装置を破壊するには強力な魔法が必要だ。
 俺にしか出来まい。
 俺はこの魔法装置を破壊したら、その魔法陣で脱出する。」

 健介が先ほどの魔法陣を指差す。

「それは何処に飛ばされるか判らないでしょう?
 危険だわ。」

 リアはなおも反対する。

「だが、これしか方法は無い。
 あの魔法陣を調べたが、転送先はちゃんと存在している事は判った。
 どこかは判らないが、直に死ぬ事は無い。」

 と健介。

「でも、危険だわ。」

 とリアが不安そうに健介を見詰めて繰り返す。

「大丈夫。
 必ず戻るよ。」

 健介がリアの肩に手を置く。
リアは涙目で見詰めて来たが、健介はそれを無視した。
余り時間が無い。
地上の軍事行動の様子は判らないが、魔法装置が動いているなら、魔物の生成と転送が続いていると言う事だ。

「フィ、クリン、エンドーラ・・・リアを頼む。
 直に撤退して地上へ出て、入り口から離れろ。
 地上までは5日あれば着くだろう。
 俺は6日待ってから魔法装置を破壊する。」

 健介が4人にこれからの行動を説明した。
フィ、クリン、エンドーラは頷いた。

「ミコト・・・」

 リアが小さく呟いて健介を見る。

「必ず戻るから、心配するな。」

 健介がリアに言って、クリンに頷いた。
クリンはリアを引っ張って部屋を出て行った。



 健介は魔法装置の部屋で待った。
その部屋には他にも通路があるが、崩落していて進めなかった。
薄暗い静かな部屋の中で、ペステン軍がダンジョンから脱出するのを待つ。

 魔法装置は一種のオルゴールの様な風体だった。
開閉できる蓋を開けると、内部にはざっと数千枚の金属の板があり、魔術構成らしき模様が彫られていた。
さすがにこれだけの数の魔術構成を解読するのは健介でも困難だ。

 亡命した魔術師やここに居た魔術師は、多少なりとも解読したのだろう。
興味深い内容だけに、話を聞きたいものだが・・・


 6日目が終わる頃、健介は魔法装置を破壊する為に、増幅魔法で限界まで威力を増した雷撃魔法を数回魔法装置へ放った。
粒子魔法よりもこっちの方が手頃だからだ。
2回目で魔法装置の防壁が破壊され、その後3回の雷撃で魔法装置は破壊され停止した。

 魔法装置内の魔力の流れが停止して、ダンジョンの崩壊が始まった。
しばらくすれば、この場所は大量の石と土砂で押し潰されるだろう。

「さて、大博打だな。」

 健介はそう呟きながら、魔法陣へと入る。
一呼吸してから、転送魔法を発動させて消えた。



 リア達はダンジョンから脱出して、入り口から5百メートル離れた場所で様子を見ていた。
最初は小さな振動だったが、それが地響きを伴う大音響となり、ダンジョンのあるであろう地面が陥没し始めた。
そこはあり地獄のような有様で陥没していく。
地響きが止む頃には、地面の陥没は深さ約60メートルに及んでいた。

「ラン、脱出できたかしら。」

 エンドーラが小声で心配そうに言う。
出会った頃の彼女からは想像できない魔物への言葉だ。

「帰ってくると言ってたもの。
 大丈夫よ。」

 クリンが涙目で泣きそうになっている。
リアは不安そうな顔で黙って頷き、エンドーラも真剣な顔で頷いた。


 地上の戦闘はペステンの有利に進行していた。
ペステンは大兵力を一気に投入していたし、ショミル王国の軍は終結半ばでペステンの侵攻を許してしまった。
組織的な反抗が出来ずに相次いで降伏していた。

 ショミルの王都は既にほぼ陥落状態である。
城の一部が既にペステンの手に落ちており、城の陥落も時間の問題だった。

 ショミルの村や町の治安維持に、一般兵を割り当てていたが、魔物は小物しか出現しておらず、駆逐は容易であった。
それに降伏した兵士も治安維持に協力していた。
魔物を使用したショミルの王族には反感を持っていたようだ。

 魔物は敵国に送り込めば戦力になるが、余りに惨いものだ。
人間の兵士でも女子供関係なく殺すものは居る。
だが、魔物はそれだけでなく、人を生きたまま食うのだ。
しかも、その魔物が自国内でも暴れまわるとなれば、もはや人として容認出来るはずがない。


 数日後、城が陥落し、王族は処刑され、ショミル王国は滅亡した。


 シーリア部隊はその後すぐにペステンへと帰還した。
ラン(健介)は行方不明のままだった。

 シーリアは帰還すると、上層部からの審問を受けた。
ドラゴンの能力についてである。
シーリアは正直に「判らない」と答えた。
シーリアはランから詳しい事は何も聞いていなかった。

 上層部は多少疑っていたが、あまり追求はしなかった。
肝心のドラゴンは既にいないのだ。
ダンジョンの周囲にいた兵士の話で裏付けられた事に、使役されたドラゴンはダンジョンの中に生き埋めになって行方不明となった。
シーリアが多少隠し事をしていたとしても、ドラゴンがいないのでは話にならない。
上層部はシーリアを解放した。


 リアが宿舎に戻ると、クリンが待っていた。

「大丈夫だった?」

 クリンが心配そうにリアに話しかける。

「うん、問題ない。
 ランの事を聞かれただけよ。
 居なくなったから興味がなくなったみたいね。」

 リアは肩をすくめ苦笑する。
軍組織に居る人間など、そんなものだろう。
ドラゴンの中に人が居るなど夢にも思わないはずだ。

 シーリア部隊の上級指揮官の面々は、戦闘に関する報告書を書き上げ、各地で警備が薄くなった為に増え始めた犯罪や盗賊の対応に追われた。
出撃していた貴族の兵が戻るまでそれは続き、戦後のドタバタが沈静化するのに2ヶ月掛かった。

 結局、その後もランは帰還する事は無かった。


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