げっげげげげのげー。
なんかメロディが聴こえる。
芳江ちゃんはランドセルを降ろして、周りを見回した。
げっげげげげのげー。
やっぱり聴こえる。なに。このメロディ。チョーきもい。
カラスがかぁと鳴いた。
そして、バサバサバサァと、飛び上がった!
げえええええええええええええええええええええええええええ。
「きゃあああああああああああああああああああああああ」
駄菓子屋の屋根から飛び降りてきたのは、な、なんと、あの有名な、ねずみ男!
しかし。
芳江ちゃんは、小学生。知らない。
「いやああああああ。おかああさああああああん」
あわわわわ。ねずみはビビッた。夢子ちゃんならば、こんな反応しない。
「おじちゃん。いや。やめて。お願い。バージンは亀梨くんて決めてるの。お願い。ひっく。ひっく。ちんちんなめろなんて、そんないや。大人の大きい奴なんてアゴが外れちゃうよ。怖いよ。くさいよ」
くさい、という言葉に、ねずみ男はカチンときたが、それも一瞬。芳江ちゃんがあまりにエロな妄想を繰り出すものだからもうたじたじだ。
「いや。だめ。近づかないで」
別に近づいてない。
「ちんこ。ちんぽこをくわえろなんて。いや、いやよ。芳江。初めてのちんぽこはTOKIOの城島さんて決めてるの」
「な、なぜ、リーダー・・・」
「芳江、肥後ちゃんなんて興味ないわ!」
芳江ちゃんは、帽子をアスファルトに叩きつけた。りゅ、竜ちゃん・・・!
「てか、亀ちゃんは・・・」
「ボクサーに興味ねえ!」
ねずみはもうたじたじだ。
駄菓子屋のおばあちゃんが心配そうにこっちをのぞいてる。
「それともなにかてめえ!」
芳江ちゃんが、ねずみの胸倉をぐいっとつかんだ。
「ひ、ひい」
「てめえ、さっきから亀亀って、亀頭をなめてほしいんかい!」
「ひー」
「それとも、こち亀か!」
芳江ちゃんがねずみのわき腹に膝でキックを入れた。
「ぐふっ」
血を吐いてくずれた。
「確かに、亀田選手の頭は亀頭よ! それは認めるわ! でも、一生懸命がんばってる人に向かってそんなこと言っちゃいけないってママが言ってたよ!」
お、お前がゆうとるんやないかい・・・ごほっぐはっ。
「うさぎと亀なら、亀の方がえろいのよ!」
「え、えろい・・・???」
芳江は顔がかァと赤くなった。
「ちょっと間違えただけよ、うきー!」
ひざまづいていた、ねずみの顔面にけりをくらわした。
「ぐげええええええええええええええ」
閑静な住宅街に響き渡る。なぜ、誰も反応しない。駄菓子屋のばあちゃんもすでに寝てる。ばあちゃんのひざの上で猫もすやすや寝てる。
ねずみ男は、アスファルトにのたうち回りながら叫んだ。きゃんたま丸見えじゃん。
「くうおおおお。現代っ子がこんなにもクールだとは知らなんだああああああああああああああ」
芳江はちょっと心配になってきた。
「お、おじさん。大丈夫? 病院いく?」
ねずみは芳江ちゃんを見上げながら、つぶやいた。
「ううう。俺もアニメの世界じゃちっとは知れた男なのに何でこんな目に・・・」
「え! おじさん! アニメ役者さんなの!」
急に芳江の目が輝き始めた。
「う、うん。今はやってないけど、昔、ねずみ男という役でね、アニメ界ではけっこう人気・・・」
「え! ねずみ・・・ミッキー!?」
や、やばい。このおんなかん違いしとる・・・
薄れ行く意識の中で、ねずみは思った。
「でもミッキーにしてはかわいくないわねえ・・・なんか、くさいし・・・」
カチンときたが立てない。声が出ない。
芳江ちゃんは腕を組んで考えた。
「でも、テレビとプライベートは別だというしなあ・・・ナインティナインの岡村さんも自室じゃ暗いってゆうし・・・」
芳江ちゃんは、ランドセルをごそごそまさぐって、ノートとボールペンを出した。
「おじちゃん! サインちょーだい!」
うぅ・・・このおんな殺してろか・・・しかし、動けん・・・ぐほっ。
げっげげげげのげー。
向こうから誰かが歩いてくる。
目玉のカブリものを被った裸のオヤジと下駄を履いた少年だ。親子であろう。父親の方は二メートルくらいある。しかし、なぜ裸? 捕まるぞ。
「あ。父さん。また、ねずみの奴が女の子に悪さを」
「うぬ。あのロリコン野郎。おい。たけし。こらしめるぞ」
「はい、父さん」
二人は、芳江ちゃんの方に向かって走り出した。
「きゃああああああああああああああああ」
芳江ちゃんがビビッたのも無理はない。なにしろ、おい、裸のおっさんが走ってくるんだからな。そりゃな。
「いやああああ。へんたあああああああああい」
「なにごと」
巡回中の警官。芳江ちゃん。芳江ちゃんのお母さん。裸のおっさん。少年。事情徴集。ねずみは、豊田記念病院。葵大橋の向こうにある・・・ね。
「おい、とりあえず、おっさん、服着ろ」
「すんまへん・・・」
「さてと・・・聞きたいことは山ほどあるが・・・」
「はい・・・」
おやじはしおらしくしていた。
「まず、その頭に被ってる変な丸いもの取れ」
「・・・・・・」
芳江ちゃんのお母さんが苦笑いしていた。
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