第29話 大和司とクエスト報告。
タイトルがだんだん適当に……
遅くなりましたが、続きです。
なんとか、兎鳥クイーンの襲撃をしのぎ切った俺たちは、門番のゼンさんに兎鳥クイーンが現れたこと、外壁(外側の低い壁)の一部をクイーンが破壊したことを報告した。(もちろん、おれが少し切ってしまったことについては、黙っておいた。それに切った跡も目立たないしね?)
ゼンさんは、兎鳥クイーンを退けたというと、大層驚いていた。滅多にないことではあるみたいが、兎鳥が大量に倒されたりすると、兎鳥クイーンが現れることがあるらしい。兎鳥クイーンは、B~Cランク以上の強さを持っているといわれており、運の悪い多くの新人冒険者が命を奪われているらしい。 確かにナーシャがいたから事なきを得たわけで、おれとリエルだけでは危なかったかもしれない。
「にしても、いきなりクイーンに遭ってしかも生き残るなんて、運がいいか悪いかわからんな~、はっはっは」
とは、ゼンさん談である。
そして、おれは今、冒険者ギルドにクエストの報告に来ていた。
「昨日の講習は大変でしたね、ツカサさん。 今日は報告ですか?」
「ええ」
エミリーさんの笑顔に癒される。眼鏡がよく似合って仕事のできるお姉さんって感じなのだが、時折浮かべる笑顔は、その胸と相まって抱擁力を感じさせる。
リエルが無言で横に並んでくる。どうやら鑑賞タイムは終わりらしい……
「こっちが採取クエストの薬草5株と……こっちが兎鳥の証明部位の耳ですが……大目にとってきたんですが、いいんですよね?」
そういって、取り出した革袋をカウンターに置く。
ドサリという効果音がふさわしいだろう。袋の中身は兎鳥の耳で一杯になっていた。
「はい、大丈夫ですよ。 でもすごい量ですね……確認させていただきますので、少々お待ちください」
エミリーさんは、革袋の中から、慣れた手つきで耳を取り出してカウンターに並べていく。まったく躊躇がないあたりプロなんだろうなぁという気持ちで、その作業を見守る。
「全部で44羽分ですね。 納品は10羽ごとになりますので、4羽分は余りますがどうしますか? それにしても、よくこれだけの数を倒せましたね。 慣れた人でもこの数を見つけるのは難しいと思いますよ、流石です」
ほとんど、ナーシャセンサー(?)のおかげなのだが、エミリーさんのキラキラした視線が痛い……
「では、こちらが、薬草の採集の報酬の銅貨30枚と、兎鳥の駆除が4回分で銀貨2枚となります」
おれ達は、大分効率よく兎鳥を狩ることができたが、両方うまくこなして1日で銀貨1枚くらいだろうか?Fランクの報酬は、確かにあまり多くはないようだ。兎鳥の肉や毛皮はその入手が簡単なので、ほとんど値段がつかないらしいが、自分たちでも食べることができるので、生きていく分にはきっと困らないだろう。兎鳥の肉は宿屋のおっちゃんにお土産として持っていくこととしよう。解体の仕方も教えてもらわなければ。ちなみに、余った4羽分についてはカウントだけしておいてもらった。次回は6羽分の提出でクエスト終了扱いにしてもらえるらしい。
「ほかに何かありますか? 次回のクエストを受けていかれますか?」
エミリーさんが聞いてくれたので、次回のクエストを考えるか……と、その前に。
「あと、これも見てもらっていいですかね?」
そう言って、おれは兎鳥クイーンの角を取り出した。
「もちろん大丈夫ですよ」
そういって、おれの手から兎鳥クイーンの角を受け取ったメアリーさんの動きがピタリと止まる。
「……あ、あのツカサさん!? もしかして、クイーンに遭ったんですか……?」
「あ~、結構危なかったですが、なんとか撃退しました」
「撃退って……」
エミリーさんが、あきれたような、尊敬するような複雑な表情をしてこちらを見てくる。美人の顔が崩れるのって妙に色っぽいよね……などと思いつつも神妙な顔をして表情に出さないようにする。リエルがこちらを見ているような気がするのはきっと気のせい。
「クイーンは、B~Cランク相当の強さがあると言われているので、遭遇して無事なだけでもすごいですが、その上撃退ですか……? どんなマジックをつかったんです??」
「ぐ、偶然ですよ! 本当に死ぬかと思いましたから。 ライネルさんの訓練のおかげですね、こちらに突撃してきたあと、たまたま壁に突っ込んで動けなくなったようで」
ゼンさんから話を聞いて、なんとなくこの流れは予測できていたので、用意しておいた話をすらすらっと答える。エミリーさんも首を傾げながら、一応納得してくれたようだ。
「こちら、兎鳥クイーンの角ですよね? 兎鳥クイーンの角は高い魔力を持っているらしく、高価な武器や触媒などに使われているのですが、兎鳥クイーンはその強さと、臆病なので、自分より強い冒険者の前にはほとんど近寄ってこないので、滅多に入手されるものではないんです。 今は、はっきりしたお値段をお伝えできないので、本部に問い合わせてわかり次第お伝えさせていただきたいのですが……よろしいでしょうか? ツカサさん?」
速攻で出会ったのだが、そんなレアなモンスターだったのか……
「はい、助かります。 それでおねがいします」
エミリーさんに聞くと、金貨10枚くらいはするのではないかということ、大分お金を使ってしまったところだったが、それらを取り戻して余るくらいかもしれない。エミリーさんからの報告を期待して待っていよう。
その後、Fランクのクエストのオオカミモドキの駆除と毒消しきのこの収集を受けた。オオカミモドキは、オオカミが魔力の影響を受けてモンスター化したもので、Fランクのモンスターとしては、最も強いモンスターらしい。本来では、もう少し下積みを積んでから発注するクエストなのだが、兎鳥クイーンを撃退したことなどを考慮して、エミリーさんが問題ないだろうということで発注をしてくれた。オオカミモドキを倒すと、Eランク昇格の試験を受けられるらしい。
なんだか、色々と順調にきているなぁ。そんなことを思いながらエミリーさんに挨拶をして、冒険者ギルドを後にしようとする。冒険者ギルドの入口まで戻って、おれがスイングドアを開けようとした時、勢いよくスイングドアが開けられた。
ガンッ
おれは、いまドアを開けようとドアの前に立っていたわけで……そこでドアを開けられるとドアにぶつかるわけで……
「エミリーは、いる!?」
尻餅をついてドアにぶつかった鼻を押さえていると。そこには、赤いチェインメイルの上に、白いブレストプレートなどの部位鎧で、装備を固めた女騎士が立っていた。頭にも白いヘルムを被っており、髪型などはよく分からないが亜麻色の髪の毛が見える。表情はきつい顔をしているが、なかなかの美人だった。そのタイプは異なっているがエミリーさんに匹敵するのではないだろうか?ブレストプレート越しの膨らみを見るとエミリーさんに軍配があがるがな、うん。
「何よあなた? そんなとこに座っていたら邪魔よ!」
……前言は撤回させてもらおうか……
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こんなにたくさんの方に、読んでいただけるとは、ありがとうございます!!
至らぬところは多々あると思いますが、ちょっとした時間つぶしくらいになっていれば幸いです。
リアルが忙しすぎて若干更新ペースが落ちておりますが、ご容赦くださいm(_ _)m
2~3日に1回くらいのペースを維持できればなぁとはおもうのですが……