第26話 大和司と冒険者初心者講習。 その2
昨日更新の予定でしたが、ヴァルハラナイツにはまってしまい気が付くともう夜中でした^^;ということで、続きです。
講習は、ルドマンさんの講義から始まった。
ルドマンさんの講義は、冒険者としての戦闘以外の部分についての知識についてだった。冒険者として最低限必要な道具や、野営を設置する際に気を付けないといけない場所、例えば、水場などは、増水などもさることながら、水を飲みに来た動物などを狙って強力な魔物が集まる傾向があるので、水場で野営をするのは自殺行為であることなど、非常に参考になることが多かった。
また、薬草や解毒草など野で取れる有用な植物などの講義も非常に有用だった。ちなみにこの説明で鑑定のスキルをゲットしたりしたのだが、講義に全く花がなかったので、割愛させて頂こう。
ちなみに、ルドマンさんは、なんというか、頭頂部の若干薄くなって恰幅のいいおじさんで、容姿もまた普通だった。
今では冒険者を引退して冒険者の野営用のアイテムや回復薬など冒険者相手のショップのオーナーを務めているらしい。基本的なグッツは、冒険者ギルドの窓口でも販売をしていて、高級な回復薬などは、街の北区にある本店にいけば購入ができるらしい。
当分野営の予定はないと思うが、回復薬などは購入をしておいた方がよさそうだ、怪我をするたびにおれの魔法を使うようなことでは、その副作用で何がおこるかわからない。
そして、これから、おれと別パーティの男2人は、ライネスさんの指導を受けることになっていた。その二人の男は、ルークとマーカスという名前だった。ルークは、背も俺より高く、金髪碧眼という水も滴るようなイケメン(死ねばいいのに)。一方、マーカスは、ルークよりさらに背が高くがっしりとした体形で、いかにも体育会系という感じだったが、顔は普通だった(仲良くしようぜ、マーカス!)。
ルークは俺と同じ剣士で、マーカスが大きな盾を装備した戦士、もう一人の女性が弓を使った狩人で後衛を担当しているらしい。
両腕を胸の前で組んでいるライネスさんの前で、おれたちは神妙な顔をして、ライネルさんの言葉を待っていた。
「よし、では、まずは、手持ちの武器で俺にかかってこい!」
「「「ええっ?」」」
「はっはっは、貴様らの攻撃などかすりもしないから安心して全力でかかってこい」
……
そして、おれたちは今、一人ひとり血祭り(?)にされていっていた。最初に盾を構えて突っ込んだマーカスの突撃は軽くいなされ、背中からライネルさんの剣(ちなみに刃は潰している)で強打されて気を失っている。
次に、マーカスのやられる姿をみて、慎重にライネルさんとの距離を測りつつ近寄ったルークは、一瞬でライネルさんに懐に入り込まれ、剣の柄をみぞおちに叩き込まれた後、回し蹴りで5mくらい吹き飛ばされて気を失っていた。若干、ルークに対する攻撃がひどかった気がしたが、まあ、イケメンだから仕方ない。
ライネルさんに命には全く別状がないように手加減して攻撃をしていて、気絶していても後でフローラさんの回復魔法で回復するから問題がないらしい。それをくらう側には、全く冗談じゃないが……
「さて、次はお前だな」
「いや、この惨場を見せられて、あんまり行く気にはならないんですが……」
「はっはっは、だったら、こちらから行くまでだな」
うーん、八方塞がりか……こうなると行くしかないか……
心の中でそうつぶやくと、俺は観念してバスタードソードを上段に構えた。おれの剣の経験なんて、高校の時に授業で剣道を取ったくらいだ。上段からの面打ちくらいが唯一練習したことで、それが一番自身のある攻撃だった。
「初心者だと思って甘く見ていると、あぶないかもしれませんよ?」
村人ほどの馬鹿げたステータスではないが、剣士Lv1でもかなりのステータスがあるので、Lv20相当の動きができるはずだ。こちらは、刃のついたままの剣なので、本当に何かあれば命を奪いかねないので、一応注意しておく。
「おっ、これは自信満々だな、いつでもいいぞ」
警告はしたはずだ……元A級ともいっていたし、きっと大丈夫だろう。
「行きます!!」
そう言うと、地を蹴って、一気に距離を詰める。そして、上段に振りかぶっていたバスタードソードを全力で振り下ろす。おれの動きを予想していなかったのだろう、ライネルさんが驚愕の表情を浮かべて固まっている。
ヤバいっ!!だが、これはもう止まらない。おれは目をつぶったまま剣を振り切った。
ガキンッ
おれの振り下ろした剣が地面に弾かれる。手走った衝撃に、思わず剣を落としそうになる。
「っつ」
!?
慌てて目を開けると、目の前には誰もいなかった。おれはそのことを疑問に思う間もなく、気を失うこととなった。
……
「キャスト ショートヒール」
「んん」
不意に意識が戻り目を開く……すると、こちらを心配そうに見ている女の……厚化粧のおばさんの顔があった!?
一気に目が覚める。思わず顔を横にそむけると、こちらを見ているリエルと外套越しに目があった。少し心配そうな目に心が癒される。
「ライネル、あなたいつもやり過ぎよ」
フローラさんがライネルさんを窘めている、いいぞ、もっとやれ。ライネルさんは全く動じておらず。
「はっはっはっ、これでお前たちも自分たちの未熟さを学んだだろう。 ヤマトといったか? 身体能力はまずまずだが、そんな体裁きでは、この先やっていけんぞ。 この俺が指導してやろう、みっちりとな。 ああ、ルークにマーカス、お前らもだ」
そっとその場を離れようとしていたルークとマーカスの肩をライネルさんががっちりとつかむ。
「今日の新人は、なかなか見込みがあるな! 今日は久しぶりにみっちりやるか~」
……こうして、ライネスさんと、おれ、そして、ルークとマーカスの訓練は夜まで続いた……
『スキル王国剣術が、Lv1に上昇した。』
『スキル王国剣術が、Lv2に上昇した。』
『スキル我流剣術が、Lv2に上昇した。』
……
リエルを先に帰らせておいたが、俺が宿に帰り着いた頃には、夕飯の時間も終わっていた。
食事は、酒場と化した食堂でも食べられるが、正直立っているのだけでもつらいので、今は避けたいとおもっていた。受付まで行くと、奥さんから、リエルが気を利かせて食事を部屋に運んであるとの話を聞いて、そのまま部屋へと足を向ける。
本当は、講習の後、エミリーさんからクエストの受領の仕方などについて説明をしてもらう予定だったが、Fランクの冒険者が受けられるクエストは決まっており、それらのクエストを達成することによって、Eランク昇格への試験を受けられるらしい。
ライネルさんがまったく解放してくれる気配がなかったので、諦めて途中でリエルにエミリーさんと相談してクエストを受領するように頼んでおいた。
ステータスが強化され以前より体力が付いたとはいえ、今日の訓練は本気でつらかった……正直身体はボロボロだ。
リエルが用意しておいてくれた夕ご飯を一気に搔き込むと、やっと一息をつくことができた。
「お疲れ様です、ツカサさま。 災難でしたね」
リエルが、水にぬらした端布で顔を拭ってくれる。ほてって熱くなった体に、冷たい感触が気持ちいい。
ご飯を食べたから急激な眠気が襲われる。リエルの講習の内容や受けたクエストの内容などについても話を聞きたかったが、この眠気はどうしようない……
おれは、とりあえず明日は朝からクエストをするから起こしてくれと告げてベッドに倒れこんだ。だが、まだだ、まだ終われんよ……
「リエル……おれのバックパックに、マチルダさんがくれた寝間着が入っているから、それを着て寝たらいいぞ……」ぐふっ
そこからおれが眠りに落ちるまで、きっと10秒もかからなかっただろう。おやすみなさい。
ようやくクエストが始まるようです……