第22話 大和司とピエールの悪巧み。
2話前を一つにまとめてますんで、一話前からみてください。
……
……シクシクシク……
そこには、パンツ一枚で床に座り込んでいるおれが残されていた。
ちなみに、トランクスも脱がされそうになったのだが、それは男の名誉と尊厳と守るために、断固死守をして譲らなかった。(ちなみに、下着の替えを渡すので、あとで脱いで渡すように厳命されていた。)
ナーシャとリエル、そして、店員のお姉さんたちは、なんだかすごくいい顔をして、おれの方を眺めていた。
「ツカサも、意外にいい身体をしておるの?」
「そうですね」
リエルと、お姉さんたちが、何かにしきりにうずいているのがみえる。
おれは、リエルが持ってきてくれた外套をようやくトランクスの上から羽織ると、立ち上がった。
「と、とりあえず、好きな服を一式見繕っておいてくれ。」
リエルとナーシャに指示をだして、壁沿いにある椅子に座り込む。まだ、朝早いというのにもう疲れ切ってしまった。
店の奥の方をみると、ピエールが、おれから剥ぎ取ったばかりの洋服を開いたり閉じたりしては、熱心に何かスケッチをしている。
ちなみに、ピエールの名前は、ジャン・ピエールといい、本当にピエールだったりした……まあ、全くどうでもいい話だ。
おれがこの世界に着てきたスーツは、やはり縫製の仕方などが大きく進んでいるようで、ピエールからすると宝の山のように見えるらしい。
ピエールは譲ってくれと言ってきたが、元の世界に戻ることもあるので、その時に着る服がなくなると困ると思い、しばらくの間、貸し付けるということで折り合いをつけた。その貸し出しの条件として、一人当たりの洋服一式をどれでも無料で、また、今後ピエールの店での買い物を常に2割引にしてもらえるらしい。
リエルの方をみると店員さんに勧められつつ、興味深そうに洋服を広げている。ちなみに、今リエルは、その外套を外して、その美しい金髪を惜しげもなく晒している。
ピエールの計らいで、今現在店内は貸し切りになり、店員のお姉さんたちも良家の子女が中心で、口は堅いとピエールが保証してくれたからだ。
ぼーっとそんなリエル達を見ていると、おれの傍に店員のお姉さんが、一人やってきた。
「ねえねえ、あの子たちは、召使い? もしかして、恋人かなにか?」
「あー、従者みたいなものです」
「なるほどねぇ。 ねえ、おチビちゃんはともかく、お嬢ちゃんは色気のない服ばかりみているんだけど、ご主人さまてきには、かわいい服を着せたいんじゃないかな?」
「そりゃあ、まあ」
「ふふふふふ。 じゃあ、お姉さんに任せてくれない? さっき二人の採寸は終わったので、よかったら、私のおすすめを選ばせてもらうわよ~」
「このお店の洋服ってお幾らくらいですか」
「それはねぇ」
お姉さんが、耳元まで近づいてきて値段を教えてくれる。新品の洋服は一から仕立てるので、そこそこいいお値段がするようだが、古着であれば、サイズに制限はあるものの一式そろえても銀貨1枚にいかないくらいらしい。
「では、では、そのおすすめの奴をお願いします。 あー、あと今後、冒険者として活動していく予定なので、動きやすい格好の服もいくらか替えを持たせておいてください」
「了解」
お姉さん(マチルダさんというらしい)が、兵士のように敬礼をする。
「ふっふっふ、腕がなるわぁ……かわいい女の子はいいわねぇ、ぐふふふふ」
なにか聞こえてはいけない声が聞こえた気がする……マチルダさんもまだまだ若そうなのにどうなのよ……まあ、いつもどおり聞こえなかったことにしよう。
この世の中には知らない方がいいことが多すぎる……
店内を並べられている服を見てまわる。洋服のつくりは、現代の服とは異なっているが、渋谷辺りのデパートに並んでいたとしてもそんなに違和感を受けることはないだろう。
ピエール……正直キモイが、腕は確かなようだ……
自分の洋服も見繕っていく、とりあえずパンツを見ているが、下着は、いわゆるズロースといわれるようなものしかないようだ。トランクスを供出するために、試着室で履き替えたが、正直、履き心地はいまいちだった……なんだか蒸れそうだな……(何がとは聞かないように)
パンツと肌着を5着ほど確保して、あとは、トラウザーとチュニックを2枚ずつ選んでおいた。まあ、何かあればまた買いに来ればよいだろう。
ちなみに自分の下着を見るついでに、女性用の下着もチラ見しておいたが、女性用のパンツも同じくズロースで、ブラジャーもスポーツブラのようなものしかないようだ。これは、看過できないな……
これは、開発を急いでもらわないといけないか……女の子達が、かしましく洋服を選んでいるのを横目にピエールの元へと向かう。
「あら、ボーイ。 どれも素晴らしいわねぇ……あ、そのパンツ、こちらに渡しなさい。」
脱ぎたてのホカホカしたやつをピエールに手渡す。
「あら……?」
ピエールは、トランクスをためつすがめつ眺めると、裏返したり、広げたりしている。
「このウェストの部分に入っているのは何なの?」
自分のトランクスをおっさんにこうジロジロ見られるのは正直嫌だな・・・
「それは、ゴムですね」
「なんだか聞いたことがあるわね・・・」
「おれも詳しくはしらないけど、温かい地域の木の樹脂から作られると聞きますね。硫黄を混ぜて使うといいとは聞きますが」
「あら、詳しいのね、まずはそのゴムとやらが手に入らないと話にならないわね。 ナポレオンにでも相談をしてみようかしら……」
ピエールが何かをメモしながら、ブツブツ言っている。うん、気持ち悪い。
「ああ、ごめんなさい。私って夢中になったらいつもこうなの。 あなたの着ていた服だけど、どれも縫製が素晴らしいわぁ。 すぐには無理だけど、2月ほどもらえれば同等のものは作って見せるわ」
「っと、ピエールさん」
「あら、ボーイと私の仲じゃない、ピエールでいいわよ」
気持ち(ry
「お願いがあるんですが」
「かわいい子のお願いなら何でも聞いちゃうわよ~、うふ」
気(ry
「ピ、ピエールを見込んでの話なんだが、今から見るものは秘密にしてほしい」
「わかったわ、では、話を聞きましょうか? ボーイ」
おれは、スマートフォンを取り出すと、インターネットでとあるものを検索してピエールに見せる。
「これは!?」
ピエールが、驚愕の声をあげるとともに、職人の鋭い視線をスマートフォンへと向けている。ピエールにメモを取る右手が高速に動く。
「これは、魔法の道具ということかしら? ボーイ、あなた素晴らしいわね。職人として、あなたの依頼引き受けたわ」
「任せたぜ、ピエール」
おれとピエールとはがっちりと握手をした。
どうもこんなペースで更新していくことになりそうな感じですので、気長によろしくお願いします!
来週は予定多で若干更新ペースが悪そうです……