第20話 大和司と偉大な龍(幼女)。
二話を一つにまとめましたっ
おれは、ベッドの反対側に立っているリエルに声をかける。
「いや、リエルは、向うのベッドで寝ようね?」
「向うのベッドはクロが使っていますし、従者が主人と同じベッドで寝るのは当然のことです」
リエルが淡々という。
「……誰が言ってたのそれ?」
「本に書いてありました」
「どんな本だよ!!?」
「はい、途中までしか読ませてもらえなかったので、よくわからなかったのですが、従者は主人と同じベッドで寝ることが一番の奉仕だと書いてありました。 男女が、裸になって……暖をとるのですかね?」
最後なぜ疑問形??というか、それって、官能小説かよ!?
なんだか頭が痛い……
「誰だよ、そんな本、読ましたの……」
「先輩が読むようにと渡してくれました」
また、先輩か!!
一度、その先輩には、もの申す必要がある。そう心のメモのに記録しておく。
「いや、一緒に寝るのはいろいろ問題あるから……よし、そうだな……おれは向うで、クロと寝るからさ。 リエルはおれのベッドで寝ればいいよ」
ベッドを回って、クロが中央で丸まっている反対側のベッドへと行こうとすると、リエルが行き先を塞ぐように立った。
「ダメです、ツカサ様は寝相が悪いので、寝ている間にクロちゃんを潰してしまうかもしれません」
ハッ!?正論??
いやいやいや、この子は何をこだわっているんだろうか。大人の返しを見せておく。
「リエルと寝たら、今度はリエルを潰しちゃうんじゃないか?」
「私は、大きいので大丈夫です」
妖怪ああ言えばこう言う従者がここに……
身体を拭いてもらってすっきりして、いい感じに眠くなっているし、明日は、冒険者ギルドでの研修が始まる前に買い物も終わらせておきたいので、正直もう寝ておきたい。
だれか、だれか、助けてください。
異世界の宿屋で○を叫んでいると……その時
「エルフよ、その人間は我と寝たいと言っているようだぞ。 おぬしは、一人で寝るがよいぞ」
「そうだぞ、リエル。 一人で寝た方がいいんじゃないかな?」
「何を仰っているのですか、ツカサ様?」
「リエルこそなにを言っているんだ?」
「どうした、おぬしたち?」
ん?んんんっ??
なんか声が多いような……おれは声をした方に振り返る。
すると……そこには……幼女がいた。
……
この世界にきてから、何度目かの時が止まった。
反対側のベッドには、幼女が寝ころんだ状態から上半身を起こした姿でこちらを見つめていた。
月明かりに浮かび上がるその姿は、紫色の背中まで伸びるふわふわの髪の毛、髪の毛と同じ紫の瞳、リエルとはまた違った透き通った白い肌を、黒色のワンピースが包んでいた。
もし、大人の女性になれば、妖艶な美女になるであろうと思われる……
しかし、……8~9歳くらいの幼女がぶかぶかなワンピースを着ている姿は、どこか少しほほえましかった。
「どうした、人間よ。 我の美貌に心を奪われたか? よいよい、わかっておる。 我も、強い者は嫌いではないぞ。 偉大な我には、おぬしが隠しておるその力もわかっておるぞ。 こちらにきたらどうだ? この我と子をなしたいという、お主の欲望、我が受け止めてやろう」
なんか、幼女が何かいっていますよ……?
「いや……というか、お嬢ちゃん誰よ?」
おれは当たり前の質問を投げかけた。知らない間に部屋まで入ってきて、部屋を間違えて入ってきたのだろうか?
「ククククク。 我の名を尋ねるか、人間よ……よかろう。 我は、最強にして、偉大な龍、その中でも最も尊いといわれておるブラックドラゴン。 その翼は光を切り裂き、その吐息は何もかもを吹き飛ばす。 我の名は、アナスタシア・チェルナター……(中略)……アニキエフなるぞ」
うん、アナスタシア・チェルナターまで聞いた……
「長いな……」
心の声が漏れる。
「ナーシャと呼ぶがよい」
偉大な龍は、意外に軽かった!?
その時、おれは、ある考えにようやく思い当たった……まさか……
「え、クロが、ナーシャなのか!??」
「人間、我をそんな、名前で呼ぶ出ないぞ! 人間!!」
幼女が両手を振り上げて怒っているようにみえるが、おれは、それどころじゃなかった……
「そ、そんな……クロが……こんな姿に……」
ナーシャは、おれをみて、なぜか満足そうにこちらを見ている。
「ドラゴン……」
後ろでは、リエルが息を飲んでいるのがわかる。
しかし、おれは、自分の置かれた状況に、そんな余裕がある状態ではなかった……だが、ここで、諦めるわけには……男としてここで引くわけにはいかない!!
おれは、覚悟を決めて、その言葉を口にする。
「ナ、ナーシャ……元の姿にもどってくれないか!?」
おれの、楽しい爬虫類ライフをこんなところでこんなところで終わらせるわけにはいかない!!
「何を言っている、人間」
「司」
そっと、名前を告げておく。
「何を言っている、ツカサ」
あ、言い直した。意外に律儀だなドラゴンさん。
「人間は、人同士じゃないと子を為せないだろう? 竜の姿に戻ったら、主と交われないだろう?」
「いや……人の姿でも、幼児はちょっと……」
あと、10年……いや15年たったら出直してください……
「ぬ?」
ここで、ナーシャが、自分の姿をまじまじと確認する。
「ぬあー、なんじゃーこの姿は!!!」
……
…………
ナーシャが冷静さを少し取り戻してきたようだ。
「これは、力が失われておるようだな……我の前身は滅びたのか? ツカサよ、主は、我をどこで見つけたのじゃ? あたりに、宝剣がなかったか?」
ナーシャが立て続けに質問を重ねてくる。
「あ~……なんか山が吹き飛んでいて、その山があったところで……」
右上の方を見ながら、ナーシャを見ないで言う。う、嘘ではないよな、うん。
「や、山が吹き飛んだじゃと!?」
「い、いや~……気が付いたときは、気絶してたから、おれもよく分かってないんだけどね……」
すみません、おれのせいです……ナーシャの方を見ることができない。
「あたりに宝剣はなかったか? 宝剣があれば、わが力の大部分を取り戻すことができるのじゃが……」
「それのこと??」
壁に立てかけておいた、剣(Tears of Dragon)を指し示す。
「こ、これじゃ……というか、何でここに!? 龍の宝剣は、人間がそう簡単に動かせるようなものではないのじゃが……」
今、すこし現代語しゃべりになってたな……
「あー……なんか、力いっぱい引っ張ったら抜けちゃいました」
テヘペロ。
そんな感じで頭の後ろに右手をやってみる。
ナーシャが驚愕の表情でこちらを見てくる。
「ちょ、ちょっと、宝剣をこちらに渡してみてはくれぬか?」
「いいよ、ほい」
壁から取ってきた宝剣を、ナーシャの手に渡してあげる。次の瞬間、ナーシャの手から、宝剣がベッドに落ちる。剣は重く、幼女のままだとそれは重いのだろう。
ナーシャが泣きそうな顔で、宝剣と俺の顔とを、交代交代に見ている。
「どうした?」
どうしたのかと思い、ナーシャに聞いてみる。
「力の、力の所有者が移っておる……600年間少しずつためてきたのに……そ、そんなのひどい……ぐずっ」
こ、これは……や、やばい気がする……
「う、うわ~~~~~ん!!!」
ナーシャが、マジ泣きを始めました。
ごめんなさい、幼女に泣かれたとき、どんな顔をしていいかわからないの……
おれが呆然としていると、今まで、蚊帳の外にいたリエルがナーシャの様子を見て我に返えったようだ。
リエルは、ナーシャのもとに寄り添うと、後ろからそっとナーシャを抱きしめる。そして、こちらに向けて、いつもより、20℃は冷たい視線を送ってくる。
お、おれのせいなの!?
はい、うん、ですよね……思い返せば、心当たりが多すぎだった。
スンスン……
幼女の泣き声がこだまするこの部屋……いっそ殺してくれ(><)
……
…………
ナーシャは、泣き疲れたようで、リエルの膝で幼女の姿のまま眠ってしまった。
それを確認したリエルは、
「では、私はこちらで寝ますので、ツカサ様は、そちらで一人で寝てくださいね」
リエルさん、さっきと態度が全然ちがいますよね……
「はい」
おれには、そう返事を返すしかできなかった。
その日、おれは、当初の予定どおりに一人で眠ることに成功した。
予定どおりに予定外だったが……
2話を一つにまとめておきました。
アナスタシアこと、ナーシャの名前募集だったりします。
補足:いくつかコメントありがとうござます。
ファーストネームは、ちょっとした王女さまっぽい感じの名前ということで、アナスタシアにしようと思ってました(いい名前があればこの限りではないですが 笑)
作中で、すごい長い名前をナーシャにしゃべらせようとしたんですが、思いつかず……アナスタシアの続きのアイデアをいただければ~という感じでした!
言われてみると、那○原さんもそうでしたね・・・
アナスタシアの名前は、とあるところで発見した名前ジェネレーターで作りだしました!名前ジェネレーター便利です・・・(毎回悩むので)
とりあえず、ロシア名ベースでとても長い名前のイメージですが、考えている間に力尽きました……
ちなみに、今後一切本名が出てくる予定はありません!!
明日は帰りが遅い予定なので更新できるかは微妙です。
次話でやっと2日目が終わるようです。
1日終わるのに約10話だと……展開遅くて申し訳ありません……