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閑話その3 とある受付嬢の、憂鬱な毎日。

休みの早さにびっくりしますね……^^;


昨日短かった分、閑話ですが、今日は若干長めです。

 エミリー・ヘミングウェイは、アステリア冒険者ギルドの看板受付嬢である。

 今日もギルドのカウンターで受け付け業務を行っている。


「では、カイルさんには、こちらの護衛クエストがお勧めです。」


 数あるクエストから、クエストの情報、冒険者の能力を考慮して、無理をして命を失わないように、かつ、報酬も得られるようにしなければならない。


このクエストの斡旋業務をギルドがするようになって、冒険者の生存確率が大幅に上がったと言われている。


 冒険者は、各地の村などから一攫千金を目指してくるものが多い。

 村での一番の怪力だとか、少年のころから2人でチャンバラごっこで天下一の大将軍を目指して鍛えてきたなどでは、自分たちの強さと魔物の強さとを見誤って、すぐに死んでしまう。


そこで生み出されたのが、冒険者ランクであって、ギルドによるクエストの斡旋のシステムである。


「エ・・・エイミーさん、次のクエストが終わっ・・・」


「そのお話はCランクになってからお願いしますね」


 言葉が続く前に笑顔で釘を刺しておく。


 空気を読めない男って嫌よね。同僚のリーナとマリアと、昨日の昼間に起きた大事件、アステリア山脈で起きた大爆発について盛り上がっているところだったのに、話を中断させるなんて・・・


 この街の名だたる冒険者たちは、今回の緊急クエストでみんな調査団に加わって調査に行ってしまった。

 つまり、いまここにいるだけで、これらの冒険者が一流の冒険者ではないことがわかる。


 まあ、カイルさんは、村からでてきた若者にしては、慎重にこちらの助言を聞いて無理はせず、5年でDランクまで上がってきた有望株の一人である。

 Dランクともなると、一人前の冒険者とはいえるが、良くも悪くも普通のなのよね。


 私の見立てによると、カイルさんは、正直Cランクに昇格するのは厳しいだろう。

 Cランク以上になるには、人より抜きんでた特別な能力が必要になる。


 私とデートをしたいなら、最低Cランクにはなってもらわないと、

 その先ということだったら、Bランク以上じゃないとね。


 でも、Bランク以上の人は数も少ないし、

 その少ないBランクの人も大体性格がおかしいのよねぇ・・・


 思わずため息が出てしまう。


 選り好みをしているつもりはないんだけど、いい人に巡り合えないまま、もう24になってしまった。

 同期は適当に妥協して、一人、また一人と相手を見つけてゴールインしてしまった。

 私も妥協した方がいいのかなぁ?


 ううん、エミリー、あなたはしっかりといい男を捕まえて幸せになるんだから!

 カウンターの下で両手を決意を込めてぐっと握る。


 どこかにいい男がいないかしら?


 カウンターに頬杖をついてそんなことを思っていると、スイングドアを開けて、外套を着た二人組が入ってきた。


 見たことがない、新入りだろうか?


 ギルドの中でも外套のままというのは、どうもうさん臭い。‐20点で、30点。

 新しい人がギルドに来た時は、客観的に採点を行うこととしている。


 男がフードを外して素顔が目に入る。この辺りでは見たこともない黒髪が目を引く体型は少し華奢な感じだけど、顔はまあまあ整っていて、それなりには格好いいような気がする。外套のことはなかったことにして、+30点で、60点。

 でも、ちょっと若すぎかな~?加点を少し減点しておく。‐5点、55点。


 もう一人、こちらは外套を着たままの仲間を連れて、男がこちらにやってくる。


 私は担当する冒険者が多いので、最近の新人は、後輩の子に回しているんだけども、この子はかわいい顔をしているし、たまには私が担当しようかな。


 そう思うと、私は、営業用のスマイルを浮かべて、男に声をかける。


「ようこそ、アステリアの冒険者ギルドへ。冒険者ギルドは初めてでしょうか?」


 周囲に視線を送る仕草などを見ていると、その人が初心者なのか、そうでないのかは容易にわかる。


「あ、はい、わかりますか?こちらで登録をお願いしたいのですが」


 村から出てきただけの村人とは違う、丁寧な言葉遣い。+5点、60点。


「登録には、ステータスボードの提示と、一人当たり銀貨1枚が必要になりますがよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします。」


「では、こちらで少々お待ちください。」


 背後にある鍵付きの棚から、受付担当が各自持っている鍵を使って、二枚のプレートを取り出して、カウンターに戻ってくる。


 そして、これまで数えきれないほど行ってきた説明を行う。


「こちらのプレートが、冒険者の皆さんの身分を示す身分証となります。 このプレートは、魔術回路を付与されていて、皆様のステータスボードの情報とリンクをして個人を特定し、複製や不正ができないようになっています。 また、冒険者ギルドで受注したクエストの管理、あとで説明を致しますが、各自の冒険者ランクなど、冒険者に必要な個人情報が保存されるようになっております。 ここまでで、何か質問はありますか?」


 一息で説明を行う。理解が追いついているだろうか?

 男は、少し考えた素振りを見せると。


「これだけの魔術が施されたものが、銀貨1枚でよろしいのでしょうか?」


 !!


 ちょっと感心した。身分証の説明で、このような質問をしてくるものはいなかった。

このプレートの価値、魔術の価値がわかるということは、これまでにそれなりの教育を受けてきたのかもしれない。+5点、65点。


「はい、これは後ほど説明をしようとおもってましたが、仰るとおり、このプレートは高度な魔術を付与してありますので、安価なものではありません。 もし、紛失をされた場合は、再発行の手数料として銀貨10枚を頂ますので、決して紛失をされないように注意してください。 初めて発行される方の代金については、新規冒険者の皆さまの支援の意味も込めて銀貨一枚で提供させていただいております。」


「なるほど」


 理解力は十分なものがあるようだ、冒険者というと脳筋の人が多くて、知的な人というのはなかなかおらず、これは評価できるポイントかも。

 少しテンションが上がってくるが、浮ついた表情は出さずに、スマイルをいつもより2割増しにしておく。


「では、登録の手続きに入らせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?」


「はい、お願いします。」


「それでは、ステータスボードを表示した状態で、こちらのカードに右手をかざしてください。 それで、ステータスボードの情報がプレートに転写されます。 また、ギルドでも別途ステータスボードの内容を記録させていただいておりますので、ステータスボードを確認させていただきます。」


男は、少しうなずくと、ステータスボードを表示させた。


「ステータスボード オープン」


 プレートが淡く光って、情報が無事に転写されたことが確認できる。また、ギルドの冒険者帳簿に必要事項を記帳していく。 もちろん、私の個人的な確認も同時にすませておく。


 名前は、ヤマト ツカサ。本人に確認すると、ヤマトが家名とのこと、珍しいけれど、家名があるとは、どこか地方の良家の出かもしれない。


 年齢は23歳……・うん、私よりは年下だけど、全然許容範囲よね?

 むしろ、もっと若いと思ってたけど、お姉さん的にはうれしいかな。+5点、70点。

 

 70点を超える人は、これまでも、なかなかいなかった、これは当たりかも!?

 はやる気持ちを抑えてまずは、業務をこなしておく。


「お連れ様も、よろしいでしょうか?」


 声を掛けると、今まで後ろに控えていた仲間がこちらにやってくる。


「ステータスボード オープン」


 女!??


 女連れか~、がっかり。-40点、30点。

 心のテンションは、だだ下がりだったが、かろうじて表情には出さずに、登録の作業を行う。


「!!?」


 ステータスボードを見た途端、動きが止まる。

 エルフって……このギルドで、受付を始めてそれなりの年数が経つけど、今まででも数人しか、生粋のエルフを見たことがない。

 そのいずれのエルフも精霊魔法の達人で、冒険者のランクは平均B、中にはAの者もいた。この子は、まだ職業も村人のようだけれど、エルフということだけで、将来が非常に有望であるということだ。


 かくいう、私も、エルフとはゆかりが強い。祖母がエルフなので、エルフの血をもったクォーターだ。母がまだ幼いころに、祖母はどこかに行ってしまっていて、祖母にあったことはないのではあるが。

エルフは非常に長命で、幼少の頃は人と同じように育つが、成人してからはほとんど容姿が変わらなくなる。ハーフエルフの母もエルフとまではいかないが、今でも非常に若く、街を歩いているといつも姉妹に間違われてしまう。


 すこし脱線してしまったが、エルフをつれているということは、かなりの家系ということなんじゃないだろうか?

 また、エルフの子の態度を見ていると、きっと恋人とかそういうものではなくて、従者ということなんだろう。さっきの、-40点は取り消しておく、70点。


 でも、外套を外さなかったので、亜人であるとは思っていたけれど、まさかエルフとは……この二人には注目をしておいた方がいいと、私の受付嬢としての勘が伝えている。

 きっと、後輩の子らでは、驚きを隠すことができずに、二人組に悪印象を与えただろうに違いない。

私が担当しようとおもったことも、何かの縁なんだろうきっと。


「それでは、登録料の銀貨2枚をお願いします」


 代金を受け取ると、冒険者カードを2人に手渡す。これで、この二人のアステリア所属の冒険者だ。


「こちらが、身分証となる冒険者カードです。 これで、あなたたちも冒険者の一員となりました。ようこそ、アステリアへ、改めてよろしくお願いします。 こちらの冒険者ギルドでは、私を含めて何名かの受付がおりますが、登録の担当をさせていただいた、私、エミリーがヤマトさんの担当となります。 クエストの受注や、報告、納品などは、私がいる場合はこちらにお越しください。 もちろん、私が不在の場合や、夜間に来られる場合には、その時にいる受付にご相談いただければお受けできますが、各種クエストは、カウンターでも適性等を考慮してアドバイスをさせていただきますので、なるべく担当の者と行うようにしてください」


「わかりました」


 やはり聡い人のようだ。理解しているようなので、説明をさらに続ける。


「お二人は、本日冒険者ギルドに登録をいたしましたので、冒険者ランクはFからのスタートとなります。こちらの冒険者ランクは、FからSまであり、一定の条件を達成するとランクアップの試験を受けることができるようになります。 ランクアップ等については、都度説明をさせていただきますが、まずは、冒険者としての一人前のランクDランクを目指してクエストを受注していただくこととなろうかと思います」


 ヤマトさんは、カードに記載されたFというランクの文字を確認している。こちらをみて、うなずきを返してきたので、さらに続ける。


「クエストの受注には、新人には、まず研修を受けていただくことが必要となりますが、研修は、平日の昼13時から行っておりますので、申し訳ありませんが明日、改めてギルドまでお越しください。 クエストの具体的な受注の仕方については、研修後にご案内させていただきますが、基本的には、あちらの掲示板にあるクエストの募集の掲示を確認していただいて、ご自身のランクにあったクエストを選んでこちらにお持ちいただくというシステムになっております。 また、あちらに掲示されていないクエストもございますので、別途、受付までご確認ください」


「また、クエストで指定された納品物以外にも、ギルドでは買い取りを行っていますので、なにか、お持ちであれば、その都度お声掛けいただければ、こちらで確認をさせていただきます。」


 カレナリエルといったか、エルフの従者がヤマトさんに何か耳打ちをしている。


「すみません、こちらの買い取りってできますかね?」


 そういうと、ヤマトさんは、バックパックの中からなにか大きい牙と爪、そして鱗のようなものを取り出してきた。


 取り出す際に、バックパックの中が少し光ったような気がして少し首をかしげたが、その出されたものがなにかわかると、その疑問はどこかに消えてしまった。


 こ、これは!?


「か、確認をさせていただきます。」

 

 引き出しから、鑑定用の魔法のメガネを取り出して普段つけている眼鏡と取り換えると、その牙と爪と鱗の鑑定を行う。


 地竜の牙

 地竜の爪

 地竜の鱗


 やっぱり・・・


「ヤマトさん、これはどちらで?」


「ああ!!実は、たまたま死体を見つけたんです。昨日の爆発に巻き込まれていたようで……」


 ヤマトさんが、私の驚いた顔をみて説明をしてくれた。

そういえば、あの大爆発、まだ原因は判明していないみたいだが、あれは、龍の巣で起きたといわれている。

 その爆発で死んだ、地竜を偶然に見つけられたのだろう。


「びっくりしました……2人で地竜を倒したのかと思いました。ランクBの冒険者が地竜を倒すには、1PTが必要になります。それこそ、ランクAの冒険者でないと倒すことは難しいと言われているので……」


 なんだか、ヤマトさんが、額を拭っているような気がするが、ここまで歩いてきたようだし、暑くなったんだろう。


「それにしても、すごく幸運ですね!!どの部位も状態がすごくいいようですし、かなりの高値で引き取れると思います。竜は、それ自体討伐が非常に困難なので、なかなか素材が市場に出回ることがありませんが、爪、牙、鱗はおろか、骨や肉などすべての素材が有効に使えて高価なんですよ」


「あー、肉はいくらか確保したんですが、骨はさすがに持てなくておいてきてしまいましたよ……」


「そうなんですね、もしよろしければ、地竜の死体の場所を教えてもらっていいでしょうか? 残った地龍の骨の回収のクエストを出したいと思いますので。」


「構いませんよ」


 ヤマトさんは、なかなかの器量が有りそうだ。死体の場所を教えずに自分で回収するという方法もあるのに。


「では、買い取り額の算定に移らせていただきますが……(もしよかったら個人的に地竜の肉を少しおすそ分けしてもらっていいでしょうか)」


 ついでに個人的なお願いをしてみたが、それも、快諾してくれた。今日は、地竜のステーキにしようかな、母も喜ぶだろう。食べ物のポイントを、さらに追加しておく。+5点、75点。


 クエストを介さない、各種部位の引き取り額は、2週間程度で更新されている。ギルドにある最新の相場を計算したところ、地竜の牙、爪はそれぞれ金貨1枚で2つずつ、鱗は1枚について銀貨5枚で、20枚。


 計算をすると、合計で、金貨が9枚になる。ちょっとした大金だ。


 ヤマトさんはその大金を、無造作にウェストポーチに入れる。細かい動作にもチェックを欠かさない。これだけの大金を持っても、動じないなんて、やはり金貨を持ちなれているに違いない。+5点、80点。

 初めての80点台、この人はしっかり捕まえておかないと、うん。固く決心をした。


 自然と微笑みがこぼれてくる。この人は、私の運命の人かも知れない!!


 ヤマトさんには、普通の宿でお勧めがないか聞かれたので、叔父がやっている、竜の息吹亭を勧めておいた。


 実際、叔父の宿屋は評判もいいし、良くしてくれるだろう。また、宿泊場所が分かっていれば、いろいろと今後も連絡を取りやすいだろうという打算的な考えもある。ヤマトさんからは、他にも、服屋や武器・防具屋などめぼしいお店について聞かれたので、懐具合を考えつつ、それなりに良い商品を扱っているお店を教えておいた。


 次にヤマトさんが来るのは明日の13時だ、まだクエスト受注など詳細については説明する機会もあるので、今日聞けなかったことは明日確認をしておこう。

 今から明日の昼の業務が楽しみだ。


 私は、満面の笑顔で、ヤマトさんを送り出した。


ワードで書いた文字をコピペしてるんですが、段落開始の1字あけがつぶれちゃいますね……


冒険者ギルドの受付というと、年上眼鏡の女性という安易なイメージ……

評価とかしちゃってますけど、きっとお母さん思いの素敵な女性です。

お母さんと並んでいるときに、どちらが姉に見られるかは……


仕事が通常モードなので、平日の毎日更新ができるかは若干あやしいです^^;


誤記のツッコミありがとうございます!

途中でポイントを変えたところがバラバラになってました。


>女連れか~、がっかり。-40点、30点。

>食べ物のポイントを、さらに追加しておく。+5点、75点。


に修正しました。

あと、謎のギルドも直しておきました!


毎回ありがとうございます!!お手数をおかけしますm(_ _)m

ツッコミ多数でしたので^^;こちらでまとめて返事とさせていただきます、すみませんm(_ _)m


地竜を倒すには云々のセリフをちょっと直しました。

心情をセリフに持ってきたときに、そのままにしてしまってました……


ツッコミどころ多くて申し訳ありません…


さらに修正しました、そろそろダウンしますので、

以降の修正は明日以降になります!


本当に誤記の修正助かっております。あらためて、ツッコミをくださった方に感謝を


とりあえず、書きたい宿屋回までは、毎日投稿はしたいです・・・見直し、修文だけでも、1話2時間とか溶けるんですよね・・・


20150401

エイミー・ヘミングウェイ>エミリー

今更ながらいきなり名前を間違っていたのを修正

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