7,明かされた真実〜快斗編〜
「おかえりなさいませ、快斗ぼっちゃま」
家のドアを開けると、寺井が柔らかい笑顔を浮かべて出迎えた。
「あぁ、ただいま。寺井ちゃん」
快斗も、寺井に柔らかい笑顔を浮かべる。
つもりだったようだが、ニカッと下品に笑ってしまった。
そんな快斗は、額をちょっとポリポリとかいてから寺井の目をしっかりと見る。
「寺井ちゃん、1つ聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何ですか?」
2人は、家の玄関の前でゆっくりと話し出した。
快斗は、バッグの中から携帯を取り出す。
もちろん、くまのキーホルダーが付いた携帯だ。
「昨日、寺井ちゃんがこのくまのキーホルダーを見つけてくれただろ。このくまのキーホルダーについて、何か知ってるか?なんでもいいんだけど」
寺井は少し考えた後、「あっ」と声を漏らして話し始めた。
窓が風でカタカタと揺れた。
「そのくまのキーホルダーは快斗ぼっちゃまが小さい頃に自分でデザインして作ったキーホルダーです。そのくまのキーホルダーは、世界にたった………2つしかない宝物だと盗一様がおっしゃっておりました」
快斗と寺井の間に、数秒の間が空いた。
「へ?お、おい寺井ちゃん。もう1回言ってくれない?」
快斗は人差し指で1という数字の形を見せながら言った。
「は、はい。そのくまのキーホルダーは快斗ぼっちゃまが小さい頃に自分でデザイン……」
「あぁ〜それよりも後、後。それよりも後に寺井ちゃんが言った言葉だよぉ」
快斗は必死に手を横にフリフリする。
「え、えっとですね……あっ。世界にたった2つしかない宝物だと盗一様がおっしゃっておりました」
また、快斗と寺井の間に数秒の間が空いた。
「あ、あの寺井ちゃん。もう1回REPTAしてくれる?」
「は、はい。世界にたった2つしかない宝物だと……」
「やっぱりもういいや」
快斗は寺井の言葉をさえぎり、なにやら考え出した。
(ってことは……あの東の高校生探偵のじゃなくて、東の大学生探偵の工藤新一が持っていたくまのキーホルダーは、俺が工藤新一にあげたってことか?)
快斗は、あごに手を当てて考え始めた。
「ぼ、ぼっちゃま?」
「あ、あぁ悪い。その世界に2つしかないくまのキーホルダーの1つは誰が持ってるか分かる?」
寺井はまた「うーん」と何分か考えた後、やっと口を開いた。
「えー確か、シ、シイ……シン、シンシ、シンイ……あっシンイチという名の少年だったと思います」
寺井がそう答えたとたんに、快斗の目は点状態になっていた。
「し、し、しんいちだとぉぉお」
「ぼ、ぼっちゃま?」
快斗の足元にあったバッグがパタンと倒れた。
「あっそうでした。思い出しましたよ、ぼっちゃま」
寺井が手をポンッと叩いて快斗の顔を見た。
快斗は子供のように首をかしげた。
「快斗ぼっちゃまは、シンイチという名の少年と公園で会ってものすごく仲良くなったと聞いています。わざわざ青子様のお誘いを断ってまで遊ぶ位だったんです。ですが………」
ここで寺井は、一旦言葉を切った。
「寺井ちゃん、ですが………なんなんだよ!」
「あ、あぁぁはい。えぇっと……あっ、ですがある日。快斗ぼっちゃまは引っ越すことになってしまったんです。快斗ぼっちゃまは引っ越すのが嫌で嫌で、何度も「引っ越さないで」と盗一様にお願いしていた位だったそうです。ですがやはり、快斗ぼっちゃまの願いは叶わず引っ越すことになってしまったのです」
寺井は、寂しげな表情を浮かべた。
「だから俺は、引っ越す前にしんいちって人にくまのキーホルダーを渡したのか」
「はい、そうでございます」
快斗は口元に柔らかい笑みを浮かべる。
「俺、いい奴だな」
「は?」
快斗は、寺井に不思議な言葉を残して自分の部屋へと向かった。
(ってことは、寺井ちゃんが言ってたシンイチはやっぱりあの新一ってことだよな。ってうわっ!俺メチャクチャ最悪なことしてるじゃねぇか。記憶にないとかなんとか言っちまったし……うっわぁぁぁー怪盗KIDで宝石を盗むよりも悪いことしちまったよ、俺)
快斗は、ガックリと肩を下げる。
コンコン コンコン
そんな時、快斗の部屋のドアがノックされた。
「寺井ちゃんだろ?鍵かかってないから、入ってきていいよ」
快斗がそう言うと、予想通り寺井が入ってきた。
「もう1つ、思い出したことがあったんです」
「ん?何々、言ってみっ」
快斗はベットから立ち、寺井の傍に寄った。
「はい、快斗ぼっちゃまはシンイチと言う名の少年の母親にも会ったことがあるんですよ?確か名前は、工藤……有希子でしたっけ?盗一様と一緒に会われたのですよ」
寺井がそう言うと、快斗は柔らかく微笑んだ。
「そのことなら、知ってるよ」
「え?」
快斗の表情は、柔らかい笑みから得意げな笑みに変わる。
「その時のことは、一度も忘れたことはないよ。シンイチって少年の母親だってことは初耳だけどネ」
そう言って快斗は、部屋から出てリビングの方に向かっていった。
快斗が出て行った部屋の空気はきっと、「?」でいっぱいだっただろう。
もちろん、寺井の頭の中にも「?」がいっぱいのはずだ。
快斗はリビングに行って、テレビをつける。
『気象情報です。明日は、高気圧が……』
テレビをつけると、丁度気象情報が始まったところだった。
だが、快斗はテレビの言葉を聞いているわけではない。
決意をしていたのだ。
(よしっ!明日、何がなんでも駆けずり回って工藤新一を見つける。怪盗KIDの服にしみが付いたって、明日はすぐに大学に行く。決定!)
快斗は、少し辺りを見回してから大きく大きく、ガッツポーズをした。
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