6,勘違いから始まった友
新一と快斗がほうどうをぬけている間、女の子3人の間ではこんなことが起こっていた。
新一と快斗がほうどうを出て行くと、蘭・園子・青子は意味無しに、お互いに愛想笑いを浮かべていた。
それから数分、ずっとそのままの状態で何もしゃべらない。
そんな沈黙を破ったのは、蘭だった。
「あ、あのー……」
蘭が青子の瞳をしっかりと見て話しかける。
園子は、蘭と青子の顔を交互にうかがった。
「あっ、はい」
青子は、椅子に座りなおす。
「さっき、ここの2席に座っていた人が一緒にほうどうを出て行きました、よね?」
蘭は、新一と快斗が座っていた席を軽く指差す。
園子は、蘭の言いたいことが分かったのか園子がかわりに話し出した。
「それでね、左側に座っていた男は私達の連れっていうか、友達っていうか……恋人」
園子はそう言ってチラッと蘭の顔を見た。
蘭は、「変なこと言わないでよ!」とでも言うような眼差しで園子の顔を見ていた。
そして、園子は顔を青子の方に戻すととまた話し出した。
「それで、右側にいた人はあなたの友達とか恋人とかの人でしょう」
「えっ、こ、恋人なんかじゃないです!ただの、幼馴染で……」
青子は、顔を赤くしながら答えた。
そんな青子の顔を見て、園子はいたずらっぽく笑う。
「もう園子!余計なこと言いすぎ。あっそれでね、一緒にほうどうを出て行ったってことは………あの2人は友達なんじゃないかと思うの」
蘭がそう言ったとたんに、青子の顔がパッと明るくなる。
「うんうん、実は青子もそう思ってたの」
青子は園子と蘭の顔を交互に見ながら、笑顔を作った。
「あっ、中森青子。よろしくね」
「よろしく、青子ちゃん。私は毛利蘭。そして、私の親友の……」
「鈴木園子でーす」
園子は、蘭の後ろからVサインを出しながら言った。
そして、3人でニッコリと笑う。
「あっそうそう。ねぇ、青子ちゃん。青子ちゃんと一緒に来てた人、さっきは幼馴染とか言ってたけど………本当のところはどうなの、好きだったりしちゃう?」
園子はまたいたずらっぽく笑う。
蘭も、興味があるようでニコッと青子に向かって笑っていた。
青子の顔はどんどん、どんどん赤くなっていく。
「な、何言ってんの園子ちゃん!ただの幼馴染って言ったでしょ。それ以下でもそれ以上でも無いの」
青子は、キッパリと言い切る。
「それに、一緒に来たのはただのバ快斗なの。あっ、黒羽快斗って名前なんだ」
「へぇ、私達と一緒に来たのはね、元東の高校生探偵の工藤新一。し・か・も、予約済み♪」
園子はチラッと蘭を見る。
「えぇ!?あの人って、工藤新一だったんだ。しかも予約済みって………もしかして蘭ちゃんの?」
青子がそう言ったとたんに、蘭の顔が赤くなっていく。
「ち、違うってば!園子も青子ちゃんも。………あ、あぁ!ほ、ほら時計を見て見てよ。もう、こんな時間だ!新一と快斗君を呼びに行かなくちゃね、さぁ行こう」
蘭はわざとらしくそう言うとガタッと席を立った。
園子と青子は、蘭の行動を見てクスクスと笑っている。
「ほ、ほらぁ!笑ってないで、Standup!」
「もう、分かったよ蘭ちゃん。行こう、園子ちゃん」
青子もガタッと席を立つ。
園子は青子に言葉をかけるかわりに微笑んで、ガタッと席を立った。
そして、蘭・園子・青子はほうどうから出て、新一と快斗を呼びに行ったのである。
新一・蘭・園子・快斗・青子はやっとほうどうへと戻って来た。
が、明らかに席順が違う。
さっきまでは、園子・蘭・新一・快斗・青子の席順だったのだが、青子が蘭と園子と仲良くなったため、席順が園子・蘭・青子・快斗・新一となった。
そんな中、快斗が青子に話しかけた。
「なぁ青子、そこの青子とは違ってものすごく可愛くて綺麗な2人と知り合いなのか?」
快斗がそう言うと、青子は額に小さな怒りマークをつけながら、ニッコリと笑った。
「青子と違ってみのすごく可愛くて綺麗なこの2人とは、さっき知り合ったんだよ」
「ふーん」
快斗は軽く返事を返すと、蘭・園子の顔を見る。
蘭と園子の2人の目が、交互に合う。
「青子の隣の青子と違ってものすごく可愛くて綺麗なお2人さんは、本当に青子とお知り合いで?」
快斗は、丁寧な口調で蘭と園子に話しかけた。
「快斗、青子って名前入れすぎでくどいんですけど………」
青子は呆れた表情を思いっきり快斗に向ける。
「うるさい、うるさい。アホ子は黙っとけ」
「なっ、青子はアホ子じゃないよ!このバ快斗」
「あん?だ〜れがバカだって、アホバカのアホ子さんには言われたくないね〜」
「青子だって、カッコツケのアホバカマヌケのバ快斗さんなんかに言われたくないもんっ!」
蘭・園子、ついでに新一は2人のケンカを少し不思議そうに見つめていた。
まったく、止めるスキが無い。
「たくっピラピラのスカートはきやがって、見るぞ!」
「どうぞ〜ご勝手に。今日は金魚柄なんだぁ〜♪」
「き、き、きき金魚!?あ、後で罰が当たるぞ」
「当たらないよーだ!」
青子は、ベーと舌を見せた。
快斗はものすごく悔しそうな顔を青子に向ける。
「し・か・も、快斗はさぁ、ちょっとマジックが出来るからって怪盗キッドの肩持っちゃって!」
「怪盗キッド反対!な〜んてやってんのは、アホ子とヘボ警察くらなんだよ」
「警察はヘボなんかじゃないよ!いつかお父さんがねぇ、怪盗キッドをグルグル巻きのペチャンペチャンにしてやるんだから!」
「ケッ、出来るもんならやってみろってんだぁ」
ケンカが止まる気配はまったく無い。
「△△△△△××××!」
「××××○○●××!」
「●×△☆×!!」
「口口☆☆×●○×!!!」
長いケンカも終盤に入ったのか、ケンカから話題がパッと変わる。
「あっそうだ、そこのお2人さん先程の質問に答えて頂いても良いですか?」
快斗が笑顔で問う。
「あっ、青子ちゃんと私達が知り合いなのか?って質問だったよね」
蘭もニコッと微笑む。
でも、蘭と園子はさっきとうって変わって、満面な笑みの快斗と青子を見て微笑みながらもクスッと笑っていた。
「私と園子は小さい頃からの親友だったんだけど、青子ちゃんとは今日ここで初めて知り合って、友達になったよ」
快斗は何も言わずに、うんうんと5回も頷いた。
「ふーん、女って知り合いじゃない人にバンバン話しかけるんだな」
今まで黙っていた新一が、やっとしゃべり出した。
蘭・園子・快斗・青子はパッと新一の方に顔を向けた。
向けた時の顔は、ご機嫌な笑顔から不機嫌な顔に変わっていた。
「バンバンってねぇ、そんなんじゃないわよ!ただ、新一と快斗君が友達みたいだったから、私達も仲良くしようって感じで友達になったんだからね」
蘭がそう言うと、新一と快斗はバッと蘭の顔を見た。
「え?な、何よ………」
蘭は新一と快斗の目を交互に見つめる。
園子と青子も、蘭・新一・快斗の顔を順番に見つめていた。
「なぁ蘭。すんげぇ勘違いしてるぞ」
「うんうん、俺もそう思う。ちなみに、蘭ちゃんって言うんだぁ。可愛い名前」
新一は軽く快斗を睨みつけた。殴りたい位だったが、そんなことは出来ない。
今日、初めて会ったのだから。それに、蘭達と違って友達になったわけでもない。
だから、殴りたくても殴れないのだ。
快斗は、その視線に気付いていたのかいなかったのか、それは快斗にしか分からない。
「え?快斗、それってどういう意味?」
「だから、この工藤新一さんとは友達でも知り合いでも腐れ縁でもブーちゃんでも無い!」
快斗は言い終わると、フッと鼻を鳴らした。
「ねぇちょっと快斗。ブーちゃんって何?」
「ん?ブーちゃん?俺が昔飼ってたブタの名前」
快斗はカッカとブタの鳴き声のまねをした。
「えー!快斗、ブタ飼ってたんだぁ」
「話しそれるから、ブタの話しはまた今度。で、本当に工藤新一さんとはなんでもないから」
快斗は肘を机につけ、手を頬に当てた。
「じゃあ、今から友達になれば良いじゃない」
蘭が、新一と快斗の瞳を交互に見つめながら言った。
「そうよ!蘭の言う通り」
園子は、パチンッと指を鳴らす。
新一と快斗は、蘭と園子の話しを聞いて、目をパチクリさせた。
「快斗君、あたしは毛利蘭。宜しくネ」
「実は蘭ちゃんって、名探偵の眠りの小五郎の娘なんだよぉ」
青子は、「すごぉい」と手をパチパチと叩きながら言った。
「へぇ、あの眠りの小五郎の……」
快斗はいかにも興味がなさそうな顔で、青子を見た。
「何よ、その顔」
「別に……」
「何よ、その顔」
「だから、別に……」
青子はプクッと頬を大きく膨らませる。
「なんか快斗、ノリ悪い」
「のりたかねぇよ!こんなアホ子さんなんかにぃ」
快斗は「しっしっ」と虫を払うように青子に向かってやった。
「あ、あたしは鈴木園子。鈴木財閥って知ってる?自分で言うのもなんだけど、あたしそこの娘なのよ。アハハハ」
園子は、快斗青子の間に無理矢理入り込んで快斗に自己紹介をする。
「へ?あ、あぁ鈴木財閥ね、とっても良く知っております♪」
快斗はニカッと笑って、ブイサインを園子に見せた。
「あっ、新一君。あたし、中森青子!よろしくネ」
「あ、あぁ、よろしく」
快斗は、青子をジト目で見ると
「コイツ、あのヘボ警部の中森銀三の娘」
と言って、人指し指で軽く青子を指差した。
「あっ、やっぱり娘さんだったんだ」
「うん!だったの」
青子は優しい笑みを浮かべる。
「でも快斗、あたしのお父さんはヘボ警部なんかじゃない!って前から言ってるでしょ」
「知らねーよ、んなもん。いっつもKIDに逃げられてるくせに」
「そ、そんなことないもん!宝石はちゃんと取り返してるでしょっ」
「取り返すってなぁ、あんなのゴクタマだろ。たまぁ〜にしか取り返してねぇじねぇか」
「たまぁ〜にでも、ゴクタマでもスゴイものはスゴイのよ!」
「はいはいあぁそうですか。そのくらいでスゴイだなんて、あのヘボ警部もヘボだなぁ」
「ちょっと快斗、日本語になってないよ!」
「アホ子さん、日本語分るんだぁ〜すごいでちゅねぇ〜」
「なっ、バ快斗ぉ!!」
「アホバカアホ子!」
新一・蘭・園子の3人は、快斗と青子の様子を苦笑いをほんのり浮かべながら見つめていた。
まぁ、そうこうして。
この2人、新一と快斗は友達になり、蘭・園子・青子・新一・快斗も友達となったのである。
でも2人は、このようなかたちで偶然友達になれただけ。
くまのキーホルダーで友達になったわけではない。
蘭・園子・青子の勘違いのおかげで友達になることが出来たのだ。
最初の授業が始まったようだ。
だんだんと辺りがシーンと静まっていく。
「では、ここの数式を見て下さい」
授業は、数学のようだ。
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