4,記憶の追求
ザワザワ、ガヤガヤ、色々な音が聞こえてくる。
扉を開ける音、席に座ったり立ったりする時の音、おしゃべりをする声。
もちろん、ここは大学の「ほうどう」。
そして、相変わらず隣同士なのがこの2人。
新一と快斗。
授業が一段落したところで、休憩時間となっているのだ。
授業が始まる時間まで、まだ10分は余裕にある。
そんな中、快斗の携帯が「ブー、ブー」という音を鳴らしながらブルブルと震えだした。
同じく、新一の携帯も「ブー、ブー」という音ほ鳴らしながらブルブルと震えだす。
2人とも、メールが来ていたようで「ピッ」と押して「ピッ」と見る。
そんな時、新一はメールチェックをしていたと同時にカチンコチンに固まってしまっていた。
ある一点を見つめたまま、新一は固まってしまったのだ。
「あ〜快斗の携帯についてる、このくまのキーホルダー可愛い♪」
可愛い物好きの青子が、当たり前のように話しかけてくる。
青子は、くまのキーホルダーに微笑むようにニコニコと笑った。
快斗が携帯につけているのは、昨日寺井によって見つけられたくまのキーホルダーである。
携帯につけるほど、お気に入りらしい。
「可愛すぎるよぉ〜♪青子もほしい」
「だろぉ!実はな、このキーホルダーは俺がガキだった頃にデザインして作ってもらったキーホルダーなんだぜ」
「エヘンッ!」と快斗は得意げな顔をして鼻で「フンッ」と笑った。
そして、くまのキーホルダーのくまの頭を人差し指で「なでなで」と言いながら撫でる。
「えー!すごいね、快斗。以外に結構センスあるんじゃない」
青子もニッコリと笑う。
快斗は「以外に」の言葉に少しカチンときたが、褒めてくれていることには変わりはない為、快斗もニッコリと笑った。
ところ変わって、お隣に座っている工藤君。
今もなお、ある一点を見て固まっていた。
ある一点というのは………自分の携帯についているくまのキーホルダーだった。
新一の頭に、有希子と優作の顔が浮かぶ。
(あんにゃろー、勝手に俺の携帯にくまのキーホルダーつけやがったな!!こんなの見られたら、恥っ恥っ恥っ!はやく取らねぇと……)
新一は、冷や汗を垂らしながらくまのキーホルダーに手を伸ばす。
「あー何これ!?新一ってこういうキーホルダー好きだったりするんだぁ」
「えーどれどれ?わぁ本当だ、こりゃ大スクープね」
一番見られたくない人に見られてしまった、新一はそんな顔を無意識のうちにしていた。
もちろん、声の主は 蘭&園子だ。
「だぁー違う、違う、違う!これはな、俺の母さん達が勝手に……」
まぁ、そんなことを言っても蘭と園子には通用しない。
ただの言い訳としか執ってくれないのだ。
新一は、かすかに苦笑いを浮かべた。
そして、隣の快斗は今なお得意げな顔をしていた。
トン チャ
新一は微かに頬を赤く染めながら、蘭と園子の手に届かないところの机に置携帯を置く。
快斗も、自分の携帯をそっと机に置いた。
その為、 トン チャ という音がしたのだ。
それより、音のことよりも置いた場所の問題だ。
新一も快斗も同時に携帯を置いたため、隣同士に携帯が置かれたのだ。
そのとたん、2人の目線は1つの物にしぼられる。
もちろん、2人の目線の先にはお互いの携帯についているくまのキーホルダーだった。
(これ……俺のくまのキーホルダーにそっくりじゃねぇか。こいつ……っ!まさか、母さんが言ってた クロバ カイト か?!)
新一は、チラッと快斗の目を睨むように見る。
もちろん、睨むつもりなどまったく無い。
(ななななな、なんでぇ。世界に1つしかないはずのくまのキーホルダーを工藤新一が持ってんだよ?!)
快斗は「げぇぇぇぇ」とでもいうような顔を、ほんのりと浮かべてチラッと新一の顔を見た。
2人はくまのキーホルダーから目線をはずし、お互いの瞳を見つめあう。
(こりゃあ、聞いてみるっきゃねーな)
新一は不適な笑みを浮かべる。
(こりゃあ、怪盗キッドの服についたしみぬきよりも大変な問題だな……)
快斗は、「どこからでもかかって来い!」とでも言うような表情で新一を見つめる。
そんな2人の光景を、蘭・園子・青子は目をパチクリしながら不思議そうに見つめていた。
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