国境自衛隊(1/10)PDFで表示縦書き表示RDF



詳しい世界状況などは第一話から徐々に明かしていきます。
国境自衛隊
作:宮村 鴻



Section:1



 気付くとそこは一面の廃墟。
 遠くからは銃声。
 砂が風に巻き上げられて周りの状況を確認することはとても難しい。
 立夏リッカは深呼吸したが、砂の感触を感じて顔をしかめた。顔半分を覆うフェイスマスクをしていても砂を完全に防ぐことは難しいらしい。更に砂に混じる火薬と血の匂い。
 背中を壁に押し付けてその先の気配を読んだ。彼が耳につけているインカムからは随分前から雑音しか聞こえなくなっている。本部はもう制圧されてしまったのだろう。例え司令部が潰されても各々が任務を確実にこなすように訓練されているが、隊長と連絡が取れなくなっているのは正直辛い。フェイスマスクに呼吸が反射し、普段よりも大きく聞こえている。煽られるように自身の心拍数が上がるのを立夏は感じていた。
 舌打ちをして銃を抱え直す。深呼吸を一回。そのタイミングで路地の向こうに飛び出した。
 建物の角に着いたら膝をついて止まり、顔を半分出して道を確認、敵がいない場合はそのまま走り、いる場合はそのまま応戦。
 それを何回か繰り返す。
 何度目かの確認、道の真ん中に人が倒れていた。
 敵地のど真ん中で他人を気遣うのがどれほど危険な行為か充分に分かってはいた。しかし、立夏は見過ごすことができなかった。
 敵の気配がないことを慎重に確認すると、その人に向かって走り出した。
「おい! 大丈夫か?」
 声をかけて、立夏は驚愕きょうがくした。
 血だらけの幼なじみが倒れていたのだ。
雨水ウスイ! しっかりしろ!」
「……り、っか」
 抱き起こすと力なく手が上がり、雨水は必死に彼を押し返そうとする。
「…なに、してんだ。てめぇも、撃たれるつもりか」
「しっかりしろよ! 死ぬな!」
「ばか、……俺のことなんて、ほっとけよ」
「雨水!」
「……早く、行け」
 押し返していた手が力を失って地に落ちた。慌てて首の動脈に手を当てたが反応は返ってこない。顔色は血の気を失い、抱えていた身体の重さが急に増えた。
 俺はこんなことのために戦場に来たんじゃない。
 幼なじみを看取る為に厳しい訓練に耐えた訳じゃない。
 俺は、人を守る為にここに来たのに、どうしてこんなことになるんだ!
 溢れてきた涙はマスクにすい込まれて地面にその跡を残すことは無かった。
「雨水、目ぇ覚ませよ! 雨水!!」

 ―――――ゴンッ!

「寝言で起こすな」
「…………え? 雨水?」
 目を開けたそこにはまだ暗い天井と死んだはずに幼なじみの顔。じんじんと鈍く痛む額を押さえて立夏が起き上がると、片手を拳骨にした雨水が溜め息を吐いた。
「今日の予定分かってんのか? 0530《マルゴウサンマル》に宿舎前集合、因みに作戦開始は0600《マルロクマルマル》。今何時だと思ってる。四時だぞ? 中途半端な時間に起こしやがって。こんな時間じゃ二度寝もできねぇ」
「……良かった、生きてる」
「は?」
「いや、雨水が死ぬ夢見ちゃってさ」
「夢で死んでも意味ねぇんだよ」
 雨水はもう一発立夏に拳骨を食らわせるとベッドサイドのライトを付けた。
「もう起きんの?」
「今から二度寝したら起きれないからな」
 雨水は自分の荷物から洗面用具を出して、部屋を出た。隊員共同の洗面所に行くのだろう。その様子をぼんやりと見ていた立夏だったが、彼も二度寝するのは厳しいと思ったのかのろのろと布団から這い出した。

+++


夢オチですみませんでした。
次回はきちんとした任務を行います。

この作品はフィクションです。実在の人物名、組織名は全く関係ありません。











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