パソコンを開けばリトバスをやりたくなる。その誘惑に負けた結果がこれだよ!
早苗達は、愕然としていた。
『どうした、口に合わなかったか?』
目の前にあるまるで高級レストランで出される様な料理の数々に圧倒されていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
遡ること数刻。
早苗は朝食の支度をするべく朝早くに台所へと向かおうとしていると、その方向からトントンと言う聞き慣れた音と食欲をそそる多種の匂いが立ち込めてきた。
それに誘われる様にふらふらと向かうと、そこには昨日から守矢神社に居候する(してもらう)ことになったアーチャーさん―――もとい、エミヤシロウさんが居た。
私は驚きの余り、何をしているのかと言う素頓狂な質問をしてしまった。
答えは言わずもがな。
しかも、調理の進み具合とその量から想定して、私より一時間は前に起きたのではないだろうか。
それだけではない。
彼のその調理作法のひとつひとつが、まるで踊るかの様に優雅で自然な動きをしていた。
それに見とれていると、くぅ、と言う可愛らしい音がする。
私のお腹から発したそれは、シロウさんにも気付かれてしまった。
彼はふっと笑うと、小皿に味噌汁をよそい、こちらに差し出してきた。
反射的にそれを受け取ってしまい、仕方なく口にしたが、これが何とも美味だった。
塩分は控え目に、しかし味は薄くなく、出汁であろう魚の骨は、身もきちんと調理されて無駄が一切無い。
見た目はただの味噌汁、変哲もなく質素に見えるかもしれないが、その中に潜んでいる悪魔は、私を魅了させてくる。
私は誘惑に負けて何杯かご馳走になった。
今更ながら、とても恥ずかしいことをしたと思う。
でもそれ程に、彼の作った味噌汁の虜になっていたのだから仕方ないと言い訳してみる。
『い、いえ。そうではなくて、逆ですよ。
こんなに美味しいものを食べたのなんて久しぶりです』
『確かに。早苗の作る食事だって美味しいけど、悪いけどこれはそれ以上だ』
神奈子様からも賞賛の声が漏れる。
諏訪子様は・・・只黙々と只管に箸を卓袱台の上にある数多の皿へと動かしている。
それは声に出さずとも、美味いと言っているに等しい行為だろう。
シロウさんは、それを見て聞いてか、顔を綻ばせる。
『シロウって、料理好きなの?』
諏訪子様が、箸を動かしながら聞いてくる。
その行儀の悪さには何も言わず、ただ彼は優しく答えた。
『好き・・・なのだろうか。
恐らくはそうなのだろうが、最近までは意固地になっていたからな。自分でも良く分からん』
意固地・・・それは、過去の自分と今の自分に対しての否定の意味が込められているものだ。
でも今はそれは最早過去の事と言わんばかりに、彼は穏やかな顔をしている。
それに釣られて頬が緩むと同時に、彼の料理のスペックに嫉妬していた。
『因みに・・・和食以外もできるんですか?』
今卓袱台に置かれているのは和食だけ。
理由は簡単。そういった食材しか家には無かったからだ。
『そうだな。一応和、洋、中とできるが・・・。
昔は私の身近に居た女性二人に、和以外は勝てなくてな。それが悔しかったのか、練習していた時期もあったよ』
『へぇ・・・シロウでも勝てない相手かぁ』
『だが今では負ける気はしないな。
元々才能はないが、努力は人一倍以上しているつもりだからな』
昨日の彼の話が反芻される。
彼が生涯に渡って培ってきた努力のすべてが。
彼の類い稀なる努力が真に実る事はなく、その努力と反比例した脆い一撃が、彼という果実を容易く落としてしまった。
誰よりも努力をした彼は、その努力の結果破滅を生んだ。
在るべき理想は、理想であるが故に脆く儚い。
虚なる存在は、実の前には認識される範囲が違いすぎる。
理想と現実、なんて言葉が正にそれ。
生き物は目に見えるものと見えないもの、どちらを信じるかと言われれば間違いなく前者だろう。
他人の思想を読み取る事だって出来ないし、他人が口にした言葉だって、真実ばかりではない。
自分が認めたものだけが、自分の世界に介入する。
それ以外はただの空虚扱い。
だからこそ、彼は裏切られたのかもしれない。
自分の世界に現れたイレギュラーを、排除するかの様に。
正義の味方と言う不文律を矯正出来ないなら、消せばいい。
救われた恩を忘れ―――救われたことにすら気づいていないのかもしれないが―――ただ自己防衛の為に易々と彼を敵として扱った。
それは酷い事であると同時に、哀しい事。
人間は一人では生きていけないくせに、簡単に人を裏切る。
駒の様に利用して、駒の如く捨てる。
まるで自分以外は無機物だと言わんばかりに。
―――やめよう、こんな事を考えるのは。
せっかくのシロウさんの料理なのに、不粋だよね。
『ご馳走様でした』
両手を合わせて一礼した後、私は自分の食器を流しへと持っていこうとする。
『早苗、食器は水に浸けて置いておくだけでいいぞ。片付けも私がやるからな』
『え………ご飯を作ってもらったって言うのに片付けまで任せる訳にはいきませんよ』
『何、これくらいは問題ないよ。
それに洗濯や何やらは早苗に頼まないといけないからな』
『どっか行くの?』
いつの間にか食べ終わっていた諏訪子様が割り込んでくる。
『あぁ、当てはないが、取り敢えず地理を把握しないと不便だからな』
『地図使う?』
『すまないが、貰うよ』
『んじゃ探してくるよ』
小走りにその場を去っていった。
『私も何か手伝うよ。流石に一人だけ何もしないのもアレだし』
『ならば食器を運んでくれないか。この量はなかなかだからな』
『了解』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『それでは行ってくる』
『なるべく早く戻ってきて下さいね〜』
早苗に見送られ、私は神社を後にする。
神社の境内の最上段から階段を見下ろすと、まるで終わりがない一本道かと思わせる程ひたすらに続いていた。
今更ながら、空中に投げ出された時の風景を思い出す。
微かの間に見えた場景は、明らかな高低差を示していた。
遠くに見えるのは豆粒みたいなもの。
近くに見えたのは大量の木々。
それらはつまり、神社はとても高い場所に設置されており、更には森の様に生い茂った土地が周囲にあると言うこと。
恐らく―――ここは山だろう。それも途方もない程に高い。
守矢神社はその山頂に聳え立つ、象徴となっているのだろう。
―――しかしこんな険しそうな山に参拝客は来るのだろうか。
『分社があるのだろう、きっとそうだ、うん。』
多少の不安があるが、今は気にしたところでしょうがない。
階段を降り切るのに数分とかかってしまった。
そこからは慣らされた道ではあるものの、地形としては不安定で、登山客でもないと登る気は起きないだろう。
木々は深く生い茂り、少し油断すれば迷うのは難しいことではない。
視界の一切が緑。
まだ朝早い筈なのに、日が射す隙間がまるでない。
そのせいもあるのか、雑草はそこまで生えていない。
無駄な養分が渡らない分、木々の成長にも無駄が無いのだろう。
ここまで緑が濃い場所なんて、日本ではそうは無い。
アインツベルンの森なんかよりも間隔短く植えられているにも関わらず、正当な道はきちんとしている。
一体、誰がここまでしたのだろうか。
突如、ズン、という音と共に大地が揺れる。
それに脅えた動物達が地を走り、空を駆ける。
先程まで聞こえていた鳴き声は今はなく、風で靡く木々だけが私に語りかけている。
断続的な地震は収まるどころか、その勢いを増している。
まるで、巨大な生物が歩いてきている様な―――
『待ってええぇぇぇぇ止まってええええ!!』
少女の叫び声。
それが聞こえたと同時に、視界が開ける。
理由は単純。
木が薙ぎ倒されていくのだ、目の前に現れた<何か>によって。
その女の子が、<何か>を追いかけている。
しかしその<何か>の歩幅は彼女のそれを軽く凌駕していて、全速であろうがそれに追いつく気配はない。
そしてそれは、地震の正体であると同時に、普通の人間には手に負えない存在だった。
それは、書物や文献でしか拝めない、究極の種。
狩りという行動のみに特化していた故に滅んだ最強の種。
それが目の前にいた。
『あっ、そこにいる人!逃げてぇっ!!』
少女が叫ぶ。
それは恐らく私に向けられたもの。
当然だ。
<これ>を前に棒立ちになり、逃げようともしていないのだから。
『こいつを止めればいいのか?』
少女の言葉を無視し、そう答える。
『止めれるならとっくに止めてるよっ!』
『―――そうか』
距離は10メートルを切り、全体像が露になっていく。
巨大な身体を覆う鱗。
万物を噛み砕き、飲み込んでしまえる程の巨大な顎。
本当に爬虫類なのかと思わせるほど、それは凶悪で、畏怖の対象。
そんな存在―――ティラノサウルスが、こちらを見下している。
身長差があるのだから当たり前なのだが、不愉快なことに変わりはない。
こいつを止める手段は色々あるが、膨大な魔力を使うのは控えたい。
軽い散歩で戦って相打ちなんてのは、笑えない話だからな。
手に取るは白と黒の双剣、<干将・莫耶>。
弓兵であるにも関わらず、恐らく彼が最も愛用した二対の中華剣。
宝具としてのランクも低く、本来白兵戦の為の武器であるにも関わらず、彼はこの状況下でこれを選んだ。
柄を強く握り締め、走る。
そいつはこちらを捕らえようとその前爪を振りかぶる。
通常の人間の平均速度ならば既に肉塊と化していただろうが、英霊に昇華した存在には、関係のない話。
『のろまが』
容易く背後に回りこみ、軸足の腱を断つ。
更にバランスを崩したところに膝を斬り付ける。
巨大な敵というのは得てして下半身をどうにかしてしまえば事足りる。
こいつも例外ではなく、轟音と共に呆気なく地に伏していった。
―――しかし、不思議だ。
こいつは咆哮どころか、断末魔すら上げなかった。
本来、生物ならばそういったことはない筈なのだが。
思考を中断し、先程の少女の方へ振り返ると、呆気にとられた顔でこちらと恐竜を交互に見つめていた。
―――少し軽率な行動だったか?
神奈子曰く私の様な力を持っている存在はここにはいくらでもいるらしいが、それにしても奇異なことに変わりはない。
『あーその、大丈夫か?』
何て言えば良いか分からず、常套句が漏れてしまう。
どうにもこういった時に気の利いた事が言えないのは昔からで、できれば直したいものだが。
『凄い、凄いよ!あいつをあんな簡単にやっつけるなんて!』
いきなり表情が明るくなり、驚いてしまう。
まるで新しい玩具を与えられた子供みたいな顔でこちらを見つめてきた。
少女はこちらに近づいてくると、投影した干将・莫耶をまじまじと見つめる。
『さっきは驚いてなにも言えなかったけど、これ、何もないところから出したよね?どうやったの?物凄い科学技術で見えなくしてたとか物凄く小さくできていつでも大きさを変化出来るとか?』
まるで機関銃のように喋っている。
先程の表情は、単に予想外の出来事に驚いていただけの様だ。
『それにこの剣、あいつの皮膚を簡単に切り裂くんだもん。本の内容だと物凄い強い動物だって書いてたから私も最高級の部品で造ったんだけど、この剣はそんなのより凄いので出来てるってことだよね!?』
好奇心の塊がこちらにずいと近寄ってくる。
『待て、落ち着け』
両肩を押して引き剥がすと、ひとつ溜息を吐く。
『取り敢えず聞くが、あれはなんだ?君は先程造ったと言っていたが』
そう言って倒れているそれを指す。
『ん?これはねー、恐竜だよ?』
『そんなの見れば分かる。
そうではなく、これは作り物だと言うのか?』
こんなに恐竜を完璧に模していて、しかも等身大であろう大きさであるそれは、どこをどう見ても本物にしか見えない。
『そだよ。ほら、さっき斬った場所見てみなよ』
すると、そこから見えたのは血ではなく、高圧電流が音を立てて外へ漏れていた。
『―――たしかに機械のようだが』
『そんなことよりっ!』
少女は私から剣を奪い取ると、なにやら観察し始める。
『うーん、見たところ材質はあっちの方が遥かに優れているのにまるでそれが嘘みたいに負けてしまった。
ならこの剣には秘密があるはず!』
『残念ながら秘密など無いよ。強いて言えばそれは遥か昔に創られた剣だって事だな』
『そんな昔に創られている筈なのに、まるで風化してないのは、やはり凄い技術の賜物なんじゃ―――』
少女の言葉は遮られる。
先程の彼がもの言わずそっちへ突っ込んできたからだ。
抱きかかえる様な体勢でごろごろと転がる。
背負っていたリュックのせいで、必要以上に打ち付けられる。
『うぅ・・・一体何なのさ』
『すまない。しかし聞く暇が無かった』
『聞く暇って―――』
少女が見たもの。
それは先程まで倒れていた恐竜が、再び起き上がりこちらを睨み付けている姿。
『嘘・・・さっきやっつけたんじゃぁ』
『君が造ったんだよな?あれは』
『そ、そうだけど』
『君の技術力も、まんざらでは無いと言うことだよ』
嫌に冷静に答える。
彼は立ち上がると、背中を見せたまま問いかける。
『どうやらあれは、本気で止めないと危険だぞ』
こちらを完全に敵として認識してしまっているそれは、逃げようにも逃げられないだろう。
ならば、答えはひとつしかない。
『・・・うん』
出来れば壊れては欲しくなかったが、仕方ない。
今まで造った中で上位にランクインするであろうが、そんなことを言ってる場合ではない。
『―――安心しろ、一瞬で済ませる』
私にか、それとも恐竜に言ったのか分からない言葉と告げると、彼の両手には先程とは異なるものが存在していた。
左手には、何の特徴も無いシンプルな黒い弓。
右手には、それの矢と思わしき螺旋状の何かがあった。
無駄の無い動きでそれを番えると、一呼吸を置いて、言葉を紡ぐ。
『―――偽・螺旋剣<カラドボルグ>!!』
同時に、それは放たれた。
見えなかった。
矢を見ていたにも関わらず、いつ指を離したのか正確には理解できない。
いつの間にかそれは放たれていて。
いつの間にかそれは恐竜の頭を貫いていた。
一点に凝縮された威力は、岩を砕く水滴を想像させる。
まるで粘土に杭を打ち込むみたいに、穿たれた場所以外には全くの損傷は無い。
最初からその孔が存在してたと勘違いさせる程綺麗に貫かれている。
一発必中、と言う単語が頭に浮かぶ。
その一撃が彼にとっての全てで。
しかしそれが外れるなんて考えは徒労でしかなく。
彼が矢をつがえたその時から、既に貫く事が決定されている様な錯覚を覚える程に、その一撃は研ぎ澄まされていた。
命中した瞬間を見た訳では無いのに、そんな事を思ってしまう。
否、そんなものは必要無いのか。彼が放った矢が、孔を作った事で、対象は二度と起き上がる事は無い。
ただ、それだけ。
『終わったぞ』
こちらへと人間が振り返る。
表情は、無。
ぞくり、と背筋が凍る。
怖い訳ではない。
ただ、私の本能が告げている。
―――こいつには楯突かない方がいい、戦えば間違いなく勝てない。と。
『どうした?』
『あ、いやいや、なんでもないよ』
でも不思議とこいつから逃げたいとは思わない。
逆に何故か安心してしまう。
『すまない、出来るだけ損傷は広げたくなかったのだが・・・』
申し訳なさそうな顔でこちらを見つめる。
『ううん、最小限だよ、十分に。
それに私のミスでこんな事になったんだもん。全壊されたって文句は言えない』
私もこの恐竜がこんな易々機能を停止させられるなんて思いもしなかった。
あの博麗の巫女相手でもそう簡単にはやられない絶対の自信があったのに。
私の過大評価だったのか、こいつの強さがそれを凌駕しているのか。
というか。
『あんた、ここらじゃ見ない顔だね』
そうだ。
こんな強さを持った存在なら幻想郷に知られていてもおかしくないのに、私はこいつを知らない。
『あぁ、私か。
どうやら私は君達が言うところの外来人と言う者らしい』
外来人。
それは幻想郷の外に住まう存在が、何らかの方法でこちら側に来てしまったものを指す。
そんな存在は滅多にはいないらしく、こっち側に来たところで下級の妖怪に食われてしまうのがオチ。
今まで一度も見たことは無かった存在が今、目の前にいる。
なんとも不思議な感覚だった。
『そうなんだ。じゃあここはどこか分かる?』
『いや、詳しくは知らない』
『―――ここは妖怪の山。名前通り、妖怪がわんさかいる場所だよ』
『では君も・・・』
物分りがいい人間だ。
一度誰かと接触してるのかな。
『そそ、私は河城にとり<かわしろにとり>。
河童の妖怪さ』
第五回は、かっぱっぱーな河城にとり。
河城にとり<かわしろ にとり>
種族:河童
能力:水を操る程度の能力
二つ名:超妖怪弾頭
見た目:緑の帽子に青髪ツインテール、河童が作業する時に使用すると思われるポケットが大量にある水色の服を着用している(光学迷彩機能付きらしい)
背中のリュックは、胸にある鍵を中心にして紐で繋がれている。恐らく鞄の鍵なのだろうが、微妙に不便な気がする。
てかそのせいで胸元が強調されてフヒヒみたいn(ry
河童なのだから頭に皿があるのだろうが、その真相は明らかではないし、個人的に凹むから嫌だ。
水かきはついていない。
あと腕が繋がっているという話は、色んな絵師さんが書いてる中では殆ど無い。
性格:人間の事が好きなのに人見知りなエンジニアで、人間に対しては友好的。
原作ではこれ以上危険なところへ行かせまいと博麗霊夢達の前に立ちふさがる。
にとりのBGMとして、「芥川龍之介の河童」と言うものがある。
芥川龍之介と河童の関係は、小説になっている河童が元ネタらしい。
この小説の「二」の書き出しは 「(前略)僕は仰向けに倒れたまま、大勢の河童にとり囲まれていました。」 という文で始まるのだが、
この一部を抜き出すと 「大勢の河童 にとり 囲まれていました。」 と言う理由から名前がにとりになったっぽい。
二次創作ではネタの宝庫。
+注意+
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