今月厳しいと言いながらなんだかんだで投稿。
最近なんか安直な内容ばっかりな気がして、読者様がマンネリ起こしていそうで不安です。てか、本当自分で書いてて文遣いが適当になりつつある。
もっと小説読むべきかな。厨二文章載ってる小説教えてー。
いや、普通の文章書けるようになってからか。
あれから妖夢と日が暮れるまで剣を打ち合うという単純作業をこなした。
教えることは最初から無い。ならば、実践形式でひたすら戦うしかない。
彼女の剣術は師から受けた物であり、それを私のやり方で崩す訳にはいかない。戦い方にしろ、自分に合ったスタイルが私のものと同一という偶然が起こり得ることは稀だろうし、戦いの中で私が見極めたり、彼女自身が気付く他ない。
『今日はこれまでだな。よく頑張ったな』
『あ………ありがとう、ございます』
平然としている私に対して、目の前の妖夢は両手を両膝に置いて、やっと立っていられる状態である。
息も汗もかいていない私、打ち合いを何度中断して、服を取り替えたり水分補給を行ったか分からない妖夢。一連の出来事を最初から見ていた者がおれば、実力の差こそあれど私の異常性に気付くであろう。
『お疲れ妖夢。はいお水』
そんな中、マネージャーよろしく妖夢のことを献身的にサポートしていたのは、護るべき対象であり主である幽々子であった。
当然最初は妖夢も抵抗した。プライドとは違うが、やはり奉仕する立場の存在に真逆の行動をさせるのは、外の常識と無縁な幻想郷であろうと、有り得ない事なんだろう。
だが、疲労が蓄積される中、妖夢にはそんな余裕もなくなり、三度目の休憩では結局折れて今みたいな状態に至った。
狙った訳ではないが、これを切っ掛けに二人の関係が堅苦しいものではなくなればいいな、と考えたりもした。
幽々子はそれを望んでいるし、妖夢も恐らく心の隅では同じ気持ちだと信じている。そうじゃなきゃ、誰の制約も受けない中、幽々子をここまで敬愛し、護ろうとする事もないだろうから。
打算の無い救いを与えるのは、私だけで充分だ。
『………未だかつて、こんなに水が美味しいと感じた日はありません』
普段は飲み物をそんなに飲むことの無い妖夢だが、今は豪快に一気飲みをして、一息吐いている。
『君の師との修業では、ここまではしなかったのか』
『は、はい。あの頃の私は心身共に幼かったので、限界を超えた修業は成長に影響が出ると踏んでいたのでしょう。倒れるまですることはありましたが、それ以上の無茶はしませんでした』
………それは偏に、スパルタ過ぎると訴えているのか?
気のせいか真実か、彼女の見上げる視線はそんな想いが込められているように思えてならない。
あと、成長の阻害が起こる訳ではないが、妖夢の腰を落として剣を構えるスタイルは、O脚が進みやすく女性にとっては喜ばしくない状態に陥ってしまう。
剣士として昔から仕立てあげている癖に、女性を捨てさせる風には微塵も感じない。
その師とやらは、とても他人に気を配れる御仁だったのだろう。
『それでも、こんなに小っちゃいけどね~』
おちょくるように妖夢の頭をぽんぽん叩く。
見た目10センチ程差がある二人では、その行動も容易く実行できてしまう。
幾度となく、こんなやり取りがあったのだと分かる位、その一連の動作は自然なものであった。
『やっ、止めてください!汗が、きたな―――』
『貴女の努力の結果を汚いとは思わないわ。寧ろ誇らしいわ』
振りほどく力も無い妖夢は、言葉での拒否を図ろうとするが、それは意味なく終わる。
それどころか、わしゃわしゃと乱暴に障り続けている辺り、意地悪なのか本気でそう思っているのか―――何にせよ、誇らしいという思い自体に、嘘は無いのだけは分かる。
母親が努力をする娘を見て喜びを覚えているような、そんな雰囲気。
慈愛に溢れた、見ている者すら癒してしまう、そんな姿は、まるで―――
『シ、シロウさ~ん!助けてくださ~い!』
涙目になりながら助けを懇願している妖夢。
流石に止めないと、休むことも出来ないな。
『そろそろ止めたらどうだ?分かってやっているのだろうが………』
『ちぇっ、つまんない』
私が言うと、口ではそう言いながらも簡単に手を引いてくれた。
こっちが助け舟を出さない限り続ける気だったな、これは。
『それでは、私はこれで失礼するよ。妖夢は出来る限り休むように、幽々子は今日ぐらい満足の行くまで彼女を休ませてやってくれ』
『しかし、幽々子様の食事が………』
『それなら心配いらないわ~。私、こう見えて料理出来るのよ?簡単なのだけど』
その事実に、私達は硬直する。
衝撃すぎる事実に、意識が回復するまで10秒は掛かる程。
『心外ねー。妖夢がいるからしないだけで、これでも淑女の嗜みはわきまえているつもりよ』
ぷくー、と幽々子は頬を膨らませ、抗議の意思を示す。
怒る気持ちは分からないでもない。だが、私達じゃなくても、彼女を知る者ならこの事実には驚愕するだろうという確信がある。
『―――まぁいい、とにかくそれなら安心して休めるだろう。無理をして余計に迷惑を掛ける方が、君には重いだろう?』
『そ、そうですが―――』
反抗しようとするも言葉に詰まる妖夢。
頭ではそれが正しいと理解しているが、理性がそれを許さない、そんな感じか。
私も、そんな感情に何度も押されたな。若さ故の、と言ったところだな。
だからその気持ちも理解出来るし、容認するまでの苦悩、認めても残るもやもやもまた、経験済み。
『たまには護られたり、支えてもらうのも、悪くないものだぞ?』
―――だからこそ、彼女の気持ちを理解り、同調出来る。
自分の経験を参考に、未熟な者へ助言をする。それが大人の仕事なんだ。
『――――――ッ』
私の言葉がトドメとなったのか、苦い顔をするも、反論はしない。
押し付けることだけはしちゃいけない。それでは、意味がないんだ。
彼女を成長させる為にも、ここまでが私が手を出せる限界点だ。
後は彼女次第、だな。
『………では、さらばだ』
私が答えを聞く必要はない。
それは、幽々子に向けるものであり、私へ向けるものでは断じてない。
それを間違えない為にも、僅かに悩んでいるこの瞬間を利用して、この場を立ち去る。
幽々子は無言で手を振り、妖夢は私の声が届いていないらしく反応を示さない。
『意固地になれるのは、若い頃だけだからな。大人になるとどうも効率や常識に囚われてしまっていけない』
階段を一人下る中、呟く。
夢や希望が全面に押し出され、可能性は二の次の考え。それを愚行と捉えてしまうのが、大人の悪い所なんだろう。
逆に言えば、正義の味方という妄執に囚われている私も、子供なのかもしれないな。
大人の役目と意気込んでおきながら、この始末か………情けない。いや、不甲斐無いと言う方が正しいな。
だが、私は正義の味方であることを一度諦めている。これはある意味子供から大人へ成長したと言ってもいいのかもしれないが―――今の私は過去の理想を取り戻している。
これを、昔に戻ったというべきか、それとも試練を乗り越え、悟りを開いたと思うべきか………判断が難しい所だ。
それにしても、最初はともかく後は勢いで出て行ったものだから、次をどうしようかを全く考えていなかった。
もう間もなく夜になる時間帯。サーヴァントは睡眠を取らずとも問題ないが、ここ最近の習慣のせいか、人間だった頃の生活に順応しつつある。
だからだろうか、夜通し紅魔館で話していたという事もあり、意識しだすとどうにもプラシーボ効果の様な眠気と疲労を感じるようになってしまった。
あくまで気の持ちようによるものなので、本当に疲れている訳ではない。
それに、セイバーもやっていた魔力の消費を抑えるという効果もあるようだし、無駄ではない。
魔力と言えば、未だに私とのラインの繋がり先が何故か分からないという不可解な状況下に身を置いているが、投影を行おうとまるで最初から使っていないのでは、と思える程に魔力の減りを感じない。
もし私が単独行動状態なら、とっくに消えていてもおかしくないのに、こうして現界していられるのは、それ以外に考え付かないから。逆にそれ以外が思いつけばそちらに転ぶ可能性は大きい。
何せ誰とラインが繋がっているのかが分からないのだ。そんな事、有り得ない。有り得たとしても、そうなる理由、意味がまるで理解出来ない。
唯一、ここに来る原因ともなった女性が、タイミングと動機的に一番怪しいのだが………名前も分からなければ、姿形すら知らないときた。
他人に聞こうにも、唯一の情報である声質は、説明付ける方法が口頭では不可能。
こういう時、科学の力は凄いなと思う。人間ではどうしようもない部分を補完出来る、魔術が衰退する理由も頷ける。
魔術を行使する者とは思えない発言だが、生憎私は魔術使い。魔術は目的を達成する為の道具でしかない。考え方としては、科学と同じだろう。
とにかく、身の回りのことが落ち着いたら探してみよう。砂漠に落ちた米粒を探すよりは楽だろうが、手探りになる以上長期戦になるだろう。
別に一人で全てやり遂げる気はない。協力してくれる人がいるならば、喜んでその好意を受け取ろうと思う。
独りで総てを成そうとした結果が私を破滅へと導いたとしたのなら―――今度は同じ轍を踏む訳にはいかない。
凛との―――遠坂との約束だからな。
俺はその誓いを生かし続ける為に、死に急ぐ真似はしないと誓ったのだから。
『――――――む?』
白玉楼の階段を降り切った頃に、ふと食欲をそそる匂いが鼻に入り込んで来る。
その方向に釣られるように森の奥深くへと足を延ばしていく。
僅かに漏れる提灯の淡い光の方向から、匂いの発生源があると理解した私は、迷わずそこへ向かう。
―――すると、思いもよらない人物が、そこに居た。
『あ―――れ?お兄さん………どうして』
お互いに予想外の出逢いだったらしく、目の前で屋台を開いている少女―――ミスティア・ローレライは言葉を失い、私の思考も停止する。
思考停止の理由は、別にそれだけではない。目の前の少女が、初めて出遭った時の服装とは違い、帽子は青い頭巾となり、茶色の和服を着用している。
そのせいだろうか、見た目はまだ小さな子供でしかないのに、提灯の光の演出も相まって、大人びた雰囲気を醸し出している。
『―――それはこちらも聞きたいところだな。何故屋台なんかを?』
『あ、あぁ、これはね、八目鰻を焼いてるの』
見ると、初見の者は身の毛も弥立つ風貌の無顎類動物が、網の上で串刺しで焼かれていた。
『八目鰻とは、またどうして』
『―――なんていうか、普通こういった屋台って、こういった形式の調理品って焼き鳥が定番でしょ?鳥の妖怪である私からすれば、同族を食べているようなものだから、こうして焼き鳥以外のもので舌を喜ばせることが出来たら、必要以上に食べられることは無くなるんじゃないかと思って、少し前から実行してるんだ』
『成程な』
彼女のやっていることは、規模の小さい反抗運動に近い。
公に目的を公開しているかは定かではないが、この僅かばかりの反抗はどこまで通用しているのか。
辛辣かもしれないが、他人にとっては彼女の行動は、腹を満たす効率を上げる手段が増えただけにしか見えていないだろう。
声に出さなければ伝わらない。行動で示すだけでは理解どころか、懐疑心ばかりを植え付けてしまう。
私が破滅への道を進むことになったのも、助けた者達が私の無欲な行動に疑念を抱いた結果故。
『なぁ、ミスティア―――』
『そうだ!せっかくだし、味の評価をくれない?食事代はサービスするから、さ』
私が言葉を発しようとすると、ミスティアのお願いにかき消されてしまう。
別に今すぐに言う必要は無いし、ここは彼女の言葉を優先することにしよう。
『分かった。ただ、私の評価が他の誰かの評価と同一な訳ではないから、鵜呑みにし過ぎないほうがいいぞ』
それだけ忠告して、私は良い具合に焼きあがった八目鰻をひとつ手に取る。
近くで嗅ぐ匂いからは、泥臭さはほぼ感じない。代わりに甘辛いタレ特有の香りが鼻腔を擽る。
一通りその感覚を楽しんだ後、口に運ぶ。
緊張した面構えでこちらの様子を伺っているミスティアを焦らすかのように、私はその一口を長く楽しむ。
そして喉元を過ぎて、一言。
『――――――悪くは無い』
平行線な評価だったにも関わらず、ミスティアの表情はどんどん明るくなっていく。
正直、最近始めたのならばこの出来は素晴らしいと言えよう。
蒲焼に似た味付けであり、その食感は全体的にコリコリとしたもので、その新感覚な風味は、受けが良いと思う。
焼き加減もなかなかに良い。生焼けでもなく、焦げている訳でもない。
『じゃあさ、どこか問題点はあったんだよね。良くも悪くも一辺倒な答えじゃなかったんだし』
『―――そうだな、問題点という訳ではないが、単純に君ならば現状に満足せず、更に高みを目指せると思ったんだ』
これは偽りのない感想。
まさか彼女にこんな特技があるなんて、意外だった。
『そ、そうかな』
『あぁ、自信を持っていい。もしかすると、君の目標も達成できるかもしれない』
『えへへ………』
ベタベタに褒めたせいか、頬は朱に染まり、口元は笑みで歪んでいる。
『けど、慢心はするな。ここで満足するのは、未来ある若き芽を摘むのと同じ愚かな行為でしかない』
『うん、分かってる』
私が釘を刺すまでもなかったようだな。彼女の瞳の奥からは、油断の欠片も見えない。
どれだけ彼女が料理に対して強い感情を持っているのかが、それだけで理解出来る。
同じ料理を嗜むものとして、嬉しい限りだ。
『―――それにしても、料理の話をしてる時の貴方の顔、なんだか楽しそうだった』
『そうか?』
『そうだよ。もしかして、料理に詳しかったりするの?』
『………よくわかったな』
『だって、他にも知り合いにも似た質問をしたことがあるんだけど、お兄さんの感想は、他の誰とも重複しない、込み入った―――特別なものだったから』
ミスティアはそのことが重要だと言わんばかりに、語尾を強調する。
彼女の言うことが正しければ、大方他の人には、美味いだのその逆だの好みの問題だの、味の方面でしか感想を言われなかったのだろう。
逆に私は、味のことを一切言わず、別の方向で感想を述べている。
人によっては簡潔に、分かり易く言えよと思う人も言うかもしれない。だが、料理人だけに限らず、何かを成しそれに対して感想を聞きたい場合、高みを目指すのならば、在り来たりな言葉を欲しがる訳がない。
今までになかった反応、答えこそ、求めるべき意味のある言葉。
キツイ言い方かもしれないが、本当に成長を願う者にとって、大多数に該当する意見などは無意味でしかない。せいぜい言われて嬉しいとかそうでないか位にしか意味を持たない。
自惚れかもしれないが、そんな中では私の言葉は彼女にとって価値のあるものだったのだろう。
私も、その事実が嬉しくてたまらない。
『………ちょっと代わってもらえるか?』
私は徐に立ち上がり、多少強引だが屋台の中へとミスティアと入れ違いになる。
『な、なにをするの?』
『なに、こういうのは他人から感想を貰うだけでは限界があるからな。私も八目鰻を焼くから、それを食してみたまえ。自分との違いが、何が足りないかが掴めるかもしれないぞ?』
言ってしまえば、私の料理を食べて己の未熟さを知り、技術を盗めということだ。
私が彼女より料理が出来るという前提で―――私はそうだと確信しているが、彼女は知らないから挑発以外の何物でもないのだが―――話を進めているが、私自身この手の調理方法が別段得意という訳ではない。
寧ろ、バーベキューか屋台の出し物以外でこういった形の料理を出すことは稀だ。だから私も、そこまで経験がある訳ではない。
だけど、結局は大体の所は変わらない。仕込み、食材の焼き加減、タレの濃度、食材を選ぶ所からも含め、その順序が狂う訳ではない。
私は、何故かあるクーラーボックスの中で鮮度を保っている八目鰻のひとつを手に取り、手際よく木串を突き刺す。
大量に埋め尽くされていた食材の中からひとつ、長年の経験が生んだ観察眼で選び取る。
料理をする前段階で、料理の質の大半はここで決まってしまうと言っても過言ではない。それ程重要な部分であり、故に一番悩むであろう場面。
ある程度は自分の実力に準じてだが補うことは出来る。けれど、基盤となる部分を改竄することは不可能。
だからだろうか、何度場数を踏もうともこの瞬間は緊張してしまう。
次に、炎で熱が籠った炭焼用焼台の上に置く。
当然だが、炎との距離や燃え上がり方で出来上がるタイミングが異なる。
火が近いと出来上がりが早い分、目測を誤れば一瞬でミスに繋がる。遠すぎれば時間が掛かり、他のも同時に焼く場合は近い方を優先し、遠い方に意識が届かなくなってしまう可能性もある。
他にも今回の場合、長時間による炙りで木串がへたれたり、焦げたりするケースも有り得る。食材に接触している部分である以上、そんな些細な所でも味に変化が生じてしまう。
慣れればそんな失態は犯さないだろうが、あくまで今は彼女のレベルで考えないといけない。
もしこの店が繁盛する程に知名度が上がってくれば、猫の手をも借りたいなんて状況になってもおかしくはない。
幸い、この手の店は速さを求めるのではなく、雰囲気や会話を楽しむものである為、ペースが崩れることは余程のことがあろうと無い筈。
『このタレ、使っていいか?』
『うん、いいよ。簡単な自作鰻のタレだけど、大丈夫かな』
鰻のタレか。八目鰻も名前通りの分類だから、何の問題も無いとは思うが―――生憎八目鰻を焼くのは初めてなもので、恥ずかしながら模範解答は知らない。
『問題はないだろう。鰻のタレということは、匂いからも分かるが醤油をベースにした甘さのあるものだろう?』
『そうだけど………匂いだけで分かるなんて、プロみたい』
『プロは言い過ぎだが―――経験は積んでいるからな。努力すればこの位なら当然になるさ』
重要な場面とは言ったが、それを言うならばどこも同じ。
基礎であることに変わらない以上、程度の差こそあれ、それは誰が出来てもおかしくはないレベルだということだ。
そこからどう発展するかが重要なのだが―――今は置いておこう。
そこからお互い会話をしないまま、時間が過ぎる。
私は一本の八目鰻に精神を集中し、ミスティアはそんな私の姿―――もとい、調理をする様を穴が開くほどに観察している。
その姿勢からは、プロを名乗っていいまでの気迫が見える。
頑なにならず柔軟な姿勢で教えを乞うことは、腕を磨く上で重要となる。凝り固まった素人の意見より、年季のこもった熟練者の意見を鵜呑みにする方が、確実に伸びる。
イメージや価値観を一度崩壊させるのはそう簡単ではない。
口では容易く発せられる音でしかないが、それを現実にフィードバックするとなると、プライドや自分の中の常識が邪魔をする。
だからこそ、子供の頃に詰め込み教育を施す時代もあった。ただやり方に問題があっただけで、幼い頃に知識を仕込むこと自体は間違いではないと思う。
脱線したが、大人になれば当然、子供なんかよりも記憶の吸収効率は落ちる。そして脳のメカニズム上、記憶した出来事を思い出せなくなろうとも、忘れることは無い。
そうなると、新しく知識を入れるのは二重で困難となる。妖怪ともなれば、人間よりも長く生きている分、知識量も半端ではないだろうし、それがより顕著となっているに違いない。
結論を言えば、そんな悪条件を三つも満たしているにも関わらず、童心に帰ったように物事を吸収するミスティアは凄い、という事だ。
『――――――いい匂い』
煙と共に巻き上がる炭火と香ばしい匂いが、屋台を超え、その周囲にまで広がっていく。
ミスティアはその匂いを嗅ぎ、恍惚としている。
『惚けているのはいいが―――そら、出来たぞ』
焼き上がった八目鰻に、専用の刷毛でタレを塗り、皿に盛りつける。
付け合わせは一切無しの、味一本勝負。
ミスティアは蕩けた表情から真剣な表情へと一変。緊張した様子で串を取る。
………ここまで真剣にやられると、こちらも委縮してしまいそうになる。
こういうのも何だが、もう少し柔らかく挑んでくれないと、本当の意味で味を楽しむことが出来ないのではないだろうか。
だが、それを伝えようにも、彼女の口に運ばれていく八目鰻を見て、ここで止めるのは野暮だと判断し、何も言わなかった。
そんなことを考えている内に、八目鰻は少女の口に運ばれた。
周囲の静けさが、ミスティアの咀嚼音をより一層引き立たせる。
互いに無言の瞬間。世界に二人しかいないかと思わせる錯覚。
喉元を過ぎるのを確認して、少女は一言。
『――――――美味しい』
飾り気も何もない、率直な感想。
だが、その言葉の中に籠められた気持ちを、私は汲み取った。
『工程は私と殆ど変らない筈なのに、味は比べることすら烏滸がましい格差。あらゆる部分が、言葉で表現できないナニかを内包している。とにかく、美味しいとしか表現しようがないんだよ』
『それは良かった、が―――君はこれを食して何か掴んだかい?』
そう、私が伝えたいことがこれで伝わっていなければ意味がない。
だが、それも杞憂に終わることになる。
『うん、食感が違うのは純粋に食材の品質に左右されることもあるけど、やはりそれ以外で変える方法があるとするなら、この絶妙な焼き加減なんだろうね。柔らかすぎず、固くならず』
それだけ告げ、再び八目鰻を口に運ぶ。
目を瞑り、唸るような表情で食べること1分近く。
『―――――――覚えた』
『なっ………』
目を見開いた瞬間彼女が発した言葉に、私は驚きを隠せないでいた。
確かに彼女の集中力は稀な才能だ。料理のこととなれば、下手すれば地震が起きていようと気付かないのでは?と思わせる程のそれは、まだ想像の範囲内。
だが、こんな短期間でレシピを看破するとは思いもよらなかった。
単純な料理だからと思う者もいるだろうが、単純だということは、限りなく狭い範囲で味を占めないといけない。
付け合わせや見栄えで旨みを増殖出来ない中で、他人に美味しいと言わせれる料理を作れるということは、その中全てに全力を注いでいるという事。
分割することの出来ない深みのあるレシピは、あらゆる技術がその中に内包していると言ってもいい。
それをたった二口で理解できるのは、彼女の集中力故か、もしくは―――
『―――まぁ、いい。君の言葉が虚言でなければこれほど悔しいことはないが、これも時代の流れだ。若い者が次の代を背負っていくのだ』
『何言ってんの』
爺臭い言葉遣いに鋭い突っ込みを入れられる。
同じ志を持つ駆け出しの少女が、私の後を雛鳥の如く追い、成長していく。
嬉しいことではあるのだが、生来の負けず嫌いが祟り、素直に喜べない自分がいる。
顔を我武者羅に横に振り、邪念を払拭する。ここは、笑顔でいなければいけない。
『………凄いな、私も確かに君みたいな方法で中身を看破するが、まだ日の浅い君がそれを成し遂げるとは』
『―――それは、お兄さんのお蔭だよ』
心なしか頬が赤くなっているミスティアが、俯き加減にそう答える。
『お兄さんの料理だから、ここまで集中できたの。貴方が私だけの為に作ってくれたモノだから、相応の態度で臨んだだけ。他の人のでは、ここまで本気になれなかったよ』
『そ、そうか?』
『うん。―――だからさ、もっと………教えて欲しいな』
上目遣いと提灯の揺れる光が、幼い容姿に艶を加え、思わずドキッとしてしまう。
無意識なのか意図的なのか―――今回の場合私が立っていて、彼女が座っている以上こうなるのは必然みたいなものだが―――、どうにもこんな状況がよくある気がする。
嫌ではないし、無意識だった場合指摘すれば、ただの変態でしかない。故に、真相を知ることは難しい。
『――――――あぁ、私なんかでよければ、頼ってくれ』
『お兄さんじゃないと、嫌』
何だこの殺し文句。狙っているとしか思えない。
―――全く、まるで今の私は衛宮士郎よりも精神が未熟だな。こんな事で動揺するなんてな。
英霊エミヤの頃のような、機械的な思考が崩れてきたのはいい傾向だが、こんな形での変化は正直お断り願いたい。
そんなこんなで私は動揺を隠すのに必死で、これから一時間弱における八目鰻その他料理の指導の記憶が曖昧となるのは、また別の話。
アンケート、ではありませんが、前書きで書いたように内容が少しマンネリ化しつつあります。
その為、元々無いプライドをマイナスに振り込んで、読者様にお願いが。
ネタ欲しい。
出来れば既存のキャラの。まだ見ぬキャラのでも全然歓迎します。
全てが全て採用出来る訳ではありません(既に決まっている部分もあるのもありますし)。
実際、私ってこの小説以外(短編の春眠暁や、星の章とか)は、実は友人の案を基盤としてめっさアレンジしたものなんですよ。
何が言いたいかというと、こんなに書いてるくせに、内容組み立てるのは相変わらず下手なんで、と言うこと。
もっとここはこういう言い回しした方がいいよ?っていう部分見つけたら教えてください。
それを参考にして、もっともっと良い文章を練り上げていきたいので。
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