更新速度なんて飾りです。作者みたいな人にはそれが分からんのですよ。
『ささ、上がって下さい』
早苗に促され、私は再び神社の中へと入る。
『ここは拝殿で、この奥が本殿となっています』
そして入るが否や、彼女は神社の中を案内し始める。
改めて観察すると、この神社がどれだけ規模の大きいものかが理解<わか>る。
それ故にこの神社の神がどれだけの霊的加護を誇っているかも想像がつく。
見た目と反してかなりの年期を誇っているのも、歴史の深さ故だろう。
歩く際に聞こえる床板の軋む音の大きさ、直接触れて理解した材木の触感。
それらは全て質の古い材木に該当するそれだ。
だが決してこの神社が今にも倒壊しそうとか言うのではなく、寧ろ大規模な衝撃にも下手をすれば耐えうるかもしれないと言う事実に、私は関心を覚える。
多少摩耗していた部分は、彼女にバレない様に密かに"強化"を施しておいた。
これでその部分からの破断は起こらないだろう。
『君は、何処に住んでいるのだ?』
彼女の案内について行く際に、気になった事を口にする。
大まかに見た感じでは、どこも祭事に使うようなところばかりで、少なくとも人が住んでよいような場所は見当たらない。
『それは最後に案内する予定だったんですよ。アーチャーさんだってそこで暮らすんですから』
―――泊まる、から暮らす、になっていたのは気のせいだろうか。
指摘しようとかも思ったが、彼女の楽しそうな顔をそんな小さいことで崩すのは無粋だろう。
『さぁ、次ですよ〜』
そう言って彼女が足を向けた方向は、外だった。
境内に関しても、とても丁寧に掃除をしているのか、汚れは殆ど見当たらない。
手水舎も水垢が綺麗に拭き取られている。
『掃除は好きなのか?』
ふと、そんなことを聞いてみる。
『好きか、ですか。
どうなんでしょう。毎日やってるから、感情云々じゃなくてこう、身体に染み付いているって言うんでしょうか。
当たり前の事だったから、そんな風に思ったが事なんてなかったです』
『立派だな、君は』
まだまだ遊び盛りの年齢であろう彼女がそこまでしっかりすると言うのは、そう簡単に出来るものではない。
毎日やってるなら尚更投げ出したくなるだろうに、それでも彼女はそれをおくびにも出さず頑張っている。
『そ、そんなことないですよ』
『そんなことはあるさ。普通ならばこんな事務的なことは君みたいな年齢、ましてや女子がするなんてのは稀だ。もう少し誇ってもいい。私が保証しよう』
そんな自分も、昔は色々な雑務を引き受けていた事を思い出す。
彼女と違い、昔の私はただの世話焼きで自分の描いた理想を押し付けてきた愚か者だ。
それは他人から見れば純粋に褒められる行為かもしれないが、私の本質を識<し>っている者ならば呆れ返る事だろう。
正義の味方と言う、子供が描く様な理想。
最後までその理想を追い求め、私は挫折した。
それは決して、私では掴めなかった理想。
でも私は、<私>に教えられた。
―――それは決して間違ってはいないんだ、と。
最後の最後まで、<私>は理想に対して貪欲で、己を曲げることはなかった。
―――それは、私には出来なかった本来あるべき姿。
何度蔑まされようが裏切られようが、自分の存在を確執してきたその信念だけは曲げてはいけなかったのに。
私は元より、正義の味方等を目指す資格なぞ無かったのだ。
自分の中の約束を守れない存在が、他人の為に何か出来ると考えるだけでも浅はか愚かしい。
そう、理解しているのに。
私はそれでも、正義の味方であることを望んだ。誰にも理解されなくてもいい。
元より私の存在を認めてくれる様な変人は稀だ。
―――ならば孤独に道化を演じるのも、悪くはないだろうさ。
『―――アーチャーさん?』
その声に反応する。
目の前には心配そうな表情でこちらを伺っている早苗がいた。
『あぁ、すまない。ぼーっとしていた様だ。
で、なんだ?』
『いえ、そろそろ最後の案内になりますので………』
最後、つまりは彼女が寝食をしている場所へと向かうのだろう。
『そうか。ならば案内を―――』
そう言おうとしてふと、疑問が浮かんだ。
それは、決して軽率に聞いてはいけない答えが返って来るやもしれない疑問。
それは恐らく避けることは出来ない疑問。
でも、聞かないと彼女自身から話す事になる。
それが私が想定する最悪の答えならば、尚更それを彼女から言わせる訳にはいかない。
『家族とかは、いるのか?先程から親族の方らしき人は見かけていない様だが』
ならば私から宣言する事で、彼女の気持ちは私に対する負の気持ちによって多少は軽減されるだろう。
私が傷ついて彼女の精神が安定されるなら、喜んで汚れ役を承ろう。
ここまで脊髄反射的に他人の事となれば自己犠牲を優先させてしまう様では、凛にまた愚痴を溢されてしまうな。
『家族、ですか。―――物心付いた時には、父や母は居ませんでした』
やはりか、と自分自身に悪態を吐く。
分かっていても、聞いてしまった自分が許せないという矛盾。<私>を信じることが出来ても、私自身は信じることが出来ない。
<私>ならば、もっと巧くやっていたかもしれないな―――
『でも、独りではありませんでした。私には、二人のお偉い同居人がいましたから』
次に出た言葉は、予想外に明るいものだった。
同居人がいる、と言う事実だけで私はほっとする。
それに小さな頃からの同居人と言う事は、それは東風谷早苗の人格形成に携わっていた存在と言っても過言ではない。
余程彼女を理解し、大事にしていたかが分かる。
そうでもなければ、こんな純粋な瞳ではいられない。
『偉い同居人?』
ただの同居人ではなく、英雄王の様な無駄に威張り散らしてる奴なのだろうか。しかしそれならば早苗のこの成長結果には伴わないだろう。
そんな奴がいるからこそしっかりした性格になった、とも考えられるが、育ての存在の場合ならそれも微妙だろう。
『はい。偉いなんてものじゃないですね。
なにせ―――』
そこで彼女ははっとした。
『どうした?』
『そうでした………二人の存在をすっかり忘れていました……』
がっくりと項垂れる彼女を見て、なんとなくその理由が分かった。
『私の、ことか?』
『はい。その場のノリで決めてしまいましたから、その事なんて記憶にもありませんでした』
その名も姿も知らない二人に同情する。
それにしても、最後にポカをやらかす所も似ているな。
まるで凛と桜が合わさったみたいだ。
『私なら一向に構わないが?元々私から頼んだ訳でもないからな』
『そんな!いけません!』
ずい、とこちらへ顔を押し寄せて来る。
少女ではあるが、その女性特有の匂いが鼻孔を擽る。
『私がどうにかして説得しますから、アーチャーさんは気にしないで下さい』
………これ以上何を言っても押し切られてしまうと判断し、私は口を閉ざす。
やれやれ、どうして私の周りの女子はこうも頑ななのか……。
それとも私が押しに弱いだけなのだろうか。
………そんな気がしてきたぞ。
それを是としたのか、彼女は歩き出した。
彼女に気づかれない様に溜め息を吐く。
決して嫌な訳ではないが、この手のタイプが相手だと個人的に疲れるのだ。
それは生理的なものではなく、私の周りにはそんなのばかりがいたせいで敏感になっているのだ。
―――そして今でもこうして押し切られている。
どうやらこの縁からは何処へ行こうとも逃れられない様だな。
―――そろそろこちらから向かった方が良いかな。
先程から首筋に感じる視線。
敵意はない様だが、流石にそろそろ気持ち悪い。
『―――そろそろ姿を現してはどうだ?害はない様だが、流石に不愉快だ』
『あら、やっぱりバレてたのね』
『まぁあれだけジロジロ見てたらね〜』
一人かと思っていたが、どうやら二人の様だな。
『その声は………』
早苗がそれに気づき、声の方向へと振り向く。
それと同時に社殿の影から姿を現した。
一人は胸に鏡、腰に小さな注連縄を締めている女性。もう一人は相対的に幼く、何とも形容し難い帽子を被っている少女。
それらから直感的に感じ取る。
―――あれは人間なんかじゃない。
サーヴァントと同様、人が常識を逸脱した存在か、人の形を成してはいるが、元々人間ではないか。
どちらにせよ、警戒をするに越したことはないだろう。
左手で彼女を庇う様に構える。
こちらから攻めることは無いが、場合によっては戦闘も止むを得ない。
それが例え、彼女に魔術のことがバレたとしてもだ。
だがそんな事も露知らず、早苗は私の腕を押し退けて叫んだ。
『神奈子様!諏訪子様!』
『―――知り合いなのか?』
『はい。先程言った、私の同居人の、神様二人です』
―――神、だと?
『そんな馬鹿な話があるか。神だと?そんなの信じられる訳ないだろう』
私自身、サーヴァントと言う人外ではあるが、そんなものとは格が違う。
『いきなりご挨拶ねぇ。あんたもここにいるんだったら神様の一人や二人くらい―――』
注連縄の女性が口を閉ざしたかと思うと、今度ははっとしてこちらの視線を捉えた。
『なるほど。あんた外来人だね。ならその反応にも納得がいくわ』
外来人、と言う聞き慣れない単語が表れる。
『待て。一人で納得している様だが、こちらからすれば訳が分からない』
ここにいれば神様の一人や二人、と言う言葉が引っかかる。
神が実体を成しているなんて国や市なぞ聞いた事がない。
ある人を神と崇める狂人的な宗教なんかとは対峙したことはある。
でもそれは所詮人でしかない。
決して神には成り得ないのに、神と崇め崇められ。
でもこの二人はそんな哀れな部類なんかではない。
神ではないと仮定したとしても、この二人には何かしらの力がある。
それは私もその位までに昇り詰めてしまったから分かる事。
人ではない者、つまり世界の大多数の人間から見た異質な存在は、一重に化物と称され、畏怖される。
それを神とするならば納得がいく。
人を超えた力と言うのは、恐怖の対象となると同時に、奇跡とも成り得る。
彼女らは恐らくそう言った部類なのだろう。
『う〜ん、なら説明するよ。でも立ち話は嫌だな〜。今帰って来たばかりだからクタクタなんだ』
帽子の少女が、疲れたというのを強調する様に身体を前にだらけさせる。
『すまないが、こいつの我が侭に付き合ってやってくれないか。その代わり、あんたが疑問に思ってることを出来る範囲で答えてあげるから』
『そのくらい構わないさ。そうでもなければ罰が当たるからな』
『よし、決まりね。早苗、行くわよ?』
先の今まで話に入っていけなかった早苗が、何やら呆けていた。
『え、あ?はい。じ、じゃあ行きましょう!』
そんな状態から話かけられたせいか、喋りが不安定になっている。
―――そこまでなる会話が、先の部分にあっただろうか?
まぁそんな事は些末事に過ぎないだろうが。
私達は、早苗の先導のもと目的地へと向かった。
第二回目は、恐らくヒロイン的な位置付けの、東風谷早苗さん
名前:東風谷早苗<こちやさなえ>
種族:人間
能力:奇跡を起こす程度の能力
二つ名:祀られる風の人間
公式設定は恐らく小説の中でぼちぼち語られるでしょうから割愛。
だから二次創作な紹介を。
原作の主人公である博麗霊夢の2Pカラー(ルイージ的な意味で)と呼ばれている。
現役女子校生。
でも巫女らしさと胸の大きさでは勝ってたり。
神様二人を養う為に今日も働くいい子。
嫁に欲しいね。
髪には蛇と蛙の髪飾りがついているが、それは二人の神の恩恵を貰っている証拠でもあり、崇拝している対象の分かりやすさを示してたりと、年頃の女の子が着けない様な装備にも理由がある。
意外と自身過剰で考えが暴走しがち。
数少ない良識人と言うせいでよく弄られる対象になったりするけど毎日楽しく生きています。
次回は恐らく神二人を同時紹介(その場合内容薄っぺらいのは仕様です)します。
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