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時間かかったくせにまじつまらん内容です。泣きたい。
幻想に惹かれた者達
稗田の当主

八意永琳さんを尋ねた次の日。私は連続で尋ねるのは医者と言う忙しそうな身分の彼女の負担を高めるだけだと判断し、取り敢えずは自分に出来ることをやろうと人里へと降りてきた。
直接シロウさんと会うのは止めた方が言われてしまった今、私が出来ることと言えば、この二重人格らしき私自身の異変に向き合うこと。
常にそれを意識し続け、感情を平常に保ち、もうひとつの自分を出さない様にする。その為にその状況を形成し、その中であらゆる行動をして感情の乱れをなるべくなくす努力をする。
言ってしまえばリハビリに近いものだ。

神奈子様や諏訪子様相手では普段通り過ぎて意味がない。だから他にもシロウさんを知る人物と接触し、会話する事で改善して行こうと思い、今日は藤原妹紅さんと会うことにした。
どこに住んでるのかは知らないけど、前は人里に居たんだしきっといるだろう、と楽観的な考えで今に至っている。
場合によっては上白沢慧音さんでもいい。あの人なら間違いなく人里にいるだろうし、探そうと思えばすぐの筈だ。

―――私の早とちりが原因で二人には迷惑を掛けてしまったと思う。里を護る者として、被害者として。
だからこそ、一刻も早く治りたい。治らないものなら、せめて抵抗を沢山つけたい。
自分を律する事が出来ない内は、シロウさんにも会えないし、周りの人達にも大きな迷惑を掛けてしまう。そんなの耐えられない。

『………とは言ったものの、人里ってこんなに広かったんだなぁ』

ここに居住まいを建てていない者としては、この場所は買い物の為に訪れるくらいのものだったから、こんなに隅々まで歩くことなんて無かった。
外の商店街の通りみたいに、必需品とかがある店は左右に並ぶ様に構えてあるから分かりやすかった分、迷うこともなかったから。

まるで都会を知らない田舎娘みたいに目線を左右にばら撒いていると、突然勢いよく背中に何かがぶつかってきた。
何事かと慌てて振り向くと、そこには小さな女の子が反動で倒れそうになっていたので、反射的に暴れていた腕を掴んでこっちへと引っ張った。

『あの、大丈夫?』

肩までで切り揃えた紫色の髪、それを彩る様に付けている大きな白い花のリボン、それと同類の花模様が描かれた黄色の振り袖にその上から羽織る様に着た淡い緑の着物、下は赤い袴みたいな―――詰まる所構造がよくわからない出で立ちをしていた。
年は………私よりも5歳以上は下だと思う。見た目で歳を決めるのは永琳さんの例もあったから自粛するべきなんだろうけど。

『え、えぇ。ありがとうございます』

『そ、そう。良かった』

少女は顔を上げると、安心させる為か微笑んでくれた。
予想よりも落ち着いた物言いに多少目を丸くするも、顔には出さず落ち着いた態度で返す。

『えっと、貴女は………東風谷早苗さんですよね』

『え?そ、そうですけど………どうして』

私はこの子を知らない。お互い初対面の筈なのに、一方的に知られているなんて変な話だ。

『私は稗田阿求と言います。貴女のことはここに神二人と訪れた頃から存じております。風貌を人伝に聞いただけでしたけど、すぐに思い出しました』

稗田………?人名にしてはとても珍しい気もするけど、なのにどうしてか記憶の隅に何かが引っ掛かっている。

『そうだったんですか。なんだか恥ずかしいですね、一方的に知られていると』

この子の言動や雰囲気のせいで、こっちまで敬語になってしまう。
見た目は可愛い女の子でしかないのに、永琳さん同様、何かを感じる。流石に考えすぎだと思うけど。

『そうかもしれませんね。では、私のことをお教えすればおあいこですよね?』

『え、えぇまぁ………そういうことになるんでしょうか』

突拍子のない言葉に疑問符を浮かべていると、阿求ちゃんが私の手を取った。
困惑している私を尻目に、彼女はずんずんとそのまま歩いて行く。

『そこの茶屋に腰を降ろしましょう。そこでお話しましょう』

なんだか強引だけれど、どこか逆らえない雰囲気を持った少女。
私の方が年上の筈なのに、どこか敬ってしまう雰囲気を持った少女。
稗田阿求と名乗った少女との出会いは、こんな些細なものだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『………………』

阿求ちゃんが語った己の事。
私は開いた口が塞がらない気分だった。

稗田という名前に聞き覚えがあった理由。それは、歴史の授業で習って知った稗田阿礼のことだった。彼女はその九代目で、だから求という名を冠していることも理解した。
稗田阿礼は、古事記の編纂者の一人と言われている七世紀後半から八世紀初頭に生きていたとされる人物。
でもどういうことか、年代によっての一般平均寿命を漠然と計算しても、九代目が生きている―――いや、九代目までしか代が進んでいないのはおかしい。
幻想郷と外では時間の流れが異なるとでもいうのか。だがそれは、外に戻ることの叶わない私には証明できない問題だ。

でも、そんなことよりも一番驚いたのが、稗田阿求と稗田阿礼が同一人物だという事実。
彼女はだいたい千二百年ほど前から転生を繰り返しているらしく、前世の記憶こそ完全に覚えてはいないものの、転生者ということに嘘偽りは無い。

そして彼女が転生者である最大の理由―――それは、幻想郷の歴史を綴ること。そしてそれを可能とする為に、一度見たり聞いた事柄は決して忘れない能力を保有している事。
昔こそ人間が妖怪に打ち勝つために始めた資料だったが、幻想郷が平和になっていくにつれその意図は失われ始め、只の面白い妖怪読み物となったらしい。確かに聞こえ次第ではとても重要で、尊敬される存在なのかもしれない。けど―――

『………それでいいんですか?』

『え?』

『そうやって書物を書かされる為だけに転生を繰り返し、最初から最後まで書物と共にある人生。そんなのが何度も何度も繰り返されてるのに―――辛くないんですか?もっと自由に生きたいと思わないんですか?』

でも、私には彼女が永遠に輪廻から外れない呪いに掛かっている風にしか思えない。
そして、その姿をシロウさんと重ねていたからこそ、聞いてしまったんだと思う。
守護者となったシロウさんは、戦いという運命の輪に捕えられ、世界に手綱を握られ都合のよい掃除屋を演じていたと語っていた。
何の因果か彼はその輪廻から外れたけど、座という所にいるシロウさんの本体は捕えられたまま。根本的な解決にはなっていない。
ましてや、阿求ちゃんは忘れたいことすら忘れることの叶わない能力のせいで、心に受けた傷は常人の倍以上の時間を費やさないと癒えない筈。そんなの人生経験次第ではあるけど、下手をすれば気が狂ってしまう。
カタチこそ違えど、抜けられない呪われた輪廻に身を委ねていた者を二人と知ってしまった以上、黙認したくない。
だって―――生き方を決められて、ああしろこうしろって命令されたことをこなすだけの人生なんて………悲しいじゃない。

『………味を知らないのなら、それに興味を持ち得ど羨望はしない。貴女の言う自由を知らない私には、この状況は苦痛にはなりません。だって、それが私にとっての”当たり前”だから』

何の感情も帯びていない言葉で語る。
まるで興味の無い詩を読むかのようなそれは、幾度となく問われたことなのかもしれない。
辛くないか、悲しくないか。そんな同情の言葉を、何度も何度も。
彼女の言う通り、本人にとってその繰り返し重ねていく輪廻は、呼吸をする位に当たり前のことなんだろう。
だから、私のした質問は本来答えることが出来ない。当たり前の事を伝えると言うのは、余程頭の回る人じゃない限り咄嗟に答えるのは難しい。他人の事を説明するのは存外簡単だけど、自分の事となるとそうはいかないのと一緒だ。
それでも彼女が答えを吐き出せたのは、私みたいな同情だけでモノを語った非道な人が沢山いたからなんだろう。

『ごめんなさい、私―――』

そんな彼女自身も何度聞いたがも分からないありきたりな謝罪を述べようとしたら、動かしていた口にそっと人差し指を当てられた。

『謝る必要はありません。貴女の返答は至極当然のもので、私はそれを承知で語ったのです。ですから、貴女が謝罪の言葉を述べるのは間違いですよ』

安心させようと私の行動への否定をしているが、彼女がさっき語った時の声色が脳内で反芻されて、素直にその言葉を受け止めることができない。
はい、そうですかとすぐに思考を切り替えれる程白状じゃないし、心なく質問してもいない。
だけど、これ以上この問答を繰り返しても意味がないのは承知している。
納得できない自分とそれを満たすことの出来ないという事実が渦巻き、歯痒さばかりが募っていく。

そんなもやもやを抱えていると、店員さんがここぞとばかりに横から現れ、お盆に乗せた二切れの羊羹と緑茶を二人の隣の空いた場所に置いていくと、客への常套句を述べた後一礼して去って行った。
でもおかしいなぁ。私はそんなの頼んだ覚えはないのに。

『実はですね、私はここの常連なんですよ。そしていつもこれを注文しているお得意様なので、今ではこうして頼んでもいないのに持ってきてくれるんですよ。恐らくそのついでに早苗さんにも置いてってくれたんでしょう』

阿求ちゃんは恥ずかしそうだけど、どこか誇らしげに話してきた。
そこには先程までの暗さを取り繕った雰囲気はなく、見た目相応の笑顔になっていた。
それを見て少し安心した。少なくとも私の力でどうこう出来る自信は無かったから、店員さんのタイミングの良さに内心感謝した。

『そうなんですか………。なんか気を遣わせてしまった感じがします』

『いいんじゃないでしょうか。こういった好意には甘えるものですよ』

甘える………か。
私が多重人格紛いの何かを患っているのも、過去に他人をどこか寄せ付けることを拒んでいたことによる事が原因なのかな。
色眼鏡で自分を客観的に見たとしても、確かに私は甘えることをしなかったと思う。
何でも自分で片付けようと躍起になり、他人に悩みも苦労も打ち明けることなく抱え続けてきた。
でも、私にだって悩みを吐き出したいと思うことはあった。私のちっぽけな自尊心がそうさせなかっただけで、多分一度言ってしまえばあの時みたいに滝のように心の中のしこりと共に流し出せた筈だ。
結果的にはそうなったけど、遅すぎたのかもしれない。

勝手な解釈だけど、悩みを打ち明けたくても他人には頼れない、そんな思いが交差している中、私の奥底でこんな結論に至ったんじゃないかな。

―――他人に頼れないなら、いっそ自分自身に悩みを打ち明ければいいじゃないか―――と。

だから私という別の人格を知らずに創ってしまっていたのかもしれない。
私自身が解決したい悩みを自身に投げ掛けても解決しない。そんな矛盾を解消させる為の措置。そう考えると何となく納得できなくもない。
けれど逆に言えばこれは無理矢理納得したいが為の妄想に過ぎず、確証は微塵も無い。
でも、もしそうだとしたら………私はなんて莫迦なんだろう。他人に迷惑を掛けないよう頑張っていた自分が、未来ではそれが原因で他人にそれ以上の迷惑を掛けている。
皮肉な話だと、思わず自嘲の笑みを浮かべる。

『………どうしました?』

『あ、いえ、何でも』

そうだった、阿求ちゃんが隣にいたのにすっかり物思いに耽っていた。
傍から見れば先程の私は気持ち悪いことこの上なかったんじゃないか。そう思うと恥ずかしくなってきた。

気付けば阿求ちゃんは羊羹を戴いてたようで、ならば私もと櫛で羊羹を突き刺し、ゆっくりと頬張った。
―――美味しい。彼女がここの常連になるのも頷ける。和菓子らしく抑えられた甘み、けど噛み締める毎に鼻から甘い香りが吸い込まれ、味を深めていく。元々洋菓子ほどカロリーもないから、抵抗もそこまで無い。
………まぁだからと言って調子に乗ってたら破滅に追い込まれるんだけど。
スイーツは女の子の宝であり、敵だ。体は受け入れても、心まで許してはいけないのだ。

『………私はですね、こうやって誰かとお話しながらお茶菓子を食べているだけで十分幸福を噛み締めています。貴女にとっては些細なことかもしれませんけど、私にはこれ以上望むべくはありませんよ』

お茶を手にし、天を仰ぎながらそう呟く。
周囲は活気に満ち溢れ、老若男女の声があちこちから聞こえてくる。
けど、私と阿求ちゃんを取り巻くこの空間だけは、まるで隔離されているのではと思うくらい静かに感じた。

『私は別に、貴女が言うような幸福を求めた果てを恐れているからこんなことを言った訳ではありません。純粋に、今の生活に文句も不満もなく、寧ろこれ以上を求めるのは身分不相応なんですよ』

『そ、そんなこと―――!!』

そこまで言い、ハッとする。
幸福を求めた果てを恐れている訳ではない―――彼女はそう言ったけど、心にも思ってないことが言葉になるのはおかしい。
間違いなく彼女は虚勢を張っている。

彼女の代まで続けられてきた幻想郷を綴る役目。それは最早、暗黙の了解のレベルにまで到達した一種の枷。
今更辞めたいなんて言えない。言ったら彼女には、”なにも残らない”。
知識としては識っている自由。仮に彼女がそれを得る権利が与えられたとしても、今更どうしろと言うのだ。

千二百年あまりを転生によって生き続けてきた彼女には、自由を得られた所で何をすべきかが分からないのではないか。
今まで機械的に役目をこなして、それを為すことが出来ない身体になれば新しいものに取り換える。そんな人生を生きた彼女には、自由という言葉はあまりにも大きすぎるのだ。

井の中の蛙大海を知らず、なんて言葉がある。
狭い世界で何も知らず一生を終えることよりも、大海を知り、その世界に憧れるも、深い井戸に身を委ねた蛙は井戸を上る力も無ければ、力があった所で蛙の跳躍力では井戸として目的を果たせない程の浅さじゃないと地上には出られないんだと事実を突き立てられて、そのまま嘆きながら一生を終える方がよっぽど苦痛だ。
阿求ちゃんも一緒だ。なまじ知識だけはあり、あまつさえそれを忘れることの叶わないカラダ。
自由を手に入れるには、彼女の脚は衰えすぎたんだ。
だから自分の事を身分不相応と言い、打ちのめすことで、諦めさせているんだ。

ストンと、次の言葉を紡ぐことなく元の場所に座る。
私の莫迦、馬鹿バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ。
やっぱり私はこうやって人を傷つける。私が発した言葉は他人を蝕む。
なんて罪深い。なんて最低な、私。
自分のことで精一杯の癖、他人を傷つける事に関しては意図せずともやってのける。
殴ってやりたい。もうひとつの自分と、私自身を。
でも今そんなことすれば、また周りに迷惑を掛けてしまう。

『シロウさん………』

体を俯かせながら、助けを求めたい相手の名を呟く。
彼なら、どんな気の利いたことを言えるんだろう。私なんかよりも彼女の隣にいる資格を持てたのかな。
………皮肉にも似た境遇の二人だ。シロウさんが己の事を話さなくても、きっと彼ならその意図を自身と重ね、いいアドバイスが出来たのかもしれない。

でも、シロウさんはいない。
―――私が、追い出したようなものだから。
だから彼に助けを請うのはお門違い。いや、それこそ身分不相応だ。

『その人は、貴女の大切な人ですか?』

突然の言葉に顔を上げると、道行く人を眺めている阿求ちゃんがいた。
そうだよね、私なんかとは顔も合わせたくないよね。

『………はい。私にとって、大事な人です。でも、少し前にここで少し騒ぎになったじゃないですか。その騒動の原因は私。そして―――そのせいで彼は私の前から消えました』

普段なら恥ずかしがりながら答えをはぐらかしそうな質問だけど、今の私にそんな余裕はない。
彼女を傷付けた以上、此方も痛み分けするのは当然だ。
別にそれでおあいこだと言うつもりはない。

これは、戒め。
罪咎そのものである私には、この痛みは常に背負うくらいはしないと。
いや、こんなのでは生温い。神経を剥ぎ取られる位の苦痛だって覚悟の上だ。

『彼の事が大切なのに、些細なことで嫉妬して………頭の中がまっしろになって、気が付いたら家で寝ていました。でも、そこに彼はいなくて、家にも神社にも彼はいなくて―――今でも戻ってこないのは絶対私が嫌いになったからなんです。
全部、私がいけないんです。シロウさんがいなくなったのも皆に迷惑掛け続けているのも、全部、ぜんぶ全ブゼンぶゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブゼンブ――――――!!』

ヒステリックに叫び散らし、狂ったように目を見開き頭をガシガシと掻き毟る早苗の頬に、乾いた音と共に衝撃が走った。

右頬がヒリヒリして、熱い。
フリーズした思考で、かろうじで自分がはたかれたんだと理解する。

『………落ち着きましたか?』

声の方に顔を向けると、いつの間にか立ち上がって手を振りかぶった阿求ちゃんがそこにいた。
そして周囲にはこの騒動をなんだと思ったのか野次馬で溢れている。

『あ――――――』

彼女の言葉に答えれる程落ち着いていない私だけど、さっきよりは幾分はマシになったのか、言ってることは理解できた。

『ごめんなさい。こうでもしないと我に還りそうになかったので』

『いえ、そんな―――』

だって、悪いのは私だもん。
こうして殴られたのだって、周りの迷惑を考慮した結果だって分かるし。

『そんなに自分を責めないでください。今の貴女は私のこと、そしてそのシロウさんという人への罪悪感で今満たされています。けど、少なくとも私は貴女を憎んではいませんし、貴女がそんなに慕うシロウさんだって、きっと怒ってはいない筈です。
だって、貴女の気持ちが伝わってきますから。彼に対しての信頼、敬愛、尊敬の想い………彼にも絶対伝わっているに決まっています』

確証もない慰めの言葉。
けど、彼女の言葉に嘘は無く、私を慰めようという想いは本物だということが伝わってきた。
嬉しい。さっきまであんなに傷付けた私に対してこんな―――

『………そうでしょうか』

『何事も信じることが始まりなんですよ。他人を、自分を信じれないようでは全てが虚しいじゃないですか。それとも、貴女にとってシロウという人物はそんな虚しさの一端にもならない存在なんですか?』

『そんなことありません!』

彼女の言葉にいきり立ち荒々しく立ち上がると、優しく私に向かい微笑んだ。

『ならいいんです。その気持ち、絶対に忘れないでください。貴女がシロウさんに迷惑を掛けたと思うのなら、彼を信じる自分を信じなさい』

どこかのアニメを引用したような言葉で慰められたせいか、さっきまでの鬱な気分は少し削がれているのに気付いた。

『ありがとうございます………』

私も出来る限りの笑顔で微笑み返す。
無理矢理にでも笑わないと、彼女の想いに応える自信がなくなっちゃうから。

『―――今の貴女を置いて行くのは少々忍びないですが、そろそろ仕事に戻らないといけません。許して下さい』

『え、そ、そんな―――私こそこんなに時間を食わせてしまって申し訳ありません』

二人して頭を下げている姿は、結構面白いのかもしれない。
野次馬も事が済んだのを確認したので、ぞろぞろと退散していってる。

………正直な話。彼女に会えたことは幸運だったと思う。
こうやって他人との出会いが私を少しずつ変えていってる。考え方、在り方、その他いろいろな部分全てをひっくるめて。
でも、私は彼女たちに何も与えれない。
悔しいけど、自分のことで精一杯なのは事実。そんな空虚な自分には、誰かに何かを分け与えれる程の余分は無いのだ。

『今は流石にお控願いたいですが、是非日を改めて遊びに来てください。出来れば、そのシロウさんと言う人も一緒に』

つまり―――彼女は、”早くシロウさんと仲直りして、その姿を見せてください”と言ってるんだと解釈する。

『はい!』

彼女の想いに応える決意として、元気よく返事をする。
こうして奮起しないと、何時までも尾を引き続けてしまう。それは彼女も良しとしないだろうし、何よりこれ以上自分勝手に迷惑をかけたくない。

それに、私も早くシロウさんに会いたい気持ちは変わらない。それこそ彼女に言われなくたって、それだけは決して揺るがない。
ただ、言われなければその目的を達成する過程で誰かに依存する数が尋常じゃなかったかもしれないけど。
やっぱり、自分の尻拭いに他人を利用するのは間違ってるよね。

『では、失礼します』

笑顔で一礼すると、阿求ちゃんはそのまま背を向け、ゆっくりと立ち去っていった。
私はその姿に深々と礼をし、見送った。

そして、自分一人でもうひとつの自分を克服するにはどうすればいいかを考える。
精神修行………それが妥当かな。でも、ぶっちゃけどうすればいいんだろう。
巫女として修業は何度もしたけど、それとはまた別モノな気がする。
どちらかと言うと、お坊さんとかが座禅を組んで〝水の一滴!〟とか言いながらなんか凄い力に目覚めるノリに近いんじゃないだろうか。

………それにしても。なーにか忘れてる気がする。
てんやわんやしてたせいで、その引っ掛かりが解消できない。
何だろう。重要なことだけど、あまりにも自然だったせいでそれに対してツッコミも無かったような気がする。

『――――――あ』

そうだ、そうだよ。
こんなにも大事なことなのに、何故か失念していて。
いかにお互いにパニックになっていたのがわかる。

『お金、払ってませんよーーーーーーーー!!!』

大声で、先ほどとは別のパニックに陥りながら追いかけようとして、自分もここで立ち去ると食い逃げになると気付いた。
私は物凄い速さで会計を済ませた後、食い逃げ犯にさせまいと阿求ちゃんの後を全力で追いかけた。

原作キャラではないけど、ある意味公式キャラのあっきゅんのターンです。



名前:稗田阿求《ひえだ の あきゅう》
種族:人間
能力:一度見た物を忘れない程度の能力:『幺樂団の歴史1』/求聞持の能力:『求』
二つ名:幻想郷の記憶

里に住んでいる人間の少女。幻想郷の妖怪辞典的存在の「幻想郷縁起」を編纂している。稗田家の当主で、年齢は10歳と少しらしい。
けれども彼女は彼女は9代目の阿礼乙女(御阿礼の子)、転生者なので、9代目当主ということを考慮すれば妖怪クラスに長生きをしてると言っても過言ではない。名前の部分の“求“は、九代目だからという理由。
一度見た物を忘れない能力を持つが、前世の記憶はあまりない。これは転生の際に記憶の大半を失ってしまうためである。

転生のたびに周りの人間が寿命で入れ替わり、人間関係がリセットされてしまうことに苦悩していた。しかし、阿求の時代では妖怪と人間との距離が近くなっており、そのため人間と比べはるかに寿命が長い妖怪の知り合いも増えたため、転生も以前ほどには苦痛ではないと感じるようになっている。
八雲紫とは前世以前からの古い知り合いらしく、紫は完成前の「幻想郷縁起」をチェックするために稗田家を訪れている。

稗田家は里の人間で最も多くの資料を持ち、知識も深い1000年以上続く由緒正しい人間の家系である。その膨大な蔵書には幻想郷のあらゆる事柄が収められており、外の世界の資料なども少なくないとのこと。

性格はオリジナルになりますが、基本物静かで落ち着いた態度を取るが、いざという時は行動的になり、周囲の人を驚かせる。
弱音を直接吐くことはせず、あくまで第三者になったような物言いで語る。それは、時に思う“人間としての生“への自身の在り方との矛盾と、その事実を他者から突きつけられることによる明確性の増す痛みから逃げる為の逃げ道を作る為。
けれど決して暗い訳ではなく、寧ろ社交性も高く周囲の人間からも慕われている(代々の稗田からの積み重ねか、阿求としての人気かは不明)


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