今回は久しぶりのシリアスっぽい内容です。微妙に長いし。シリアスを書くと文が長くなるのは仕方ないね。
『さて、ここからは二手に分かれましょう。
万一近くを通りかかる場合だってあるだろうし』
妖怪の山の中枢付近でアリスはそう提案して来た。
彼女の言う通り、もし早苗達が私を探しているとしたら出来るだけ目立つ行動は控えた方がいい。二人での行動は意外と目立ちやすい。
余裕を持ってここで別れるのは正しい判断だと思う。
『了解した。私は裏から周るように迂回して向かう。早苗達に出会ったら出来るだけ引き付けてくれると助かる』
『まぁ、私はやりたい様にするだけよ』
そう告げると彼女はゆっくりとした足取りで直進していった。
さて、こちらは出来るだけ気配を絶って行動しなければ。
急いで向かう場合見つかるリスクも高い。
なにも早苗達だけではない。この山の住人に捜索の協力を頼んでいる可能性だってある。
そう考えるとかなり行動に制限がかかる。
まぁ、もし見つかったとしても早苗本人ではないならなるようになるだろうが。
魔力供給ラインを絶つことでの霊体化は供給源が分からない以上下手に動かすことは出来ない。
そう、未だに自分の魔力の供給源が特定出来ていない。
あんな大量の魔力を使用したにも関わらず意識を取り戻した時には使う前より多少消費した程度にまで回復していた。
聖杯が幻想郷にあるとは到底思えないし、つまりはサーヴァントを一人で顕現させれる程の魔力の持ち主がマスターと言うことになる。
一瞬、この世界に連れてきた時の声の主では無いかとも考えたが、何故かそれはないと自己完結していた。
『時間指定はされていないが、急ぐに越した事はないか』
流石に24時間体制で待っている筈も無いだろうが、こっちは雇われる身なのだからのんびりはしていられない。
出来るだけ早足、かつ消音で指定された場所へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シロウと別れた後、私は守矢神社へとひたすら歩いた。
久しぶりの山道はインドア派の自分には耐えがたいもので、肩で息をする程の疲労感を覚えている。
飛んでいくのは容易いが、彼がなんぼもしない内に辿り着いてしまうと足止めが出来なくなる。ま、別に"ついで"だから私が気に病む必要なんか無いんだけどねっ。
疲労感の甲斐あってか、境内に見える神社の屋根が見える場所まで辿り着いた。
別れてから約一時間程。
妖怪が大量に生息する山であるにも関わらず誰にも気付かれなかった。それ以前に、殆ど人の形をした生物と出会わなかった。
『………今日は妖怪の休日なのかしら』
未だ整わない呼吸を吐き出しながら呟く。
蓬莱がこちらが何もせずともハンカチで汗を献身的に拭いてくれる姿に感動を覚えながらも、私は歩みを進める。
ふと、疑問に思う。
蓬莱の行動によって気付かされたが、よくよく見ると上海の姿が見当たらない。
『ねぇ蓬莱、上海知らない?』
なんとなく推測はつくが、一応聞いてみる。
『おとーさんのところー』
お父さん、とはシロウの事だろう。
上海はシロウの事をいたく気に入っていた為か、そのままついていってしまったのだろう。
と言うか、お父さんと言う言葉を使う辺りに、彼への信頼の表れが覗ける。
『じ、じゃあ、私の事はなんて言うの?』
先程の質問の答え故か、何故かそんな質問をしてしまった。そんな自分を心の中で罵倒する。
別に私がなんて言われようと、許容する範囲ならば何の文句はない。
そう思っている筈なのに、アイツが面白半分にした質問が頭から離れない。
―――では君は母親か?
思い出すだけで顔が熱くなるのが分かる。
その言葉が脳内で反芻して止まないのは疲れてるからだ。うん、絶対そう。
何時まで経っても収まらないそれを、疑問にしてぶつける事で解決しようとした。
この突拍子もない莫迦げた思考をとっとと振り払う為にも。
僅かな空白。
蓬莱が考えているその間、私は無意識に緊張しているのに気付く。
たった一言を聞くだけなのに、私の鼓動は山登りの時よりも早鐘を鳴らしている。
疲労も相まって目眩を起こしそうになるが、必死にそれを堪える。
―――私は、何を期待してるの?
そう疑問に感じた瞬間、蓬莱の口が僅かに動くのを捉えた。
そこからは、まるでスローモーションの世界だった。
絶対的な集中力の賜物だろうが、それが逆にもどかしかった。
『―――――――だよ』
『え、なんだって?』
『アリスはアリスだよ』
………空気が死んだ気がした。
それは私の予想していた解答とは異なっていた。
それを残念だと思う自分に矛盾を感じる。
―――私は母親と呼ばれたかったのだろうか。
私からすればこの子達は本当に子供なのだが、今まで呼ばれる機会と言うものが無かった為、そんな欲は沸かなかった。
そうしていきなりその機会を与えられた所で整理など出来る筈もなく、矛盾した思考を繰り返すだけ。そうして出た答えが理想と異なれば残念がる自分に嫌気が差す。
『そ、そう。まぁそうよね』
感情を読まれない様に必死に取り繕う。
この子はもう自由に身体を動かせるのだから、下手に心配されると逆に傷つける羽目になってしまう。
そんなのは嫌だ。
私はこの子達にそんな想いをさせたくて自律化を研究してた訳じゃないのだから。
いつの間にか荒れていた息は落ち着きを取り戻しており、それを期に私は守矢神社へと再び歩みを進める。
アイツは一体何をしたのだろう。
別にアイツが加害者って確信は無いけど、行きたくないと語った時のアイツの顔は罪悪感で覆われていたせいか、そう決めつけそうになっている。
境内へと向かう階段を昇り切ると、箒を掃いている巫女服の女性が居た。
東風谷早苗、だったっけ。
外からやってきた巫女と祀る神二人を信仰している、古参である霊夢よりも何倍も巫女をしていると聞いているが、実際に会うのは初めてだ。
『こんにちは』
取り敢えず挨拶から始める。
うつ向き加減だった顔をあげた少女を見て、驚愕した。
生気の無い目にはクマがあり、錯覚で頬すら痩せこけている様に見える。
どうみてもそれは、人間が活動するには不適合な風体だった。
『あ、おはようございます』
にこりと笑う表情は痛々しく、明らかな異常性を露にしている。
『―――――ッ!!
あんた、そんなボロボロなのに何やってるのよ!』
箒を力づくで奪い取ると、その反動でよろめく少女を慌てて支える。
―――軽い。
彼女自身の元々なのか、疲弊している故か、どちらにせよ女相手に軽いと思わせるのは余程の事ではある。
『私は、だい、じょうぶ』
『身体を支えられない様な人間を大丈夫だなんて言うのは無理があるわよ。
ほら、掴まって』
自主性を尊重する言葉とは裏腹に拒むならば引きずってでも神社の中に連れて行く気概だったが、彼女は意外にも簡単に身体を預けてくれた。
それとも、意思云々なんか関係無しに身体が悲鳴を上げて止まないだけなのか。
神社の中に無理矢理侵入する。
軽いとは言ってもそれは一瞬。時間が経てばその重圧を否定出来なくなってくる。
『早苗!』
静寂に侵された空間に響く声。そこには、紫色の髪の女性が居た。
恐らく、こいつが神なのだろう。
『待ちなさいよ』
静止の声に気付きこちらを振り向く姿には余裕が無い。
彼女を大事に思っているのだろう。
だからこそ苛ついている。
『あんた、こんなになるまで彼女を放置してたの?明らかに見て取れる異常なのに』
『そんな事あるか!
私だって止めたさ!必死に言い聞かせても、無理矢理寝かせても、隙があればいつの間にか早苗は―――』
『そんな言い訳はどうでもいい。今のこの子の状態、これが現実よ。
あんたがどんなに仮定上頑張ったとしても、結果がこれでは見苦しい言い訳にしかならない』
そう、喩え必死に取り組んだ行為も結果に直結するとは限らない。
その場に居なかった自分にとやかく言う資格は無いのかもしれない。
でもだからって、目の前で無理をして倒れた人がいれば、近くに居た奴を責めたくもなる。そうでもしないと、自身を納得出来ない。
『――――!!
お、前………!!』
掴みかからん勢いでこちらへと迫って来た神は、突如停止する。
そして私も、その原因を理解する。
その、冷たすぎる視線に。
『そこの二人。
喧嘩するのは勝手だけど、早苗をまず運んでからにしな。あと外でやれ』
早苗の隣には、特異な帽子を被った少女が居た。
恐らくはこいつも神の一人なんだろう。
その少女の手は早苗の額から零れる汗をタオルで拭いている。
早苗を見る目は先程とは対象的に、まるで母親の様な慈愛に溢れていた。
『早くして。このままじゃ悪化する一方だよ』
その言葉には、有無を言わさない強制力を感じた。
これが、神の威厳と言うものなのだろうか。
私が早苗に駆け寄るともう一人の神が続いてくる。
二人で早苗の身体を慎重に持ち上げる。体格のせいで少女の神は支える形で手伝ってる。
三人の力を以てすれば、一人でさえ軽いと感じた身体が不自然な位軽かった。
予め引かれていた布団に寝かせると、早苗は堕ちる様に眠りについた。
それを見た瞬間、皆の険しい表情が安堵のものへと変化する。
『早苗〜………』
早苗の枕下で唸っている少女は、先程の恐ろしい程の剣幕が体格相応のものに落ち着いており、素の姿はこちらなのかと理解する。
『………こんなに疲労してるのにあんな事をしてるなんて、余程のことじゃないわ。
説明してくれないかしら』
『………悪いけどこれは私達の問題なの。部外者には何も言う気は無い』
紫髪の神が答えるその言葉に、カチンときた。
『だったら部外者に関わらない様な状況を作りなさいってのよ!
偶然にしろ何にしろ関わってしまったんだから、事の経過を教えるのが筋でしょう!?』
『ならこのまま帰ればいい!何も見なかった事にして、何も聞かなかった事にして何もかも変わらない毎日に戻ればいいさ。
今日初めて出会う癖して、関係者ぶらないでくれ!!』
お互いの額がぶつかりかねない程近くで睨み会う両者。他人から見ると目から稲妻がほとばしってる錯覚が見えていると言う確信が持てる程に、両者の険悪な雰囲気が溢れていた。
『五月蝿い莫迦神奈子』
自身の被っていた帽子を、神奈子と呼ばれた紫髪の女に思いっきり深く被せた。
もがき苦しむ姿にざまぁみろと思う中傷心と、帽子ひとつでもがき苦しむ理由が掴めない困惑が渦巻く。
『ごめんね、神奈子が迷惑をかけちゃった』
『い、いや、こっちこそ怒鳴り散らしたりしてごめんなさい。病人が居るってのに』
『それについてはおあいこだよ。
―――さっきの話の続きなんだけど、神奈子を庇う訳じゃないけど確かにこれは私達守矢の問題だから、突然現れた相手にホイホイ教えれる程安いことじゃないの』
神奈子が言うとまた口論になっただろうが、彼女が言うとなんだかなだめられてる気分になる。
外見で判断してはならないと言うのは、彼女の様な相手の為のものなのだろう。
『―――そっか。そうよね』
だからこんなに頑なだった心が簡単に解されたのだろう。
私は何も言わず立ち上がろうとすると、少女が服の裾を引っ張り離さない。
『だからさ。今から友達になろう?
これなら部外者にはならないしね』
一瞬、そこまで話したいのだろうかと思ったりしたが、少女の笑顔は部外者云々の問題関係無しに友達になりたいと訴えてる様に感じた。
その無邪気な笑顔に、私はその掴む手を払ってまで帰ろうとは思う気などとうに失せていた。
その代わりに、その手をほどいて私の手を握らせる。
『なら名前から交換しましょ。
私の名前はアリス・マーガトロイドよ』
『――――――!!
私は洩矢諏訪子。んでこっちで暴れてるのは八坂神奈子。そしてこの子は東風谷早苗って言うの』
重なるだけの手に力が籠る。
諏訪子と名乗った少女は、一瞬呆けた後とても嬉しそうに各々の紹介をしていった。
たったこれだけの行動でこうなってくれるのらば、こちらとしてもやった甲斐がある。
神奈子は今も帽子のせいでのたうち回っている。
しかし気のせいだろうが、帽子が先程より一回り位大きくなっている気がした。
一方早苗は先程の動悸も収まって、安らかな寝顔を見せている。
その姿を見て、なんだか嬉しくなった。
名前の交換、か。
彼も大事なことだと言っていたなぁ。
そして私はそれに影響されていたってことか。
名前は誰かを知るうえで大事なことだとは思ってはいたが、まさか口に出して言う奴がいるとは予想外だった。当たり前だと思う行為も決して当たり前だと思わず、常に本当に大事な事だと信じているのだろう。
名前の交換を終えた時のアイツの顔、凄く嬉しそうだった。あれだけで未練無く逝けそうな程に。
本当、変な奴。
理由も分からないまま自然と笑みを浮かばせる。
諏訪子はどう捉えたのか、それに合わせた笑みを差し出して来た。
『じゃあ、説明するね』
それを合図とし、場に多少の張りつめた雰囲気が漂い始める。
そんな中でも、神奈子は未だにもがいてるのはシュールな光景だと思う。
『昨日のことなんだけどね。早苗とここに居候してる外来人が一緒に買い物に行った時に、ちょっとしたトラブルがあってね。その外来人に対して早苗が弾幕を撃ってしまったの。
それが発端となってソイツは未だに帰って来ないの。早苗があんな無茶をしてたのは、自責の念からだと思う。
―――なんてったって、昨日からまともに寝てない所か、食事すら摂ってないんだ。そんなことをしてる暇があるなら探しに行きたい、と言わんばかりに』
一気に説明された内容だが、簡単に言えば痴話喧嘩に近いものなのだろう。
『質問。この子はどうしてその外来人に攻撃なんかしたのか。
もうひとつ。普段はこういった事はしない子なの?』
外来人とは十中八九シロウのことを指している。
下手に彼のことを喋ってしまうとシロウの行動が妨げられてしまう。
シロウは自分が行くと火中の栗を拾う結果になると言った。
でも、だからって。
こんなボロボロになってまでアンタの帰りを待っているこの子の気持ちを無下にしてまで、その結果に脅え続けてるの?
自身が居て早苗が傷つくと思っているシロウと、シロウが居ないことで傷ついている早苗。
―――なんて空回り。
お互いにその気持ちを知りえないままお互いの安否を願っている。
痛々しい程に募る想いが、常に心臓に絡まる茨を生み出している。
だからこそ、お互いは惹かれている。
それを無理やり引き離そうとするから、動かない茨へと直進していく。
矛盾した行動が螺旋となり、心を磨耗させていく。
まぁ、これは推測に過ぎないんだけど。
『早苗はもともと温和な子だよ。戦いは基本好まないけど、目的の為だったら必死に頑張ってくれる、そんな子。
だからこそ、早苗のあの時の豹変ぶりには息を呑んだ』
『豹、変?』
『最初の異変は、その外来人が遅くに帰宅した頃だった。早苗はカンカンに怒っててね、深夜にも関わらず2時間以上は説教してたの』
『本気で心配してるにしろ、それは異常ね』
『私達が何かやらかしても、その時みたいな覇気は恐らく空前絶後だろうね』
諏訪子が、少し哀しそうな表情になる。
それは、シロウに対する嫉妬を抑えてるのか。純粋に早苗の対応が、自身らのものとは違うことに距離を感じたのか。
何にしろ、いきなり現れたシロウに早苗をとられたと考えても不思議ではない。
お互いに無自覚なら、尚質が悪い。
『その次の日に、二人で里へ買い物に行った。その時の早苗は凄く楽しそうだった』
『それなのに、どうして』
『―――理由はわからない。私は早苗のもとに駆けつけたときには早苗はおかしくなっていて、外来人は消えていた。
外来人の方は無事だと思う。早苗の弾幕は、威力はさほどのものではないから、一撃で塵すら残らないなんて事はまず有り得ない』
『―――その際に怪我をして妖怪に襲われた、って可能性は考えないの?』
彼と会った時には外傷らしきものは一切無かったから、無駄な質問に過ぎない。
『どうしてかな。そいつなら絶対に大丈夫だって思える確固たる自信があるんだよね。
出会ってから大した時間も経ってないのに。不思議だね』
―――彼女の言うとおり、あいつから聞かされた魔術があれば、低級妖怪ならお話にもならないだろう。
彼女はそれを知っているから、そう思っているのだろうか。
『それより早苗のことなんだけど。―――気がついて少しは冷静だったけど、ことの経過を話すに連れてパニックになっていった。なんて事をしたんだろう、彼は何も悪くはないのに、と自己嫌悪に陥って、落ち着かせようとした私達の声なんか、まるで聞こえてなかった風だった』
『そして最終的に今に至る、と』
肯定の頷きをする諏訪子。
『………私達じゃ今の早苗には何もしてやれない。探しに行きたくても、早苗を見捨てることは出来ない。
アイツが帰ってくるのを待つしかないんだ』
いつの間にか帽子の束縛から抜けた神奈子が悔しそうに唇を噛んでいる。
『あ、復活した』
『お陰様で堕ちる寸前まで行ったけどね』
拳で諏訪子の頭を殴りつけ、鼻を鳴らす。
諏訪子は涙目の状態で睨み上げている。
『取り敢えず、これが事の真相だよ』
神奈子がそう告げると、だから早く去れと言わんばかりに睨みを利かせる。
『ありがとう、じゃあ私が居ても力になれそうにないわね』
その視線にも嫌気が差したので、私もここらで退散するとしますか。
シロウは上手くやっただろうか。それだけが気になった。
『んじゃあ外まで見送るよ。神奈子は来ない?』
『当たり前だ』
しっしっ、と子供みたいに煙たがる。
アイツとは、ずっと相容れない確信が持てた。
境内へ辿り着き、伸びをする。
長時間会話した訳でも無いのに、節々は多少固まっており、気持ちが良い。
太陽が眩しい。
身体が酸素を欲するかの様に欠伸が出る。
シロウが居たせいか上手く寝付けなかった分がぶり返してきたらしい。
『ねぇねぇアリス』
ちょいちょいと手招きと自身の耳に指を向ける諏訪子。
耳打ち、だろうか。
彼女の身長に合わせる様に屈むと、予想通り顔を耳に近付ける。
『シロウの事、知ってるんでしょ』
『―――――ッ!!』
思わず飛び退いて、しまったと思う。
それはどう見ても肯定の合図にしかならない。
愉しそうに笑う諏訪子が、全て理解<わか>ってると物語っている。
『やっぱりね。そうじゃなきゃあんな深く関わろうなんて普通思わないもの』
『………貴女の手の平の上だったって訳ね』
降参する様に両手を上げる。
やっぱりこいつ、タダ者じゃない。
『で?彼の所在が聞きたいの?』
『いんや?そんなのに興味は無いよ』
………は?
あれだけ早苗のことを心配してたのに、アイツは戻ってくるかもしれない可能性に興味が無いと?
『早苗にとってシロウは抑止力となっているなら、尚更シロウに戻って来られる訳にはいかない。
これは、早苗の為なんだよ』
それは、アイツも言っていた台詞。
それは遠回しに、アイツの存在を否定したがってる様に思えた。
アイツさえいなければ、早苗がこんなになることもなかった、と。
それが錯覚にしろ事実にしろ、そんなものに納得はいかないし理解も出来ない。いや、したくもない。
他人が否定するのはまだいい。
でも、アイツ自身が自己を否定するのだけは何故か許せなかった。
『―――その為なら彼女が苦しむのも仕方ないと?』
『仕方ない、とは言いたく無いけど事実だからね。
生き物はね、欲しいものは簡単に手に入らない様に出来てるんだよ。欲しいってことはそれが自身には足りないパーツだからで、それは一人一人不平等に構成されてる。そしてそれは試練となり、その為に努力をし、そうやって自らに磨きをかける。
―――自身の欲望の根幹にある試練が、辛い訳が無い』
諏訪子の言葉には、とても重みがあった。
我が子の為に、自身の想いとは正反対の行動を辛酸を舐めながら厳しく当たっている母親みたい。
―――本当、似た者同士だな。
まるで本当に血が繋がってるみたい。
『………貴女は、アイツの事をどう思ってるの?』
だからこそ、ここははっきりさせたい。
諏訪子がシロウの事を良く思っていないなら、例え早苗に免疫が出来た所で対象が移るだけだ。
それならば、いっそここから出ていった方が後腐れも無いだろう。
『シロウの事?
う〜ん。深く考えたことはなかったけど、きっと好きだと思う』
『なっ――――』
子供の様に笑う笑顔が、とても眩しい。
あっさりと出た答えが清々しく、とても純粋なものだったことに動揺する。
恥ずかし気もなく、そこにあるのは純真無垢で潔白な事実のみ。
そんな問いた自分は邪な疑念を聞き入れる為に投げ掛けている。
それは、彼女に対する侮辱でもあったのに。
『―――ごめんなさい。易々と聞くものでは無かったわね』
『そんなことは無いよ。
それに、シロウの事を憎んでないと言ったら嘘になるし。
けどそれ以上に彼からは色々な出来事を与えられたから、そんな感情を持つのはお門違いってものだよ』
『………そっか』
これ以上特別話すことも無いのか、数秒間の沈黙が訪れる。
私はそれを合図として帰りの道へと飛び立とうとする。
『アリス!』
しかしそれは諏訪子の呼ぶ声によって制される。
『今度はそんな話の為にじゃなくて、普通に遊びに来てね』
『神奈子が五月蝿いんじゃないかしら?』
『あんなのほっとけほっとけぃ!ど〜せ何回か対面してれば慣れるって』
いや、それはない。と心の中で宣言する。
『えぇ。ではいつかまた、お邪魔させてもらうわ』
私も出来る限りの笑顔で彼女に応える。
今度は早苗とシロウも、皆が集まっていると楽しくなるかもしれない。
私は今度こそ飛び立ち、諏訪子が見送る視線に振り返らずにその場を後にした。
次回、やっとバイトネタが絡んできます。
やっとですよ、やっと!しかも上手い出だしの内容が思いつかないし(マテ
久しぶりにFateをプレイ。凛ルートやっぱりいいね、うん。
あれだけ男が映えるゲームってのは結構珍しいですよね(デモン○インとかあやか○びととか)
小説の進行についてですが、東方のキャラは全員出す予定です。そこからやっと何編〜みたいに進んでいきます。
今のところ二つくらいは概要が構成されていますねー
てかそんなことしたら何話ぐらい話続くんだろう・・・。確か63人位は居た気がする。
・・・/(^O^)\
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。