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今回更新が早い分薄っぺらいです。中身が薄い理由は区切りがいいって理由です。そんな理由で一話の内容が薄くなる場合がありますがご了承下さい。
幻想に惹かれた者達
刹那の至福の時
射命丸と名乗る少女と別れた後、私は何事もなく下山出来た。
先程までとは比較にならない程に視界は開け、思わず天を仰ぐ。
太陽の光を手で傘を作り間接的に覗く。
山の中、更に木の上に登っていた時とまるで変わらない眩しさ。
時刻は、恐らく正午を過ぎて一時間かそこらか。

久しぶりの平地に足が悦ぶ。
山道は下りの方が肉体には負担が掛かる為、いい骨休みになる。

辺りは木々が数本生えているがそれ以外は雑草と歩いた事によって出来た道だけで、面白味はない。
だが、ありきたりな風景だろうと場所そのものが初めてならば自然と興味が惹かれる。

遠目に見えるのは、浴衣を着た数人の人間がまばらに歩いて行く姿。
鞄を持っている者もいれば、親子と思わしき姿で手を繋いでいたりと様々だ。
どこを見ても、何世代前を想像させる姿ばかり。
にとりが言っていた様に、科学が普及していないが故なのだろう。

すれ違い様に色々な人から挨拶をされた。
近所付き合いが習慣となっていた時代と何もかもが同じなのだろう。
私はそれらに笑顔で応える。
なんだか暖かい気持ちになっていくのが分かる。

『あれは………村か?』

黙々と歩いていると、喧騒が僅かながらに聞こえてくる。
それはつまり、人通りの多い場所へと近づいていると考えるのが常だろう。まばらだった人通りも、今ではそれなりのもの。

そして眼前に見えるは、どう見ても村。
ここで色々な情報が聞けるかもしれない。
それに、早苗達に世話になりっぱなしも悪い為、なにか出来る事が無いかも探すべきかもしれない。

私は、村へと足を踏み入れる。
中は、住んでいる者、商人、子供による活気で溢れている。
それらを観察しながら歩を進める。

その中で一際目立った集団が居た。
銀のロングヘアー、弁髪帽に6つの穴が開いた水色のロングスカートを穿いている女性が、沢山の子供達に囲まれて何やら騒いでいる。

『けーね先生、あそぼー!』

けーねと呼ばれた女性は、何やら戸惑った様な表情で子供を諭している。

『まったく、授業が終わったら現金な奴だ。だが私にもやらないといけない事があってだなぁ………』

彼女は子供が言ったように先生で、小さな子供を中心とした人なのだろう。彼女自身本気で拒否している訳ではなく、本当に仕方ないからなんだろう。

それを見ていた私は、無意識にそちらへと足を運んでいた。
こういう事こそ、私の本分だったな。

『すまない、いきなりだが私に子供達の遊ぶ役を任せてはくれないか?』

『―――あんたは誰だ?見たところ里の者ではない様だし、何よりあんたみたいな風貌の人間は見たことがない』

『それはそうだろう、私は先程山から降りてきたのだから』

『山、だと?』

その単語に僅かに反応した時の表情は、険しかった。

『妖怪の山から降りてきた・・・。それは、あんたが妖怪だって取っていいのか?』

子供達を押しのけ、こちらへと対峙する。
先程までの穏やかな表情は、敵を見るような目に変わっている。

『待て、違う。私はれっきとした人間だ』

『じゃあ何故妖怪の山から降りてきた?
その表現方法だと、そこに住んでいるとしか思えないのだが』

『確かにあの山には住んでいる。いや、あの山にある神社に居候しているんだ』

『―――そうなのか?』

いきなり空気が軽くなる。
感情の緩急が激しいのだろうか?
それとも他人を信じやすい性質なのだろうか。

『しかしそれが本当だったとしても、いきなりこの子達を任せるのは流石に・・・』

子供を預かる身としては当然の反応だな。
逆にこれで素直に引き渡すのなら、彼女に良い印象は持たなかっただろう。

『しかし君も仕事があるのだろう?
私とは言わないが、せめて頼れる相手に頼んだ方がいい。子供を野放しにすると危険が多いからな』

弁髪帽の女性は黙り込む。
口元を歪ませうんうんと唸っている。
その真剣な姿を、私はどこか自分と重ねていた。

他人の為にここまで考えたり、困ったり、怒ったり。
益のない行為にも罪悪感を感じる責任感の強さ。
自分がやらないといけないと思う狭い思考と視野。
何から何まで、私を連想させた。

『………わかった。では私はこの子達と遊ぶ、そしてそれにお前も参加するんだ』

『いや、それでは私が遊ぶ意味がないではないか』

『なに、仕事と言っても今すぐにやらなきゃいけないものでもない。それに、そうやってお前の事を監視すれば、この子達を預けるに値するかを見極めれる。信用するに足ると判断すれば、すぐにでもお前に任せるさ』

恐らく彼女は精一杯の譲歩をしたのだろう。

自分が後に苦労する道を選択した彼女に、私は少し悲しくなった。

自分と似ているからこそ理解(わか)る。
その意思は鋼より堅いものだと言うことも。

『あぁ、それで構わんよ』

『ならば行こうか』

『いこー!』

子供達が一斉に声を上げる。
待ちわびた様にそわそわしている。
そしていきなり介入した私を気にした様子は無い。
子供故の純粋さか、彼女の事を信頼してか。

『そうだ、私の名前は上白沢慧音<かみしらさわ けいね>と言う。
名前を聞かせてくれないか?』

『私はエミヤシロウ、好きに呼んでくれ』

『ではシロウ、遊ぶ道具を運ぶから付いてきてくれ』

『了解した』

彼女は両手を子供の手で塞ぐと目的の道へと歩きだす。
私はその後に続いた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


不思議な男だと思った。

最初敵かと思えば一切の邪気が感じられないわ今は本人も子供みたいにうちの生徒と無邪気に遊んでいる。

面子(めんこ)独楽(こま)を不器用に扱い、皆に笑われ、そんな自分にまた本人も笑っている。
無邪気なその集まり。
輪にいなかった筈の子供達もどんどん彼を中心として引き寄せられている。

そんな中私は自然とその枠から外れていた。
いや、入るべきではないと思ったからだろうか。
皆、彼と言う存在に惹かれている。
それは私も然り。あんな子供みたいな大人の男を見たのは初めてかもしれない。

大人になれば自然と道徳や世間体を気にするものだ。
やりたい事も出来ないジレンマを抑えてしたくない事ばかりを優先する生き物、それが大人。
だがシロウはそんな常識から乖離した存在に感じる。
人間とか妖怪とかそういった概念以前に、ひとつの個体として、彼は特殊だ。

自由人、と思われればそれまでだが、決して私はそうは思わない。
取り敢えず言える事、それは―――

『………この子達を任せても良さそうだな』

彼が決して悪い奴ではないと言うこと。
あんな無垢な青年が悪事を働くようならば、彼ではなくそんな世界を呪うと思う。
それぐらい、私は彼を信用し切っていた。

『シロウ』

『ん、何かね?こちらも結構忙しいのだが』

忙しい、と言う声にはそんな気は一切感じられず、寧ろ喜んでいる風にさえ思える。

『―――ここが私の家だ。子供達の子守りが終わったら来てくれないか?礼がしたい』

さらさらと持ち合わせの小筆と紙に漠然とした地図を描く。
墨が掠れて多少不格好だが、恐らく問題はない筈。

『いや、礼を言われる事をした訳ではない。何よりこれは私が望んで動いた結果。感謝しこそすれ、礼を言われる筋合いは無いさ』

そう言って紙を受け取ろうとはしなかった。
その言動は、彼の特殊さを再認識させる。
見返りを求めないその聖人じみた思考。
それは決して悪くはないと思う。

『しかしそれでは私の気が済まない。出来ればでいい。来てくれ』

しかしそれは時として人を疑心暗鬼に陥れる。
益を求めないで誰かを助けるなんてのは普通の思考では有り得ない。
人間とは俗物的で、身勝手で、貪欲な生き物だ。
だからこそ、自分達と異なる同じ存在に出くわせば、利用するか敬遠されるかが殆どだろう。

人間や妖怪は潜在能力こそ違えど本質は変わらない。
彼がいつもこの様な事をやっているのかは分からないが、それではいけない。
こう言った無益の救済を続けていけば、いずれ独りになってしまう。

そんな事にはさせたくない。
彼の様な人物は、決してそんな対象として見られるべきものではない。

私が人間を好きだから救いたいと思う事以前に、彼と言う存在を救いたいと思った。
救う、なんて大それた事は第三者には無理かもしれない。
それでも、私の選択が彼の人生に光を見い出せるのなら。

『―――分かった。考えておこう』

しぶしぶ彼は紙を受け取ってくれた。

強制はしてないからもしかすると来ないかもしれないが、強要は出来ない。
私自身が、誰かの歴史を動かす決定的な存在とはなってはいけないから。

『ありがとう。では子供達を頼んだ』

そう言ってお互い踵を返す。
未練がましく後ろを振り返りもしたが、自身でそれを律する。
彼を信じると決めたのだ。なのにこんなに後ろ髪を引かれては決意が腐ってしまう。

私はそれから振り返ること無く自宅へと早足で向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『お兄ちゃん、またねー!』

『またー!』

あれから数時間は経ったであろうか。子供達と古き懐かしの玩具で遊んでいたらいつの間にか太陽が傾き初めている。

急いで帰らなければ、と思い走ろうとしてガサッ、と言う擬音に思い出す。
慧音が渡した家への道なりが記されたくしゃくしゃになった粗雑な紙がポケットに入っている。

明日にするのもアリだが、それはそれで後味が悪い気がする。
先程は否定していたが、彼女が望むなら私には何も言えない。

ただ礼をするだけだ、すぐ終わる。
そう判断し、私は急いで彼女のもとへと向かった。

今回は(私が)世界一授業を受けたい先生の上白沢慧音。

上白沢慧音<かみしらさわ けいね>
種族:ワーハクタク
能力:歴史を食べる(隠す)程度の能力、歴史を創る程度の能力
二つ名:知識と歴史の半獣

見た目:銀のロングヘアー、その上には弁髪帽の上部と思わしき物。ロングスカートには六つの穴。これはハクタクの胴体に6つほどあるという目を表現している。

ハクタク時はその特徴に二本の角が増え、尻尾(獅子と同じ)が追加される。
なぜかその際にロングスカートの色は青から緑になっている。

性格:真面目、お堅い。
人間を愛しており、人里を襲う妖怪がいれば率先して里を守るために動く。
ハクタク化すると好戦的な性格に変わる。
ハクタク化は満月に起こり、その時に彼女に近づくと大変なことになります。

ハクタクとは中国の伝説上の妖怪。白澤とも書くが日本語では一般的には白沢。
ただ中国神話の妖怪とは言っても、日本(江戸時代)にも伝わっており日本にも白沢に祈願する風習はあった。

ヒゲの生えた人面牛に胴体を含め6本の角が生え、そして体中に目玉がついているというあまり見かけたくない外見をしているらしい。
麒麟や鳳凰と同じ聖獣の一種で、世を治める施政者の前に姿を現すと言われる。
なおハクタク化した慧音には別に体に目玉がついていたりするわけではない。慧音は後天性の半獣であるため変身しても人間の形を保つ(多分。慧音の裸を見た事がある奴が居たら情報提供を求めると共に殴らせろ)。頭に2本の角が生え、髪の色が変わると共に衣装チェンジするくらいである。

非常に聡明で万物の知識を持つと同時に病魔避けの力を持っており、白沢に出遭う事が出来た者は子孫まで繁栄すると言われていたため、古の施政者は白沢に関するものを身近に置く事が多かった。
あるとき中国の帝が白沢に遭い、悪霊などについて話を聞いたところ、1万種以上に及ぶ悪霊についてクドクドと説明をし始めたらしい。慧音のクドい性格はモデルから由来しているものだったのだろうか?

因みに上白沢という名前はワーハクタクのもじり。
原作では慧音は背が低い可能性がある。
二次では大人のお姉さんで通っているが。

慧音をけいおんと読まないように。
それを言ったら彼女がエレキギター持って暴れます(演奏的な意味で)。


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