挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
90分だけ貴女の味方です 作者:織田 涼一
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

5/26

005:貴女に花束を

 今日は朝から三人で、テーラーに仮縫いした衣装を合わせにいった。
ウォルフと自分は男なので、衣装を調えるのに然程時間はかからなかった。
このテーラーには女性にゆっくり見てもらえるように喫茶コーナーが設けてあった。
早速ゆっくりお茶をして待つことになった。一応今日はミーシャの護衛を兼ねているので、自分達が終わったからといって帰る訳にはいかない。
ミーシャが出てくるのを待っていると、店員から「お美しいですわ」と賞賛の声が聞こえてきた。
奥から登場を待つとミーシャは淡い緑のドレスを着て、クルリと一回転しフレア部分をつまみんで礼をした。

「ミーシャかわいいよ」と声を掛けると、慌ててウォルフも「うん、とってもいいね」と追随する。
「ウォルフ兄さま、減点です。アキラ兄さま、そこはかわいいではなく……」尻すぼみになった声はかすれていった。
「まあ、何はともあれ、これでダンスパーティーに間に合ったね」
「ミーシャの分は別邸まで届けていただけますか? 自分達の分は後で私が取りにきますので」

 店員にそう告げるとサインをする。支払いは別邸のお爺様が既に処理しているようだった。
カランコロン、入店の合図があったので思わずそちらを見ると、ステイシアがお供を連れて入ってきた。
一番に気がついたので、失礼を承知で近づきお供の方へ声を掛ける。
「初めまして、アーノルド家のアキラと申します。この後お伺いする予定でしたが……」と続けようとした所ステイシアが期待をこめて前に出てきた。

「アキラさん、昨日はありがとうございました」
「いえ、お役に立てたなら幸いです」
「それで、その手紙はもしかして……」
「はい、えーっと。ウォルフちょっといい?」
「え? ウォルフさまもいらっしゃるんですか?」
「アキラ呼んだか?」
「こちらが昨日の」
「ああ、これは失礼しました。私アーノルド家のウォルフと申します。この度は申請ありがとうございました。返事はこちらに認めましたが、折角こうして会えたので直接返事をさせて頂きます。」
「……はい」ごくりとつばを飲み込む音が聞こえた気がした。

「今回のダンスパーティーのカップル、こちらこそお願い致します。妹のお守りもありますのでずっとと言うわけには参りませんが」
「あ……ありがとうございます」
「まあお兄様、お守りとはひどいですわ。それと私にも紹介頂きたいと思います」
ミーシャが登場を伺いながら前に出てきた。

 ステイシアは三人揃った姿に緊張しているようだった。
そして「この後時間がありますか?」と聞かれたので、皆に確認し近くの店でお茶を飲むことになった。まずミーシャがステイシアの唇に注目する、そしてこちらを軽く睨んだ。

「アキラ兄さま、あれをお渡ししたのですね」
「うん、まあこのくらいはね」
「ステイシアさま、その唇とてもかわいいですわね」
「あ、これはその。昨日アキラさんに用立てて頂きましたの」
「とても似合ってますわ。ねえウォルフお兄さま」
「ん、そうだね。彼女の魅力が更に引き立てられているように感じるよ」
「まあ、魅力だなんて……」

 しばらく二人の会話を見て大丈夫だと判断すると、ミーシャに目配せをする。
「そうですわ、この後予定がありましたの」ミーシャがステイシアに断りを入れて退出することを告げると、自分も送るためと理由をつけて二人っきりにさせてあげた。
急に二人っきりにされたステイシアは慌てていたけど、きちんとお供の人が控えていた。

 帰り道で最近の学園の様子をミーシャに聞いてみると、仲の良い友人が増えたそうだ。
そして【ウォルフ親衛隊】の人数が又増えた事を教えてくれた。
ちなみに【ミーシャを見守る会】がある事をミーシャは知らない。
二人はお互いに多くの人に見守られているが、お互い見守られている事に気がついていなかった。

 特に貴族の長男長女としてこの学園に来ているものは、親からきつく言い含められていた。
アーノルド家は王国から見放されたのだ、へたに関わって不興を買う訳にはいかない。
こうして政治的付き合いの関係ない子息子女は、同性の相手と友人になり、密かに憧れる者は親衛隊や見守る会に入っていくのだった。

 休みがあけて学園が始まる、その日は前日リクエストがあった真っ白い花束を用意していた。
「ウォルフ、見にいっちゃダメかい?」
「アキラ、さすがに恥ずかしいんだけど・・・」
「後でミーシャに聞く事で納得するよ、噂が広がるのは早いだろうからね」
「そこは覚悟しとくよ」

 ウォルフが花束を持って学園に行くと、密かに騒ぎになっていた。
「ねえ、もしかして」「クスクス」「え? なになに」「わたしかも?」「え? それはないわぁ」等など。
ウォルフは居た堪れなくなり一限目が終わり、休み時間になるとある教室へ向かった。

 教室の入り口に立つと出入り口にいた女性に声を掛ける。そしてステイシアを呼び出してもらった。
「あらウォルフさん、今日は……」
立膝をつき後ろに隠していた白い花束を差し出す。
「ステイシアさま、今回のダンスパーティー是非ご一緒させてください」
周りから黄色い悲鳴が沸きあがる。
「わ……私で宜しければ……お願いします」花束を受け取り一本引き抜いて返す。

 これは家として、正式に交わされたカップル申請の手続きが終わった後の、様式美のような儀式だった。
ただ、やる方は相当恥ずかしく、形骸化されたものだったのでやる者は少なかった。
ステイシアは耳元にこっそり「ありがとうございます」とお礼を言い、ウォルフはそそくさと退出した。
すると周りの女性はステイシアに殺到し、ステイシアは質問攻めにあうのだった。

 ミーシャに関してはさりげなく噂が広まっている。
昨年と同様に兄弟がパートナーをする事が決まっていて、問題はその合間に誰がダンスを申し込めるかにかかっていた。
事前の申し込みは見守る会を説得する必要があり、余程高位の爵位でなくては難しい。
爵位だけで何とかなるかどうかは人格によるが、学園時代はさりげなく家を主張するのがスマートだった。
パートナーが決まっている以上、第二第三候補でいいと申し込むのは非常識だった。

「やあ、ウォルフお帰り。どうだった?」
「はぁ、マジ緊張したわ」
「ステイシア嬢の慌てる姿が目に浮かんだよ」
「ん、すごいガチガチだった」
「詳細は……」
「ミーシャにでも聞いてくれ」
絶対尾ひれ背びれがついている情報でいいのか? と思いつつ後の楽しみにした。

 週末にはダンスパーティーが迫っている。
ウォルフの行動によりダメで元々とアタック&アピールするものが激増していった。
次第に盛り上がっていく学園内の空気に皆があてられて行く。
迫り来る影はなりを潜めていた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ