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90分だけ貴女の味方です 作者:織田 涼一
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003:タブレット

皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
こちらのお話は不定期ですが両立させたい
と思っています。
2回目の連載なので少しは心に耐性がある
はずです。
 アーノルド男爵家は山間部に屋敷を構えている。
また、領内は葡萄を特産としていてワインが有名で小さく地位も低い割に有名な領となっている。

 左手を三角巾でタスキ掛けのように吊り、腕を動かさないように指示をされる。
手当てをしてくれたのはアーノルド家に仕える元乳母兼教育係りのソルトだった。
ここでこの家に住む人を紹介されたので確認したいと思う。

スチュアート(32歳)、アーノルド家の当主で王都の別邸には先代が細々と暮らしている。
レイシア(28歳)、王家の長女として生まれ、社交界でスチュアートを見初め降嫁した。
ウォルフ(10歳)長男・ミーシャ(8歳)長女・ロロン(6歳)次男の三人は両親の美形で柔和な外見内面を受け継いでとても人懐っこい感じになっている。

 もう大分少なくなっていたがウォルフが今より更に小さい頃は頻繁にスパイや政治面・経済面などで嫌がらせをうけていた。時には誘拐騒ぎや傷害事件などもあったそうだ。
たかだか男爵家に王家の娘が嫁いだのだ、社交界のみならず政財界や軍部など多くの者が嘆きまた落胆とした。
レイシアの美しさは『王家の珠玉』と言われていた、また当時のスチュアートも二つ名があるほどの美形で見るものが見ればお似合いのカップルだった。

 スチュアートは今でこそ、そこそこの体格だけど元々は優男な印象を与えていた。
これから上を目指す男爵家の当主として教育を受けたスチュアートは誠実を絵に描いたような男だったが、力よりも技を重視する剣の使い手だった。剣の稽古をするにでも周りが騎士剣を持つ中、レイピアのような細身の剣を持ちよく馬鹿にされたという話をしていた。

 猪突猛進に来る相手を交わし首筋に剣が触れるか触れないかの地点に留める。
華麗な剣舞は実践を秘めている、当時スチュアートも多くの子女からターゲットにされていた。
家格の低さから上位の貴族からの婚約の話は少なかった、当時の当主は貴族としての対等な付き合いができない家の娘と結婚するぐらいなら「自分が惚れた女ぐらい自分で口説いて来い」と豪語していたそうだ。

 そんなスチュアートとレイシアはお互いに一目惚れをし、恋に落ち数々の困難を退けウォルフを身篭った。
当時の貴族の勢力バランスは安定しており、アーノルド男爵家は少なくとも10年は自領を豊かにするのに努めるようにと王家と約束をしている。また、スチュアートはレイシア個人を好きになっただけで王家を利用するつもりは一欠けらもなかった。
ウォルフが順調に成長し独力で力を示した時、初めてアーノルド男爵家として力を貸そうと思っていた。

 久しぶりに現れた10歳のスパイ認定された自分に対するスチュアートとウォルフの温度差はかなり違った。
ウォルフは幼少の頃より剣術の指導も受けているが、本気で相手してくれる相手も敵もライバルもいなかった。
そこに現れた『妹に何かしているように見える男』を迷わず打ち据えたのは当然の対処だと思っていた。

 使用人として働いているソルトは手当てをしてくれている間、結構体をペタペタ触ってきた。
一瞬身の危険を感じたけど、どうやら筋肉の付き具合をみていたそうだ。
そして一先ず暗殺の危険はほぼないという結論が出たのだった。
部屋を用意してもらい怪我が治るまでお世話になることになった。

 特に病気ではないのでベッドに腰をかけているとドアの奥に気配を感じた。
まだ警戒されているのかな?とぼーっとドアを見ていると、キーっと少しだけドアが開きロロンが「ばぁ」と顔を出した。こっちにおいでと声を掛けると迷っている感じだった、多分あの部屋には極力近づかないように言われているだろう。
あまりしつこく呼んでも逆に警戒されちゃうだろうから窓から外の景色を見ることにした。

 この屋敷は村から少し離れている、外ではスチュアートが手綱を握りウォルフを馬に乗せていた。
馬小屋もあり規模からすると数頭の馬がいると思われる。
「へぇぇ、上手だなぁ」と呟くと足元にはロロンがいた。

「ねえねえ、お兄ちゃん。お名前教えて」「アキラだよ、ロロン君は何歳かな?」
会話を続けていく中で少しずつ色々なことを教わった、この三兄弟は仲良しである。
ただ兄と弟が4歳差だとお兄ちゃんの真似をしたがる、ところが年齢差により出来る事と出来ない事が確実に出てくる。またミーシャは心臓に持病があるようだ、同年代の子供が多いとどうしても激しい運動をしてしまうので村から少し離れた場所に屋敷を構えたようだった。

「ぼくねー、お友達がほしいんだ。一緒に遊べるし」
遠くからバタバタ音が聞こえてきてソルトが半分開いたドアをノックしてきた。
「もう開いてますよー」と言うとソルトがロロンを後ろから抱き上げ「まだいけません」とお持ち帰りされていた。

 虚空からタブレットを取り出すと片手でポチポチと色々探してみることにした。
『個人情報』『R15』『R18』『装備・道具箱』・『ショッピングサイト』・『ネット銀行』・『ヘルプ』漁師をしていた記憶があるから体は10歳でも心は成人だよなと『R15』を選択した。
動画ソフトが立ち上がり真っ暗な画面から徐々に女性が浮かび上がる。

 暗闇の中うっすらと淡い光で上半身がかろうじて見える、椅子に座ってアイマスクをしているようだった。
音声は繋がってないらしく口元を見ていると「たすけて・・・」と動いたような気がした。
そこから声にならない悲鳴をあげている。
するとどこからか何かが飛んできてガチャと音がするギュリリリリリリ・・・ガチャ、ギュリリリリリリ・・・ガチャ。
そして女性の顔にズームインしていくと<<あなたは15歳以上ですか?>> <YES/NO>と聞いてくる。
「遅いよ!」と思いつつYESを選ぼうとしてもグレーになっていて選択ができなかった。
仕方がないのでNOを選択すると<<心身の保護の為ですのでご了承ください>>とメッセージが流れ動画ソフトは閉じた。

 何かヒントでもあるかなと『ヘルプ』を選んでみる。
『バージョン情報』『アシスタント』『用語』とあったので『アシスタント』を選んだ。
画面に壁が表示され奥の方からくたびれた黒服のおっさんが歩きタバコでやってくる。
「はぁぁ、だから止めただろ」足でタバコを踏み消すともう一本タバコを出して火をつけた。
「あの、どこかで会いましたか?」親兄弟・学生時代の友達・職場の人など大体思い出せている、こんなおっさんに会った記憶は・・・モヤがかかっているようだった。

「会ったというば確実に会ったよ、お前は俺の忠告を聞かなかった。だからそこにいるんだろ」
「正直ここに来た理由もはっきりとは思い出せてないんです」
「はぁぁぁ、それで俺が遣わされたってことね」
「あの、お名前を伺っても?」
「シュージだ、苗字はいいだろう。仲良しこよしは柄じゃないんでね」
「はぁ」
「んじゃ、分かろうが分かるまいがどんどん説明するぜ」

 まず、『R15』『R18』は個人情報で登録した年齢が進むまで見られないそうだ。
そして『R15』を見た事はばれていた、あの女性が瑞穂と言うらしい。
あの後、彼女を不幸にした男は『危険な薬』を所持使用していた事で捕まったそうだ。
店側は事前に突き止めて遡って解雇していて無関係を貫いた。
違法に契約した店からは金をふんだくり、一部を遺族側に匿名で香典を送ったそうだ。

「お前にも迷惑料をと考えていたんだが・・・」
神さまより説明と収納・異世界言語の習得・スキルの贈与を考えていたそうだが、急がせたせいで後手後手にまわってしまったそうだ。
スキル上限が10Pで既にエターナル共通語に1P振ってしまっている。
もうこのタブレットも使い始めているので、これからアドバイスするものを振るように指示を受けた。

 時空間魔法:瑞穂を助けるのに鍵になる魔法
召喚魔法:ショッピングサイトで購入したものをこの世界に持ち込む魔法
戦えるスキル1~数種類を選ぶように言われ『釣り』『料理』『操船』はサービスでつけてくれた。

【取得スキル】
『エターナル共通語』『時空間魔法:1』『召喚魔法:1』 残7P
『釣り:1』『料理:1』『操船:1』

 武器・魔法・補助スキルも何個か開放されていたけど急いで選ぶ必要もないので保留にしておいた。
『ネット銀行』には迷惑料として10万円が入っていた、この世界も基本的に円表示に見えるように設定されているから高い安いは自分で考えるように助言を受ける。お金を入れる事によって『ショッピングサイト』のアイコンが開くようになった。
「俺が買いに行くんだからめんどくせぇのはナシにしろよな、後手数料は勝手に引いた金額が出るから了承しとけ」おっさんが足元をタバコだらけにしながら気だるそうに告げる。

「あぁ忘れる所だった、最後にこれ買っとけ」
『ショッピングサイト』を開くと最初に【魂の時計:1万円】と表示されている。
振り子時計のようでねじ巻きの必要もなくアプリにも使え家具としても具現化できるそうだ。
右上に残金が残っていて指示通りにカートに商品を入れて決済をする。

「これから大変な事があると思うが迷ったら進め、お前にはもうそれしか残ってないんだわ。今度は間違わない選択をしろよな、んで困ったら俺を呼べ。無事成就したら祝ってやるよ」そう言うとどこからか箒とちりとりを持ってきて足元のタバコを掃除する。
「あ、ありがとうございました」
「なるべく色々気にするな、誰かに笑って貰いたかったらとりあえずお前が笑え」
笑顔でタブレットを閉じるとトボトボあるくおっさんが徐々にフェードアウトする。
あのおっさんをシュージと呼ぶ日はくるのだろうか?ふと可笑しくなって大きく伸びをした。
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