挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
90分だけ貴女の味方です 作者:織田 涼一
1/11

001:邂逅

皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
ブックマークは励みになります。
また、各種評価を頂けると嬉しいです。

次のお話は明日の22:00に予約します。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

<<現時点をセーブしますか?>> <YES/NO>

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 12月23日、朝起きた感想は変わった夢を見ただった。
夢なので起きてすぐ覚えようとしても忘れるし、メモを取ったとしても意味不明な内容だったと思う。
まるでRPGのような夢だった。

 俺の名前は木戸晃きどあきら、高校を卒業してすぐ漁師になり先輩から色々な事を教わっていた。
また車とフォークリフトの資格を取り、包丁捌きや料理の仕方なども勉強した。
まだ日も昇ってない早朝から毎日が始まる、高校時代は自堕落な生活をしていたけど嫌でも規則正しい生活になってしまっていた。

 今年のクリスマスはもちろん仕事だった。
付き合って3年になる彼女は短大を出た後、都会にでて一旗上げたいと言っていた。
別に歌手になるわけではなく、洋服のデザインの仕事に憧れていたようで働きだして1年目になる。
彼女も忙しくしていて今年のクリスマスの分はどこかで休みをとって一緒に過ごそうと約束をした。

 年が明け、新年も終わると仕事も徐々に忙しくなっていく。
1月末になると何故だか突然、彼女から別れようとメールが来た。
連絡が急に取れなくなり、意を決して彼女の実家に行くと彼女は何故か実家にいて居留守を使われてしまった。
 両親からしばらくそっとしてやって欲しいと言われ、向こうから連絡があるまで身を粉にして仕事に熱中した。

 彼女の両親から連絡があった、彼女がいるらしき場所に行って連れ帰して欲しいとお金を預かった。
その場所はホストクラブだった、男が入る場所ではないし少し遠目で様子を伺うことしかできなかった。
客引きの黒服に話しかけるも無視をされ、仕方なく裏口に行くと半ば枯れかけたおっさんがいた。

「坊主、ここは裏口だ。仕事の関係じゃないならかえんな」
「あの、すいません。迷惑なのは重々承知しています、この女の子がいるかどうかだけ教えて貰えませんか?それだけ確認できればすぐに帰ります」
携帯の画像を見せると「めんどくせぇな」と言いながらも確認してくれた。
「ああ、この嬢ちゃんな。有名だぜ、今はいないけどな」
「今はってことは何か知っているのですか?」
「知ってるよ、ただな逢わない方がお互い幸せだぜ」
「どうしても逢わないといけないんです」
「本当はまずいんだけどな、最近あいつのやり口には辟易してるしな」
そういうと時間と場所を指定して「今帰れば丸く納まるんだ、お前の偽善が色々な人を傷つけていくんだぞ」そう言うと名刺の裏に書き込んでくれた。

 そこはただのアパートだった、朝ゴミ出しに出るはずだから影から見るだけにしろ絶対逢うなとしつこく忠告されていた。
仕事柄朝には強く徹夜で行くこともあったので指定された時間は問題なかった。
日が昇ってから張り込んでいると、ある部屋からゴミを持ってくたびれた女性が降りてきた。
「瑞穂・・・」小さな声を出してしまった。
決して届くような声ではなかった、でも急に辺りを見回して「晃・・・」と言ったような気がした。
逢ってはいけない、その意味を理解してしまった。
今彼女に逢えば壊れてしまう、いやもう壊れてしまったのだろうか。
居場所は分かったので消沈とした気持ちを抑え地元に帰ることにした。

 彼女の両親にこの事を伝えお金を返した。
休みをくれた職場のみんなに応えるように仕事を頑張った。
そして数日後に訃報が届いた。

 何故あの時連れて帰らなかったんだろう、自分に出来ることはなかったのか。
黒いネクタイを結びこれから誰の葬式に行くのか一瞬わからなくなる。
彼女が短大を卒業したタイミングで将来結婚しようと約束をしていた。
「私が有名なデザイナーになったら養ってあげるよ」と上から目線で言ってきたが「魚なめんな、素直に俺に釣られろ」そう返すと「待たせちゃってごめんね」としゅんとした。

 お焼香を済ませると出た瞬間黒ネクタイを無造作にはずし叩きつける。
そして何も考えることができず歩き出す、徐々に込み上げる思いが追いつかずに走り出す。
『それ以上進んではいけません』
「あああああああ」慟哭をあげ流れる涙も気にせず全力疾走をする。
『止まりなさい・・・』
目を瞑ったまま走ったせいで足元がもつれ前のめりに倒れこんだ。

『とうとう来てしまったのですね』
目を開けると一面真っ白ば場所だった、どこから来たのか足跡もなく周りに誰もいなかった。
『ここまで来てしまっては仕方ありません、あなたは一度死んでもらわなければなりません』
頭に声が響いてくる、瑞穂も死んでしまったしここで終わってしまっても良いかなと思ってしまう自分がいる。
『あなたは何度も繰り返し時間を止めてしまうでしょう。それはこの世界にとてつもない影響を及ぼしてしまいます』
「あなたは誰なんですか?何度もってどういうことです?」
『話しても決して理解出来ません、ただあなたが望むなら一つだけ叶えられる事があるかもしれません』
「俺が望むものなんてもう失われている・・・」
『言葉に出して御覧なさい、思っているだけでは伝わらないものです』

 声の主なんてどうでもいい、瑞穂を生き返らせてくれるなら神だろうが悪魔にだろうが魂を売ってやるつもりだ。
『あなたの決意は分かりました。但し、あなたの命が代償になります。そして彼女が生き返ったとしても非常に危険な状態での復活になるでしょう。彼女の事を思うなら別の神に干渉してもらう必要があります。あなたはそれを望みますか?』
「瑞穂が心安らかに過ごせるなら喜んで何でもしますよ」

『では、これより異世界に旅立ってください。そこで多くの人を笑顔にすればそちらの神がこちらに干渉して時間を巻き戻す事でしょう。分岐点でどうなるかは神のみぞ知ることになります。また時間の分岐が発生しますのであなたは生きている事になります。一種のパラレルワールドになるでしょう』
「よくわかりませんがわかりました」
『巻き戻った瑞穂さんと晃さんも再び出会う可能性は限りなく0に近くなるでしょう、それでも良いですか?』
「瑞穂が元気でいてくれるならそれで構いません」

 時間が惜しいので早く異世界に移動をしてくれと懇願した。
異世界の説明だとかスキル云々と言っていたけど時間を戻すなんて大変なことだと分かっている。
もし仮に嘘だとしても縋りたくなる甘い誘惑に流されるのもいいと思った。
こうして異世界に旅立つことになった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ