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90分だけ貴女の味方です 作者:織田 涼一
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001:邂逅

その鎌で何刈る気のアナザーストーリーとなっております。

皆様のご意見ご感想をお待ちしております。
まあまあの一言でも作者はとても喜びます。
誤字脱字やストーリーの整合性は真摯に受け止める所存です。

皆様に楽しんで頂けるように頑張りますよ!
と言いつつ暗いスタートです(笑)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

<<現時点をセーブしますか?>> <YES/NO>

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 12月23日、朝起きた感想は「変わった夢を見た」だった。
夢なので起きてすぐ覚えようとしても忘れるし、メモを取ったとしても意味不明な内容だったと思う。まるでRPGのような夢だった。

 俺の名前は木戸晃きどあきら、高校を卒業してすぐ漁師になり、先輩から色々な事を教わっていた。
車とフォークリフトの資格を取り、包丁捌きや料理の仕方なども勉強した。
まだ日も昇ってない早朝から毎日が始まる。高校時代は自堕落な生活をしていたけれど、漁師の仕事をしていると、嫌でも規則正しい生活になってしまっていた。

 今年のクリスマスはもちろん仕事だった。
付き合って3年になる彼女は、短大を出た後都会に出て一旗上げたいと言っていた。
別に歌手になるわけではなく、洋服のデザインの仕事に憧れていたようで働きだして1年目になる。
彼女も忙しくしていて、今年のクリスマスの分はどこかで休みをとって一緒に過ごそうと約束をした。

 年が明け、新年も終わると仕事も徐々に忙しくなっていく。
1月末になると何故だか突然、彼女から別れようとメールが来た。
連絡が急に取れなくなり、意を決して彼女の実家に行くと、彼女は何故か実家にいて居留守を使われてしまった。
 両親からしばらくそっとしてやって欲しいと言われ、向こうから連絡があるまで身を粉にして仕事に熱中した。

 彼女の両親から連絡があった、彼女がいるらしき場所に行って連れ帰して欲しいと言われ、お金を預かった。その場所はホストクラブだった。
男が入る場所ではないし、少し遠目で様子を伺うことしかできなかった。
客引きの黒服に話しかけるも無視をされ、仕方なく裏口に行くと半ば枯れかけたおっさんがいた。

「坊主、ここは裏口だ。仕事の関係じゃないならかえんな」
「あの、すいません。迷惑なのは重々承知しています、この女の子がいるかどうかだけ教えて貰えませんか? それだけ確認できればすぐに帰ります」
携帯の画像を見せると、「めんどくせぇな」と言いながらも確認してくれた。

「ああ、この嬢ちゃんな。有名だぜ、今はいないけどな」
「今はってことは、何か知っているのですか?」
「知ってるよ。ただな、逢わない方がお互い幸せだぜ」
「どうしても逢わないといけないんです」
「本当はまずいんだけどな。最近、あいつのやり口には辟易してるしな」
そういうと時間と場所を指定して、「今帰れば丸く納まるんだ、お前の偽善が色々な人を傷つけていくんだぞ」と言うと、名刺の裏に書き込んでくれた。

 そこはただのアパートだった。
朝のゴミ出しに出るはずだから、影から見るだけにしろ絶対逢うなとしつこく忠告されていた。
仕事柄朝には強く、徹夜で行くこともあったので指定された時間は問題なかった。
日が昇ってから張り込んでいると、ある部屋からゴミを持ってくたびれた女性が降りてきた。
「瑞穂……」小さな声を出してしまった。

決して届くような声ではなかった。
でもその女性は、急に辺りを見回して「晃……」と言ったような気がした。
逢ってはいけない、その意味を理解してしまった。
今彼女に逢えば壊れてしまう。……いやもう壊れてしまったのだろうか。
居場所は分かったので、消沈とした気持ちを抑え地元に帰ることにした。

 彼女の両親にこの事を伝えお金を返した。
休みをくれた職場のみんなに応えるように仕事を頑張った。
そして数日後に訃報が届いた。

 何故あの時連れて帰らなかったんだろう、自分に出来ることはなかったのか。
黒いネクタイを結び、これから誰の葬式に行くのか一瞬わからなくなる。
彼女が短大を卒業したタイミングで、将来結婚しようと約束をしていた。
「私が有名なデザイナーになったら養ってあげるよ」と上から目線で言ってきたが、「魚なめんな、素直に俺に釣られろ」と返すと、「待たせちゃってごめんね」としゅんとした。

 お焼香を済ませると、斎場を出てすぐに黒ネクタイを無造作にはずし叩きつける。
そして何も考えることが出来ず歩き出す。
徐々に込み上げる思いが追いつかずに走り出す。

『それ以上進んではいけません』
「あああぁぁぁぁ」、慟哭をあげ流れる涙も気にせず全力疾走をする。
『止まりなさい……』
目を瞑ったまま走ったせいで、足元がもつれ前のめりに倒れこんだ。

『とうとう来てしまったのですね』
目を開けると一面真っ白な場所だった。
どこから来たのか足跡もなく周りに誰もいなかった。

『ここまで来てしまっては仕方ありません。あなたには、一度死んでもらわなければなりません』
頭に声が響いてくる。瑞穂も死んでしまったし、ここで終わってしまっても良いかなと思ってしまう自分がいる。
『あなたは何度も繰り返し時間を止めてしまうでしょう。それはこの世界にとてつもない影響を及ぼしてしまいます』
「あなたは誰なんですか? 何度もってどういうことです?」
『話しても決して理解出来ません。ただあなたが望むなら、一つだけ叶えられる事があるかもしれません』
「俺が望むものなんて、もう失われている……」
『言葉に出して御覧なさい。思っているだけでは伝わらないものです』

 声の主なんてどうでもいい。瑞穂を生き返らせてくれるなら、神だろうが悪魔にだろうが魂を売ってやるつもりだ。
『あなたの決意は分かりました。但し、あなたの命が代償になります。そして彼女が生き返ったとしても非常に危険な状態での復活になるでしょう。彼女の事を思うなら、別の神に干渉してもらう必要があります。あなたはそれを望みますか?』
「瑞穂が心安らかに過ごせるなら、喜んで何でもするよ」

『では、これより異世界に旅立ってください。そこで多くの人を笑顔にすれば、そちらの神がこちらに干渉して時間を巻き戻す事でしょう。分岐点でどうなるかは、神のみぞ知ることになります。また時間の分岐が発生しますので、あなたは生きている事になります。一種のパラレルワールドになるでしょう』
「よくわかりませんがわかりました」
『巻き戻った瑞穂さんと晃さんが、再び出会う可能性は限りなく0に近くなるでしょう、それでも良いですか?』
「瑞穂が元気でいてくれるなら、それで構いません」

 時間が惜しいので、早く異世界に移動をしてくれと懇願した。
異世界の説明だとかスキル云々と言っていたけれど、時間を戻すなんて大変なことだと分かっている。
もし仮に嘘だとしても、縋りたくなる甘い誘惑に流されるのもいいと思った。
こうして異世界に旅立つことになった。
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