泡だらけ
それはまるで、グラスに注がれたサイダーみたい。
下へ、下へ。
一度沈んで。
上へ、上へ。
出口を求めて、さまよっている。
一方通行。
どれくらい、重力が高かったら。
それとも、このグラスの中に。
どの程度の粘性があったら。
その動きが止まるのか。
出口がないと、思い出すのか。
一粒一粒。
浮かんできたものにふたをする。
一粒、一粒。
昇り切れなくて、つながりを増す。
大きく、大きく。
次第に成長した。
泡の中に、自分の顔が写っていって。
初めて、サイダーは思い知る。
自分の欠片が、次第に失われていくことに。
自分の体が、だんだんと入れ替わっていくことに。
外へ出ていった分だけ、何かが残っていく。
外へ出ていった分だけ、何かが沈んでいく。
沈んだものが、泡に置き換わって。
いつしか、泡が出なくなる。
人の、心も、そう。
泡と、言葉の代わりに。
重い、想いを、溜めこんでいく。
泡が出なくなったら。
きっと、底が抜けるんだ。
じっと見続けられるほど、悠長な時間はない。
じっと見続けられるほど、僕に余裕はない。
見下しているだけの、プライドだけが、沈んでいく。
きっと、そのうち、それだけが残る。