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第7話 事情
第7話 事情 P.15

次の日、健斗は玄関の前で靴を履いて、麗奈を待っていた。これから、健斗はバイトに行く。さらに麗奈は、部活である

夏休みに部活のために学校に行かなくてはならないなんて、ご苦労なこった

しかしその麗奈は相変わらず遅い。いつもこうして健斗を待たせるのだ

出るから用意をしろって言ってから、もう三十分は経っている

早く行かなくては健斗がバイトの時間に遅刻するし、減給までされる

そんなのは絶対嫌だ。なのに……麗奈は遅い

「ったくもう……」

健斗はイライラを感じながらも、地団駄を踏んでいた

こういうとき、本当に困る。麗奈が自転車に乗れないことに、すごく迷惑がかかる

今日はたまたま時間が重なっているから、ついでに送ってやるだけだけど……

普段は送ってはやんない

ったく……俺に認めてもらいたいんなら、早くチャリに乗れるようになれよ

……でも、まぁ……ここでも自分の言った言葉との矛盾点に気がつく

麗奈に、黙って健斗の後ろに乗ってればいいって言ったのは、他でもない

健斗自身だ

自分で言った言葉だ。責任を取るべきなのは自分だ

最近、健斗ばかりが矛盾している



と、そんなことを考えていると二階から急いでる様子が窺える足音が聞こえた。麗奈だ

夏に入ってからは、夏服着用オッケーだから、麗奈は夏服の制服を着ていた

健斗を見ると、にっこりと微笑んできた

「ゴメンゴメン。待たせちゃったね」

麗奈にそう言われて、健斗は不機嫌を丸出しにした

「もう待たされるのは慣れてますから」

「だからゴメンってェ」

「つーかさ……俺に認めてもらいたいんなら、その遅刻癖早く直せよな」

「む〜……」

そんなことを言い合っていると、居間から母さんが顔を出してきた

「あら、もう行くの?」

母さんにそう言われて、健斗は振り向かずに答えた

「うん。もう出ないと間に合わないし」

「そっ。行ってらっしゃい」

「行ってきまァーす♪」

麗奈が元気良くそう言うのと同時に、健斗と麗奈は2人揃って、家を出た


健斗は庭から自転車を取り出して、麗奈が待つ家の前の木に向かう

麗奈は鞄を籠の中に入れた

「ほら、乗れよ」

健斗が自転車に跨ると、麗奈にそう促した。麗奈は頷きながら、促されるまま後ろの椅子に乗ろうとした

その時だった

「……ケホッ……ケホッケホッ」

麗奈が軽く咳をした。立ち止まって、口を手で抑えて、身を屈めてしばらく咳をした

健斗はそんな麗奈の様子を見て、ふと不思議そうに言った

「大丈夫か?」

健斗が訊くと、麗奈は苦しそうにトントンと胸を叩く

ふぅっとため息を吐くと、眉をひそませた

「風邪?」

健斗が訊くと麗奈は眉をひそめたまま、首を傾げた

「ん〜……分かんない。朝からちょっと、ケホッ、気分悪いかも。ケホッケホッ」

健斗はゆっくりと自転車から降りて、麗奈に近づく

「どれ?」

「あ……」

麗奈の長い前髪を掻き分けて、掌を麗奈の額に当てた。そして自分の左の掌を自分の額に当て、体温を比べてみる

「…………」

「……ん〜……ちょっと熱ありそうだなぁ」

麗奈の頬はほんのり赤らめている。やはり熱が少しありそうだ

「け、健斗くんがいきなりそんなことするからっ……」

「は?」

麗奈が顔を赤らめて健斗から目を逸らす。何やら恥ずかしがっているようだった

しかし健斗は何故麗奈が恥ずかしがっているのか、よく分からずにいた

「気分悪いんなら、行くの止めとけば?さらに悪くなっても知らねーぞ」

健斗がそう言うも、麗奈はゆっくりと首を横に振った

「平気。私、こう見えても結構丈夫だから。ケホッ」

こう見えても……って、健斗から見れば完全見たまんま風邪や病気とは、麗奈が自転車に乗れないのと同じように無縁のような気がする

「まぁ……いいんならいいけど」

「うん♪それより、早く行こうよ。バイト遅刻しちゃうよ?」

麗奈はそう言いながら、ピョンッと自転車の後ろに乗る。どうやら部活には行きたいらしい

しかし健斗は不本意だった。あまり無理をさせたくないと言う気持ちがあった

麗奈の意見を無視すべきか悩んだ

だが、麗奈は頑固なとこがあるから……一度言い出したら聞かないんだろうなぁ……

ということで、仕方がなく、健斗は麗奈を乗せたまま、いつもの道をゆっくりと漕いでいった




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