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第7話 事情
第7話 事情 P.11

健斗と麗奈は清川橋の前に着いた。石で出来た小さな橋だ。ほんの十数メートルの距離しかない

健斗と麗奈は、とりあえず川の近くによることにした

「わぁ〜♪」

目の前を流れる川を見て、麗奈は喜ばしく感嘆した

麗奈が感嘆するほど、目の前を流れる川の景色が綺麗ということだ

「スッゴ〜いっ!川綺麗〜♪」

川の流水の音が静かに聞こえ、さっきまで照りつけるのが嫌と思えていた日光も、今は川に差し込んで、美しい水面を光らしている

何とも雄大で美しい景色だろう

雄大と言っても、本当に大きいわけではなく、感覚が大きいということだ

麗奈は走って川沿いまで行く。はしゃぎながら、水面を覗く

「わぁ〜……お魚いっぱいいるよ」

「だから前にも言っただろ?この川は本当に綺麗だから、アユやマスがいっぱいいるって」

「本当だね」

麗奈が振り向いてそう言った

「本当に綺麗♪」

そんな麗奈の表情は、本当に嬉しそうなものだった

目を輝かせて、本当に感動しているということが分かる

東京の川は酷く濁っていて、こんな風に泳いだりすることなんて出来ないと、麗奈が前に言っていたことを思い出した

神乃崎に住んでいた健斗には、泳げない川というのは、全く信じることの出来ない、不思議な感覚だった

東京で育った麗奈にとっては、今の目の前の景色がとても素敵なものに見えるのか

健斗はその麗奈の背中を見る

ずっと、何故健斗まで巻き添えにならなくてはならないのか、麗奈の身勝手さ、我が儘には苛立ちを感じていたのだが……

今の麗奈の様子を見ていると、自然と頬が緩んでいる自分に気がついた

まァ……いっか

って、思えるくらいに……


「よ〜し♪」

と言って、おもむろに麗奈が青い短パンを脱ぎ始めた。それを見た瞬時、健斗の表情は歪み、頬が赤らいでいく

ほんのりした感覚だ

しかし麗奈はまったく躊躇することなく、短パンを脱ごうとする

「バ……バカッ!こんなとこで何脱いでんだよっ!」

健斗が顔を赤らめながら、顔を背けると、麗奈が
「えっ?」と不思議そうに反応して、短パンを下ろそうとする手を止めた。そしてゆっくりと振り返った

そんな健斗を見て、麗奈は可笑しそうに笑った

「バッカねー。ちゃんと水着を下に着てるに決まってるじゃない」

「え……」

麗奈にそう言われて、健斗は呆然とした。これから麗奈が水着に着替えるのかと思ったら、どうやらすでに着替えているということらしい

少し考えてみれば分かることなのだが、健斗は全く気づくことが出来なかった

麗奈は可笑しそうに笑いながら、短パンを下ろした。綺麗で長く、白みを際立した細い足が露わになった

確かに、水着を着ているようだった

健斗は堪らなく恥ずかしくなった。恥ずかしくなった理由は、もちろん麗奈がちゃんと水着を着ているということに気がつけなかったことだ

これじゃまるで……変態みたいじゃないか……

「なァに?もしかして水着じゃない方が良かったー?」

案の定、麗奈は可笑しそうにからかってくる。健斗は顔を真っ赤にして、怒鳴りつけた

「うるせェッ!着てるなら着てるって最初から言えよなっ!」
と健斗は怒鳴って、麗奈から目をそらす

橋の上に座って、持参してきた釣具を手に持ち、釣りをする準備を始めた

普通、言わないに決まっている

私、水着着てるよなんて

自分で言ったことの矛盾に気づき、健斗はさらに恥ずかしくなった

どうやら麗奈はこの川で泳ぐ気はないらしい。それもそのはず

この辺は浅いため、泳ぐには少し不適格とも言える

もう少し先の方に行けば、もっとキレイで泳げるには適格な場所があるのだが、健斗はここから動きたくない

何故ならこの橋の下が、釣り場のスポットだからだ

今日は別に泳ぐ気はないし、ここでノンビリ釣りをしていたかった

麗奈もそれで十分だと言う

上半身も水着を着ているのだと思うがシャツを脱ごうとしない

滑ったり、誤って水に浸かってしまったことを考えて、着替える用のシャツ一枚とタオルを持ってきていた

用意周到だ

「あまり、遠くに行くなよ」

川に入ろうとする麗奈にそう注意を呼びかける

遠くに行き過ぎて、誤って深いとこまで行き、流されたりでもしたら大変だ

しかし麗奈はまったくその危機感がないみたいだった

「はァ〜い♪」

いつものように軽い返事を返してくる

こいつが軽い返事をすると、決まって逆のことが起こるから不安だ

健斗は軽くため息をつくと、竿を持ち、糸を水面まで垂らす

水の中にゆっくりと入れれば、釣り開始だ

「……キャッ!冷たーいっ」

麗奈が川に足を入れ、川の冷たさを感じながら楽しそうに笑っていた

そして、慣れ始めると徐々に川を歩いていく

「おぉ〜……気持ちいィ〜♪」

そう言って楽しそうに、足を振り上げたりして、川遊びを始めた

健斗は釣りをしながら、そんな様子を見ていた

麗奈って……本当に変なやつだと思う

変っていうか、変わってるっていうか……大して意味は違わないのだが……

子供っぽくて、元気過ぎるし、何を考えているのかまったく分からないときがあって、気がつけば麗奈に振り回されている

そんなやつに、健斗は好きって告白を受けてしまった

そのときのことを思い出す

麗奈の七夕祭での告白を受けて、困惑して悩んでいた健斗に……あのとき、今度ははっきりと明確に言われてしまった

あれから一週間は経ったわけだけど、健斗と麗奈の関係は特に変わっているようなことはなく、至って平凡な日々を送っている

けど健斗の方は、時々あの日のことを思い出してしまうときがある

『……私……今でも健斗くんのこと……好きだよ……?』

『だって仕方ないじゃない。やっぱり……私、健斗くんが好きなんだもん♪』

『だからっ……だから、私頑張るから……』

俺がいつかあいつのことを好きになってくれるように頑張る……かァ……

健斗はまた深いため息を吐いた

そんなこと、言われるのは初めてだ

あんなに真っ直ぐで、純粋な目をしている人を見るのは初めてだった

何で、そこまで俺のことを……

…………

もう一つ、少し気にかかっていることがあった

麗奈が言っていた

ずっと……ずーっと健斗のことが好きだったって

そう言っていた

ずっと……って、いつからのことを言ってるのだろうか……

七夕祭のときから?

それとも松本事件のときから?

あの日……キス事件の日からか……

それとも……麗奈がこの町にやってきたころからか……

気にかかってはいた

気にかかってはいたけれど……特に気にすることはなく、ただ興味という気持ちだけを抱いていた

そうだ

麗奈のことはもはや、どうでもいいことだ

健斗の心に麗奈はあらず

今一番健斗が気になっていること……当然……誰だか分かるだろう?



早川は……あのときどういうつもりで、あんなことを聞いてきたのだろうか

すごく気になっていた

好きな人を聞いてきたときの表情……

戸惑いと、恥ずかしさを見せていた

それらの表情が何を意味しているのか……健斗は知りたかったのだが……この胸の中に残っている妙な期待感は何だろう

今までのことを考えてみよう……早川は今まで、健斗に……そのような素振りを見せてきたことがあっただろうか

けど、そうなってもおかしく……ないのだろうか

多分……

早川とは、高校になってから、本当に随分と距離が縮まったと思う

中学なん今のように喋ることなど出来なかった

ただ、遠くで……早川に対して想いを募らせることしか……出来なかった

なのに今では、学校でもよく話すし、お弁当もいっしょに食べたり……祭りもいっしょに行ったりとか……本当に仲良くなった

それまでに、松本事件や七夕祭でのナンパ事件など、色々なことがあった

それが……理由ではないのかもしれないが……

でももしかしたら、そんなことがあるかもしれない……そんな妙な期待感を抱いてしまうのだ

それは本当に健斗にとって、この上ない喜びであった

とにかくだ……

この期待感を明らかにするためにも……早く早川に会って、そのことを訊いてみよう

気がつけば、もう一週間だ……


と、その瞬間だった。健斗の顔に、何か冷たい感覚を覚えた。濡れた感覚、健斗はびっくりしてのけぞってしまった

「のわァっ!」

健斗がびっくりした。健斗の顔に付着しているもの……それはこの川の水だった

そして前を見ると、川遊びをしていた麗奈がクスクスと可笑しそうに笑っていた

「アハハ♪何ぼ〜っとしてるの?健斗くんも川に入りなよー?」

麗奈に水をかけられたのだということに気がついた健斗は、顔をしかめて水を拭った

「やめろよバカッ!俺は水着持ってきてねーんだぞ」

健斗のタンクトップは濡れてしまった。とは言っても、この暑さ。すぐに乾いてしまうだろう

「いいじゃんいいじゃーん♪」

「よくねーよ……ったく」

健斗が呆れるようにため息をつくと、麗奈が笑いながら水を手にすくった

「それ〜っ!」

その水は、広い範囲に広がり、見事にも健斗の顔面に直撃した

滴る水が健斗の服の上に落ちる

我慢の限界だ

「こっのやろっ……」

「おー」

そのときだった。やけに間延びした声が健斗の耳に入った。その声の方向を向くと、さっき健斗たちが歩いてきた川沿いの道から、ヒロが自転車を漕ぎながら現れた

「ヒロ」

健斗がヒロの名前を呼ぶ。ヒロは健斗と麗奈の様子を見て、可笑しそうに笑っていた

「懐かしいことしとるなァ」

ヒロが笑いながら自転車を漕いで橋の上にいる健斗に近づいてきた

ヒロが現れたことで、今さっきまで怒りで我を失いそうになっていた健斗も、冷静さを取り戻した

「よっ」

「おう。どうしたんだよ、懐かしいな。川遊びしてるなんて」

「いや……あいつがさァ」

健斗が麗奈を指差すと、それだけでヒロは理解してくれたみたいだった

「ヒーロくーんっ!」

麗奈は大きく手を振ると、ヒロも笑って手を振り返した

「麗奈ちゃん、相変わらず元気だな。それに……水着にシャツって……何かエロいな♪」

ヒロがそう言いながら、露わになっている麗奈の足を見てにやけた

……こっちも相変わらずのエロ助だ

健斗は呆れるようにため息をついた

「で、どしたの」

健斗がヒロにそう訊く。するとヒロは頷きながら答えた

「あぁ。暇だからお前ん家行ったら、おばさんが川に遊びに行ったって言うからさ」

「へぇ……部活は?」

「午前中でおしまい。どう、何か釣れた?」

ヒロにバケツの中を覗かれた。健斗は可笑しそうに笑って答えた

「まだ何も釣れてねーよ。今やり始めたばっかだぜ?」

「ふゥーん……」

そんなときだった。麗奈が水しぶきを上げながら、バシャバシャと川の中を走ってきた

「ねーねー」

「ちょっ……コラッ!近くで暴れんなっ。魚が逃げんだろーが」

そんなことを言う健斗をお構いなしに、麗奈が笑って言ってきた

「ねーねー。ヒロくんもいっしょに川に入ろうよっ」

麗奈にそう言われたヒロは嬉しそうな表情を浮かべた

「えっ?いっしょに?」

ヒロが聞き返すと、麗奈がにっこりと微笑んで頷いた

「うん♪ヒロくんもいると、楽しいし♪」

ヒロは麗奈からその言葉を聞いて、よほど嬉しかったのか。健斗の方を見てガッツポーズをしてきた

よかったな……

「じ、じゃあ俺、家帰って、釣具と海パンと……あと七厘しちりん持ってくるわ」

「七厘?」

麗奈が聞き返すと、ヒロが頷きながら答えた

「釣った魚を塩焼きにして食うと、めっちゃ美味いんだぜ?麗奈ちゃんに食べさせてやる」

ヒロがそう言うと麗奈は明るい表情へと変わった

「へぇー♪楽しみィ〜♪」

麗奈が嬉しそうに言うのを聞いて、ヒロも満足そうに頷いた

「じゃあ、すぐとっくるから。頑張って魚釣れよ」

健斗と麗奈にそう言うと、ヒロは自転車を漕いで元来た道を帰っていった

ヒロが帰ったのを見計らうと、健斗は釣りを開始した

ヒロも……麗奈に対してなら本当に何でもするよなァ

まぁ、七厘でアユやマスを塩焼きにして食べるというのは、釣りの面白さでもある

健斗も子供のころはよくやったものだ

ヒロが言うように、マジで美味しい

「……おっ」

釣り糸が引いた瞬時、健斗は竿を引いた。すると、竿に何かが揺れる振動と共に、重みを感じた

健斗はゆっくりとそれを引き上げる

やった。一匹釣れた

二十センチくらいのアユだ

釣り針が口元に刺さって、宙づりになっていて、水から出たアユはそこから抜け出そうと、懸命になって尾鰭をばたつかせている

健斗は丁寧に釣り針を外してやる。手に魚特有の滑りを感じた

それがヒヤリとしてなんとなく気持ちがよかった

釣ったアユは新鮮さを保たせるために殺しはしない。バケツの中に入れてやった

するとアユは生き返ったようにバケツ内で泳ぎ始めた

するとだった。その様子を見ていた麗奈が不意に川から上がり、タオルで足を拭くと、サンダルを履いて健斗に近づいてきた

健斗はそんな麗奈の行動に気がつき、竿を置いた

麗奈はバケツに入ったアユを見て、何やら感動しているようだった

「わァ〜♪これ健斗くんが釣ったんだァ」

釣った魚に興味が湧く……まるで子供のようなやつだ

「ねぇ、私にもやらせて?」

麗奈にそう言われて、健斗は眉をひそめながら言った

「え……お前、釣り出来んの?」

健斗がそう訊くと、麗奈はむっとした表情を作って答えた

「失礼なっ!私だって釣りの1つや2つくらい……」

「釣りを1つや2つとは数えねェだろ……まァ、いいけど」

健斗はそう言うと、素直に麗奈に竿を渡した

「餌の付け方知ってる?」

健斗が訊くと麗奈は当然と言わんばかりに、首を横にふった

まぁ……大体分かっていたことだけど……

健斗はため息を吐きながら、餌である虫をパックから取り出した

「これをな?こうやって、針に刺して……何だよ?」

麗奈が青ざめた表情で健斗を見ていたことに気がつき、健斗は不思議そうに訊いた

「……健斗くん……気持ち悪くないの?」

「え?何が?」

健斗にとってはこんなこと、慣れているから何も感じないのだが……

「私、虫ダメなの」

「はぁ?」

虫がダメ……って……それで釣りをするつもりだったのか……

麗奈は顔を歪ませ、青ざめた表情で嫌々と首を横に振っていた

「そう言うグロいやつ私ダメッ!見せないでェッ!」

懇願してくる麗奈に健斗は呆れるようにため息をついた

まぁ……女の子だから無理はないのかもしれない

「餌、健斗くんが付けてよォ〜……」

「んなもん面倒くさいから嫌だ」

「虫は嫌ァ〜!絶対嫌っ!」

我が儘言う麗奈に健斗は深くため息をついた

「じゃあ〜……これなら……」

と言って健斗が釣具の収納箱から取り出したのは、市販で売っている淡水魚のための釣り餌だった

これはただ、淡水魚が食べるような化学物質を練り込んだものなので、虫が苦手な麗奈にも触ることが出来る

麗奈はそれをとって、釣り針に餌をつけようとする

だが、やはり初めては上手くいかないらしい

大分苦戦していた

「あれ?こうやって……あれェ?」

「だから、こうだって。……ほら」

結局健斗が餌をつけてやり、麗奈は嬉しそうに笑った

「よーし」

気合いを込めて、釣り糸を垂らす。餌がついてある先端部分が水の中に入ると、川の中にいる魚たちが餌を突っつき始めた

その感覚を感じるのか、麗奈ははしゃいでいた

「お、おお、おおおお……おォ〜♪」

「…………」

「ところでさ、いつになったら引っ張ればいいの?」

「魚が餌を食って、持っていこうとしたとき。引っ張られる感覚がしたら」

「……今引っ張られるような感覚があるんだけど……」

「だったら引っ張れよっ!」

健斗がそう言うと、麗奈は慌てて竿をぐいっと引っ張った

しかし遅いし、引っ張る力が強すぎたため、当然魚は釣り針にかからず、しかもその針が水面から勢いよく出てきて、暴れ始めた

「危ねっ!」

健斗は避けてなんとかなったが……

「わっわっわっ!」

慌てた麗奈は竿を振り回してしまったため、糸がこんがらがんになってしまった……

「……アハ……やっちゃった……」

「……ハァ……」

麗奈が苦笑してこがらがんになった糸を見せつけてくる

健斗はそれを見て、疲れるように深くため息をついた






「あのなァ、魚が引いてきた感覚が来たら、少し引くの。素早くね」

糸を取り替えて、麗奈の釣りが再スタートした

アドバイスなどを言いながら、麗奈に釣りを教えてやった

「健斗くーん。何か震えてるよー」

「まだ。ただ突っついてるだけ」

健斗が水面を覗きながらそう言う

「……まだー?」

「……食いついたっ!」

「えっ!わっ!たァッ!」

麗奈は焦りながらも健斗に言われたとおり、少し、そして素早く……だが、少し早かったみたいで、魚は釣れず、そしてまた針が水の中から飛び出した

「どわァッ!だから、そんな力を込めて引くなってっ!」

「だってェッ!素早くって健斗くんが言ったんじゃんっ!」

「力を込めろってことじゃなくって……ああ〜もうっ!」

健斗は面倒臭くなって、まゆをひそめた

「もう、止めとけよ。やったことないんだろ?釣り」

「そりゃ……ないけど……」

「魚なら俺が釣ってやるから。お前は川で遊んでろよ」

健斗が言うように、このままではずっと魚が釣れないまま終わりそうで怖い

麗奈は塩焼きが食べてみたいから、自分も釣ろうと考えているんだろうけど……このままじゃ、逆効果だ

だが……麗奈は頑として首を縦に振らなかった

「嫌っ!私、自分でやるっ!」

「だから……塩焼きが食いたいんだろ?俺に任せろって……」

「違うよっ!」

麗奈は健斗にそう言い放った。思いがけず大きな声を放ってきたので、健斗は驚きと共に、口を噤んでしまった

麗奈はプイッと顔をそらすと、悔しそうな表情を浮かべていた

「……認めてもらいたいのっ」

「は?」

認める?誰に?何を?

「健斗くんに、認めてもらいたいんだもんっ。途中で投げ出すなんて嫌っ!」

それを聞いて、健斗はふと思い出す。麗奈が言っていた、あの言葉……

『だから私……頑張るから。いつか健斗くんが、私のことを好きになってもらえるように……頑張るからね』

そういうことか……

健斗は呆れるようにため息をついた

何をそんなに意地を張ってるのかと思えば……そんなことで……

呆れるのと同時に、麗奈の純粋な気持ちに少し可笑しささえ感じる

俺に認めてもらいたいから……

だから頑張っているのだ……

でも……何でそこまで俺なんかのことを……

ふと健斗は思いついた

そうだ。別に竿を使わなくっても、魚をいっぱい取れる方法が1つあった

「……よしっ」

健斗は笑いながら立ち上がると、麗奈はふと健斗を見上げた

「仕方ねぇな。とっておきの方法でやるか」

「え?」

健斗の浮かべる笑みを見ると、よほどの自信があるみたいで、不気味にさえ思えた

竿を使わないで魚をとる方法……

というのは、一体どんな方法なんだろうか?



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